今回のテーマはGLP-1受容体に作用する注射薬!
現在、国内で使用できる製剤は6成分です。
- リラグルチド(ビクトーザ)
- エキセナチド(バイエッタ)
- リキシセナチド(リキスミア)
- セマグルチド(オゼンピック、ウゴービ)
- デュラグルチド(トルリシティ)
- チルゼパチド(マンジャロ)
種類や投与方法、デバイスの扱い等について、まとめたので共有します。
ウゴービは2023年3月27日承認、2024年2月22日発売されました。ビデュリオン皮下注用2mgペン(エキセナチド、週1回投与)は2022年5月に販売が中止されています。
バイエッタは2024年9月に販売が中止、2025年3月末で経過措置期間の満了をむかえます。
GLP-1受容体に作用する注射薬:一覧表
適応 | 製剤名 | 一般名 | 投与回数 | 投与時点 | 用量調節 | 針の取り付け | 空打ち | 注入保持 | 使用期限 | 打ち忘れ時の対応 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2型糖尿病 | ビクトーザ18mg | リラグルチド | 1日1回 | 朝又は夕 | 0.3-0.6-0.9-1.2-1.5-1.8 | 必要 | 毎回 | 6秒 | 30日間 | スキップ |
バイエッタ5μgペン300 | エキセナチド | 1日2回 | 朝夕食前 | 5 | 必要 | 初回 | 5秒 | 30日間 25℃以下 | スキップ | |
バイエッタ10μgペン300 | 10 | |||||||||
リキスミア300μg | リキシセナチド | 1日1回 | 朝食前 | 10-15-20 | 必要 | 毎回 | 10秒 | 30日間 25℃以下 | スキップ | |
オゼンピック2mg | セマグルチド | 週1回 | 指定なし | 0.25-0.5-1.0 | 必要 | 初回 | 6秒 | 8週間 | 次回予定まで48時間以上で投与可 | |
オゼンピック0.25mgSD | 0.25 | 5〜10秒 | 4週間 | |||||||
オゼンピック0.5mgSD | 0.5 | |||||||||
オゼンピック1.0mgSD | 1.0 | |||||||||
トルリシティ0.75mgアテオス | デュラグルチド | 週1回 | 指定なし | 0.75 | 10秒 | 14日間 | 次回予定まで72時間以上で投与可 | |||
トルリシティ1.5mgアテオス | 1.5 | |||||||||
マンジャロ2.5mgアテオス | チルゼパチド | 週1回 | 指定なし | 2.5 | 10秒 | 21日間 | 次回予定まで72時間以上で投与可 | |||
マンジャロ5mgアテオス | 5 | |||||||||
マンジャロ7.5mgアテオス | 7.5 | |||||||||
マンジャロ10mgアテオス | 10 | |||||||||
マンジャロ12.5mgアテオス | 12.5 | |||||||||
マンジャロ15mgアテオス | 15 | |||||||||
肥満症 | ウゴービ0.25mgSD | セマグルチド | 1日1回 | 指定なし | 0.25 | 5〜10秒 | 次回予定まで48時間以上で投与可 | |||
ウゴービ0.5mgSD | 0.5 | |||||||||
ウゴービ1.0mgSD | 1.0 | |||||||||
ウゴービ1.7mgSD | 1.7 | |||||||||
ウゴービ2.4mgSD | 2.4 |
GLP-1受容体に作用する【経口薬】リベルサス錠(セマグルチド)も発売されています。
GLP-1受容体作動薬と持効型インスリン製剤の配合剤もあります。
ここからは、押さえておきたいポイントをまとめました。
順に見ていきましょう!
オゼンピックSD製剤は2022年春に出荷停止(欧州デバイス製造会社の製造中止に伴い)となり、2022年5月から用量調節が可能なオゼンピック皮下注2mgが発売されています。
GLP-1受容体に作用する注射薬:種類
GLP-1受容体に作用する注射薬は、大きく2種類に分かれます。
マンジャロは最近発売された薬ですね。GIPのアミノ酸配列をもとにGIPとGLP-1両受容体に結合するように設計された薬剤です。
- グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体
(glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP) - グルカゴン様ペプチド-1受容体
(glucagon-like peptide-1:GLP-1)
多面的な作用を示し、共通の薬理作用として膵臓のβ細胞を介してインスリン分泌を促します。
マンジャロの作用機序(インスリン分泌)
マンジャロとトルリシティの比較については別記事でまとめていますので、是非ご覧くださいね。
GLP-1受容体に作用する注射薬:適応
ご存知のとおり、2型糖尿病の治療薬です。GLP-1(又はGIP)受容体を介したインスリン分泌促進作用により、血糖値を低下させる効果が期待できます。一方で、食欲抑制や胃内容物排出遅延作用等も認められており、ウゴービは今後、肥満症治療薬として発売予定です。
ウゴービの特徴や使い方は別記事にまとめています。合わせてご覧頂けたら幸いです!
GLP-1受容体に作用する注射薬:投与方法
投与方法 | 製剤名 | 投与時点 | 初回投与量 | 漸増の間隔 (漸増方法) |
---|---|---|---|---|
(Daily製剤) | 毎日ビクトーザ | 朝または夕 | 0.3mg | 1週間以上 (0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1.8) |
バイエッタ | 朝食前と夕食前 | 5μg | 1ヶ月以上 (5 10) | |
リキスミア | 朝食前 | 10μg | 1週間以上 (10 15 20) | |
(Weekly製剤) | 週1回オゼンピック | 指定なし | 0.25mg | 4週間 (0.25 0.5) 4週間以上 (0.5 1.0) |
トルリシティ | 0.75mg | 指定なし (0.75 1.5) | ||
マンジャロ | 2.5mg | 4週間 (2.5 5) 4週間以上 (5 7.5 10 12.5 15) | ||
ウゴービ | 0.25mg | 4週間 (0.25 0.5 1.0 1.7 2.4) |
毎日投与製剤と週1回投与製剤
GLP-1受容体に作用する注射薬はDaily製剤とWeekly製剤に分かれます。Daily製剤は大きく2パターン。1日1回型(ビクトーザとリキスミア)と1日2回型(バイエッタ)があり、半減期が短く毎日投与を行います。デュラグルチドとセマグルチド、チルゼパチドは週1回型の製剤です。以下のように半減期を延長させる製剤工夫が施されています。
デュラグルチド | セマグルチド | チルゼパチド | |
---|---|---|---|
構造 | ヒトGLP-1組み換え+糖タンパク質 | ヒトGLP-1組み換え+長鎖脂肪酸 | ヒトGIP組み換え+長鎖脂肪酸 |
分子量 | 約63,000 | 4113.58 | 4813.45 |
半減期 | 約4.5日 | 約1週間 | 5〜6日 |
半減期延長の仕組み | 改変型ヒトIgG4のFcドメイン付加 (腎クリアランス低下) | アミノ酸修飾(DPP-4に安定)長鎖脂肪酸を付与(血中アルブミンと結合性UP) | アミノ酸修飾(DPP-4に安定)C20脂肪酸側鎖を付加(内因性アルブミンへの結合性アップ) |
GLP-1受容体作動薬のペプチド配列と分子構造
投与時点の違い
weekly製剤は曜日を決めて同じタイミングで投与を行います。投与時点に指定がなく朝でも夕でも、食前、食後どちらでも構いません。一方で、daily製剤は投与時点の設定(上表参照)があります。加えてバイエッタとリスキミアは食前投与です。食後投与を避けるよう電子添文に記載があります。
(用法及び用量に関連する注意)
本剤の投与は原則として朝夕食前60分以内に行い、食後の投与は行わないこと。
バイエッタ皮下注 電子添文
本剤の投与は朝食前1時間以内に行い、食後の投与は行わないこと。
リキスミア下注 電子添文
- バイエッタはなぜ食前投与なのか?
-
食前60分以内に投与を行う必要があります。
<用法及び用量に関連する注意の設定理由>
バイエッタ皮下注 インタビュフォーム
7.1 外国人2型糖尿病患者18例を対象に本剤10 μgを単回皮下投与し、食後血漿中グルコース濃度への本剤の投与時期の影響について検討した結果、本剤を食後投与した場合には食後血糖値の上昇が認められたが、食事60分前、15分前及び食直前に投与した場合にはいずれも食後血糖値の上昇が認められなかったことから設定した - リキスミアはなぜ食前投与なのか?
-
(用法用量の設定根拠)
日本人が組み入れられた国内臨床試験において、本剤は朝食摂取前1時間以内に1日1回投与されていることから設定している。
リキスミア皮下注 インタビューフォーム
個別用量と固定用量
基本的に、GLP-1受容体に作用する注射薬は少量から投与を始め、有効性と忍容性(胃腸障害等)を見ながら、一定の間隔をあけて増量していきます。経過を見ながら個々で投与量を決めるかたちですね。一方で、トルリシティは固定用量です。誰でも初回、維持量ともに1回0.75mgを投与します。シンプルでわかりやすいのですが、有効性が得られない、または忍容性がない場合には、投与量の変更が不可能であり、他剤への変更を検討しなければなりません。
トルリシティも効果や忍容性(胃腸障害等)を見ながら、1.5mgへの増量が可能になります。
GLP-1受容体に作用する注射薬:投与前の準備
製剤名 | 注射針の装着 | 空打ち | 単位の設定 |
---|---|---|---|
ビクトーザ | 要 | 毎回 | 0.3-0.6-0.9-1.2-1.5-1.8 |
バイエッタ | 要 | 初回のみ | |
リキスミア | 要 | 毎回 | 10-15-20 |
オゼンピック | 要 | 初回のみ | 0.25-0.5-1.0 |
オゼンピックSD | |||
トルリシティ | |||
マンジャロ | |||
ウゴービ |
1回使い切りと複数回使用
オゼンピックSDとトルリシティ、マンジャロ、ウゴービは一回量の薬液が充填されたキット製剤です。針の取り付け、単位設定などが不要であり、手技の簡便性がメリットになります。一方で、ビクトーザ、バイエッタ、リキスミア、オゼンピックは複数回分の薬液が充填されたキット製剤です。注射針の装着、空打ち、単位の設定等の手技がやや煩雑ですね。
空打ちのタイミング
ビクトーザとリキスミアは投与のたびに空打ちを行いますが、バイエッタとオゼンピックは初回のみです。誤って毎回行うと予定回数分の不足を招くので、患者さんへの説明時には注意が必要ですね。
GLP-1受容体に作用する注射薬:注入保持時間
メーカー | 保持時間 | 製剤名 |
---|---|---|
ノボノルディスクファーマ | 6秒 | ビクトーザ |
オゼンピック | ||
5〜10秒 | オゼンピックSD | |
イーライリリー | 10秒 | トルリシティ |
マンジャロ | ||
サノフィ | 10秒 | リキスミア |
アストラゼネカ | 5秒 | バイエッタ |
各製剤ごとに注入時の保持時間が異なります。ノボ製品はインスリンも含めて6秒の設定(オゼンピックSDは例外)です。イーライリリーのGLP-1受容体作動薬はデバイスがアテオスであり10秒と設定されています(ちなみにインスリン製剤は5秒)。リキスミアはランタスと同じソロスタータイプのペンで10秒です。こんな感じで、メーカーごとに知識を整理しておくといいかもです…。
GLP-1受容体に作用する注射薬:投与忘れ時の対応
製剤名 | |
---|---|
スキップが基本 | バイエッタ リキスミア ビクトーザ |
次回予定まで 48時間以上で投与可 | オゼンピック ウゴービ |
次回予定まで 72時間以上で投与可 | トルリシティ マンジャロ |
daily製剤は投与忘れ時の対応について電子添文に記載がありません。主治医からの指示がない場合はスキップの対応が基本です。一方で、週1製剤は投与忘れ時の対応について記載があります。
日曜日投与の場合、対応は以下の通りです
- 水曜日までに気づく→その時点で投与(O)、次回は予定通り(日曜日)
- 木曜日以降に気づく→投与せずに(x)、次回は予定通り(日曜日)
曜日 | 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
投与予定日 | ||||||||
投与忘れ | ||||||||
投与の可否 |
GLP-1受容体に作用する注射薬:使用期限
製剤 | 温度 | 使用期限 |
---|---|---|
バイエッタ | 25℃以下 | 30日間 |
リキスミア | ||
ビクトーザ | 30℃以下 | 30日間 |
オゼンピック | 8週間 SDは4週間 | |
トルリシティ | 14日間 | |
マンジャロ | 21日間 | |
ウゴービ |
上記温度で保管した場合の使用期限は各製剤ごとに異なります。バイエッタとリスキミアは温度設定が25℃以下です。エキセディン-4をもとに開発された製剤という括りで覚えておくと良いですかね。その他の製剤は室温保管(1〜30℃)での使用期限です。週1製剤は使用するまで冷蔵庫保管ですが、室温に放置した場合でも上記期間内なら使用可という理解ですね。
まとめ
今回は、GLP-1受容体に作用する注射薬について種類や使い方等についてまとめました。
本記事のポイント
適応…2型糖尿病、肥満症(ウゴービ)
投与方法…Daily製剤とWeekly製剤(この区別が重要!)
デバイスの使い方…針の装着、空打ちのタイミング、単位設定(Weekly製剤は簡便!)
注入保持時間…メーカーごとに設定
使用期限…製剤ごとにバラバラ(覚えるのは不可能)
投与忘れ時の対応…Daily製剤はスキップ、Weekly製剤は気づいた時点で決定
まずはDaily製剤とWeekly製剤を区別ですね。知識の整理が容易になり理解が深まると思います。日常業務にお役立て頂けたら幸いです。