糖尿病薬

【経口GLP-1製剤】リベルサス錠は注射剤にとって代わるのか?

今回のテーマはリベルサス!

経口のGLP-1製剤です。一般名はセマグルチド。注射製剤としてオゼンピックが最近登場したところですね。

「経口投与できるGLP-1製剤」

という点で、すごく注目が集まっています。まさか経口剤がこの世に出てくるとは!?といった感じです。

じゃあ、リベルサス錠は注射のGLP-1製剤にとって代わるのか?

疑問に思ったので、特徴や服用方法をまとめながら考察しました。

※現時点で未発売です。

リベルサスの特徴

基本情報の確認から確認。

商品名 リベルサス
一般名 セマグルチド
規格 3mg、7mg、14mg
適応症 2型糖尿病
用法用量 ・開始…3mg×1
・維持…7mg×1
・最大…14mg×1
※4週間以上投与したのち増量する
禁忌 ・過敏症の既往歴のある患者
・糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者
・重症感染症、手術等の緊急の場合

リベルサスの規格は3種類です。それぞれ、開始用量、維持用量、最大用量の設定になります。適応症と禁忌は注射製剤のオゼンピックと同様です。

特徴を簡単に見ていきましょう。

GLP-1製剤とは

特徴をまとめると下記です。

  • Glucagon-like peptide-1の類似物質
  • 2型糖尿病の治療薬
  • 血糖依存的にインスリンを分泌(血糖値を下げる)
  • 食欲を抑制、体重減少効果も期待できる

国内で7剤目、初の経口製剤

国内で使用できるGLP-1製剤は下記です。

  1. ビクトーザ皮下注…リラグルチド
  2. バイエッタ皮下注…エキセナチド
  3. リスキミア皮下注…リキシセナチド
  4. ビデュリオン皮下注…エキセナチド
  5. トルリシティ皮下注…デュラグルチド
  6. オゼンピック皮下注…セマグルチド
  7. リベルサス錠…セマグルチド

リベルサスの登場で、6成分7種類なります。経口製剤は国内はもちろん世界初です。

製剤ごとの特徴は下記にまとめていますので、ご確認くださいね。

GLP-1受容体作動薬の特徴について【押さえておきたいポイントを解説!】今回のテーマはGLP-1受容体作動薬! 国内で使用できるのは全部で6種類です。 本邦初はリラグルチド、その後にエキセナチドが...

また、最近発売されたオゼンピックとトルリシティの比較は下記です。

オゼンピック注の特徴について【トルリシティと比較しながら解説!】国内で6成分目のGLP-1受容体作動薬が登場しました。 その名はオゼンピック、一般名はセマグルチドです。 実は2018年3月...

経口投与できるメカニズム

リベルサスは他のGLP-1製剤と異なり、経口投与できます。

ここが凄いところ!

ペプチド製剤は消化管で分解を受けるので、そのままでは吸収されません。それに分子量も大きいので細胞を透過することも難しいです。だから、今までの製剤は注射剤だったわけですね。

じゃあ、どうやって分解を免れて吸収されるのか?

キーワードはSNAC!(スナック)

サルカプロザートナトリウムのことです。リベルサスは添加物としてSNACを含有しています。コレが、胃酸からセマグルチドを守り、吸収を促してくれるわけです。

SNACの作用
  • pH緩衝作用(蛋白分解酵素の活性低下)
  • セマグルチドを多量体から単量体へ(自己会合を弱める)
  • 細胞膜の脂質成分の流動性アップ

セマグルチドのおもな吸収部位は胃です。吸収は錠剤表面の周辺部に限定されています。崩壊しながら吸収されていくイメージですね。

生体利用率が悪い!

リベルサスのバイオアベイラビリティーは約1%です。投与量のほんの一部しか血中に移行しないみたいですね。

飲み方の注意点

リベルサスの吸収は不安定です。ココがやや扱いにくい点ですね。下記の影響を受けます。

  • 食事
  • 絶食時間
  • 飲水量

・食事の影響試験で、高脂肪食摂取群は10時間絶食群と比較して、CmaxとAUCが低かった(26例中14例では定量下限値を超える血漿中濃度が認められなかった)

空腹時投与の必要あり

・投与条件設定試験で絶食時間(15,30,60,120min)が長いほど、暴露量は増加する結果であった。

投与後少なくとも30分間の絶食で臨床上意味のあるAUCが得られる

・また、飲水量(50と120mL)の違いはAUCに大きな影響を与えないが、飲水量240mLは50mLに比べてCmaxで42%、AUCで40%低値であった。

飲水量は120mL以下が妥当

リベルサス 審査報告書参照

リベルサスは服用方法が以下のように細かく決められています。

  1. 飲むタイミング…1日のうちの最初の食事又は飲水の前
  2. 飲水量…コップ約半分の水(約120mL以下)
  3. 注意事項…服用時及び服用後少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の経口摂取を避ける

基本的にはビスホスホネート(BP)製剤とほぼ同じですね。

リベルサスとBP製剤の服用方法を比較すると下記です。

リベルサス BP製剤
服用時点 最初の食事又は飲水前 朝起床時
飲水量 水約120mL以下 水約180mL
飲食開始までの時間 少なくとも30分 少なくとも30分
投与後の制限 飲食+薬を避ける 水以外の飲食+薬を避ける
座位を保つ 記載なし 記載あり

リベルサスは飲水の影響を受けるので、BP製剤と異なり飲水前の服用になります。ここは注意ですね。また、薬を飲むための飲水量はリベルサスの方が少なめ(約3分の2)です。さらに服用後も水分摂取ができません

リベルサスは服用方法が煩雑!

服薬アドヒアランスの点で懸念があります。十分に理解が得られるように丁寧な説明を心がけたいですね。

ここからは、リベルサスはGLP-1注射剤にとって代わるのかを考察しました。

リベルサスが向いてる人

リベルサスは注射製剤の導入が困難な人に有用です。当たり前ですね(^_^)

注射製剤のデメリットは大きく2つです。

  1. 患者さんへの侵襲がある
  2. 針の取り外し、注射手技等の理解が必要

やはり、痛みを伴う注射は敬遠される傾向にあります。静脈注射に比べて神経損傷のリスクが低く安全な皮下注射であるとはいえ、「注射」と聞いた時点で抵抗を示す患者さんは多いですよね。

また、手技に対する理解が欠かせません。針の取り付けや注射部位、手順、廃棄の方法、注意点などそこそこ厚めの指導用パンフレットの内容をきちんと理解できないと、導入は困難です。

トルリシティやオゼンピック等の一体化モデルは導入の敷居を下げたとはいえ、それでも内服の方が簡便でわかりやすいですよね。

リザルベスは経口投与できるGLP-1製剤です。「注射は嫌!」「ややこしくて理解できない」という理由で断念していた患者さんに有用だといえます。

経口GLP1製剤の注目度が高いのは、裏を返せば注射製剤の導入が出来なかった患者さんが多いことを表しており、新規処方はもちろん切り替えも進みそうですね。

リベルサスが不向きな人

リベルサスは簡便に投与できるのがメリットです。じゃあ、注射製剤からみんな変更できるかというとそうではなく、不向きな患者さんもおられます。

大きく6つのケースです。

  1. 胃摘出手術を受けた人
  2. 服薬アドヒアランスが悪い人
  3. 経口投与できない人
  4. 嚥下機能の低下した人
  5. 経管投与の人
  6. ビスホスホネート製剤を服用している人

胃摘出術を受けた人

リベルサスは胃で吸収される性質のため、胃がんや胃潰瘍等で胃を全摘した方には投与できません。期待した効果が得られないからですね。

特定の背景を有する患者に関する注意

胃摘出術を受けた患者 他剤での治療を考慮すること。本剤は主に胃において吸収されるため有効性が減弱する可能性がある

最近では術前から薬剤師が関わる機会が増えています。胃全摘手術の場合には、リベルサス→GLP-1注射製剤への変更を提案できるようにしておきたいですね。

服薬アドヒアランスが悪い人

リベルサスは服用方法が煩雑です。先述したとおりですね。

高齢者や認知機能の低下が見られる患者さんには避けた方がよいと思います。飲み忘れのリスクはもちろん、飲水量や注意点を守れず期待した効果が得られない可能性も十分にあるからです。

例えるとリベルサスは、ビスホスホネート製剤を毎日飲み続けるようなもの。結構大変です。

最近ではdailyではなくweeklyやmonthlyのBP製剤の投与が主流になりました。なぜなら、煩雑な投与方法を毎日続けるのは、アドヒアランスの点で懸念があり、患者さんの負担も大きいからです。

となると、服薬アドヒアランスを考慮して、経口GLP-1製剤の導入を断念するケースはそれなりにありそうな気がします。

経口投与できない人

これは当然ですね。リベルサスの出番ではありません。

嚥下障害や消化管の疾患等で経口投与ができない場合には注射製剤が適応です。

嚥下機能が低下した人

リベルサスは錠剤が比較的大きめだからです。規格によらず同じサイズになります。

  • 長径 13.5mm
  • 短径 7.5mm
  • 厚さ 6mm

例えると、リクシアナOD錠60mgを少し厚めにしたイメージです。わかりにくい(^_^;)。まあまあ大きめですね。

リクシアナOD錠60mgの大きさ

  • 長径 13.4mm
  • 短径 7.0mm
  • 厚さ 約4.7m

なら、粉砕すれば良いのでは?

一般的な対応はそうですが、リベルサスは製剤の特性上、粉砕ができません。もちろん半割も無理です。

嚥下機能が低下した高齢者の方では、飲み込みが難しく注射製剤の選択が適切なケースはありそうですね。

経管投与の人

リザルベスは簡易懸濁法で投与できません。

粉砕や溶解後の投与は、吸収のメカニズムから考えて無理だからですね。

経管投与の場合には、GLP-1注射薬が適応になります。

ビスホスホネート製剤服用の人

服用タイミングが重なります。

リベルサスとBP製剤を併用するケースはどうすれば?悩みながら大きく3つの対応を考えました。正解かどうかはわかりませんが…。

①BP製剤を注射製剤に変更する

1番確実な方法ですね。ただし、「せっかくGLP-1製剤が経口投与になったのに、BP製剤が注射になるのは如何なものか」というツッコミを受けるのはやむをえません。

月1や年1回のBP注射製剤に変更できれば、患者さんの負担はやや軽減できますけど…。

②リベルサス服用→(30分)→BP製剤服用

「飲水前に服用」という縛りがあるリベルサスを先飲み、30分の間隔をあけてBP製剤を服用する方法です。ただし、リザルサスとBP製剤の相互作用は本当に大丈夫?という懸念が残ります。もちろん、併用機会を減らすために月1のBP製剤の選択がbetterです。

③BP製剤を月1に変更、服用日はリベルサスをskip

これは最終手段です。相互作用の懸念がありません。ただし、セマグルチドは半減期が長いとはいえ、月1回のskipを織り込むのはどうか、という疑問は残ります。

リベルサスとBP製剤の併用はなかなか悩ましいですね(^_^;)

まとめ

今回は「リベルサス錠が従来のGLP-1注射製剤にとって代わるのか?」について考察しました。

結論は、丁度いいくらいに棲み分けがされると思います。

患者さんの利便性を考えると、間違いなく経口投与できるリベルサスです。痛くないし、注射の手順を覚えなくてもいいのが魅力ですよね。

しかし一方で、コンプライアンスの問題があります。服用時点、飲水量、注意点等を考えると、通常の経口剤よりも扱いにくいです。もちろん、経口投与できない人も少なからずおられますよね。

だから、経口剤の選択が望ましい人もいれば、注射製剤の方が好ましい人もいるわけで、リベルサスが注射製剤にとって代わることはきっとないはずです。まあ、当然といえば当然なんですけどね……。

最後に記事を書いていく中で思ったのは、GLP-1製剤を経口投与できる技術の凄さ。医薬品開発技術の進歩を改めて感じました(^-^)

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