栄養管理、NST

エレンタールは吸収が良い成分栄養剤!特徴と臨床における位置付けを解説

今回のテーマはエレンタール配合内用剤!

国内ではじめて開発された成分栄養剤です。もともとは宇宙食として開発されたものが病態栄養に応用されたのが起源になります。知らなかったです。(°_°)

経腸栄養剤の種類はいくつかあります。その中で、どのような特徴があるのか、どういった場面で使うのか?

消化態栄養剤や半消化態栄養剤と比較しながら解説します。

エレンタールの特徴を理解するためのポイント

消化態、半消化態栄養剤との比較

経腸栄養剤は大きく3つに分類されます。

  1. 成分栄養剤
  2. 消化態栄養剤
  3. 半消化態栄養剤

代表的な製品を比較すると以下のとおりです。

製品名 エレンタール ツインライン エンシュア・リキッド
分類 成分栄養剤 消化態栄養剤 半消化態栄養剤
糖質 デキストリン デキストリン デキストリン、精製白糖
たんぱく質 アミノ酸 乳たん白加水分解物 カゼイン、大豆タンパク質
脂質 大豆油 サンフラワー油、トリカプリリン コーン油
脂質含量 0.6% 約12% 約16%
消化 不要 ほぼ不要 必要
浸透圧 高め 高め 低め

糖質はデキストリンが主原料です。デンプンを加水分解したものですね。

脂質の種類はさまざまです。エネルギーや必須脂肪酸の補給目的で配合されています。トリカプリリンはMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)で吸収されやすく代謝が早いのが特徴です。

糖質と脂質に関しては、製剤を特徴付けるだけの大きな差はありません。一方で、押さえておきたいのは以下の4点です。

  1. 窒素源の成分
  2. 脂質の含有量
  3. 消化の必要性
  4. 浸透圧

この違いに注目すれば、わかりやすいので順番に説明します。

窒素源がアミノ酸のみ!

エレンタールは窒素源がアミノ酸(必須アミノ酸を含む17種類)のみの成分栄養剤です。

経腸栄養剤は窒素源の違いで分類されます。

  • 成分栄養剤…アミノ酸のみ
  • 消化態栄養剤…アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド
  • 半消化態栄養剤…ポリペプチド、タンパク質

半消化態→消化態→成分栄養剤の順に、たんぱく質のペプチド結合が切れてバラバラになっていきます。

ツインラインは乳たんぱくの加水分解物に含まれるアミノ酸とジ・トリペプチドを、エンシュアはたんぱく質(カゼインや大豆たんぱく)そのものが窒素源です。

消化を必要としない

エレンタールは消化が不要な成分栄養剤です。遊離アミノ酸は速かに小腸上皮から吸収されます。

消化態栄養剤のツインラインもほぼ消化を必要としません。一部ペプチドからアミノ酸へ消化されたのちに吸収されるものの、小腸上皮にはジ・トリペプチドをそのまま吸収する経路があるからです。

一方で、エンシュアなど半消化態栄養剤は消化を必要とします。胃液に含まれるペプシンや膵液の成分であるトリプシンやキモトリプシン、エラスターゼなどに分解されて吸収されるからです。

消化の要否は大事な視点!

どの栄養剤を選べばいいのか?検討するときに必要です。エレンタールとツインラインは消化管の機能が低下したケースに選択します。一方で、半消化態栄養剤は、消化管の機能が正常な人に使うのが基本です。

脂肪含有量が極めて低い

エレンタールの脂肪含有量は、1袋あたり0.51g(含有率0.6%)とごくわずかです。

ここがほかの栄養剤と大きく異なる点。脂質の含有量はかなり違います。ツインラインとエンシュアの脂肪含量はほぼ同じくらいです。

脂肪含有量が少ないメリットは?

大きく2つです。

  • 消化機能が低下した患者さんに使いやすい
  • 脂質を制限すべき病態にも使える

後述します。

一方で、デメリットも!

必須脂肪酸が不足する可能性があります。例えば、α-リノール酸やリノレン酸ですね。ここは気をつけるべき点です。

長期間にわたる栄養療法では脂肪乳剤の静脈投与を考慮する必要があります。

浸透圧が高い

エレンタールは浸透圧が高めです。比較すると以下のようになります。

製品名 浸透圧
エレンタール 761mOsm/L
ツインライン 470〜510mOsm/L
エンシュア・リキッド 330mOsm/L

下痢が起こりやすい!

投与中にしばしば起こります。エレンタールは浸透圧が高いので、腸管上皮の毛細血管から水分を腸管内へ引き込む作用が強く、下痢を誘発することが多いです。

浸透圧は粒子の数に比例するので、成分栄養剤の方が高くなります。副作用発現率は以下のとおりです。

副作用発現率は28.6%(2,339件/8,170例)、主な副作用は下痢12.9%、腹部膨満感4.4%、血中AST(GOT)・ALT(GPT)・Al-P上昇3.7%、悪心2.1%、嘔吐1.6%、腹痛1.5%等であった。 (再審査終了時)

エレンタール添付文書

もちろん、消化態栄養剤、半消化態栄養剤でも下痢を認めます。承認時の副作用報告を見ると、ツインラインでは36.4%(111/365)、エンシュアでは21.2%(53/250)でした。結構高い確率で起こることがわかります。

エレンタールの下痢対策は?

以下の2つの方法があります。

  • 希釈濃度を低く設定する。
  • 注入速度を下げる(経管投与の場合)

少量から投与を開始して、消化器症状を確認しながら増量していくのが一般的です。

エレンタールを臨床で使う場面

成分栄養剤エレンタールはどのようなケースで使用されるのか?大きく2つあります。

  1. 栄養剤として使用する
  2. 疾患の治療に使用する

順番に説明します。

栄養剤として使用する

エレンタールは吸収不全や腸管安静が必要な病態の栄養療法に使用します。たとえば下記のケースです。

  • 短腸症候群
  • 重症急性膵炎
  • 消化機能低下例(絶食期間が長い)
  • 周術期

短腸症候群には吸収が良い成分栄養剤を!

まずは病態を簡単に確認します。

短腸症候群は、小腸の切除により吸収不良をきたした病態です。

イレウスや腸管を栄養する血管の血栓症、クローン病などが原因で手術を行い、小腸の切除範囲が広い場合に認めます。

吸収面積の低下により、水分や電解質、栄養素、ビタミンなどが上手く吸収できない状態です。

短腸症候群の栄養管理は、3つの病期に分けて考えます。

(術直後期)手術後はTPN管理が基本です。

(回復適応期)水様性下痢が改善すれば経腸栄養剤を開始します。吸収が良いエレンタールやツインラインを選択するのが一般的です。忍容性があれば半消化態栄養剤を選択することもできます。

(安定期)になれば、退院に向けてTPNを離脱し、経腸栄養へ移行するのが基本です。しかし、小腸の残存が少なく吸収障害が強い場合にはTPNの離脱が難しく、在宅静脈栄養法(Home Parenteral Nutrition:HPN)を選択することもあります。

エレンタールは短腸症候群など吸収不全の病態で、まず選択される栄養剤です(ツインラインもOK)。

重症急性膵炎では、脂肪が少ない成分栄養剤を!

重症膵炎急性期は、TPN管理が基本です。膵臓の安静を保つために高カロリー輸液で十分な栄養管理を行い、全身状態を見ながら経腸栄養剤の投与を開始します。

栄養剤の選択は?
吸収が良く脂肪含有量の少ない成分栄養剤を選びます。膵臓への刺激を最小限にするためです。医薬品であればエレンタールが有力な選択肢になります。

重症膵炎の急性期では、膵臓の負担を最小化するための栄養剤を選択するのがポイントです。

絶食期間が長い場合は、成分栄養剤の選択を考慮!

経腸栄養剤を開始する時点で、絶食期間が長い場合には、吸収の良い栄養剤を選択します。小腸絨毛が萎縮し、十分に栄養を吸収できない状態だからです。

栄養剤の選択は?
目安として絶食期間が2週間以上の場合には、成分栄養剤や消化態栄養剤が選択されます。医薬品であれば、エレンタールやツインラインです。

少量からはじめます。経管投与の場合には、少量をゆっくり投与し、徐々に投与量、速度をアップしていく感じです。

消化機能に合わせた栄養剤の選択を!
消化管の機能が回復すれば、栄養剤の形態を順次変えていきます。たとえば、成分栄養剤→消化態栄養剤→半消化態栄養剤→経口摂取(3分粥→5分粥→全粥→普通食)などのようにです。

これは大事な視点!栄養剤の選択は形態を考えることから始まります。カロリーや栄養素の組成はあとからで大丈夫。まずは患者さんの消化機能を評価です。

周術期に使用する場合も!

最近では手術後の早期経口・経腸栄養が盛んです。胃がんや大腸がんなどの手術後、できるだけ早期から経腸栄養を始めることが推奨されています。

術後はできるだけ早期から食事あるいは経腸栄養を開始する。ただし、ここの状態や術式を考慮する

静脈経腸栄養ガイドライン第3版

栄養剤の選択は?
基本的には標準組成の経腸栄養剤が適応になります。医薬品であれば、エンシュア・リキッドやラコールなどです。

術後の合併症対策では
成分栄養剤が選択されるケースがあります。例えば、縫合不全で栄養チューブを十二指腸や空腸に留置した場合には、吸収が良く、消化液分泌を抑制できるエレンタールが選択肢です。

また、膵液ろうを認めた場合には、膵臓への負担が少ないエレンタールの選択が適しています。(※いずれも経腸栄養が可能な場合です)

空腸ろうの場合には
成分栄養剤や消化態栄養剤が使用されることが多いです。術後の経口摂取が難しいケースでは、あらかじめ空腸に栄養チューブを留置して、早期から経腸栄養を始めることがあります。選択されるの吸収に優れたエレンタールやツインラインです。

疾患の治療に使用する

エレンタールはクローン病治療に用います。栄養補給はもちろん、病状の改善効果も期待できるからです。栄養療法は、通常の薬物療法(5-ASA、ステロイド等)に併用または単独で行います。

クローン病は炎症性腸疾患(IBD)の一つです。他に有名なのは潰瘍性大腸炎ですね。原因ははっきりしませんが、口から肛門まで全消化管に炎症性のびらんや潰瘍ができ、下痢や腹痛、血便などの症状を認めます。

栄養療法は、大きく3つの場面が想定されます。

  • 活動期(軽症から中等症、中等症から重症)
  • 活動期(重症)
  • 寛解維持期

順番に見ていきます。

活動期(軽症から中等症、中等症から重症)

クローン病の寛解導入目的で、エレンタールとツインラインが選択されます。

栄養剤の選択のポイントは?
抗原性のないアミノ酸やペプチドを窒素源とし、脂肪含有量が少ない栄養剤が望ましいとされています。腸粘膜における免疫応答を抑制したり、下痢、腹痛など病状の悪化を防ぐためです。医薬品であれば、第一選択はエレンタールですね。

成分栄養剤や消化態栄養剤が使用できない時には、半消化態栄養剤で代用することもできます。

経腸栄養療法を行う場合は、成分栄養剤(エレンタール)あるいは消化態栄養剤(ツインライン等)を第一選択として用いる。但し、受容性が低い場合には半消化態栄養剤(ラコール等)を用いてもよい。

クローン病治療指針(2019年3月改訂)

活動期(重症)

症状が重篤の場合には、絶食によるTPN管理が基本です。

たとえば、腸管狭窄が強い場合や、消化管に瘻孔を認める場合などは、腸管安静のもと高カロリー輸液による栄養管理が実施されます。十分なエネルギーと必須脂肪酸の補給目的に脂肪乳剤との併用が必須です。

病状が安定した時点で、経腸栄養(その後経口摂取)へ移行します。

寛解維持期

在宅経腸栄養療法(home enteral nutrition:HEN)としてエレンタールやツインラインを選択します。

基本的には食事と併用する形です。必要カロリーの半分程度を成分栄養剤や消化態栄養剤で補います(場合によっては半消化態栄養剤も可)。

クローン病の患者さんは、吸収障害があり、頻回の下痢による栄養素の喪失が起こりやすい状態です。エレンタールを使用する場合には、必須脂肪酸の欠乏や脂溶性ビタミン、セレンなど微量元素の不足に注意しなければなりません。

在宅栄養療法では、1日摂取カロリーの半分量以上に相当する成分栄養剤や消化態栄養剤の投与も寛解維持に有用であるが、栄養剤の投与や選択にあたっては患者個々のQOLやADL・受容性などを考慮すべきであり、受容性が低い場合には半消化態栄養剤を用いてもよい

クローン病治療指針(2019年3月改訂)

エレンタールは在宅成分栄養経管栄養法指導管理料の対象薬剤!

エレンタールは在宅成分栄養経管栄養法指導管理料の対象になります。

2500点です。在宅で、成分栄養経管栄養法を行なっている患者さん(入院患者は除く)に必要な指導管理を行なった場合に算定できます。

在宅成分栄養経管栄養法とは、諸種の原因によって経口摂取ができない患者又は経口摂取が著しく困難な患者について、在宅での療養を行っている患者自らが実施する栄養法をいう

対象疾患は?
原因疾患に関係ありません。短腸症候群やクローン病など成分栄養経管栄養法が必要と医師が認めた場合です。

栄養剤の要件は?
アミノ酸、ジペプチド、トリペプチドを主なたんぱく質源とし、未消化態たんぱくを含まないものです。

つまり、エンシュアやラコールなどの半消化態栄養剤は算定できません。成分栄養剤のエレンタールや消化態栄養剤のツインラインが対象になります。

注入ポンプ加算1250点
経腸栄養ポンプを使用した場合に算定できます。腸ろうからの投与や小児でポンプを使用するケースです。在宅成分栄養経管栄養法指導の加算なので、使用する栄養剤はエレンタールとツインラインのみになります。

在宅経管栄養法用栄養管セット加算2000点
栄養剤の注入に必要な物品に対して算定できます。栄養バッグや栄養管セット、接続チューブなどです。

在宅に移行する際には、栄養剤を医薬品に変更!
入院中に濃厚流動食(ペプタメンやペプチーノなど)を使用していた場合には、在宅では栄養剤やポンプ、必要物品などが自己負担です。

在宅経腸栄養の制度をうまく利用することで患者さんの費用負担を軽減できます。

まとめ

ポイントは以下のとおりです。

  1. エレンタールはアミノ酸のみを窒素源とし、脂肪含有量が少ない成分栄養剤。
  2. 臨床で使用する場面は大きく2つ(栄養剤として、または治療薬として)
  3. 栄養剤として使用(短腸症候群、重症膵炎、消化管機能低下例、周術期など)
  4. 治療薬として使用する(クローン病の活動期、寛解維持期)
  5. エレンタールは在宅成分栄養経管栄養法指導管理料の対象薬剤。注入ポンプ加算、栄養管セット加算も算定できる

今回はエレンタール配合内用剤の特徴について、消化態栄養剤、半消化態栄養剤と比較しながら解説しました。

書いていて思ったのは、「消化管の機能に合わせた栄養剤の選択」が大事である点。薬の知識だけでなく、病態や栄養の知識も不可欠だと感じました。

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