脂肪乳剤イントラリポスはもっと使用すべき!理由を熱く語ります!

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今回のテーマは脂肪乳剤(イントラリポス)!

大豆油を主成分とし、卵黄レシチンで乳化した製剤です。

静脈栄養において脂肪乳剤の投与はガイドラインでバッチリ推奨されています。それなのにどうして……と思うのが現状で、悲しいくらい無脂肪の栄養療法を見かけます…(>_<)

脂肪乳剤をもっと投与すべき!!

…という願いを込めて。

「どうして脂肪乳剤が投与されないことが多いのか?」

無脂肪の栄養療法が選択される理由を考察しながら、必要性について解説します。

目次

無脂肪の栄養療法が選択される理由

おそらく、脂肪乳剤の必要性に対する誤解があるからだと思います。啓発活動を行う中で強く感じました。

大きく2つです。

  1. カロリーが足りていれば必要ない?!と考えがち
  2. 短期間の投与であれば不要?!と思いがち

個人的な見解なので、参考程度にして頂けたらと思います。

カロリーが足りていれば必要ない?!と考えがち

1日に必要なエネルギー量が充足していれば、脂肪乳剤は必要ない

と考える傾向がどうもあるように思います。特に、高カロリー輸液(Total Parenteral Nutrition:TPN)で栄養管理をしている場合の処方提案に対して、カロリー充足を理由に断られることは少なくないからです。

医師

カロリーはそれなりに足りているから、投与しなくても良いでしょ。

たしかに、そうなんです。「必要カロリーを満たしているのに、どうして脂肪乳剤の投与が必要なのか?」と思う気持ち、わからないでもありません。脂肪乳剤は効率的にカロリーを補給できるのが利点です。1gあたりの熱量は9kcalで、糖質やアミノ酸と比べると2.25倍の熱量を供給できます。

各栄養素の熱量
  • 糖質…4kcal/g
  • たんぱく質…4kcal/g
  • 脂質…9kcal/g

「脂肪乳剤の投与目的は?」

と聞かれたら、誰もが「効率的なエネルギー源」と答えるでしょう。まっ先に思い浮かびますよね。だから、カロリーアップのために使うのは間違っていません。

でも、「カロリーが充足していたら脂肪乳剤が不要か?」というとそうともいえません。なぜなら、脂肪乳剤の処方目的はそれだけではないからです。

短期間の投与なら不要?!と思いがち

静脈栄養の期間が短いときは脂肪乳剤は投与しなくても大丈夫

という誤解です。たしかに、必須脂肪酸の補給を処方目的とするなら、その通りかも知れません。無脂肪のTPNの場合、欠乏症は2〜3週間で起こるといわれているからです。脂肪乳剤の投与目的の一つに必須脂肪酸の補給があります。みんな知ってますよね。生体で作られないリノール酸やα-リノレン酸を補給するために投与します。

ガイドラインでも推奨!

Ⅲ.静脈栄養のリスクマネジメント
必須脂肪酸欠乏症を予防するためにも脂肪乳剤を投与する (AⅡ)

静脈経腸栄養ガイドライン第3版

であれば、欠乏症が起こらないであろうと思われる期間ならば、脂肪乳剤を投与しなくても良いとも考えられます。

医師

TPN管理が続くようなら、その時に(脂肪乳剤の投与について)考えるわ。

処方提案に対して上記のように言われるわけです。

でも、「必須脂肪酸の欠乏症リスクが低いから」といっても、脂肪乳剤が不要とまでは言えません。脂肪乳剤の投与目的はこれだけじゃないからです。

つまり、

①カロリーUPと②必須脂肪酸の補給

だけが脂肪乳剤の投与目的ではありません。

ここからは、脂肪乳剤を投与するべき理由について語ります。

脂肪乳剤イントラリポスを投与すべき理由

脂肪乳剤を投与する目的は以下のとおりです。

  • エネルギーの補給
  • 必須脂肪酸の補給
  • 糖質過剰に伴う代謝合併症の予防
  • 細胞膜を構成する成分の供給
  • 生理活性物質(プロスタグランジン、ロイコトリエン等)の供給

参考文献)栄養ー評価と治療vol.26 no.4

この中で意外と見落としやすいのが下記2つです。

  1. 生体の機能維持
  2. 代謝性合併症の予防

生体の機能維持に欠かせない!

有名どころはエネルギーや必須脂肪酸の補給ですが、それだけではなくて、生理機能を維持するためにも必要です。脂肪酸は細胞膜の構成成分であるし、細胞の機能に必要な生理活性物質の供給源になります。

脂肪乳剤細胞が生きていくために必要!』

よく考えてみれば、当たり前のことなのに、意外と忘れがちです。

実際に無脂肪のTPNに脂肪乳剤を加えると、カサカサだった患者さんの皮膚に潤いが戻ったという声はNST活動の中でよく聞きます。

無脂肪のTPNは危険!

無脂肪TPN代謝性合併症を引き起こす可能性があるからです

例えば脂肪肝による肝機能障害。特に、脂肪乳剤が投与されていないTPN療法中に問題になります。

無脂肪TPNで肝障害が起こる機序
STEP
(無脂肪TPNによる)過剰な糖質の投与
STEP
高インスリン血症
STEP
代償的に肝臓で脂肪の合成が高まる
STEP
脂肪肝になり、肝機能が障害される

臨床においてよく見かける合併症で、肝機能の指標であるASTやALT、ALPなどの数値が上昇します。

場合によっては

胆石症を併発したり、非アルコール性肝炎や肝硬変のリスク因子になるので注意が必要です。

参考文献)TPNに伴う肝障害の病因・病態 医学のあゆみ Vol.218 NO.5 2006

予防は脂肪乳剤の投与!

ガイドラインでも脂肪乳剤イントラリポスの投与が推奨されています。

Ⅱ 中心静脈栄養輸液製剤
・静脈栄養施行時には、肝機能障害ならびに脂肪肝発生予防のために脂肪乳剤投与は有用である

静脈経腸栄養ガイドライン第3版

意外なことに

予防できることを知らない人が多い印象です。エネルギー源や必須脂肪酸の補給に隠れて目立たないけど、忘れてはいけない脂肪乳剤の投与目的の一つになります。

安全なTPN療法が実施できるように、イントラリポスの併用を進めていきたいですね。

脂肪乳剤使用時の注意点

一方で、脂肪乳剤の投与を躊躇するケースもあります。糖質やアミノ酸の投与に比べて、注意すべき副作用が多いからです。

注意すべき副作用は?

イントラリポスの禁忌項目は以下のとおりです。

  • 血栓症の患者
  • 重篤な肝障害のある患者
  • 重篤な血液凝固障害のある患者
  • 高脂血症の患者
  • ケトーシスを伴った糖尿病の患者

イントラリポス輸液 電子添文

血栓症のある人は禁忌!

組織トロンボプラスチンの活性化により凝固能を亢進させるからです。重篤な凝固異常が見られる播種性血管内凝固症候群(DIC)では使用できません。

高脂血症の患者さんも禁忌!

高トリグリセリド血症を起こす可能性があるからです。特に脂肪乳剤の投与量が多く、投与速度が早い場合で問題になります。脂肪粒子がHDLのアポリポ蛋白質を介してリパーゼで分解される速度を超え、血液中に脂肪粒子が滞留します。

感染症の患者さんにも使いにくい!

敗血症の人は慎重投与です。血液に滞留した人工の脂肪粒子が肝臓や脾臓の網内系で貧食され、免疫機能が低下すると考えられています。

脂肪乳剤はゆっくり投与(0.1g/kg/h以下)すれば、脂肪粒子がスムーズに代謝されるので、リスクを低減できますが、重症の高脂血症や感染症の患者さんでは投与を避けることが多いです。

重症患者さんは投与を控えた方が良い?

また、ICUなどで集中治療を要する重症患者さんの場合には、脂肪乳剤投与の要否、可否を慎重に検討します。

ガイドラインの記載は以下のとおりです

・経腸栄養が施行できていない場合、静脈栄養が10日間以内であれば、大豆由来の脂肪乳剤の投与は控えることを弱く推奨する。
・経腸栄養が施行できていない場合、静脈栄養が10日間以上であれば、大豆由来の脂肪乳剤を投与するべきであるが、至適な投与量に関する根拠は不十分である。

日本版重症患者の栄養療法ガイドライン

重症患者さんでは積極的に推奨されていない!

10日以内の静脈栄養を行った重症の外傷患者で、大豆由来の脂肪乳剤を投与した群の方がしなかった群よりも有意に肺炎と敗血症の発症頻度が多かったことが報告されているからです。( J Trauma 1997;43:52-8.)

個々のケースで脂肪乳剤投与の要否、可否を検討することになります。必須脂肪酸の補給や代謝合併症の予防のためにできるだけ投与するべきだと考えられますが、重症の患者さんでは使いどころが難しいです。

脂肪乳剤が使えない時はどうすれば?

経腸栄養へ移行して脂肪を摂取する

これしか方法がありません

できるだけ早期に経口摂取や経腸栄養へ移行して脂質を摂取する必要があります。といってもなかなか難しいケースが多いですが…。

参考までに

海外ではより安全に使用できる脂肪乳剤が使用されています。大豆油と魚油、オリーブ油、MCTなどを組み合わせた製剤があるようです。一般的にn-6系脂肪酸を多く含む大豆油は炎症を起こしやすく、一方で魚油に多く含まれるn-3系脂肪酸は炎症を鎮める作用が期待できます。より安全性が高い製剤が国内でも使える日が来るのが待ち遠しいです…。

栄養バランスを考えることが大事!

静脈栄養のメニューを検討する時には栄養バランスを考えることが大事です。

静脈栄養も患者さんにとっては食事!

食事は栄養バランスが大事なのは周知の事実です。静脈栄養だってそうで、患者さんにとっては食事なわけですよね。

だから、糖質やアミノ酸だけの偏ったメニューではなくて、三大栄養素がバランスよく配合された静脈栄養メニューの設計が欠かせません。

1日に必要なカロリーや水分、アミノ酸量の検討に加えて、栄養バランスも合わせて考える習慣を身につけることが大切だと思います。

脂肪乳剤が欠かせない!!

静脈栄養では本当にそうで、カロリーが足りている、または必須脂肪酸欠乏症のリスクが低いケースであっても、脂肪乳剤が不要であるとはいえません。

生体機能の維持、代謝合併症の予防というのも忘れてはいけない大事な処方目的です。

もちろん、みんなに使えるわけじゃありません。注意すべき副作用や疾患を懸念して投与を見送るケースもあるけど、まずは脂肪乳剤を使用できるかどうか考えることが大切です。

投与の要否、可否を十分に検討せずに、脂肪乳剤を投与しない選択は間違っていると思います。

まとめ

本記事のポイント

  • 無脂肪の栄養療法が選択される理由
    脂肪乳剤の必要性に対する2つの誤解がある(私見)
    ①エネルギー源とだけ考えると、カロリー充足時は脂肪乳剤が不要になるし、②必須脂肪酸の補給がメインと捉えるなら、短期間の栄養療法では必要性が低くなるから
  • 脂肪乳剤の投与目的…生体の機能維持や肝機能障害の予防も忘れずに
  • 禁忌や疾患などの理由で、すべての症例で使用できるわけではないですが、投与の要否、可否を個々で検討することが大切

静脈栄養療法では、糖質とたんぱく質、脂質の栄養バランスがとれた処方設計を!

今回はどうして脂肪乳剤の普及が進まないのか?考察を加えながら、脂肪乳剤の必要性について解説しました。『もっと脂肪乳剤イントラリポスを使用すべき!』という熱い気持ちを共有していただけたら嬉しいです♪

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