ナルティークOD錠の特徴、CGRP関連抗体薬と比較しながら解説!

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今回のテーマはナルティークOD錠!一般名はリメゲパント、国内4番手のCGRP関連薬であり、初の経口薬です。注射型のCGRP関連抗体薬(エムガルティ、アイモビーグ、アジョビ)との違いは何か?比較を加えながら、ナルティークの特徴をまとめたので解説します。

目次

ナルティークとCGRP関連抗体薬の比較表

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商品名ナルティークエムガルティアイモビーグアジョビ
一般名リメゲパントガルカネズマブエレヌマブフレマネズマブ
販売2021年4月2021年8月2021年8月
投与経路経口皮下皮下皮下
規格OD錠75mg120mgシリンジ
120mgオートインジェクター
70mgペン225mgシリンジ
225mgオートインジェクター
作用機序CGRP受容体拮抗薬ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体ヒトCGRP受容体モノクローナル抗体ヒト化CGRP
モノクローナル抗体
適応①片頭痛発作の急性期治療及び②発症抑制②片頭痛発作の発症抑制②片頭痛発作の発症抑制②片頭痛発作の発症抑制
投与方法①1回75mg・片頭痛発作時
②1回75mgを隔日
②初回240mg、以降は120mgを1ヵ月に1回②70mgを4週に1回②225mgを4週に1回
又は675mgを12週に1回
肝機能障害患者注意
腎機能障害患者注意
相互作用あり
自己注射
薬価¥42,451/120mgシリンジ
¥42,638 /120mgオートインジェクター
¥38,980/70mgペン¥39,090/225mgシリンジ
¥39,064/225mgオートインジェクター
ナルティークOD、エムガルティ、アイモビーグ、アジョビ電子添文等より作成

ナルティークの剤型

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商品名ナルティークエムガルティアイモビーグアジョビ
一般名リメゲパントガルカネズマブエレヌマブフレマネズマブ
剤型内服薬注射薬注射薬注射薬
投与経路経口皮下皮下皮下
規格OD錠75mg120mgシリンジ
120mgオートインジェクター
70mgペン225mgシリンジ
225mgオートインジェクター
ナルティークOD、エムガルティ、アイモビーグ、アジョビ電子添文等より作成

ナルティークは経口薬です。CGRP関連抗体薬のように注射に伴う侵襲がなく、服薬の簡便さが最大のメリットです。また、口腔内崩壊錠(OD)であり、いつでも内服できます。

ナルティークの作用機序

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商品名ナルティークエムガルティアイモビーグアジョビ
一般名リメゲパントガルカネズマブエレヌマブフレマネズマブ
薬効分類CGRP
受容体拮抗薬
ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体ヒトCGRP受容体モノクローナル抗体ヒト化CGRP
モノクローナル抗体
作用点CGRP受容体CGRPCGRP受容体CGRP
ナルティークOD、エムガルティ、アイモビーグ、アジョビ電子添文等より作成
CGRPとは?

カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)のこと

片頭痛の発症に関わる因子です。

片頭痛の発症機序

以下のように、神経終末からの過剰放出により、①血管拡張作用と②脳への刺激伝達(痛み、吐き気)を引き起こします(三叉神経血管説)

STEP
(何らかの要因で神経節から) CGRP、サブスタンスPが放出
STEP
血管拡張、血管透過性亢進、炎症…①
STEP
刺激が脳に伝達し、疼痛、悪心嘔吐などを惹起
抗体のタイプについて

抗体製剤は以下の4種類です。エムガルティとアジョビはヒト化抗体であり、マウスの抗体組成を5〜10%含むのに対して、アイモビーグはヒト化抗体、完全にヒトの抗体組成からなります。

種類組成:マウスの割合組成:ヒトの割合
マウス抗体100%
キメラ抗体30%70%
ヒト化抗体5〜10%90〜95%
ヒト抗体100%

これだけは知っておきたいバイオ医薬品 くすりの適正使用協議会

ナルティークの作用機序

ナルティークOD インタビューフォーム

ナルティークはCGRP受容体の拮抗薬です。作用点はアイモビーグと同じですね。血管拡張抑制、炎症カスケードの抑制、疼痛の伝達抑制によって、片頭痛の予防、治療効果を示します。CGRP関連抗体薬はいずれもモノクローナル抗体です。抗体製剤の種類と作用点の違いは押さえておきたいですね。

ナルティークの適応

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商品名ナルティークエムガルティアイモビーグアジョビ
一般名リメゲパントガルカネズマブエレヌマブフレマネズマブ
片頭痛の予防
片頭痛の治療
ナルティークOD、エムガルティ、アイモビーグ、アジョビ電子添文等より作成

頭痛の診療ガイドライン2021によると、
片頭痛の急性期治療は以下の選択基準が示されています。
①軽度から中等度の頭痛
・NSAIDs
②中等度〜重度または軽度〜中等度でNSAIDs効果不十分例
・トリプタン製剤
③それでも効果が不十分な場合
・NSAIDsとトリプタンの併用を考慮

ナルティークの位置付けは?

・臨床試験では中等度〜重度の片頭痛に対して有効性と安全性が確認されていることから、同重症度の方に対する初回投与または既存薬剤の代替薬(トリプタンやNSAIDs等で効果不十分、副作用や禁忌等で使用できない時等)として選択されると考えられます。

ナルティークの投与方法

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商品名ナルティークエムガルティアイモビーグアジョビ
一般名リメゲパントガルカネズマブエレヌマブフレマネズマブ
投与経路経口皮下皮下皮下
治療1回75mg
片頭痛発作時
予防1回75mg
隔日
1回120mg
1ヶ月ごと
(初回240mg)
1回70mg
4週ごと
1回225mg
4週ごと
1回675mg
12週ごと
備考1日75mgまでローディングあり
自己注射可
自己注射可2パターンあり
自己注射可
ナルティークOD、エムガルティ、アイモビーグ、アジョビ電子添文等より作成

ナルティークは片頭痛発作に対して1回75mg・1日1回服用します従来のトリプタン系製剤のように追加投与の設定がない点は押さえておきたいですね。以下の用量反応探索試験で主要評価項目、投与2時間後における頭痛消失の患者割合は150mg群で上回ることが示唆されたものの、75mg、150mg、300mg群の間で、明確な差異が認められず、暴露量が最小限にすべく、75mg群が選択された経緯があります。75mgを超える量で効果が増強するわけではないという理解ですね。

ナルティークOD錠 審議結果報告書

ナルティークは片頭痛の発症抑制に「1回75mg・2日に1回」服用します。なぜなのか?というと、効果が48時間続くことが示されているからです。臨床試験において、48時間後までの持続的な頭痛消失を認めた患者割合はプラセボに比べて高い傾向が示されています。

ナルティークOD錠 審議結果報告書

ナルティークは「治療」と「予防」の適応を併用できるのか?この点、特に制限はないとされています。審議結果報告書によると以下、治療と予防を併用した場合の使用経験があり、症例数は限定的であるものの、有効性・安全性が示唆されているからです。

  1.  片頭痛発作の発症抑制を目的として隔日投与中に、規定投与以外の日に片頭痛発作が発現した患者に対して本薬を頓服する
  2. 急性期治療で効果不十分のために片頭痛発作の発症抑制が必要となった患者において隔日投与する

ナルティークはCGRP関連抗体を投与中に急性期治療で使用できるのか?この点も、使用経験があり、特に問題ないとされています(審議結果報告書)

ナルティークOD錠75mg 審議結果報告書

ナルティークは治療と予防で投与方法が異なります。治療では1日75mgの制限があり、追加投与できません。一方で予防は隔日投与であり、服薬アドヒアランスがやや気になります。CGRP関連抗体薬の方が適したケースがありそうな印象を持ちました。

ナルティーク、腎機能障害患者への投与

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商品名ナルティークエムガルティアイモビーグアジョビ
一般名リメゲパントガルカネズマブエレヌマブフレマネズマブ
末期腎不全
eGFR 15mL/min/1.73m2未満
血漿中濃度上昇に伴う副作用
投与避けることが望ましい
重度腎機能障害
30mL/min/1.73m2未満
中等度腎機能障害
eGFR 30~59mL/min/1.73m2
血漿中濃度上昇に伴う副作用
尿中排泄率約24%
(うち未変化体51%)
ナルティークOD、エムガルティ、アイモビーグ、アジョビ電子添文等より作成

ナルティークは、腎機能障害のある方では正常な人に比べて、非結合型のAUCが約1.8倍(中等度)から2.6倍(重度)に上昇します。

ナルティークの排泄は腎の関与が小さいものの、腎機能のチェックが必要になります。慢性腎臓病の方では血中濃度上昇に伴う副作用のリスクが高まるからです。eGFR15mL/min/1.73㎡未満の方は有効性と安全性が確認されておらず、投与は推奨されておりません。

ナルティーク、肝機能障害患者への投与

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商品名ナルティークエムガルティアイモビーグアジョビ
一般名リメゲパントガルカネズマブエレヌマブフレマネズマブ
重度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類C)血漿中濃度上昇に伴う副作用リスク
投与避けることが望ましい
中等度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類B)血漿中濃度上昇に伴う副作用リスク
ナルティークOD、エムガルティ、アイモビーグ、アジョビ電子添文等より作成

ナルティークは肝機能障害のある患者さんでは正常な方に比べて、非結合型のAUCが約1.6倍(中等度)から3.9倍(重度)に上昇します。

ナルティークは肝代謝型(尿中:約24%、糞中:約78%)の薬剤であり、肝機能のチェックが欠かせません。血中濃度の上昇に伴う副作用発現のリスクがあるからです。CGRP関連抗体は特に記載がありません。

ナルティークの相互作用

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商品名ナルティークエムガルティアイモビーグアジョビ
代謝酵素主にCYP3A4
一部CYP2C9
IgGと同様の異化経路IgGと同様の異化経路IgGと同様の異化経路
併用禁忌
併用注意あり
ナルティークOD、エムガルティ、アイモビーグ、アジョビ電子添文等より作成

ナルティークOD錠の併用注意薬

CYP3A4阻害剤
(強い)
CYP3A4阻害剤
(中程度)
CYP3A4誘導剤
(強い)
(中程度)
P-go阻害剤
併用注意薬クラリスロマイシン、イトラコナゾール、リトナビル等ジルチアゼム、エリスロマイシン、フルコナゾール等リファンピシン、セイヨウオトギリソウ含有食品、ボセンタン、エファビレンツ、モダフィニル等シクロスポリン、ベラパミル、キニジン等
理由血中濃度上昇血中濃度上昇血中濃度低下血中濃度上昇
対応避けることが望ましい慎重に投与避けることが望ましい慎重に投与

ナルティークは併用薬のチェックが欠かせません。CYP3A4やP-gpに関する併用注意薬の設定があるからです。禁忌ではないものの、併用を避けるべき薬剤がある点は押さえておきたいですね。

まとめ

今回はナルティークの特徴について注射剤であるCGRP関連抗体薬と比較しながら解説しました。なんと言っても経口薬であり、治療と予防に使えるのが最大の強みですね。一方で、適正使用の観点から、投与の要否・可否をきちんと評価して使うべき薬です。ここは薬剤師の介入が大切だと思います。ナルティークの登場により、CGRP関連抗体薬や従来の片頭痛薬との使い分けはどのようになるのか注目していきたいです!

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