鎮痛薬

【片頭痛予防薬】アイモビーグとアジョビの特徴、共通点と相違点から解説!

エムガルティに続き、
アイモビーグとアジョビが発売されました!

CGRPをターゲットにした片頭痛の予防薬です。

アイモビーグとアジョビの特徴は何か?

勉強がてら調べたので共有したいと思います。共通点と相違点から解説しますね。

共通点

共通点は大きく4つです。

  1. CGRP抗体薬
  2. 片頭痛発作の予防薬
  3. 臨床の位置付け
  4. 薬価

順番に見ていきましょう。

CGRP抗体薬

まず一つ目の共通点。アイモビーグとアジョビはいずれもCGRP抗体薬になります。

国内で使用できる薬剤は以下の3種類です。

CGRP抗体薬
  1. エムガルティ(一般名ガルカネズマブ)…2021年4月26日発売
  2. アイモビーグ(一般名エレヌマブ)…2021年8月12日発売
  3. アジョビ(一般名フレマネズマブ)…2021年8月30日発売
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CGRPはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide)のことで、片頭痛の発症に関わる因子です。以下のように、神経終末からの過剰放出により、①血管拡張作用と②脳への刺激伝達(痛み、吐き気)を引き起こします。

片頭痛の発症機序

  • STEP1
    (何らかの要因で神経節から) CGRP、サブスタンスPが放出
  • STEP2
    ①血管拡張、血管透過性亢進、炎症
  • STEP3
    ②刺激が脳に伝達し、疼痛、悪心嘔吐などを惹起

アイモビーグとアジョビは片頭痛の発症に関わるCGRPをターゲットにした抗体製剤です。

片頭痛の予防薬

次に2つ目。アイモビーグとアジョビはどちらも片頭痛を予防する薬です。片頭痛の薬物療法は急性期治療と予防療法の2種類に分かれます。

急性期治療
予防療法
  • トリプタン製剤
  • NSAIDs
  • アセトアミノフェン
  • CGRP抗体薬
  • β遮断薬
  • Ca拮抗薬
  • 抗てんかん薬
  • 抗うつ薬など

片頭痛の薬物療法は、まず治療薬(対症療法薬)を用います。トリプタン製剤やNSAIDs、アセトアミノフェンなどですね。それでも効果不十分の場合に、予防薬を選択する形です。

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片頭痛予防薬はどのタイミングで使うのか?

ガイドラインによると、下記です。

  • 片頭痛発作が月に2回以上、6日以上ある場合
  • 急性期治療だけでは日常生活に支障がある
  • 急性期治療薬が使えない
  • 永続的な神経障害をきたす特殊な片頭痛など

参考文献)慢性頭痛の診療ガイドライン2013

予防薬の処方目的は?

大きく3つあります。

  1. 発作の回数や持続時間を減らし程度を軽くする
  2. 発作時の頓服薬の効果を高める
  3. 発作による日常生活への支障を軽減する

参考文献)慢性頭痛の診療ガイドライン2013

臨床の位置付け

では、アイモビーグとアジョビの位置付けは?

現時点ではかなり限定的です。最適使用推進ガイドラインによると適応患者は以下の4つの条件を満たすことが求められています。CGRP抗体薬は新しい機序の薬剤であり、既存の薬剤に比べて有効性や安全性に関する情報が十分とはいえないからです。また、ハイコストである点も理由と考えられます。

予防薬の中でも、第一選択ではないのですね。
投与対象の患者
  1. 国際頭痛分類(ICHD第3版)を参考に十分な診療を実施し、前兆のある又は前兆のない片頭痛の発作が月に複数回以上発現している、又は慢性片頭痛であることが確認されている。
  2. 本剤の投与開始前3カ月以上において、1カ月あたりの片頭痛日数が平均4日以上である。
  3. 睡眠、食生活の指導、適正体重の維持、ストレスマネジメント等の非薬物療法及び片頭痛発作の急性期治療等を既に実施している患者であり、それらの治療を適切に行っても日常生活に支障をきたしている。
  4. 本邦で既承認の片頭痛発作の発症抑制薬(プロプラノロール塩酸塩 、バルプロ酸ナトリウム、 ロメリジン塩酸塩等)のいずれかが 、下記1~3のうちの1つ以上の理由によって使用又は継続できない。
    1)効果が十分に得られない
    2)忍容性が低い
    3)禁忌、又は副作用等の観点から安全性への強い懸念がある

エレヌマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン (片頭痛発作の発症抑制)についてフレマネズマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン (片頭痛発作の発症抑制)について

薬価

続いて、4つ目の共通点。アイモビーグとアジョビはどちらも薬価が高いです。1ヶ月あたり、3割負担で13,000円ほどかかります。エムガルティも含め1ヶ月(1本)あたりの薬価を比較すると以下のとおりです。

CGRP抗体薬の薬価
  • アイモビーグ…¥41,356/70mgペン
  • アジョビ…¥41,356/225mgシリンジ
  • エムガルティ…¥44,940/120mgシリンジ
  • エムガルティ…¥45,165/120mgオートインジェクター

エムガルティに比べてのメリットは2つ

  1. 3,500円ほど安い(1ヶ月あたり)
  2. 初回投与のコストが抑えられる(エムガルティは初回2本投与)

ここまでがざっと共通点です。ここからは相違点を見ていきましょう。

相違点

相違点は大きく5つです。

  1. 作用機序
  2. 抗体の種類
  3. 剤型
  4. 投与方法
  5. 注意すべき副作用

順番に見ていきましょう。

作用機序

アイモビーグとアジョビは同じCGRP抗体薬ですが、作用点が異なります。

アイモビーグ
アジョビ
  • CGRP受容体モノクローナル抗体
  • CGRPモノクローナル抗体

CGRPに直接くっつくか、同受容体に結合するかの違いですね。アイモビーグはCGRPの受容体に結合し、血管拡張作用や刺激の伝達を妨げます。一方で、アジョビの結合部位はCGRPそのものです。受容体への結合を阻害し、片頭痛の発症を予防します。

図で見た方がわかりやすいので、参考までに。

CGRPの働きを抑制する点は共通ですが、作用機序は異なる点は押さえておきましょう。この違いが有効性や安全性にどのような影響を与えるのか?気になりますね。

エムガルティの作用機序はアジョビと同じです。CGRPに結合します。

抗体の種類

続いて2つ目の相違点。アイモビーグとアジョビは抗体のタイプが異なります。

アイモビーグ
アジョビ
  • ヒト抗体(100%ヒト抗体由来)
  • ヒト化抗体(マウス由来の遺伝子配列を5〜10%含む)

何が違うのか?

アジョビはヒト化抗体です。標的部位に特異的に結合する領域がマウス由来の配列(5〜10%)を一部含みます。一方で、アイモビーグは完全にヒト由来、マウスの配列は含みません。

抗体製剤は4種類のタイプがある!

  • マウス抗体…100%マウス抗体由来
  • キメラ抗体…マウス約30%、ヒト約70%
  • ヒト化抗体…マウス約5〜10%、ヒト約90〜95%
  • ヒト抗体…ヒト100%

参考)これだけは知っておきたいバイオ医薬品 くすりの適正使用協議会

ヒト抗体のメリットは免疫原性が低く、抗薬物抗体と中和抗体の出現頻度を抑えられる点です。それぞれの頻度をアイモビーグとアジョビで見比べてみましょう。

アイモビーグ…本剤を4週間に1回投与された反復性片頭痛及び慢性片頭痛患者600例において、抗エレヌマブ抗体の産生が22例(3.7%)に認められた。中和抗体は認められなかった

アジョビ…臨床試験において、2,475例中57例(2.3%)に本剤に対する抗体の産生が認められ、そのうち30例(1.2%)に中和抗体の産生が認められた

各添付文書より抜粋

上記のようにどちらも抗薬物抗体が出現します。ですが、薬効を失活させる中和抗体はアイモビーグでは認められておりません(ヒト抗体である点が関係しているのかも…)

ただし、アジョビに関して中和抗体が認めれたからといって直ちに有効性が低下するわけではなく、臨床効果に与える影響は変わらないとされています。

・EM患者における4週間あたりの片頭痛日数のベースラインからの変化量や、CM患者における4週間あたりの中等度以上の頭痛日数のベースラインからの変化量は、ADA陽性/陰性や中和抗体の有無によらず同程度であった

・過敏症関連事象の発現と ADA陽性/陰性や中和抗体の有無との明らかな関連性は示されなかった

アジョビ審議結果報告書

このように、アイモビーグとアジョビは抗体のタイプが異なります。効果不十分の際には中和抗体の存在を疑って、アイモビーグへの変更もありかと思いました。

剤型

続いて3つ目の違い。アジョビとアイモビーグは剤型が異なります。

アイモビーグ
アジョビ
  • 70mgペン
  • 皮下注225mgシリンジ

製剤写真は以下のとおりです。

アイモビーグ

アジョビ

アイモビーグはペン型製剤です。自己注射が簡単に行えそうな印象ですが、現時点では在宅での自己注射は認められていません。

一方で、アジョビも「皮下注225mg オートインジェクター」が発売される見込みです。保護カバーを外して注射部位に押し当てるだけの製剤設計で、針が内蔵されています。針刺す事故も防止できるのが特徴ですが、こちらも自己注射は認められるか現時点でわかりません。

エムガルティはシリンジ製剤とオートインジェクターがあります。同様に自己注射不可です

投与方法

続いて4つ目の違い。アジョビとアイモビーグは投与方法が一部異なります。

アイモビーグ
アジョビ
  • 225mgを4週に1回
  • 675mgを12週に1回
  • 70mgを4週に1回

アジョビは12週に1回の用法用量が設定されています。ここが魅力です。患者さんのライフスタイルに合わせて、通院回数を減らせます。

ちなみに、4週に1回投与と12週に1回投与で予防効果は変わるのか?

気になりますよね。以下のように、どちらもプラセボに比べて有効性が示されています。

日本人を含む、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験です
国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(反復性片頭痛)
  • 患者:反復性片頭痛(EM)患者357例(日本人301例)
  • 介入:フレマネズマブ225mg(4週に1回)、675mg(12週に1回)
  • 比較:プラセボ
  • 主要評価項目:ベースラインから初回投与後12週間での1ヵ月(28日)あたりの片頭痛日数の平均変化量

結果は以下のように、どちらの群もプラセボに比べて有意に片頭痛日数の減少させました。もともと平均8日程度/月だったのが、概ね半分になる効果が得られるわけです。

アジョビ皮下注 インタビューフォーム

ちなみに、慢性片頭痛(CM)患者(4週間当たりの頭痛日数が15日以上かつ片頭痛日数が8日以上)を対象にした日韓CM短期試験でも①4週に1回投与と②12週に1回投与は、どちらもプラセボに比べて、有意に片頭痛日数を減少させました。

ここで、気になったのが、4週に1回の投与方法は初回ローディングがある点。以下のように、反復性片頭痛(EM)患者と異なります。

・CM…初回675mg、以降225mgを4週に1回
・EM…初回225mg、以降225mgを4週に1回

でも、承認の用量はローディング投与の記載がありません。

通常、成人にはフレマネズマブ(遺伝子組換え)として4週間に1回225mgを皮下投与する、又は12週間に1回675mgを皮下投与する。

アジョビ皮下注 添付文書

なぜなのか?理由はローディングなしでも同様の効果が得られることが、追加解析により示唆されたためです。海外と国内ともに、慢性片頭痛患者に対する4週間に1回投与時の初回負荷(675mg)は不要と判断され、CM、EMともに共通の用法用量が設定されました。

安全性

最後に5つ目。安全性の違いに注目、RMPを比較すると下記です。

アイモビーグ
アジョビ
  • 重要な特定されたリスク
    ・重篤な過敏症
    重篤な便秘 
  • 重要な潜在的リスク
    高血圧
  • 重要な不足情報
    ・妊婦における安全性
    ・心血管系事象
    ・長期投与における安全性
  • 重要な特定されたリスク
    ・重篤な過敏症反応
  • 重要な潜在的リスク
    ・該当なし
  • 重要な不足情報
    ・妊婦における安全性
    ・心血管系事象
    ・長期投与における安全性

アジョビになくてアイモビーグにあるものは赤ラインを引いた2つです。

  1. 重篤な便秘
  2. 高血圧

ポイントを押さえておきましょう。

重篤な便秘

アイモビーグは重大な副作用に重篤な過敏症反応に加えて「重篤な便秘」の記載があります。

11.1 重大な副作用
11.1.1 重篤な過敏症反応(頻度不明) 発疹、血管浮腫及びアナフィラキシーを含む重篤な過敏症反応があらわれることがある。
11.1.2 重篤な便秘(頻度不明) 重篤な合併症(腸閉塞、糞塊、腹部膨満及びイレウス等)を伴う便秘があらわれることがある。多くの症例では、本剤の初回投与後に発現している

国内臨床試験で重篤な便秘関連事象は認められませんでしたが、プラセボに比べ頻度が高く、海外の市販後に重篤な合併症を伴う便秘症の報告があるためです。

・エレヌマブ70mg…5.3%(14/265例)
・プラセボ…1.5%(4/267例)

※国内の臨床試験(20120309試験及び20170609試験)の24週間の二重盲検プラセボ対照期の併合データ

アイモビーグは便秘の副作用に対して、投与前の説明とリスク評価が欠かせません。高リスクの場合には投与後のフォローを強化する必要があります。ここはアジョビと異なる点ですね。

本剤投与後に、重篤な合併症を伴う便秘が発現する場合があることを患者に説明し、便秘が回復しない又は悪化する場合には医療機関を受診するよう患者に指導すること。特に、便秘の既往歴を有する患者及び消化管運動低下を伴う薬剤を併用している患者では発現リスクが高くなるおそれがあるため注意すること

アイモビーグ添付文書

高血圧

続いて2つ目。アイモビーグは高血圧が重要な潜在的リスクとされています。国内臨床試験において、高血圧に関する有害事象の頻度はプラセボと変わらないものの(各1例、0.4%)、海外の市販後に重篤な高血圧事象の報告があるからです。

米国の添付文書では重大な副作用に記載されています。要点は下記2つです。

  1. 副作用は高血圧の既往、同リスク因子のある方に多く認められた
  2. 発症時期は投与7日後、その多くは初回投与後に認められている

アイモビーグは使用にあたり、高血圧の既往を確認する必要があります。特に、投与初期が起こりやすい点は押さえておきたいですね。あと、投与後、血圧のモニタリングも必要だと思います。

まとめ

今回はアイモビーグとアジョビの特徴について共通点と相違点から解説しました。

基本的にはよく似ています!

同じCGRP抗体薬であり、片頭痛の予防薬として臨床の位置付けもほぼ同じです。従来薬では効果が不十分な例や副作用で使えない場合の選択肢として有用性を感じます。毎日の服薬負担が減るのも嬉しい点ですよね。

では、両者はどのように使い分けるのか?

相違点に注目すると!

アジョビはなんといっても12週に1回投与を選択できるのが魅力です。

患者さんのライフスタイルに合わせて、通院回数減らせるのはメリット!

一方で、アイモビーグの方はどうか?

100%ヒト抗体であり、CGRP受容体に働く点が売りですかね。中和抗体による薬効低下の可能性が低く、他の抗体製剤で効果が得られない時の選択肢として有用だと思います。便秘と高血圧の副作用が心配ですが…。

CGRP抗体製剤はエムガルティを含め3種類!今後の使用動向に注目ですね♪

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