今回のテーマはキーンス配合注フレックスタッチ!インスリンアナログであるインスリンイコデクとGLP-1受容体作動薬であるセマグルチドを固定比率で配合した週1回投与の注射剤です。どのような特徴があるのか?同効薬ゾルトファイやソリクアとの比較を加えながら解説します。
キーンスとゾルトファイ、ソリクアの比較表
| キーンス 配合注フレックスタッチ | ゾルトファイ 配合注フレックスタッチ | ソリクア 配合注ソロスター | |
|---|---|---|---|
| 販売開始 | 未定 | 2019年9月 | 2020年6月 |
| 一般名 | インスリン イコデク セマグルチド | インスリン デグルデク リラグルチド | インスリン グラルギン リキシセナチド |
| 規格 | 1筒 700単位/2mg (=700ドーズ) | 1筒 300単位/10.8mg (=300ドーズ) | 1筒 300単位/300μg (=300ドーズ) |
| 単位 | 1ドーズ インスリンイコデク1単位 セマグルチド0.0029mg | 1ドーズ インスリンデグルデク1単位 リラグルチド0.036mg | 1ドーズ インスリングラルギン1単位 リキシセナチド1μg |
| 適応 | インスリン療法が適応となる2型糖尿病 | インスリン療法が適応となる2型糖尿病 | インスリン療法が適応となる2型糖尿病 |
| 用法 | 1週間に1回 | 1日1回 | 1日1回朝食前 |
| 用法用量 | 初回:週40ドーズ | インスリン製剤以外・効果不十分 1日10ドーズ (個々で減量も考慮) インスリン製剤・効果不十分 1日10ドーズ (16ドーズまで増量可) | インスリン製剤以外・効果不十分 1日5ドーズ インスリン製剤・効果不十分 1日10ドーズまで グラルギン100単位/mL製剤 グラルギン以外の1日1回投与の基礎インスリン製剤:1日投与量と同単位を目安 グラルギン300単位/mL製剤 1日2回投与の基礎インスリン製剤:1日投与量よりも低用量を目安 |
| 最大投与量 | 週350ドーズ | 50ドーズ | 20ドーズ |
| 薬価 | ¥3,404/キット | ¥4,195/キット未 |
キーンスの適応
| キーンス配合注 フレックスタッチ | ゾルトファイ 配合注フレックスタッチ | ソリクア 配合注ソロスター | |
|---|---|---|---|
| 適応 | インスリン療法が適応となる2型糖尿病 | インスリン療法が適応となる2型糖尿病 | インスリン療法が適応となる2型糖尿病 |
| 効能又は効果に関する注意事項 | 食事療法、運動療法に加え、Basalインスリン製剤又は GLP-1受容体作動薬による治療で効果が不十分な場合に使用を検討 | 食事療法・運動療法に加え、糖尿病用薬による治療で効果不十分な場合に使用を検討 | 食事療法・運動療法に加え、糖尿病用薬による治療で効果不十分な場合に使用を検討 |
キーンスは1型糖尿病の方には使用できません。
インスリンのみを含有する製剤による速やかな治療が必須となるからです。Basalインスリン(トレシーバ、ランタス等)との違いですね。
禁忌
糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、1型糖尿病患者
キーンス配合注フレックスタッチ 電子添文
キーンスは経口血糖降下薬のみで効果不十分な場合には使用できません
従来の1日1回型BasalインスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤(ゾルトファイ・ソリクア)のように、経口血糖降下薬で効果不十分な2型糖尿病患者を対象に臨床試験を行っておらず、有効性と安全性が確認されていないからです。基本的にはBasalインスリン又はGLP-1受容体作動薬のいずれかで効果が不十分な場合に選択します。ここは相違点ですね。

キーンス配合注はインスリン療法が適応となる2型糖尿病に用います。1型には使用不可、対象患者が1日1回型の従来薬(ゾルトファイやソリクア)と異なる点も留意しておきたいですね。
キーンスの成分
| キーンス配合注 フレックスタッチ | ゾルトファイ 配合注フレックスタッチ | ソリクア 配合注ソロスター | |
|---|---|---|---|
| Basalインスリン | インスリン イコデク | インスリン デグルデク | インスリン グラルギン |
| GLP-1受容体作動薬 | セマグルチド | リラグルチド | リキシセナチド |
| 製剤の組み合わせ | アウィクリ(週1回)+オゼンピック(週1回) | トレシーバ(1日1回)+ビクトーザ(1日1回) | ランタス(1日1回)+リキスミア(1日1回) |
キーンス配合注のbasalインスリンはインスリンイコデクです。ご存知のとおり、週1回持効型インスリン製剤アウィクリの成分ですね。ヒトインスリンに「icosanedioic acid(C20)を含む側鎖」の付加により、アルブミンとの結合親和性が向上し、血中に長くとどまります。半減期は約164時間です。


キーンス配合注のGLP-1受容体作動薬はセマグルチドです。2型糖尿病の治療薬として注射薬と経口薬のラインナップがあります。また最近では肥満症の治療薬としてゼップバウンドも登場しています。









キーンスはインスリンアナログであるインスリンイコデクとGLP-1受容体作動薬であるセマグルチドを配合した週1回投与の注射剤です。ちょうどアウィクリとオゼンピックを組み合わせ製剤という理解ですね。
キーンスの用量
| キーンス 配合注フレックスタッチ | ゾルトファイ 配合注フレックスタッチ | ソリクア 配合注ソロスター | |
|---|---|---|---|
| 規格 | 1筒 700単位/2mg (=700ドーズ) | 1筒 300単位/10.8mg (=300ドーズ) | 1筒 300単位/300μg (=300ドーズ) |
| 単位 | 1ドーズ インスリンイコデク1単位 セマグルチド0.0029mg | 1ドーズ インスリンデグルデク1単位 リラグルチド0.036mg | 1ドーズ インスリングラルギン1単位 リキシセナチド1μg |
| 最大投与量 | 週350ドーズ | 1日50ドーズ | 1日20ドーズ |
| 用量設定の根拠 | basalインスリン ゾルトファイの1日最大量×7(50単位×7=350単位) GLP-1受容体作動薬 オゼンピックの1週あたりの最大量(1mg) | basalインスリン 10単位 GLP-1受容体作動薬 0.36mg(ビクトーザ開始用量0.3mgに近似) | basalインスリン 20単位(ランタスの実臨床における1日の投与量) GLP-1受容体作動薬 20μg(リキスミアの1日あたりの最大量) |



キーンスの最大投与量は、Basalインスリン350単位:ゾルトファイの1日量の7倍、GLP-1受容体作動薬1mg:オゼンピックMAX量をもとに設定されています。
キーンスの投与方法
| キーンス 配合注フレックスタッチ | ゾルトファイ 配合注フレックスタッチ | ソリクア 配合注ソロスター | |
|---|---|---|---|
| 用法 | 1週間に1回 | 1日1回 | 1日1回朝食前 |
| 用量 | 一律 | 個別 | 個別 |
| 初回投与量 インスリン製剤以外・効果不十分 | 週40ドーズ | 1日10ドーズ (個々で減量も考慮) | 1日5ドーズ |
| 初回投与量 インスリン製剤・効果不十分 | 週40ドーズ | 1日10ドーズ (16ドーズまで増量可) | 1日10ドーズまで グラルギン100単位/mL製剤 グラルギン以外の1日1回投与の基礎インスリン製剤:1日投与量と同単位を目安 グラルギン300単位/mL製剤 1日2回投与の基礎インスリン製剤:1日投与量よりも低用量を目安 |
| 用量調節 | 週10単位ごと | 規定なし | 規定なし |
| 最大投与量 | 週350ドーズ | 50ドーズ | 20ドーズ |
| 切り替えのタイミング | Basalインスリンから 次回投与予定時 週1回basalインスリンから 目標血糖値未満次回予定 目標血糖値以上その時点 GLP-1受容体作動薬から 次回投与予定時 | 週1回GLP-1受容体作動薬から 次回投与予定時 | 週1回GLP-1受容体作動薬から 次回投与予定時 |
| 単位設定 | 10ドーズ刻み | 1ドーズ刻み | 1ドーズ刻み |



キーンス配合注は週1回投与です。ここが最大の違いですね。また、開始量は週40単位で、1週ごとに10単位ずつ用量調節を行います。開始時点は先行薬剤の種類によって異なる点は注意ですね。
キーンス、投与忘れ時の対応
| キーンス配合注 フレックスタッチ | ゾルトファイ 配合注フレックスタッチ | ソリクア 配合注ソロスター | |
|---|---|---|---|
| 対応 | 3日後までに気づく 直ちに投与 4日後以降に気づく スキップ | 気づいたら 直ちに投与 次の投与は8時間以上あける | 電子添文に記載なし 医師に相談必要 |
| 用法及び用量に関連する注意 | 投与予定日から3日後までであれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後は、あらかじめ定めた曜日に投与すること。投与予定日から4日後以降であれば投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与すること。 | 本剤の作用持続時間等の特徴から気づいた時点で直ちに投与できるが、その次の投与は8時間以上あけてから行い、その後は通常の注射時刻に投与するよう指導すること |



キーンス配合注は投与忘れの懸念が高いといえます。週1回投与は毎日投与に比べて習慣化しにくいからです。投与開始時に、投与を忘れた時の対応をきちんと説明し、理解を求めることが重要ですね。
キーンスの臨床の位置付け
キーンスはどのような場面で有用なのか?
・「週1回投与」という特性から以下のケースに有用であると考えられます。
- メリット①注射回数を減らせる
-
- BasalインスリンとGLP-1受容体作動薬の組み合わせ療法からの切り替え
例)「ランタスやトレシーバ」+「オゼンピックやトルリシティ」キーンス - BasalインスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤からの切り替え
例)「ゾルトファイ」や「ソリクア」キーンス - Basal-Bolus療法からの切り替え
例)超速効型インスリン+Basalインスリンキーンス
キーンスはBasalインスリンによる治療を実施中の2型糖尿病患者を対象とした第III相国際共同試験において「主要評価項目:HbA1cのベースラインから52週までの変化量」についてBasal-Bolus療法(インスリングラルギン/インスリンアスパルト)に対する非劣性が示されています。副次評価項目である「52週時におけるHbA1c7%未満の達成率」は66.9%(Basal-Bolus群:56.0%)、「52週時における平均投与量」は190.5ドーズ(Basal-Bolus群:インスリン全体で507.4単位)でした。
- BasalインスリンとGLP-1受容体作動薬の組み合わせ療法からの切り替え
- メリット②そのままの注射回数で治療を強化できる
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- 週1回型のBasalインスリンからの切り替え
例)アウィクリキーンス - 週1回型のGLP-1受容体作動薬からの切り替え
例)オゼンピックやトルリシティキーンス
キーンスはBasalインスリンによる治療を実施中の2型糖尿病患者1291例を対象とした第III相国際共同試験において「主要評価項目:HbA1cのベースラインから52週までの変化量」について 週1回型のBasalインスリン(インスリンイコデク)に対する優越性が示されています。副次評価項目である「52週時におけるHbA1c7%未満の達成率」は71.7%(週1回Basalインスリン群35.5%)、「52週時における平均投与量」は170.6ドーズ(Basalインスリン群366.5単位)でした。
キーンスはGLP-1受容体作動薬による治療を実施中の2型糖尿病患者683例において「主要評価項目:HbA1cのベースラインから52週までの変化量」について 週1回型のGLP-1受容体作動薬(セマグルチド)に対する優越性が示されています。副次評価項目である「52週時におけるHbA1c7%未満の達成率」は73.5%(週1回GLP-1受容体作動薬群48.0%)でした。
- 週1回型のBasalインスリンからの切り替え



キーンスは週1回投与のBasalインスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤です。注射回数を減らせるだけでなく、投与回数を増やさずに治療を強化できます。アドヒアランスの向上・維持というのが選択時のポイントですね。
まとめ
今回はキーンス配合注フレックスタッチの特徴についてまとめました。何といっても週1回投与が強みですね。注射回数の減少、治療負担の軽減、アドヒアランスの向上が期待できます。一方で、誤った使い方はインシデントや事故につながりかねません。毎日投与したり、他のBasalインスリンやGLP-1受容体作動薬と併用すると、副作用の危険性が高まるからです。ここは特に注意が必要ですね。薬剤師として安全かつ適正に使用するための介入が必要だと感じました。

