レスピラトリーキノロンの特徴・比較【まとめ】

当ページのリンクには広告が含まれています

今回のテーマはレスピラトリーキノロン!

ざっくりというと、

呼吸器感染症に特化したキノロン薬です。現時点で6種類あります。

・それぞれの薬剤の特徴は?
・いったい何が違うのか?
・どのように使い分けるのか?

勉強がてら調べたので、共有します。

目次

レスピラトリーキノロンの比較表

まずは、レスピラトリーキノロンの種類と基本情報を表にまとめました。

スクロールできます
商品名オゼックス錠クラビット錠アベロックス錠ジェニナック錠グレースビット錠ラスビック錠
一般名トスフロキサシンレボフロキサシンモキシフロキサシンガレノキサシンシタフロキサシンラスクフロキサシン
略号TFLXLVFXMFLXGRNXSTFXLSFX
販売年1990年1993年2005年2007年2008年2020年
規格錠75mg
錠150mg
細粒小児用15%
錠小児用60mg
錠250mg
錠500mg
細粒10%

後発品
内用液250mg
粒状錠250mg/500mg
OD錠250mg/500mg
錠400mg錠200mg錠50mg
細粒10%
錠75mg
注射薬
適応呼吸器
耳鼻
外科・整形
胆道
腸管
尿路・性器
産婦人科
皮膚
歯科口腔
その他
小児の適応
世代第3世代第4世代
嫌気性菌活性
投与回数1日2〜3回1日1回1日1回1日1回1日1〜2回1日1回
半減期4〜5時間約8時間約14時間約11時間約6時間約14時間
排泄腎/胆汁胆汁腎/胆汁腎/胆汁胆汁
減量基準高度の腎障害CLcr<50BW<40kgBW<40kg
and
CLcr<30
CLcr<50
併用禁忌あり注射のみあり
CYP代謝
車の運転注意禁止注意
バイオアベイラビリティー50%程度98%87%92%91%ほぼ100%
食事の影響あり
後発品ありあり点眼のみ錠のみ
電子添文、インタビューフォームより作成

そもそも、レスピラトリーキノロンとは何か?
押さえておきたい特性は2つあります

呼吸器感染症を引き起こす細菌に対する抗菌活性の強さ肺組織に対する移行性の高さです。特にモキシフロキサシン以降のキノロン薬は、耐性の肺炎球菌等に対する抗菌力の増強と、体内動態の安定化による肺組織への移行性向上を主眼に開発されています。

ここからは、レスピラトリーキノロンの特徴を読み解くポイントを見ていきましょう。

大きく6つです。

  1. 適応
  2. 投与方法
  3. 抗菌スペクトル
  4. 注射薬の設定
  5. 代謝・排泄経路
  6. 重要な基本的注意

レスピラトリーキノロンの適応

呼吸器科と耳鼻咽喉科領域の感染症に適応を有する(共通点)
LVFXとTFLXは全身性の感染症に適応あり(相違点)
TFLXは小児にも使用可能(相違点)

①レスピラトリーキノロンは、呼吸器科と耳鼻咽喉科領域の感染症に適応があります。ここは共通点、呼び名の通りですね。特に、第四世代のキノロン(MFLX以降)は適応が限定的です。一方で、②第三世代のキノロンは適応が広く、LVFXは44疾患(35菌種)、TFLXは41疾患(30菌種)に対して、適応を有します。ここは大きく異なる点ですね。

また、ご存知のとおり、多くのキノロンは小児に使用できません(禁忌)。開発時の前臨床試験において、幼若動物への関節障害が認められているからです。一方で、③TFLXは同影響が弱く、小児に適応が認められています。参考までに、NFLX(ノルフロキサシン:商品名バクシダール)も小児に使用可能なキノロン薬です。

レスピラトリーキノロンは第一選択ではありません!

たとえば市中肺炎の場合、細菌性肺炎では高用量のペニシリン系薬、非定型肺炎ではマクロライドやテトラサイクリン系薬で治療を行うのが基本だからです。レスピラトリーキノロンは、肺の基礎疾患があったり、耐性菌のリスクが高い場合に考慮します。経口薬で服用回数が少なく、使い勝手が良いのですが、第二選択(代替薬)という点は押さえておくべきところです。

また、結核菌への抗菌活性があり、耐性の獲得や一時的な症状改善による診断の遅れ等にも十分注意する必要があります。

レスピラトリーキノロンの投与方法

.1日1回投与が基本
.STFXは1日1〜2回投与
.TFLXは1日2〜3回投与

①レスピラトリーキノロンの多くは、投与方法が1日1回に設定されています。濃度依存型であり、1日の投与量が同じなら、複数回に分けるより1回にまとめて投与した方が優れた効果が期待できるからです。LVFX、MFLX、GRNX、LSFXはいずれも1日1回投与します。

ご存知のとおり、LVFXはもともと分割投与(1回100mg・1日3回)でした。結構前の話なので知らない方もいるかも知れないですが…^_^。PK-PD理論に基づき、2009年に現在の投与方法(1回500mg・1日1回)に変更されました。その際のシミュレーションで用いられたのが、①AUC0-24h/MICと②Cmax/MICのPK-PDパラメータです。肺炎球菌に対する治療効果を得るためには、①が30%以上、耐性菌の抑制には②が5%以上、必要という研究結果をもとに、最適な投与方法が決定されました。

クラビット錠、インタビューフォーム

LVFX同様に、②STFXも分割投与(1回50mg・1日2回)で承認後、2011年8月に1回100mg・1日1回投与が追加された経緯があります。

STFXは1日1回と1日2回の用法、どちらを選択すべきか?

もちろん、PK-PD理論からは1日1回投与の方がよいと考えられますが、耐性菌抑制の観点から大きな差は無いと結論付けられています。100mg1日1回と50mg1日2回の比較試験において、耐性菌抑制に必要とされるTime in MSWは20%以内を超えており、同様にTime above MPCも90%を超えているからです。

グレースビット 審議結果報告書

以上から、服薬アドヒアランスを考慮して、服用回数を減らす場合には1日1回、一回の服薬錠数を減らす場合には、1日2回を選択するかたちで良いと考えられます。

一方で、③TFLXは1日300〜450mgを2〜3回に分けて投与します(肺炎の場合)。1990年に発売後、今でも承認時のままで、LVFXやSTFXのように用法用量の変更はありません。キノロン薬は濃度依存型であることを考えると、1日2回投与の選択が望ましいと考えられます。

細菌性肺炎・非定型肺炎の場合 外来治療

第二選択
・LSFX経口1回75mg・1日1回
・STFX経口1回100mg・1日1〜2回
・GRNX経口1回400mg・1日1回
・MFLX経口1回400mg・1日1回
・LVFX経口1回500mg・1日1回
・TFLX経口1回300mg・1日2回

JAID/JSC感染症治療ガイド2023

レスピラトリーキノロンの抗菌スペクトル

キノロン薬、世代ごとの抗菌スペクトルは以下の通りです。

本当にざっくりとしたイメージです^_^

スクロールできます
分類抗菌薬(例)肺炎球菌ブドウ球菌グラム陰性桿菌非定型細菌嫌気性菌
第1世代NA(ナリジクス酸)
PPA(ピぺミド酸)
狭い
第2世代OFLX(オフロキサシン
CPFX(シプロフロキサシン)
LFLX(ロメフロキサシン)
PZFX(パズフロキサシン)
第3世代TFLX(トスフロキサシン)
LVFX(レボフロキサシン)
弱い
第4世代MFLX(モキシフロキサシン)
GRNX(ガレノキサシン)
STFX(シタフロキサシン)
LSFX(ラスクフロキサシン)

押さえておきたいのは、第3世代と第4世代の違いです

肺炎球菌に対する抗菌活性の向上
嫌気性菌に対する抗菌スペクトル拡大

肺炎球菌に対する抗菌活性の向上

第3世代第4世代の図式です

第4世代のレスピラトリーキノロンはグラム陽性球菌(特に肺炎球菌:Streptococcus pneumoniae)に対する抗菌活性が向上しています。

グラム陽性球菌に対するMIC比較

ジェニナック錠 インタビューフォーム
嫌気性菌に対する抗菌スペクトル拡大

同様に、第3世代第4世代の図式です。

第4世代のレスピラトリーキノロンは嫌気性菌に対する抗菌活スペクトルが拡大しています。特にSTFXは嫌気性菌に対する活性が強いのが特徴です。

偏性嫌気性菌に対するMIC比較

グレースビット錠、インタビューフォーム

TFLXとLVFXは嫌気性菌に効かないのか?

電子添文には、レボフロキサシンは嫌気性菌であるプレボテラ属に、オゼックスはそれに加えてペプトストレプトコッカス属、バクテロイデス属が適応菌種に挙げられています。ただ、上記の嫌気性菌に対するMIC比較表(STFX・LVFX・TFLX)にあるように、十分な活性があるとはいえません。ガイドラインでも嫌気性菌の関与を疑う誤嚥性肺炎の選択肢から除外されており、臨床においては積極的に選択しないという理解です。

誤嚥性肺炎(重症度が高くなく、耐性菌リスクが低い場合)

第一選択

・CVA/AMPC経口1回500mg・1日3〜4回

第二選択

・LSFX経口1回75mg・1日1回
・STFX経口1回100mg・1日1〜2回
・GRNX経口1回400mg・1日1回
・MFLX経口1回400mg・1日1回

JAID/JSC感染症治療ガイド2023

高度耐性の肺炎球菌や誤嚥性肺炎の場合、第4世代のレスピラトリーキノロンの選択が望ましいといえます。もちろん、第一選択薬ではありませんが…。

レスピラトリーキノロンの注射薬

クラビット点滴静注ラスビック点滴静注
一般名
(略号)
レボフロキサシン
(LVFX)
ラスクフロキサシン
(LSFX)
規格バッグ500mg/100mL
バイアル500mg/20mL
キット150mg
適応外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、腹膜炎、胆嚢炎、胆管炎、腸チフス、パラチフス、子宮内感染、子宮付属器炎、炭疽、ブルセラ症、ペスト、野兎病、Q熱肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
投与方法1回500mg・1日1回1回300mg・1日1回(初回)
1回150mg・1日1回(2回目以降)
クラビット点滴静注、ラスビック点滴静注 電子添文より作成

レボフロキサシン(LVFX)とラスクフロキサシン(LSFX)には注射薬があります。

ポイントは3つです。

.経口投与が困難なケースに使用できる
.注射薬にのみ認められた適応がある
.同成分で経口スイッチ療法が行える

注射薬の選択肢があるLVFXとLSFXは他のレスピラトリーキノロンに対して優位性があるといえます。特に入院治療では経口薬よりも点滴治療が優先される場合があるからです。重症患者は基本的に点滴治療を行います。また是非はあるにせよ、誤嚥性肺炎の方は一時的に絶食になることが多いです。また、嚥下機能の低下や消化管の機能障害等で点滴を選択するケースも少なくありません。

LVFXとLSFXの注射薬は経口薬には認められていない適応があります。上表のマーカーを引いた部分です。レボフロキサシンは腹膜炎、ラスクフロキサシンは肺膿瘍に対して使用できます。

LVFXとLSFXは注射薬から内服薬へ同成分の切り替えが可能です。点滴投与を始め、経口投与が可能になった時点で、内服治療へ変更といったスイッチ療法が選択できます。どちらもバイオアベイラビリティーが高く(クラビット:98%、ラスビック:ほぼ100%)、同じ用量で治療の継続が可能です。ただし、ラスビックは点滴と内服薬で1回量が異なるため、減量(150mg→75mg)にて投与を継続するかたちになると考えられます。

経口スイッチのメリット
  • 注射手技に伴う合併症を回避(血管痛、静脈炎等)
  • 離床が進む(点滴中の移動制限を解除)
  • 医療者の手技にかかる労力と時間の削減
  • 患者負担の軽減、医療費の削減

LVFXとLSFXの点滴製剤については別記事で詳しくまとめているので、合わせてご覧いただけたら幸いです。

レスピラトリーキノロンの代謝・排泄経路

スクロールできます
商品名オゼックス錠クラビット錠アベロックス錠ジェニナック錠グレースビット錠ラスビック錠
略号TFLXLVFXMFLXGRNXSTFXLSFX
排泄経路腎/胆汁③胆汁②腎/胆汁②腎/胆汁③胆汁
尿中排泄率未変化体
45.8%
未変化体
83.76%
未変化体
19.6%
49.6%未変化体
70.0%
未変化体
8.4%
腎障害時
の投与
高度
減量
CLcr<50
減量
CLcr<30
BW<40kg
減量
CLcr<50
減量
肝障害時
の投与
重度
禁忌
中等度
重度
慎重投与
CYPの代謝CYP3A4
CYPの相互作用誘導薬
阻害薬

押さえておきたいのは4点です。

.代謝経路の違い(腎・腎/胆汁・胆汁)
.腎機能に応じた投与量調節必要(TFLX,LVFX,GRNX,STFX)
.肝機能障害がある人は注意(MFLX,LSFX)
.CYPの相互作用に注意(LSFX)

①レスピラトリーキノロンの代謝経路は大きく3つ。LVFXは腎排泄型、MFLXとLSFXは胆汁排泄型、その他は腎/胆汁排泄型です。この違いは投与量の調節や投与の可否に関係します。

TFLX、LVFX、GRNX、STFXは投与前に腎機能のチェックが欠かせません。高齢者やCKD患者では、排泄遅延により、副作用のリスクが高まるからです。特に、LVFXは尿中排泄率が80%を超えており、CLcrの数値によって以下の投与量調節が必要になります。

mL/min1日目2日目3日目4日目5日目
CLcr≧50500mg500mg500mg500mg500mg
20≦CLcr<50500mg250mg250mg250mg250mg
CLcr<20500mg250mg250mg
クラビット錠 電子添文より作成

腎機能チェック・薬物投与設計に関しては
別記事にまとめているので、合わせてご覧頂けたら幸いです!

MFLXとLSFXは投与前に肝機能のチェックが必要です

アベロックス錠ラスビック錠
重度禁忌慎重投与
中等度記載なし慎重投与
軽度記載なし記載なし
MFLXは重度(Child-Pugh分類クラスC)の方には使用できません(禁忌)

血中濃度増加による副作用リスク、臨床試験で除外されており有効性と安全性が確認されていないためです。Child-Pugh分類クラスAとBの方では、代謝物(薬理活性なし)のAUCは増加したものの、未変化体(薬理活性あり)は大きな差は認められませんでした。

アベロックス錠 インタビューフォーム
LSFXは中等度以上(Child-Pugh分類クラスBC)の方は慎重に投与する必要があります

肝機能障害の程度によって、AUCの増加が認められており、副作用発現が懸念されるからです。

ラスビック錠 インタビューフォーム

LSFXは内服薬と注射薬で肝機能障害患者への対応が変わります

ここは盲点かもしれません…。注射薬は投与量が2倍量(初回は4倍)、血中濃度上昇による副作用リスクがさらに増加するためだと考えられます。

ラスビック錠75mgラスビック点滴静注150mg
重度慎重投与禁忌
中等度慎重投与慎重投与
軽度記載なし記載なし

LSFXはCYPで代謝されます

ヒト肝ミクロソームを用いてCYP分子種の代謝活性に対するラスクフロキサシンの阻害効果を検討したところ、ラスクフロキサシンはCYP3A4及びCYP2C8を時間依存的に阻害した。ヒト凍結肝細胞を用いてCYP分子種に対するラスクフロキサシンの誘導能を検討したところ、CYP1A2及びCYP3A4に対する誘導作用が認められた。そのため。注意薬の設定もあります。

ラスビック錠 電子添文

ここが他剤と異なる点ですね。CYP3A4及びCYP2C8の阻害作用はそこまで強くなく、併用注意には特に記載がありません。一方で、CYP3A4の誘導作用はLSFXのAUC低下を招き、有効性が減弱する可能性があり、併用注意薬としてリファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピンが挙げられています。

本薬とイトラコナゾールとを併用したときの本薬のAUC増加の程度1.46倍を踏まえると、本薬の代謝におけるCYP3Aの寄与は大きくはないと考えられるものの、本薬とCYP3A誘導剤との併用により、本薬の曝露量低下が想定されること、本薬の曝露量が低下すると、本剤の有効性が減弱する可能性があること等を踏まえると、本薬とCYP3A誘導剤との併用について注意喚起する

ラスビック錠 PMDA 審査結果報告書

LSFXは内服薬と注射薬でCYPが関与する併用注意薬に違いがあります。

ここも盲点ですね…。

ラスビック錠75mgラスビック点滴静注150mg
CYP3A4の誘導剤リファンピシン
フェニトイン
カルバマゼピン
リファンピシン
フェニトイン
カルバマゼピン
CYP2C8の阻害剤レパグリニド
ラスビック錠、点滴静注、電子添文より

レスピラトリーキノロン:重要な基本的注意の比較

最後に、電子添文の重要な基本的注意を比較します。ここは、適正使用の観点から医療従事者が行うべきことが書かれており、薬剤師が日常業務を行う上で大切な部分です。(◯は記載あり、ーは記載なしです)

スクロールできます
商品名オゼックス錠クラビット錠アベロックス錠ジェニナック錠グレースビット錠ラスビック錠
略号TFLXLVFXMFLXGRNXSTFXLSFX
耐性菌
車の運転注意禁止注意
QT延長併用禁忌あり
大動脈瘤、大動脈解
ショック、アナフィラキシー
その他
レスピラトリーキノロンの乱用は避ける

広域スペクトルであり、安易な使用は耐性菌の出現を招くからです。重大な副作用も多く、安全性も軽視できません。「感受性の確認」と「投与期間の最小化」に努めなければなりません。実際、感受性を確認せずに経験的に使うことも多いですが…。なぜか、アベロックスには記載がありませんが、同様の対応が必要です。

本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。

重要な基本的注意、グレースビット、その他
車の運転に対する説明が必要なレスピラトリーキノロン
(LVFX、MFLX、GRNX)

意識障害等のリスクがあり、投与前に車の運転等、機械の操作に対する説明を行わなければなりません。レボフロキサシンとジェニナックは「注意」、モキシフロキサシンは「禁止」である点は押さえておきましょう。

意識障害等があらわれることがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意するよう患者に十分に説明すること。

クラビット錠、ジェニナック錠 重要な基本的注意

失神、意識消失、めまい等があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。投与にあたっては、これらの副作用が発現する場合があることを患者等に十分に説明すること

アベロックス錠 重要な基本的注意
特にQT延長のリスクが高いレスピラトリーキノロン
(MFLX)

ニューキノロン薬はQT延長のリスクがある薬剤として有名ですが、アベロックスはQT延長に特に注意が必要なレスピラトリーキノロンです。併用禁忌、併用注意の薬剤も挙げられています。

本剤投与によりQT延長がみられていることから、心血管系障害を有する患者に対しては、本剤の投与を開始する前に心血管系の状態に注意をはらうこと

アベロックス錠、重要な基本的注意

レスピラトリーキノロン:QT延長に関する記載の有無

スクロールできます
商品名オゼックス錠クラビット錠アベロックス錠ジェニナック錠グレースビット錠ラスビック錠ラスビック点滴
略号TFLXLVFXMFLXGRNXSTFXLSFXLSFX
禁忌 QT延長のある患者 QT延長のある患者
併用禁忌クラスⅠA,Ⅲの抗不整脈薬クラスⅠA,Ⅲの抗不整脈薬
慎重投与
併用注意デラマニドエリスロマイシン,抗精神病薬,三環系抗うつ薬クラスⅠA,Ⅲの抗不整脈薬クラスⅠA,Ⅲの抗不整脈薬チアジド系利尿剤,ループ系利尿剤,糖質副腎皮質ホルモン剤,ACTH,グリチルリチン製剤
重大な副作用

アベロックスとラスビックの注射はQT延長に十分な注意が必要な薬剤だといえます。一方で、グレースビットはQT延長のリスクが低く、代替薬として考慮できる薬剤ですね。

大動脈瘤、大動脈解のリスク

すべてのレスピラトリーキノロンに共通の項目です。海外の疫学研究において、フルオロキノロン薬を投与後に大動脈瘤、大動脈解離のリスクが増加するとの報告を受けて、2019年1月に厚生労働省より、添付文書改訂の指示が出ました。

 大動脈瘤、大動脈解離を引き起こすことがあるので、観察を十分に行うとともに、腹部、胸部又は背部に痛み等の症状があらわれた場合には直ちに医師の診察を受けるよう患者に指導すること

重要な基本的注意
ショック、アナフィラキシーに関する記載があるレスピラトリーキノロン
(MFLX、GRNX)

なぜ、他の薬剤に記載がないのか?詳細はわからなかったのですが、基本的にどのレスピラトリーキノロンも過敏症状のリスクはあるので、十分な問診は必要だと思います。

アベロックス)ショック、アナフィラキシーがあらわれるおそれがあるので、事前にアレルギー既往歴、薬物過敏症等について十分な問診を行うこと

ジェニナック)ショック、アナフィラキシーが報告されているので、本剤の使用前にアレルギー既往歴、薬物過敏症等について十分な問診を行うこと

重要な基本的注意
その他

オゼックスは投与中に腎障害、肝障害のフォローが必要!

 急性腎障害、間質性腎炎、腎性尿崩症等の重篤な腎障害、肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、定期的に検査を行うこと

オゼックス錠 重要な基本的注意

クラビット錠は、投与期間が長い場合にはフォローが必要!

長期投与が必要となる場合には、経過観察を十分に行うこと。

クラビット錠 重要な基本的注意

まとめ

今回は、レスピラトリーキノロンの特徴についてまとめました。

私は、どれもほとんど一緒、大差はないと認識していたのですが、

意外と違いはありましたね^_^

ポイントを抜き出すと下記です!

  • 適応(TFLX:小児、LVFX:多数)
  • 投与方法(PK-PDから1日1回が基本、TFLX:例外)
  • 抗菌スペクトル(世代で区別、MFLX、GRNX、STFX、LSFX:嫌気活性強い)
  • 注射薬(LVFX、LSFX:経口薬との適応の違いあり)
  • 代謝・排泄(腎:LVFX、胆汁:MFLX、LSFX、両方:それ以外、CYP:LSFX)
  • 重要な基本的注意(特に、車の運転とQT延長は押さえておきたい)

日常業務にお役立て頂けたらと嬉しいです!

目次