事故を起こさないための安全機能を搭載した車が人気です。
例えば、センサーで前方の障害物を検知しぶつからないように自動ブレーキが作動したり、車線からはみ出ないように自動でハンドル調整をしてくれるなどドライバーを事故から守ってくれる装備があります。
そんな、最新のセーフティカーに魅力を感じる人も多いのではないでしょうか?
かくいうkusuriproもその1人ですが、今はまだバックモニターすらない安全機能とは無縁の車に乗っています。
そのため、最新の安全機能に負けじとサイドミラーとバックミラーを駆使してひたすら目視を繰り返し、雨の日であろうと窓から身を乗り出して後方の安全確認を徹底しているのです。(笑)
さて、最近では自動で投与量や相互作用などをチェックしてくれるとても便利な処方監査システムがあります。
とはいえ、自動ブレーキを搭載した車が衝突事故をゼロにできないように、チェック機能も完全ではないので、最終的なゴーサインは薬剤師の目に頼るしかありません。
今回は、腎機能チェックが必要な薬剤の中で特に薬剤師が見逃せない5種類を独自ランキング形式で紹介します。
処方箋を見たときに、危険が察知できる確かな目を薬剤師も身につけておきましょう。
では、第5位から順に発表していきますね。
第5位 アシクロビル(ゾビラックス®︎)、バラシクロビル(バルトレックス®︎)
第5位はアシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス薬です。
単純疱疹や帯状疱疹などのウイルス性疾患には
アシクロビルやそのプロドラッグで吸収率が良くなったバラシクロビルなどが使用されています。
アシクロビル過量投与のリスクは?
これらの抗ウイルス薬はどれも腎排泄型の薬剤です。
そのため、慢性腎臓病(CKD)の患者や高齢者では、排泄遅延により血中濃度が上昇しやすく、呂律困難や振戦、幻視や幻聴、昏睡などの精神障害が起こる可能性があります。
例えば、アシクロビルの尿中未変化体排泄率は約85%と高く、
タンパク結合率は9〜33%と低く脳内への移行も良いので
過量投与の場合、容易に精神障害が発現してしまうのです。
そのため、腎機能に合わせた投与設計が必要になります。
とはいっても、
CKD患者や高齢者に通常用量で処方されるケースを未だに見かけることありませんか?
アシクロビルが腎排泄型薬剤であることの認知度がまだ低いのか、
それとも薬剤師による安全性のチェック機構に絶大なる信頼をおいているのか?(微笑)
どちらにせよ、
とにかく、薬剤師が見逃さないように気をつけたいものです。
アシクロビルは腎障害の発症リスクにも注意
また、アシクロビルは服用中に腎障害を起こす危険性も指摘されています。
なぜ起こるのかというと、
腎尿細管でアシクロビルの濃度が溶解度を超えたときに結晶化するのが原因といわれています。
これは一過性なので、水分を十分に摂取することによって避けることができるそうです。
そのため、脱水症状を起こしやすいと考えられる高齢者や意識障害のある人、高熱や下痢の症状がある人などには、普段よりも多めの水を飲んで予防をしてもらいましょう。
ということで、
第4位 ピルシカイニド(サンリズム ®︎)、シベンゾリン(シベノール®︎)
続いて第4位は、ピルシカイニド、シベンゾリンなどの抗不整脈薬です。
一般的に抗不整脈薬は強力な効果の反面、副作用のリスクが高く血中濃度の安全域も狭いことから定期的なTDMなどの安全使用が求められています。
抗不整脈薬の過量投与のリスクは?
その中でも特に腎排泄性の抗不整脈薬の場合は、
安全な薬物療法のために腎機能に応じた薬物投与設計が欠かせません。
例えば、ピルシカイニドは尿中未変化体排泄率が約86%と高く、
もしも、腎機能チェック漏れにより
CKD患者や高齢者に過量投与された場合には
QTの延長、徐脈、血圧低下、心不全、心停止など致命的なリスクにつながってしまいます。
うっかり腎機能チェックを忘れて心停止なんて洒落になりません。
ピルシカイニド以外で押さえておきたい薬剤は以下の通りです。
尿中未変化体排泄率が高いNaチャネル遮断薬(Ⅰ群)
ピルシカイニド(サンリズム®︎)…約86%
ソタロール(ソタコール®︎)…約75%
シベンゾリン(シベノール®︎)…約65%
ジソピラミド(リスモダン®︎)…約65%
プロカインアミド(アミサリン®︎)…約60%
JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY Vol. 32 No. 4 2012を参照
このあたりは押さえておきましょう。
抗不整脈薬は代謝排泄経路も押さえておこう
抗不整脈薬は作用機序の違いにより使い分けがされるのですが、同じグループに属していても代謝排泄経路が全く違うケースもあります。
例えば、1C群のピルシカイニドとプロパフェノン(プロノン®︎)です。
ピルシカイニドはほとんどが腎臓から排泄されるのに対して、プロノンは尿中未変化体排泄率が約4%と排泄経路の大部分が肝臓になります。
そのため、処方監査のチェックポイントも当然違うわけで、
例えば、ピルシカイニドはeGFRチェックが必須ですが、プロパフェノンはeGFRではなくASTやALTなどのチェックやCYPを介した薬物相互作用の確認が必要になるのです。
抗不整脈薬に限ったことではありませんが、
作用機序と代謝排泄経路をセットで覚えておくと処方監査時に役に立ちます。
ということで、
第3位 プレガバリン(リリカ ®︎)
そして第3位は、神経障害性疼痛治療薬のプレガバリンです。
もともとは「帯状疱疹後神経痛」の適応で発売されたのですが、「末梢性神経障害性疼痛」へ拡大、その後に「繊維筋痛症に伴う疼痛」が追加、今では中枢領域も含めた幅広い適応を有しています。
もうなんでもかんでもリリカ®︎になっているような気もしていますが…
プレガバリンの尿中未変化体排泄率は約90%と高いので、
CKD患者や高齢者では投与量の調節が必要になります。
リリカ®︎過量投与のリスクは?
過量投与のリスクは知ってのとおり、傾眠、ふらつき、めまい、むくみなどです。
承認時の臨床試験の集計結果によれば、
浮動性めまい393例(23.4%)、傾眠267例(15.9%)、浮腫179例(10.7%)
発現頻度は総じて高いことがわかります。
リリカ®︎添付文書より
その後の中間集計の結果では、
特に65歳以上の高齢者で副作用のリスクが高いことがわかりました。
▷浮動性めまい…65歳未満 3.2% (7/216) vs 65歳以上 9.7% (42/432)
▷傾眠…65歳未満 3.7% (8/216) vs 65歳以上 5.8% (25/432)
リリカ®カプセル 適正使用のお願い “高齢者における「めまい、傾眠、意識消失」について より
リリカ®︎は転倒のリスクが潜んでいる
めまいやふらつき、意識消失などの副作用で、
転倒し骨折した例も報告されています。
PMDAの添付文書情報メニューから「重大な副作用」と「転倒」で検索すると
2剤がヒットしたのですが、そのうちの1つがリリカでした。
ちなみにもう一方は最近発売されたパーキンソン病薬のアジレクト®︎。
ふらつきやめまいには転倒による骨折という潜在的リスクがあるのです。
そのため、CKD患者や高齢者では、腎機能に応じた投与量を選択することは当然ですが、初回はできるだけ少量から忍容性を確認しながら用量を増やすことも必要だといえます。
ということで、
第2位 メトホルミン(メトグルコ®︎)
第2位は糖尿病治療薬のメトホルミンです。
メトホルミンは、2型糖尿病治療の第一選択としてDPP-4阻害薬と並び広く使用されているのですが、一方で重篤な乳酸アシドーシスに気をつけなければなりません。
メトホルミン過量投与のリスクは?
メトホルミンといえば乳酸アシドーシスがパッと頭に浮かびますよね。
メーカーの調査によれば、2010年5月〜2018年3月31日の期間に
乳酸アシドーシス179 例の報告があり、主なリスク因子としては、
75歳以上の高齢者、脱水症状、腎機能障害などが指摘されています。
メトホルミンの尿中未変化体排泄率85%と高いため、
もともとCKD患者や高齢者は当然ですが、脱水などで一時的に腎血流量が低下すると考えられる人でも副作用が起こりやすく注意が必要なのです。
メトホルミンの適正使用に関するRecommendation
2016年の糖尿病学会によるRecommendationによれば、
CKD患者(透析患者を含む)に対する
メトホルミンの腎機能チェックの方法は以下の通りです。
・推定糸球体濾過量eGFRで評価
・eGFRが30(mL/分/1.73㎡)未満の場合にはメトホルミンは禁忌
・eGFRが30〜45の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与
以前は、
「中等度腎機能障害は禁忌で、血清クレアチニン値が、成人では男性1.3mg/dL、女性1.2mg/dL以上の場合には投与しない」ことと、
クレアチニン値により腎機能の評価を行なっていたのですが、
今回のRecommendationではeGFRを用いた腎機能評価方法に改められたのです。
メトホルミン服用中は脱水予防が大切
また、脱水予防のための具体的な指針も記載されています。
・シックデイの際には脱水が懸念されるので、いったん服薬を中止し、主治医に相談する
・脱水を予防するために日常生活において適度な水分摂取を心がける
・アルコール摂取については、過度の摂取を避け適量にとどめ、肝疾患などのある症例では禁酒する
メトホルミンの適正使用に関する Recommendationを参照
このように乳酸アシドーシスを防ぐためには、
調剤前の腎機能チェックはもちろんですが、
服用中の脱水予防についての関わりも大切だということです。
ということで、
第1位 ダビガトラン(プラザキサ®︎)
第1位はなんといっても抗凝固薬のプラザキサ®︎ですよね。
この順位にはだれも異論はないのではないでしょうか。
発売当初は、
定期的な血液検査が要らず、頭蓋内出血のリスクも低い
さらに、納豆も食べられる
ということで
ワルファリンに代わる非弁膜症性心房細動による塞栓症予防薬として注目されていました。
ですが、発売後から5ヶ月足らずで、重篤な出血性副作用が81例、そのうち5例の死亡が報告されブルーレターが発行されることになったのです。
ダビガトラン過量投与のリスクは?
市販直後調査の評価・分析(2011/3/14〜6ヶ月)によれば
・重篤な出血事象は139例で、そのうち15例が死亡
・死亡例15 例のうち13 例は腎障害を認め、うち6例はeGFR30未満で禁忌に該当
・139例中で腎機能障害を認めたのは76例、うち22例はeGFR30未満で禁忌に該当
・出血部位は約6割が消化管出血、約2割が頭蓋内出血という結果でした。
プラザキサカプセル®︎市販直後調査・最終報告より
この結果から、
腎障害障害患者への投与により出血リスクが増大していることがわかるのですが、
これは、ダビガトランの未変化体尿中排泄率が80%と高いためです。
ちなみに、
リバーロキサバン(イグザレルト®︎)が30〜40%
エドキサバン(リクシアナ®︎)が35%
アピキサバン(エリキュース®︎)が27%で、
他のDOACと比べるとぶっちぎりの高さなんです。
また、ダビガトランはバイオアベイラビリティが6.5%と低く血中へ移行する量はわずかしかありません。
これは、消化管腔への排出ポンプであるP糖蛋白の基質となるためで、吸収されないダビガトランの消化管濃度が高くなり消化管出血を助長する可能性も指摘されているのです。
もちろん、P糖蛋白阻害薬との相互作用にも注意が必要で、イトラコナゾールは禁忌、ベラパミルやアミオダロンなどは併用注意で副作用のリスク次第で減量しなければなりません。
このように、プラザキサ®︎は腎機能や併用薬によって血中濃度が変化しやすく、個々のケースで出血のリスクの評価が欠かせないのです。
ということで、
今回は、処方量が多く過量投与のリスクが高いものを吟味して、
薬剤師が見逃せない薬剤を5種類発表しました。
もちろん、これ以外にもたくさんの種類があって、もっと重要度の高いものもあります。
処方箋を見て、毎回添付文書や書籍を確認して腎排泄性薬剤はないかをチェックしている余裕はきっとないので、
日々、知識を積み重ねて少しずつ危険予測能力を高めていくことが大切です。
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