今回のテーマはアメナリーフ!
一般名はアメナメビル、帯状疱疹の治療薬です。
最近、処方を見かける機会が増えましたね。
アメナリーフはどのような特徴があるのか?
従来の抗ヘルペスウイルス薬バラシクロビル、ファムシクロビルと比較しながら解説します。
アメナリーフの基本情報

まずは基本情報の確認から。ポイントを比較すると下記です。
一般名 | アメナメビル | バラシクロビル | ファムシクロビル |
---|---|---|---|
販売日 | 2017年9月 | 2000年10月 | 2008年7月 |
規格 | 200mg錠 | 500mg錠 50%顆粒 | 250mg錠 |
適応 | ①帯状疱疹 | ①帯状疱疹②単純疱疹 ③造血幹細胞移植における 単純ヘルペスウイルス感染症 の発症抑制 ④水痘⑤性器ヘルペスの再発抑制 | ①帯状疱疹 ②単純疱疹 |
用法用量 | ①400×1食後 | ①1000mg×3 ②500mg×2 | ①500mg×3 ②250mg×3 (再発性の単純疱疹 1回1000mg×2も可) |
腎機能障害 | 減量不要 | 減量必要 | 減量必要 |
肝機能障害 | 減量不要 | 減量不要 | 減量不要 |
押さえておきたいポイントを確認しておきますね。
帯状疱疹の治療薬
アメナリーフの適応は帯状疱疹のみです
バラシクロビルやファムシクロビルのように、単純疱疹に適応がありません。同じ抗ヘルペス薬であっても適応は異なります。バラシクロビルは水痘や性器ヘルペスの再発抑制等にも幅広く使えるのが特徴です。
アメナリーフの適応は限定的である点は留意しておきましょう。
帯状疱疹と単純疱疹の違いは何か、下記にまとめたのでご確認くださいね。
- 帯状疱疹とは?
-
- 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因
- ピリピリ刺すような痛み、赤い斑点、水ぶくれが生じる
- 身体の左右、どちらかに帯状に現れる(神経支配領域に)
- 水ぼうそうが治癒した後(神経節に潜伏感染)に、免疫力が低下した時に発症する
- 単純疱疹とは?
-
- 単純ヘルペスウイルスが原因(帯状疱疹と異なる)
- 皮膚や粘膜に違和感(チクチク、ムズムズなど)、小さい水泡やただれが生じる
- 全身に起こる、口唇、顔面、性器ヘルペスなど
- 主に接触感染で発症する
新規の作用機序を有する
アメナリーフは従来薬と作用機序が異なります
- アメナリーフ…ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体阻害
- バラシクロビル…核酸類似体(DNAポリメラーゼ阻害)
- ファムシクロビル…核酸類似体(DNAポリメラーゼ阻害)
アメナリーフはヘリカーゼ・プライマーゼ複合体を阻害し、抗ヘルペスウイルス作用を発揮します。
- ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体とは?
-
- ウイルスDNAの複製に関わる酵素
- ウイルスDNAの二本鎖を一本鎖にほどく(ヘリカーゼ)
- DNA複製を開始するために必須なRNAプライマーを合成する(プライマーゼ)
一方で、バラシクロビルやファムシクロビルは体内で核酸類似体に変換されるプロドラッグです。細胞内でウイルスDNA複製の材料であるデオキシグアノシン三リン酸(dGTP)と競合的に拮抗して、DNAの伸長反応を阻害します。
アメナリーフはヘリカーゼ・プライマーゼ複合体を標的とした、新規の作用機序を有する抗ヘルペス薬ですね。
アメナリーフは高い抗ウイルス活性を示す!
アシクロビルの約31〜76倍です。(※VZVの実験室株、国内臨床分離株、米国臨床分離株を感染させたヒト胎児繊維芽細胞にアメナメビルとアシクロビルを添加して、3日後のプラーク数の計測により50%効果濃度を比較)
また、アシクロビル低感受性のVZV実験株を用いた試験でも、アメナリーフの方は、感受性低下を認めず交差耐性がないことが示されました。
アメナリーフ錠 インタビューフォーム参照
アメナリーフは、抗ウイルス活性が強く、従来の抗ヘルペス薬で効果が不十分なケースにも効果が期待できるかも知れませんね。
処方目的

アメナリーフは何のために投与するのか?
帯状疱疹を治療するためですね。
実はそれに加えて、帯状疱疹後神経痛の予防という目的もあります
- 帯状疱疹後神経痛とは?
-
- PHN(post-herpetic neuralgia)という
- ウイルス感染による神経変性が原因(神経障害性疼痛)
- 皮疹消失後、数ヶ月から数年にわたる
- 早期の抗ヘルペス薬投与で予防効果が期待できる
アメナリーフは、PHNの予防を含め期待した効果を得るためにも、皮疹出現後速やかな投与が欠かせません。添付文書では5日以内と記載があり、国内臨床試験では72時間以内の患者さんが対象です。また、7日間は飲み忘れなく服薬もすることも大切ですね。
本剤の投与は、発病初期に近いほど効果が期待できるので、早期に投与を開始すること。なお、目安として皮疹出現後5日以内に投与を開始することが望ましい。
本剤は、原則として7日間使用すること。改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、速やかに他の治療に切り替えること。
アメナリーフ添付文書より
臨床試験

アメナリーフの有効性はバラシクロビルと同等です
国内第3相臨床試験の結果
これを受けて、1日投与量は400mgで適応が承認されました。
PHNにも効果がある!
第3相臨床試験において、アメナリーフはバラシクロビルと同程度のPHN抑制効果が期待できることが示されました。
(PHNの頻度:第III相試験)
・本剤400mg群1.0%(2/193例)
・本剤200mg群1.9%(4/209例)
・VACV群 1.0%(2/206例)帯状疱疹に対して抗ウイルス剤無治療の場合のPHNの発症率は約10%との報告(J Int Med Res, 2002; 30: 56-65、Clin Infect Dis, 1996; 22: 341-347)も踏まえると、本剤400mg群はVACV群と同程度のPHN移行抑制効果が期待できると考えた。
アメナリーフ 審議結果報告書
※「治験薬投与開始 91日目又は 92日目に残存する疼痛」を PHNと定義
アメナリーフ:2つのメリット

アメナリーフは従来薬と比べて何が優れているのか?
大きく2つあります。
- 1日1回の投与で済む
- 腎機能による用量調節が不要
順番に見ていきましょう。
1日1回投与でOK
アメナリーフは1日1回、食後に2錠飲むだけでOKです
わかりやすいですね。

一方で、バラシクロビルとファムシクロビルは
1日3回の服用です。投与期間が7日とはいえ、服用回数が多いのは飲み忘れの可能性が高まるし、患者さんの負担も大きいと思います。しかも、帯状疱疹の薬は高齢の方が飲んでいる印象が強く、服薬アドヒアランスは大丈夫なのか、懸念されるところですよね。
アメナリーフは1日1回投与。ここが従来薬に比べて大きなメリットだといえます。
アメナビルは食事の影響を受ける!
食後投与の縛りがあります。空腹時投与は食後投与に比べてCmax、AUCが低下するからです。
食事の影響(外国人における成績)
アメナリーフ錠 添付文書
健康成人(24例)に本剤800mgを空腹時に投与したとき、アメナメビルのCmax及びAUCは食後投与と比較してそれぞれ約0.64倍及び0.52倍に減少した
アメナリーフは必ず食後に服用するよう初回説明が必要ですね
錠剤の大きさを比較すると下記です。
製品名 | 大きさ |
---|---|
アメナリーフ | 長径:15.0mm、短径:7.9mm、厚さ:5.7mm |
バルトレックス | 長径:18.5mm、短径:7.3mm、厚さ:6.1mm |
ファムビル | 直径:10.1mm、厚さ:4.6mm |
この中で、一番飲みやすいのはどれか?
やはりファムビルですかね。丸型でサイズも小さいので飲みやすいと思います。
逆に一番飲みにくいのはバルトレックスです。錠剤がデカイ…。
ただし、剤型のラインナップが豊富なので、顆粒剤やGEMTAB技術(唾液や水分で表面がゲル化するコーティング)を施した粒状錠(持田製薬)などに変更すること可能です。
じゃあ、アメナリーフはどうか?
微妙ですね…。バルトレックスよりかはマシといった感じですかね(^_^;)
腎機能による用量調節が不要

アメナリーフは腎機能障害のある方でも通常量を投与できます
以下のように、尿中未変化体排泄率が低く、腎機能に応じた投与設計が必要ありません。これが2つめのメリットですね。
一方で、バラシクロビルとファムシクロビルは腎排泄型の薬剤です。腎機能に応じて投与量の調節が必要になります。
- アメナリーフ…5.77%
- バルトレックス…85%(アシクロビルとして)
- ファムシクロビル…50〜65%
白鷺病院 透析患者に対する投薬ガイドライン参照
腎機能障害患者における安全性は?
健常者と比較したアメナメビルのCmaxとAUCの最小二乗平均比は下記です。
Cmax | AUC | |
---|---|---|
軽度(Ccr50-80) | 92% | 120% |
中等度(Ccr30-49) | 98% | 135% |
高度(30未満) | 117% | 178% |
AUCは腎機能障害の程度に応じて増加傾向が見られる一方で、Cmaxはほぼ変わらない結果でした。
国内臨床試験の腎機能別の有害事象と副作用の発現率は下記です(※本剤400mg群)
有害事象 | 副作用 | |
---|---|---|
腎機能正常者 | 47.3% | 13.0% |
軽度腎機能障害者 | 53.5% | 18.3% |
正常者と軽度低下例において、有害事象と副作用に大きな差は認められませんでした。ただし、透析を必要とする重度の腎障害患者に対する試験はありません。
アメナリーフは腎機能障害の程度によってAUCが増加しますが、尿中未変化体排泄率が低く、現時点では安全性に関する懸念はないと判断されています。
アメナリーフはCYPの相互作用がある!
CYP3Aで代謝され、CYP3Aと2B6の誘導作用があります。一方でバラシクロビルやファムシクロビルはCYPの影響がありません。アメナリーフは腎臓から排泄されない分、肝臓でCYPの代謝を受ける点は注意ですね。
下記薬剤との相互作用のチェックを忘れないようにしましょう。
併用禁忌
・リファンピシン
併用注意
- ミダゾラム
- ブロチゾラム
- ニフェジピン等
アメナリーフは腎機能に合わせた投与設計が必要ありません。しかし、薬物代謝酵素CYPの代謝を受けるので、相互作用の確認が必須ですね。
まとめ

今回は、抗ヘルペス薬アメナリーフの特徴について従来薬と比較しながら解説しました。
記事を書きながら思ったのは、
「アメナリーフの使い勝手の良さ」
- 1回2錠を1日1回飲むだけでOK
- 腎機能に応じた投与設計が不要
従来薬に比べて格段に使いやすくなりました。1日3回飲むのは誰でも大変だし、飲み忘れの可能性もありますよね。しかも腎機能がわからないケースでは投与量が適切なのかどうか、悩むことも多かったです(^_^;)
だから、服薬コンプライアンスが悪い人や腎機能障害のある人には、アメナリーフの選択が望ましいといえます。
といっても、腎機能が悪いなら投与量を調節すればいいだけの話ですよね。eGFRやCcrを簡単に測定できない時は仕方がないですけど…。
となると、
1日1回投与がアメナリーフの一番の強みだと思います。
まだまだ、バラシクロビルの処方が多い印象ですが、逆転する時が来るのか、それとも来ないのか、今後の処方動向に注目していきたいです♪