【フィブラート系薬】パルモディア、リピディル、ベザトールSRを比較する

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今回のテーマはフィブラート系薬!

脂質異常症の治療薬です。おもに中性脂肪を低下させる作用があります。

国内で使用できるのは下記4種類です。

  1. クロフィブラート
  2. べザフィブラート(ベザトールSR)
  3. フェノフィブラート(リピディル、トライコア)
  4. ペマフィブラート(パルモディア)

その中からよく使われている

パルモディア、リピディル(トライコア)、ベザトールSRについて
・それぞれの特徴は何か?
・違いは何か?

比較しながらポイントをまとめたので共有します。

目次

パルモディア、リピディル、ベザトールSRの比較表

パルモディアリピディル
トライコア
ベザトールSR
販売日2018年6月2023年11月2011年12月1991年4月
一般名ペマフィブラートフェノフィブラートベザフィブラート
規格錠0.1mgXR錠0.2mg
XR錠0.4mg
錠53.3mg
錠80mg
錠200mg
錠100mg
適応高脂血症
(家族性を含む)
高脂血症
(家族性を含む)
高脂血症
(家族性を含む)
投与
方法
投与量1回0.1mg1回0.2mg1回106.6mg~160mg1回200mg
投与
回数
1日2回1日1回1日1回
食後指定
1日2回
食後指定
最大量0.4mg/日0.4mg/日160mg/日400mg/日
併用禁忌シクロスポリン
リファンピシン
腎障害時の投与禁忌Cre ≧ 2.5mg/dL
Ccr<40mL/min
透析患者
重篤な腎疾患
Cre ≧ 2.0mg/dL
減量eGFR<30mL/min/1.73㎡1.5 ≦Cre<2.5mg/dL
40 ≦Ccr<60mL/min
1.5<Cre<2.0mg/dL
50<Ccr<60mL/min
肝障害時の投与禁忌重篤な肝障害、肝硬変のある患者(Child-Pugh分類BC)、胆道閉塞のある患者
胆石のある患者
肝障害のある患者
胆のう疾患のある患者
減量肝障害のある患者(Child-Pugh分類A)、肝障害の既往歴のある患者(考慮) 肝機能検査に異常のある患者、肝障害の既往歴のある患者
各製剤、電子添文より作成

ざっとこんな感じです。意外と違いがあることに驚きました^_^

令和5年6月26日、パルモディアXRが承認されました。1日1回型の徐放型製剤です。従来薬(1日2回)に比べて投与回数が減り、服薬アドヒアランスの向上が期待できます!今後発売される見込みです。2023年11月27日に発売されました!

ここからは押さえておきたいポイントを見ていきましょう!

パルモディア、リピディル、ベザトールSRの作用機序

共通点

いずれもフィブラート系に分類されます。細胞核内にあるペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(peroxisome proliferator-activated receptor:PPAR)に結合し、脂質代謝に関わる遺伝子の転写を調節するのが作用機序です。おもに脂肪酸のβ酸化、リパーゼ活性の亢進を介して、血清トリグリセリド値を低下させます。

血清コレステロール濃度の低下、血清HDLコレステロールの増加作用もあり

PPARはピーパーと呼ぶそうです^ ^

パルモディア、リピディル、ベザトールSRの作用機序(電子添文の比較)

余談ですが、作用機序の記載を比べると、ベザトールSRにはPPARαの記載がありません。これは、PPARを介した作用機序が開発段階でははっきりとしておらず、後から(1990年代に入って)解明されたためです。

(パルモディア)

PPARαに結合し、標的遺伝子の発現を調節することで、血漿TG濃度の低下、HDL-コレステロールの増加等の作用を示す

(リピディル)

核内受容体 peroxisome proliferator-activated receptor α(PPARα)を活性化して種々の蛋白質の発現を調節することにより脂質代謝を総合的に改善させ、血清コレステロール濃度と血清トリグリセライド濃度を低下させるとともに、血清HDLコレステロールを上昇させる

(ベザトールSR)

18.1.1 脂質生合成に対する作用

 (1) コレステロール生合成抑制:アセチルCoAからメバロン酸に至るコレステロール生合成過程を抑制する。(2) トリグリセリド生合成抑制:アセチルCoAカルボキシラーゼ活性を抑制し、トリグリセリドの生合成を抑制する。

18.1.2 リポ蛋白代謝に対する作用

 (1) 高トリグリセライド血症患者のLPL(リポ蛋白リパーゼ)活性及びHTGL(肝性トリグリセリドリパーゼ)活性を亢進し、リポ蛋白の代謝を促進する。(2) II型高リポ蛋白血症患者のLDLレセプターの活性を亢進し、LDLの代謝を促進する

各電子添文、作用機序

相違点

PPARαに対する作用・選択性に違いがあります。ここは重要です。

分類一般名(商品名)
SPPARMαペマフィブラート(パルモディア)
PPARαアゴニストフェノフィブラート(リピディル)
ベザフィブラート(ベザトールSR)

パルモディアの開発コンセプトは副作用の軽減!

パルモディアはSPPARMα(選択的PPARαモジュレーター:スパームアルファ)と呼ばれています。従来薬に比べて安全性の向上を目的に開発された製剤です。PPARαアゴニストと同様の遺伝子(脂質代謝の亢進)を標的としている点は共通ですが、安全性に関わる遺伝子(クレアチニン増加、肝機能検査値の異常等)に対する影響は小さいといわれています。遺伝子の転写に選択性が生じるのは、PPARαに結合した時の立体構造変化によるものです。

SPPARMαとPPARαアゴニスト:構造の違いと作用選択性(概念図)

ペマフィブラートはPPARαとの親和性が強く、結合による立体構造に特異性が生じ、共役因子にも選択性が生まれる結果、特定の作用のみが発揮される(転写領域の選択性)という理解ですね。難しい…^_^

Curr Atheroscler Rep. 2020 Jan 23;22:5.
 
パルモディアの作用機序(イメージ図)
パルモディア錠 インタビューフォーム
パルモディアのPPARαに対する選択性

PPARには3つのサブタイプ(α、σ、γ)があります。パルモディアはαに選択的に結合するのが特徴です。PPARαに対するEC50値は1.5nMであり、PPAR(σ、γ)に対して2000倍以上の選択性が示されています。

J Atheroscler Thromb. 2015 Aug 26;22:754-72.
 

選択性のメリットは?

副作用のリスク軽減です。PPARγは低血糖、PPARαとPPARσを介した作用は、酸化ストレスに起因する組織への影響が懸念されると考えられています。

PPARγ活性化を介した作用として、インスリン感受性の増大及び肝糖新生の低下による低血糖の惹起が懸念される。さらに、フィブラート系薬剤に共通する副作用であるCK上昇の機序の一つとして、PPARαとPPARσを介したペルオキシソーム及びミトコンドリアのβ酸化の活性化による酸化ストレスに起因した組織への影響が示唆されている

パルモディア錠 審議結果報告書

ご存知の通り、PPARγは2型糖尿病治療薬チアゾリジン系の作用点です。電子添文にはリピディルはSU剤と、ベザトールSRはSU剤やインスリンとの併用により低血糖症状のリスクがある旨、記載があります。フィブラート系はタンパク結合率が高く、SU剤の遊離濃度を上昇させる機序に加えて、PPARγを介したインスリン抵抗性改善の影響もあるという理解になりますね。

パルモディア、リピディル、ベザトールSRの位置付け

フィブラート系薬の適応

パルモディア、リピディル、ベザトールSRの適応は高脂血症(=脂質異常症)です。トリグリセリド(TG)低下作用が強く、血清TGが高値の場合に用います。一方で、LDL-Cのみが高値の場合にはスタチンが第一選択です。フィブラート薬を積極的に使う場面ではありません。

(パルモディア)
LDL-コレステロールのみが高い高脂血症に対し、第一選択薬とはしないこと

(リピディル)
総コレステロールのみが高い高脂血症(IIa型)に対し、第一選択薬とはしないこと。カイロミクロンが高い高脂血症(I型)に対する効果は検討されていない。

各薬剤の電子添文より

フィブラート系薬の処方目的

フィブラート系薬はなぜ投与するのか?処方目的は大きく2つあります。①動脈硬化性疾患の予防と②膵炎の予防です。脂質異常症は、増加するリポタンパクの違いによって6パターンに分類されます。

増加するリポ蛋白分画増加する脂質
Iカイロミクロン(CM)TG
IIaLDLコレステロール
IIbLDL、VLDLTG、コレステロール
IDLTGコレステロール
VLDLTG
カイロミクロンVLDLTG、コレステロール
超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き、一部改変

リポタンパクの種類:カイロミクロン(CM),超低比重リポ蛋白(VLDL),中間比重リポ蛋白(IDL),低比重リポ蛋白(LDL),高比重リポ蛋白(HDL)

トリグリセリドを多く含むのはカイロミクロン(食物由来のTG)とVLDL(肝臓生成のTG)です。単独で高TG血症を認めるⅣ型とコレステロール上昇を伴うIIb型、Ⅲ型は特に動脈硬化との関連が指摘とされています。一方で、極端にTGが高値(1000mg/dLを超える)を示すのはCM主体のI型とV型です。こちらは膵炎のリスクが高まるとされています。

動脈硬化や膵炎の予防を目的にフィブラート系薬が投与される点は押さえておきたいですね

リピディルは脂質異常症の表現型によって開始用量の設定あり

リピディルは表現型の種類によって開始用量が決まっています。Ⅱb型とⅢ型は通常量の下限106.6mgから始めます。これは、肝障害のリスクを減らすためです。臨床試験においてⅡb型とⅢ型グループの方では106.6mgと159.9~160mgで有効性が同等とされています。一方で、虚血性疾患のリスクファクターがある場合は、開始用量は通常量の上限(159.9~160mg)です。

また、Ⅳ型とⅤ型では、53.3mgの低用量から始めます。臨床試験において少量投与で有効性が認められているからです。こちらも肝障害のリスクを低下させるための用量設定と考えられます。

表現型リピディルの開始用量理由
I
IIa
IIb106.6mg
ハイリスクは159.9~160mg
肝障害のリスク低減
106.6mg
ハイリスクは159.9~160mg
53.3mg
53.3mg

.総コレステロール及びトリグリセライドの両方が高い高脂血症(IIb及びIII型)には、1日投与量を106.6mgより開始すること。なお、これらの高脂血症患者において、高血圧、喫煙等の虚血性心疾患のリスクファクターを有し、より高い治療目標値を設定する必要のある場合には1日投与量を159.9mg(53.3mgを3錠)~160mg(80mgを2錠)とすること

.トリグリセライドのみが高い高脂血症(IV及びV型)には、1 日投与量 53.3mg においても低下効果が認められているので、1 日投与量を53.3mgより開始すること

リピディル錠 電子添文

フィブラート系薬:ガイドラインの推奨

パルモディア、リピディル、ベザトールSRは、高トリグリセリド血症かつ低HDL血症を認める脂質異常症に推奨されています。TGは冠動脈疾患や脳梗塞発症の危険因子であり、TG低下作用により脳心血管イベントの抑制が期待できるからです。フィブラート薬はスタチン併用の有無に関わらず、TG低下療法の選択肢に挙げられています。オメガ脂肪酸エチル製剤(エパデール、ロトリガ)、ニコチン酸誘導体(コレキサミン)も同様の扱いです。

また、パルモディア、リピディル、ベザトールSRは高トリグリセリド血症かつ低HDL血症を認める脂質異常症を合併する脂質異常症においてスタチンとの併用療法が提案されています

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

といっても

フィブラート系薬が脳心血管イベントを抑制できるかは議論のあるところです。2型糖尿病患者を対象にしたFIELD試験とACCORD試験においてフェノフィブラート群はプラセボに比べて、主要な脳心血管イベントを抑制できなかったからです。FIELD試験の事後解析やACCORD試験のサブ解析において、高TG血症かつ低HDL-C血症を認める患者では、脳心血管イベントの抑制効果が認められたものの、続くPROMINENT試験(高TG血症かつ低HDL-C血症を認める患者を対象に、脳心血管イベントの抑制効果を検証)においてもペマフィブラートが心血管イベントを抑制できない見込みとして臨床試験が中断されました。

「LDL-Cが減る」「動脈硬化疾患が減らせる」という図式が成り立つ一方で、「TGが減る」「動脈硬化疾患が減らせる」というわけではないのですね

パルモディア、リピディル、ベザトールSRの投与方法

パルモディアパルモディアXRリピディルベザトールSR
投与回数2回/日1回/日1回/日2回/日
投与時点の記載朝と夕朝と夕
食後投与の記載食後食後
食事の影響なしなしありなし
徐放性

ポイントは大きく3つです。

服薬アドヒアランスに優れる(リピディル、パルモディアXR)

パルモディアとベザトールSRは半減期が短く(それぞれ約2時間、約3時間)、1日量を2回に分けて投与します。一方で、リピディルは1日1回型の製剤です。半減期が長く(約22時間)、1日量を1回にまとめて投与できます。

服薬アドヒアランスを考えると、リピディルに優位性があると思います。今後、服薬回数を減らせるパルモディアXR(1日1回型)が発売予定(発売されました!)です。従来薬からの切り替えが進みそうですね。

ベザトールSRは1日量をまとめて投与するとどうなるのか?調べてみると400mg分1投与は推奨されていません。臨床試験において400mg分1投与は400mg分2投与に比べて有効性が劣るからです。アドヒアランスが悪い人は、リピディル等へ変更を検討するかたちですね。

KISSEI Medical Navi ベザトールSR錠は、1日1回400mgで投与してもよいですか?

食事の影響あり(リピディル)

リピディルは食後投与と記載があります。空腹時投与は食後投与に比べてAUCが低下するためです。空腹時に服用すると、食後投与に比べてCmaxが約50%、AUCが約20%低下します。一方で、パルモディアは食事の影響を受けません。食前投与も可能です。空腹時投与と食後投与でAUCの大きな変化はありません。

パルモディア錠、リピディル錠、インタビューフォーム

リピディルが食後投与である点は、記事を書くにあたって知りました。盲点かも…^_^

ちなみに、ベザトールSRも食後投与と電子添文に記載がありますが、食事の影響は特にありません(リピディルとの違いです)

絶食と非絶食時の薬物動態を検討した試験において、CmaxとAUCは大きく変わらないことが示されています。空腹時投与の有効性、安全性は確認されていません

KISSEI Medical Navi ベザトールSR錠の用法は食後投与ですが、空腹時に投与するとどうなりますか?

徐放製剤(ベザトールSRとパルモディアXR)

ベザトールSR(Sustained Release:放出を持続させる)
パルモディアXR(Extended Release:徐放性)

ベザトールSRは徐放性の製剤です。半分に割ったり、粉砕して投与できません。嚥下機能が悪い人には不向きですね。今後発売されるパルモディアXRも徐放性の製剤です。同様に半割や粉砕ができません。

パルモディア、リピディル、ベザトールSR:腎機能障害の対応

パルモディアリピディルベザトールSR
排泄胆汁
禁忌なしCre ≧ 2.5
(mg/dL)
Ccr<40
(mL/min)
Cre ≧ 2.0
(mg/dL)
減量eGFR<30
(mL/min/1.73㎡)
1.5 ≦Cre<2.5
(mg/dL)
40 ≦Ccr<60
(mL/min)
1.5<Cre<2.0
(mg/dL)
50<Ccr<60
(mL/min)
減量時の対応1回量を減らす
投与間隔を延長する
最大用量0.2mg/日
1回量を減らす
投与間隔を延長する
200mg×1
腎機能障害のある人がスタチンと併用する場合の注意事項HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用すると横紋筋融解症のリスク
治療上やむを得ない場合にのみ投与
少量から投与を開始
定期的に副作用のモニタリングを行う
モニタリング

順番にポイントを見ていきましょう!

相違点

パルモディアは胆汁排泄型の薬剤です。排泄遅延に伴う副作用のリスクが低く、慢性腎臓病や透析患者さんにも使用できます(禁忌ではない)。ここが魅力ですね!

実は、発売当初のパルモディアは「中等度以上の腎機能障害のある患者(Cre2.5mg/dL以上が目安)」の方には禁忌でした。それが、2018年に「血清クレアチニン値が 2.5mg/dL以上又はクレアチニンクリアランスが 40mL/min 未満の腎機能障害のある患者」に改められました。重症度を表す「中等症」と「Cre値」の間に乖離があり、現場の混乱を招く可能性があったからです。その後、腎不全患者への安全性が確認され、禁忌が撤廃された経緯があります。

パルモディア錠、使用上の注意改訂のお知らせ

一方で、リピディルとベザトールSRは腎排泄型の薬剤です。血清クレアチニン値(リピディルはクレアチニンクリアランス値も記載)が基準を超えると禁忌になります。

リピディルは禁忌の基準が血清CreとCcrのダブル記載です。
もともと、Creのみの表記でしたが、2018年に改訂されました

ここで、疑問が生じます。たとえば、Creが2.0mg/dLでCcrが30mL/minの場合、Creを見ると投与可なのに対して、Ccrを見ると禁忌に当たるからです。

日本動脈硬化学会の見解では、今まで通りCreの評価で構わないことになっています。

もちろん、Ccrで判断し投与を見送ることも可能です。結局のところ、必要性と副作用のリスクを鑑みて個別判断だと思います。

クレアチニンクリアランスの基準(40mL/min 未満)が追加されたことで、改訂前(血清ク レアチニン値が 2.5mg/dL 以上)よりも禁忌の対象範囲が拡大したのでしょうか?

今回の改訂は、添付文書の記載内容を整備することを目的としており、禁忌の対象範囲の拡大を目的としたものではありません。これまで通り、血清クレアチニン値で投与の可否を判断することで差し支えありません

脂質異常症治療薬の添付文書変更に関する日本動脈硬化学会の見解

共通点①

パルモディア、リピディル、ベザトールSRを投与する場合、腎機能に応じた投与設計が欠かせません。横紋筋融解症の発現リスクが高まるからです。減量基準は薬剤ごとに異なり、やや煩雑な印象ですね。

胆汁排泄型のパルモディアは基準が緩くeGFRが30以上あれば、通常量投与できます。

共通点②

パルモディア、リピディル、ベザトールSRは横紋筋融解症の発現に注意が必要です。特に、腎機能障害のある患者さんにスタチンと併用する場合はリスクが高まります。以前は、いずれの薬剤も原則禁忌の扱いでした。しかし、スタチンとフィブラート系薬の併用が必要な症例もあり、海外の添付文書、国内の副作用報告等の調査により、2018年に添付文書が改訂、禁忌の削除と以下の文言が重要な基本的注意等に記載された経緯があります。

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に、本剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用する場合には、治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること。急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすい。やむを得ず併用する場合には、本剤を少量から投与開始するとともに、定期的に腎機能検査等を実施し、自覚症状(筋肉痛、脱力感)の発現、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇並びに血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合は直ちに投与を中止すること

パルモディア、リピディル、ベザトールSR電子添文

調査結果報告書(スタチンとフィブラート薬の併用に関して)

腎機能障害がある人にスタチンと併用する場合は、減量が必要であること、また投与中は筋肉痛や倦怠感等の自覚症状や、定期的な腎機能検査等を行う必要がある点は押さえておきましょう!

(スタチン併用の有無に関わらず)リピディルとベザトールSRは投与中、腎機能チェックが欠かせません。腎機能に応じた禁忌の設定、投与量調節が必要であり、排泄遅延に伴う副作用のリスクもあるからです。腎排泄型の薬剤なので、当たり前の対応ですね。ちなみにパルモディアについては特に記載がありませんでした(スタチンとの併用時は除く)

(リピディル)

高齢者:53.3mgから開始するなど投与量に十分注意すること。特に腎機能については投与中も血清クレアチニン値を定期的に確認するなど注意すること。一般に肝・腎機能が低下していることが多く、また、体重が少ない傾向があるなど副作用が発現しやすい。

(ベザトールSR)

高齢者:腎機能については投与中も定期的に臨床検査等を行い、常に機能低下がないかどうかを確認し、異常が認められた場合には直ちに投薬を中止して、さらに腎機能悪化が進行しないよう適切な処置を行うこと

各薬剤の電子添文より

パルモディア、リピディル、ベザトールSR:肝機能障害の対応

パルモディアリピディルベザトールSR
排泄胆汁
禁忌重篤な肝障害、肝硬変のある患者(Child-Pugh分類BC)、胆道閉塞のある患者
胆石のある患者
肝障害のある患者
胆のう疾患のある患者
減量肝障害のある患者(Child-Pugh分類A)、肝障害の既往歴のある患者(考慮)肝機能検査に異常のある患者、肝障害の既往歴のある患者
減量時の対応1回量を減らす
考慮
1回量を減らす
モニタリング

ポイントは2つあります。

投与前の注意事項

パルモディアとリピディルは投与前に肝機能のチェックが欠かせません。禁忌該当の有無、減量の要否等を判断しなければならないからです。比べると禁忌の基準は、リピディルの方が厳しく設定されています。パルモディアは重篤ではない肝障害、Child-Pugh分類Aの肝硬変には使用可能ですが、リピディルは肝障害の記載であり、重症度を問わず肝機能障害がある方は禁忌にあたると考えられるからです。

減量の対応にも違いがあります。リピディルは53.3mgより開始ですが、パルモディアは必要に応じて減量(0.2mg/日から開始)を考慮となっています。

リピディルは必ず減量(一律の対応)、パルモディアは必要に応じて減量(個別の対応)というかたちですね。

(パルモディア)

肝障害のある患者(Child-Pugh分類Aの肝硬変のある患者など)又は肝障害の既往歴のある患者に投与する場合には、必要に応じて本剤の減量を考慮すること。

(リピディル)

肝機能検査に異常のある患者又は肝障害の既往歴のある患者には、1日投与量を53.3mgより開始すること

各薬剤の電子添文より

投与中の注意事項

パルモディアとリピディルは投与中、肝機能の検査値をモニタリングする必要があります。肝機能障害発現のリスクがあるからです。この点、ベザトールSRには特に記載がありません。(といっても、重大な副作用に肝機能障害、黄疸の記載があり、同様に注意が必要と思われます)

(パルモディア)

本剤は肝機能及び肝機能検査値に影響を及ぼすことがあるので、投与中は定期的に肝機能検査を行うこと。

(リピディル)

本剤は肝機能及び肝機能検査値に影響を及ぼし、AST、ALT、γ-GTP、LDH、ALPの上昇、黄疸、並びに肝炎があらわれることがあるので、肝機能検査は投与開始3カ月後までは毎月、その後は3カ月ごとに行うこと

各薬剤の電子添文より
投与12週時点における肝障害:有害事象の割合
プラセボペマフィブラート微粉化フェノフィブラート
0.2mg/日
657例
0.4mg/日
320例
100mg/日
122例
200mg/日
140例
2.7%2.7%3.8%13.9%24.3%
パルモディア審議結果報告書

臨床試験の併合解析によると、パルモディアの方が頻度が低いことが示されています

まとめ

今回は「フィブラート系薬」をテーマに、汎用薬であるパルモディア、リピディル、ベザトールSRの特徴について比較しながら解説しました。

記事を書きながら思ったのは、同じフィブラート系薬であるのに、違いが多いこと!

特に、SPPARMαとPPARαアゴニストの違い。転写領域の選択性により、安全性が向上した点は興味深かったです。パルモディアは腎不全の方にも使えるし、肝機能障害の頻度も少ないのが魅力ですね。ただ、併用禁忌には注意が必要です…。

あと、腎機能障害と肝機能障害に対する各薬剤の対応。禁忌、減量基準、モニタリング項目等、まちまちです。あらためて、処方監査の徹底と服薬後のフォローが大切だと感じました。

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