今回のテーマはケレンディア錠!一般名はフィネレノン、国内4番手のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA:Mineralocorticoid receptor antagonist)です。

・どのような特徴があるのか?
・従来のMRAとの違いは何か?
勉強がてら調べたので、共有したいと思います。
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の種類
はじめに基本情報の確認から。ケレンディアの登場により国内で使用できる経口ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は4種類になりました。
| 一般名 | フィネレノン | エサキセレノン | エプレレノン | スピロノラクトン |
|---|---|---|---|---|
| 商品名 | ケレンディア | ミネブロ | セララ | アルダクトン |
| 分類名 | 非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 | 選択的ミネラルコルチコイド受容体ブロッカー | 選択的アルドステロンブロッカー | 抗アルドステロン性利尿・降圧剤 |
| 国内販売年 | 2022年6月 | 2019年5月 | 2007年11月 | 1978年4月 |
| 適応 | ・2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ・慢性心不全 | 高血圧症 | ・高血圧症 ・慢性心不全 | ・高血圧症(本態性、腎性等) ・心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、悪性腫瘍に伴う浮腫および腹水、栄養失調性浮腫 ・原発性アルドステロン症の診断および症状の改善 |
| 用法用量 eGFRの単位はmL/min/1.73m2 | 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 eGFR>60 20mg eGFR<60 10mg 4週間後を目安に20mgへ 慢性心不全 eGFR>60 20mg 4週間後を目安に40mgへ 25≦eGFR<60 10mg 4週間後を目安に20mgへ | 1回2.5mg 1日1回 (最大5mg) | 高血圧 1回50mg 1日1回 (最大100mg) 慢性心不全 1回25mg 1日1回 (最大50mg) | 1日50〜100mg を分割投与 |
| 腎障害患者への投与 eGFRの単位はmL/min/1.73m2 | 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 末期腎不全(eGFR15未満) 透析患者 適応外 慢性心不全 eGFR<25 適応外 | 重度の腎機能障害eGFR<30 禁忌 | 高血圧 腎機能障害 (Ccr<50) 禁忌 慢性心不全 重度の腎機能障害(Ccr <30) 禁忌 | 急性腎不全 禁忌 |
セララとミネブロの違いは別記事にまとめているのであわせてご確認くださいね。





ここからは、ケレンディアの特徴についてポイントを見ていきましょう。大きく7つです。
- 薬効分類
- 作用機序
- 適応
- 有効性
- 投与方法
- 副作用
- 相互作用
ケレンディアの薬効分類
ケレンディアは
(非ステロイド型・選択的)ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬です



キーワードは2つ。①非ステロイド骨格であり②MRに対する選択性に優れます。メリットは性ホルモン関連の副作用が軽減できる点です。月経困難や女性化乳房などの発現リスクが軽減されています。


受容体に対する親和性が低いほど数値が大きくなります。ケレンディアはアンドロゲン受容体(AR)、グルココルチコイド受容体(GR)、プロゲステロン受容体(PR)、エストロゲン受容体(ER)への作用がほとんどありません。
(作用機序)
フィネレノンは非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬であり、アンドロゲン、プロゲステロン、エストロゲン及びグルココルチコイドの各受容体には結合しない。
ケレンディア錠 電子添文
| ステロイド骨格 | 非ステロイド骨格 |
|---|---|
| スピロノラクトン (アルダクトン) | フィネレノン (ケレンディア) |
| エプレレノン (セララ) | エサキセレノン (ミネブロ) |
| ステロイド骨格 | 非ステロイド骨格 |
|---|---|
| スピロノラクトン (アルダクトン) | フィネレノン (ケレンディア) |
| エサキセレノン (ミネブロ) | |
| エプレレノン (セララ) |
ケレンディアの作用機序
ケレンディアは
MRに結合し、アルドステロンの過剰な働きを抑制します
アルドステロンが過剰に活性化すると何が問題なのか?
大きく2つあります
- 腎臓の障害…糸球体障害、ポドサイト障害、尿細管間質線維化など
- 心臓の障害…心肥大、心筋線維化など





ケレンディアは過剰なアルドステロンの働きを抑えて、腎臓と心臓の保護作用が期待できます。作用機序は従来のMRAと同様ですね。
ケレンディアの適応
| 商品名 | 適応 |
|---|---|
| アルダクトン | 高血圧症(本態性、腎性等) 心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、悪性腫瘍に伴う浮腫および腹水、栄養失調性浮腫 原発性アルドステロン症の診断および症状の改善 |
| セララ | 高血圧症 慢性心不全 |
| ミネブロ | 高血圧症 |
| ケレンディア | 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 慢性心不全(2025年12月追加) |
発売当初の適応(2型糖尿病を合併する慢性腎臓病)について、最初に疑問に思ったのが「糖尿病薬?それとも慢性腎臓病の薬」という点。よく見ると文言からは腎臓病の薬だと読み取れます。「慢性腎臓病を合併する2型糖尿病」ではないし、作用機序から血糖効果作用も期待できないので。後述する有効性からも明らかです。
末期腎不全又は透析施行中の患者を適応外!
ケレンディアは2型糖尿病を合併する慢性腎臓病で使用する場合、末期腎不全(eGFR15未満)や透析患者さんには使用できません。臨床試験の対象に含まれず(使用経験がない)、また高カリウム血症の発現、腎機能低下のリスクが高いからです。慢性心不全で用いる場合は、eGFR25未満は禁忌であり、より投与制限が厳しく設定されています。
両試験の対象患者には末期腎不全又は維持透析中の患者は含まれておらず、使用経験がないこと、腎機能の低下に伴い本剤投与による高カリウム血症の発現リスクが上昇すること、本剤投与後早期にeGFRの低下も認められていること等を踏まえ、投与対象から除外することとした。
ケレンディア錠 インタビューフォーム
ケレンディアの有効性
ケレンディアの処方目的は
・心血管・腎臓障害の発症と進展抑制
・心血管死と心不全による緊急受診・入院のリスク抑制です
FIDELIO-DKD試験
- 対象…2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者※5,674例(うち日本人415例)
①尿アルブミン/クレアチニン比30~<300 mg/g、eGFR 25~<60 mL/分/1.73m2,および糖尿病性網膜症の既往歴、②尿アルブミン/クレアチニン比300~<5000 mg/g、eGFR 25~<75mL/分/1.73m2
※ACE阻害薬又はARB等による標準治療を受けている
- 方法…標準治療に加えてフィネテノン10mg又は20mgを1日1回投与
- 比較…プラセボ
結果は以下のとおり
- 腎複合エンドポイント※…HR0.83(0.73-0.93)P=0.001
※腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン値から40%以上の持続的なeGFR低下、腎臓死 - 二次エンドポイント※…HR0.86(0.75-0.99)P=0.03
※心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+心不全による入院
→2型糖尿病を合併した慢性腎臓病患者において、フィネテノンはプラセボに比べてCKDの進行と心血管イベントのリスクを抑制した



ケレンディアは腎障害の予後を良くしたり、心血管アウトカムの改善効果が期待できます。また、慢性心不全の患者(LVEF40%以上)を対象にしたFINEARTS-HF試験では、心血管死、心不全による入院・緊急受診のリスクが軽減することが示されています。
ただし、日本人集団の解析結果において以下の留意事項があります(2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の患者を対象とした試験)
(効能又は効果に関連する注意)
日本人部分集団では、国際共同第Ⅲ相試験(試験16244)の主要評価項目の腎複合エンドポイントにおいて、本剤のプラセボに対するハザード比は0.911であった一方で、国際共同第Ⅲ相試験(試験16244)の主要評価項目の構成要素の腎不全、及び国際共同第Ⅲ相試験(試験17530)の副次評価項目の腎複合エンドポイントにおいては、本剤のプラセボに対するハザード比が1を上回った。試験の対象となった全体集団と比べて日本人では本剤の腎不全への進展抑制効果が弱い可能性がある。
ケレンディア錠 添付文書
ケレンディアの投与方法
続いて5つ目。ポイントは2つです。
| 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 | 慢性心不全 | |
|---|---|---|
| 投与前 | 血清K値測定 5.5mEq/L超は禁忌 4.8mEq/L以下は開始4週後に再度測定(4.8mEq/L超は開始4週前に再度測定) eGFRを測定 25mL/min/1.73m2未満は慎重投与 末期腎不全、透析患者は適応外 | 血清K値測定 5.5mEq/L超は禁忌 5.0mEq/L以下は開始4週後に再度測定(5.0mEq/L超は開始4週前に再度測定) eGFRを測定 25mL/min/1.73m2未満は禁忌 |
| 初回投与量 | eGFR≧60 20mg eGFR<60 10mg20mg(増量) | eGFR≧60 20mg40mg(増量) 25≦eGFR<60mL 10mg20mg(増量) |
| 用量調節 | 血清K値とeGFRをもとに | 血清K値とeGFRをもとに |
| 中止基準 | 血清K値5.5超の場合 | 血清K値6.0以上の場合 |
| 減量基準 | なし | 血清K値5.5以上6.0未満の場合 20mg10mg(減量) 10mg中止 |
| 増量基準 | 血清K値4.8以下の場合 10mg20mg(増量) 前回からeGFRが30%を超えて低下していない場合に限る | 血清K値5.0未満の場合 20mg40mg(増量) 10mg20mg(増量) 前回からeGFRが30%を超えて低下していない場合に限る |
ケレンディアは腎機能によって初回投与量が決まります。「通常量」か「半量スタート」かはeGFR60が基準です。ポイントは2つあります。一つ目は単位がmL/min/1.73m3である点。標準体型で補正された数値を用います。通常、検査表に書いている数字ですね。ここでは補正を外して薬物投与設計行う場面ではありません。ケレンディアは腎機能に応じて投与量を調節する薬剤ではない(尿中未変化体排泄率は数%)からです。eGFRの読み方や使い方は別記事でまとめているのでご確認くださいね。


二つ目は減量すべき理由。なぜ、60未満で減量が必要なのか?気になりますよね。調べてみると、高カリウム血症とeGFR低下のリスクを軽減するためでした。
(用法及び用量の設定経緯・根拠)
本剤20mg群において、顕性アルブミン尿を呈し、かつeGFRが 60mL/min/1.73 m2未満の集団では、高カリウム血症及び初期のeGFR低下のリスクが高くなる傾向がみられたことから、この集団では20mg1日1回投与が忍容性を認める最大用量と考えた
ケレンディア錠 インタビューフォーム
eGFR60未満の人では、カリウム値の上昇や腎機能の低下が起こりやすいことを踏まえて、臨床試験における用量が設定されました。eGFR60未満の場合に半量(10mg)からスタートし、血清K、腎機能を見ながら4週を目安に20mgに増量するというふうに。
中止後の対応は
投与中止後、血清カリウム値が5.0mEq/L以下に下がった場合には、10mgを1日1回から投与を再開することができる。
ケレンディア錠 電子添文
このように、ケレンディアは腎機能によって投与量が決まり、血清K値とeGFRをもとに投与量の調節を行います。
ACE阻害薬やARBと併用
ケレンディアは
原則、ACE阻害薬やARBと併用します
先述のように臨床試験において標準治療(ACE阻害薬やARB)に上乗せして有効性が認められたからです。基本的に単独で用いる薬剤ではありません。ケレンディアの投与開始時には併用薬(ACE阻害薬やARB)の確認が必要ですね。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬による治療が適さない場合を除き、これらの薬剤が投与されている患者に投与すること。
ケレンディア錠 電子添文
ケレンディアの副作用


続いて6つ目のポイント。
ケレンディアで注意すべき副作用は?
高カリウム血症と腎機能低下です
臨床試験における頻度は以下のとおりでした。
(FIDELIO-DKD)副作用(臨床検査値異常を含む)は本剤群で2827例中646例(22.9%)に認められた。主な副作用は高カリウム血症333例(11.8%)、血中クレアチニン増加44例(1.6%)、低血圧42例(1.5%)、糸球体ろ過率減少39例(1.4%)であった。
ケレンディア錠 電子添文
- 高カリウム血症はなぜ起こるのか?
-
アルドステロンの働き(集合管におけるNaの再吸収とKの排泄)を妨げるからです。カリウムの排泄が阻害された結果、高カリウム血症を引き起こします。
- 腎機能低下はなぜ起こるのか?
-
添付文書やインタビューフォームを調べましたが、明確な記載は見つけられませんでした。おそらく、アルドステロンの働き(Naの再吸収→水分貯留)を妨げることにより、循環血漿量が減少して、糸球体ろ過量を低下させるからだと考えられます。
RMP(医薬品リスク管理計画)にも記載があります
- 重要な特定されたリスク…高カリウム血症
- 重要な潜在的リスク…腎機能低下
高カリウム血症のリスク因子は3つです
(高カリウム血症の発現リスクが高い患者)以下のような患者では、より頻回に血清カリウム値を測定すること。高カリウム血症の発現リスクが高まるおそれがある。
①eGFR低値、②血清カリウム高値、③高カリウム血症の既往歴
ケレンディア錠 電子添文
eGFR25未満は慎重投与です!
(効能又は効果に関連する注意)本剤投与によりeGFRが低下することがあることから、eGFRが25mL/min/1.73m2未満の患者には、リスクとベネフィットを考慮した上で、本剤投与の適否を慎重に判断すること
ケレンディア錠 電子添文
ケレンディア投与中は、高カリウム血症と腎機能低下についてフォローアップを行う必要があります。
ケレンディアの相互作用
最後に7つ目のポイント。
ケレンディアは
CYP3A4を介する相互作用のチェックが欠かせません!
併用禁忌に加えて併用注意の記載が多くあるからです。ケレンディアはCYP3A4により代謝を受けて失活します。
押さえておきたい禁忌薬
・イトラコナゾール(イトリゾール)
ケレンディア錠 電子添文
・ポサコナゾール(ノクサフィル)
・ボリコナゾール(ブイフェンド)
・リトナビル含有製剤(ノービア、カレトラ、パキロビッド)
・ダルナビル(プリジスタ)
・ホスアンプレナビル(レクシヴァ)
・コビシスタット含有製剤(ゲンボイヤ、シムツーザ、プレジコビックス)
・クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)
・エンシトレルビル(ゾコーバ)
・ロナファルニブ(ゾキンヴィ)
臨時的に処方されるイトラコナゾールとクラリスロマイシンは見落としそうなので注意が必要だと思います。
カリウム値を上昇させる薬剤との併用に注意!
・抗MR薬
スピロノラクトン、トリアムテレン、カンレノ酸カリウム、エプレレノン、エサキセレノン)
ケレンディア錠 電子添文
・カリウム製剤
・スルファメトキサゾール/トリメトプリム
カリウム製剤とST合剤は予想通りですが、他のMRA薬と併用注意になっている点は意外でした。適応が異なるから併用できるみたいですね。でも、その際にはカリウム値のモニタリング強化が求められます。
(併用注意)スピロノラクトン、トリアムテレン、カンレノ酸カリウム、エプレレノン、エサキセレノン
血清カリウム値上昇及び高カリウム血症が発現する危険性が増大するおそれがあるので、治療上必要と判断される場合にのみ併用すること。併用する場合には、血清カリウム値をより頻回に測定するなど患者の状態を慎重に観察すること。
ケレンディア錠 電子添文
ケレンディアは①CYP3A4を介した相互作用と②カリウム上昇の可能性がある薬剤との併用に注意が必要な点は押さえておきたいですね。
慢性心不全の適応で1回40mgを投与する場合には、治療域が狭くCYP3AやCYP2C8で代謝される薬剤との併用に注意が必要です。詳細は電子添文をご確認ください。
まとめ
今回はMR拮抗薬のケレンディア(フィネレノン)について特徴をまとめました。記事を書きながら印象に残ったのは、従来薬と位置付けが異なる点。ケレンディアは2型糖尿病でCKDを合併した人の予後を改善する効果が期待できます。最近ではSGLT2阻害薬が話題ですが、どのような使い分けをするのか?使用動向に注目していきたいです♪
- 分類
…MRA(非ステロイド型・選択的) - 作用機序
…集合管でMRに結合、アルドステロンの作用を妨げる - 適応
…2型糖尿病を合併した慢性腎臓病(従来薬との相違点!)
…慢性心不全(2025年12月追加) - 有効性
…腎臓障害の発症、進展抑制(FIDELIO-DKD)
…心血管アウトカムの改善(FIGARO-DKD)
…心血管死、心不全による入院・緊急受診のリスク低減(FINEARTS-HF試験) - 投与方法
…初回1日1回20mg(eGFR60mL/min/1.73m2未満は10mg)
…ACE阻害薬やARBと併用(原則)
2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の場合 - 副作用
…高カリウム血症、eGFR低下 - 相互作用
…CYP3A4、併用禁忌あり

