抗血栓薬

DOACは消化管出血が起こりやすい!?【安全に使用するためのポイントを解説!】

DOACの処方がホントに増えてきました。

やっぱり、簡便に投与できて、しかも安全性が高い!のがDOACのいいところ。

・一方で、意外と知られてないのが、消化管出血のリスク!投与中に吐血や下血などを認めることは少なくありません。

今回は、DOACの消化管出血に注目。安全使用のために、薬剤師が押さえておきたいポイントを解説します。

DOACの消化管出血リスクとは?

ワルファリンよりも消化管出血が起こりやすい

DOAC大規模臨床試験のメタ解析(2014年)によると、有効性と安全性に関して「DOACはワルファリンに比べておおむね優れている」ことがわかっています。

・脳卒中/全身性塞栓症…DOACで有意に減少 (RR 0.81 : 0.73-0.91; p<0.0001)
・頭蓋内出血…DOACで有意に減少 (RR 0.48 : 0.39-0.59; p<0.0001)
・大出血…ワルファリンと同程度 (RR 0.86 : 0.73-1.00; p=0.06)
・消化管出血…DOACで有意に増加 (RR 1.25 : 1.01-1.55; p=0.04)
※参考文献 Lancet 383 : 955-962, 2014

ここで、注目すべきは消化管出血。

・ワルファリンに比べて、頭蓋内出血のリスクを約52%低下させる一方で、消化管出血のリスクを約25%増加させるという結果でした。

致死的となる頭蓋内出血を抑えるのはDOACの強みですが、投与中の消化管出血には注意が必要です。

消化管出血が起こりやすい理由

なぜ、DOACは消化管出血リスクが高いのか?

全身作用に加えて消化管での局所作用がプラスされるためです。DOACは成分自体に活性があるので、吸収される前に消化管内で直接抗凝固作用を発揮します。

一方、ワルファリン自体は直接抗凝固作用を示しません。消化管で吸収されたあとに、肝臓でビタミンK依存性の凝固因子の生成を阻害して薬効を発揮するからです。

クスリの成分自体に薬効があるかどうか?この違いによって、消化管出血リスクの程度が変わると考えられています。

※ここで、補足です。プロドラッグであるプラザキサ。成分自体に活性はないですが、消化管内でエラスターゼにより活性化されると推定されています。

消化管出血のリスクが高いDOACは?

消化管出血における安全性は、DOACごとでリスクがまちまちです。

プラザキサ プラザキサ イグザレルト エリキュース リクシアナ
大規模臨床試験 RE-LY RE-LY (J)ROCKET-AF ARISTOTLE Engage AF-TIMI48
1日用量 300mg 220mg 15mg 10mg 60mg
消化管出血 劣性 非劣性 劣性 非劣性 劣性

ワルファリンに比べて劣性を示したDOACは3種類です。

  • 高用量プラザキサ
  • イグザレルト
  • リクシアナ

イグザレルトは海外用量20mgのROCKET試験で劣性を認めたものの、日本人を対象としたJ-ROCKET試験では、上部と下部ともに消化管出血の発生頻度が低いことが示されました。

・となると、国内承認用量でワルファリンに比べて消化管出血リスクが有意に高いのは、高用量プラザキサとリクシアナの2つです。

プラザキサの消化管出血リスクは、なぜ高いのか?

バイオアベイラビリティの低さが一因?!

わずか約6.5%しかありません。低すぎます。ほとんど吸収されずに消化管内に滞留した成分が腸内細菌叢でエラスターゼで活性化され、投与量の大半が消化管内で薬効を発揮している可能性が考えられます。

リクシアナの消化管出血リスク、高いのはなぜ?

1日1回の投与方法が原因!?

はっきりしたことはわかっていませんが、1日量まとめて1回で飲む方が、2回に分割して飲むよりも消化管内での血中濃度が高くなるからでしょうか?

消化管出血のリスクが低いDOACは?

ワルファリンに比べて、消化管出血リスクを増加させなかったDOACは以下の2種類です。

  • 低用量プラザキサ
  • エリキュース

「DOACは消化管出血のリスクが高い」といっても個別で見ると違いがあります。覚えておくと処方提案や副作用モニタリングなどで、使えるかも…です。

下部消化管出血が起こりやすいDOACは?

プラザキサです。

DOACの種類によって出血部位が異なります。知ってましたか?

Xa阻害薬やワルファリンは上部消化管の出血頻度が高いのに対して、プラザキサは下部消化管出血の割合が比較的高いのが特徴です。

プラザキサはバイオアベイラビリティが低く、プロドラッグであるためと考えられています。

消化管出血の部位別の割合は以下のとおりです。

▽RE-LY試験
・プラザキサ…上部53% vs 下部47%
・ワルファリン…上部75% vs 下部25%

▽ARISTOTLE試験
・エリキュース…上部75.5% vs 下部24.5%
・ワルファリン…上部76.5% vs 下部23.5%

出血が起こりやすい部位は、抗トロンビン薬とXa阻害薬とで異なる傾向があります。もしかすると、胃潰瘍の既往がある人はプラザキサの方が安全だったりするのかも知れないですね。

消化管出血を予防するためにできること

DOACの消化管出血の予防において、薬剤師が介入できるポイントは大きく2つです。

  1. 予防薬、代替薬を提案する
  2. 処方監査を徹底する

消化管出血リスク低減のために予防薬、代替薬を提案する

消化管出血を予防するクスリといえば、何でしょうか?

やはりプロトンポンプ阻害薬(PPI)ですよね。まっ先に頭に浮かびます。粘膜防御系という選択肢もありますが、メジャーなのはPPIですね。

・NSAIDsや低用量アスピリン投与中の消化性潰瘍の二次予防に、PPIが推奨されているのは有名です。保険適応ではないにせよ、一次予防でもPPIの投与が提案されています。

参考文献)消化性潰瘍診療ガイドライン2015

DOAC投与中の消化管出血予防にPPIは使えない

・一次予防、二次予防ともに保険適応はありません。

消化性潰瘍診療ガイドラインを見ても、消化管出血を予防するためにDOACにPPIを併用するとは書いてないのです。

NSAIDsや低用量アスピリンと違って、DOAC投与中にPPIの投与は推奨されていません。

DOACの場合、消化管出血の予防はどうしたら良いのか?

2015年に、DOAC投与中の消化管出血に対する予防薬について、後ろ向きコホート研究が報告されています。

・ダビガトラン投与5,041例のうち、消化管出血を認めたのは124例(約2.5%)で、下記3つのハイリスク因子が明かになりました。

  • 75歳以上…罹患率比 2.47倍(1.66-3.68)
  • 消化性潰瘍、消化管出血の既往…罹患率比 2.31倍(1.54-3.46)
  • アスピリン併用…罹患率比 1.52倍(1.03-2.24)

一方で、PPIやH2拮抗薬の投与は、消化管出血のリスクを低下させました。だいたい、40%くらいリスクを下げる効果があるようです。

  • PPI投与…罹患率比 0.53倍(0.31-0.91)
  • H2拮抗薬投与…罹患率比  0.61倍(0.40-0.94)

さらに、このリスクの減少が著しかったのは以下のケースでした。

  • 上部消化管出血…罹患率比 0.29倍(0.15-0.54)
  • 消化管出血、消化性潰瘍既往歴…罹患率比 0.14倍(0.06-0.30)

※参考文献 Gastroenterology. 149:586-95.2015.

この結果から、いえることは以下の3点です。

  1. PPIやH2拮抗薬はダビガトラン投与中の消化管出血のリスクを下げる
  2. 特に、下部よりも上部消化管出血に対する予防効果に優れる
  3. 消化管出血、消化性潰瘍の既往歴、つまり二次予防において効果的

さすがに、一律投与は良くないにせよ、年齢や消化管出血の既往、併用薬などから消化管出血ハイリスク例にはPPIやH2拮抗薬の予防薬投与について、主治医と相談してみるのもいいかも知れないですね。

今後、ガイドラインとかも変わるのでしょうか?注目ですね。

消化管出血を減らす代替薬は?

たとえば下記です。

  • 消化管出血リスクが低いDOACへ変更する
  • ワルファリンへ変更する

消化管出血リスクを下げる選択肢として考えられます。

消化管出血を繰り返す場合や併用薬からリスクが高いケースでは、主治医に相談してみるのも良いかも…です。

処方監査を徹底する

DOACは腎機能に応じて、投与量設計が必要です。

投与の可否、減量の要否を確認するためにeGFRなどのチェックが欠かせません。

腎排泄の割合が高く、要注意な薬剤は?

一番、腎排泄率が高いDOACは?どれでしょう。

尿中未変化体排泄率は以下のとおりです。

・プラザキサ…約80%
・イグザレルト…30〜40%
・リクシアナ…約35%
・エリキュース…約27%

プラザキサが、ダントツの高さですね。高齢者やCKD患者では特に注意が必要です。

・ブルーレター後の市販直後調査・最終報告では、重篤な出血事象が139例、そのうち15例が死亡。うち、腎機能障害を認めた13例。そのうち6例はeGFR30未満の禁忌であったとのこと。しかも、重篤な出血事象の約6割が消化管出血でした。

腎機能のチェックを怠ると、重篤な出血性合併症、特に消化管出血を招くことが容易に想像できます。

DOACを見たらeGFR(mL/min)のチェック!

これが基本です。プラザキサに限りません。

腎機能は加齢や併用薬、脱水の影響により変動するので、初回だけでなく、毎回確認することを習慣にしましょう。

それにeGFRの単位にも気をつけないといけません。
血液検査票に載っている値(mL/min/1.73㎡)、そのままはダメです。標準体型に補正した数値だからです。個々の体表面積に換算した値(mL/min)を使ってくださいね。

早期発見と副作用のモニタリングのポイント


消化管出血の兆候を素早くキャッチできるかどうかに、かかっています。

まずは自覚症状のチェック!

DOAC投与中は、患者さんから副作用の聴取が欠かせません。

・自覚症状…胃部不快感や食欲不振、血便、貧血症状(ふらつきや倦怠感など)

排便時の観察も大事!

早期発見のためには、血便にいち早く気づくことが大切です。患者さんには排便時の観察が重要であることも説明しておきましょう。

次は、血液検査値のチェック!

消化管出血の評価に血液検査値は有用です。

・検査チェック項目…ヘモグロビン(Hb)や尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cre)など

中でも、おすすめはBUNとCre

BUN/Cre比が30を超えると上部消化管出血の可能性が高いと判断できます。

・BUNの数値がCreに比べて30倍以上になったときです。

どういうことなのか?順番に説明します。

消化管出血が起こるとBUNが増加します。
血液に含まれる蛋白が分解されたのちに体内に吸収され、最終的に血中BUN上昇という形で反映されるからです。また、出血により血管内脱水を招くのもBUN上昇につながります。

一方で、Creの数値は大きく変わりません。
腎機能低下による影響は受けるものの、消化管出血の影響は受けにくいからです。

結果、消化管出血の際にはBUN/Cre比が増加します。

BUN/Cre比は出血部位の推定に使うこともできる!

BUNは上部消化管出血の方が上昇します。

出血した血液が分解されて吸収される量が下部よりも増えるからです。BUNとCreの乖離が大きいほど、上部消化管で出血が起こっている可能性が高くなります。

消化管出血は、頭蓋内出血に比べ、早期に発見し適切な処置を行えばリスクを最小化できるので、自覚症状に加えて定期的なHb、BUN、Creのチェックが早期発見、モニタリングが大切です。

まとめ

最後にまとめておきますね。

ポイントは以下のとおりです。

▽DOACの消化管出血リスクとは?

  • DOACは全体として、ワルファリンよりも消化管出血リスクが高い。全身性の抗凝固作用に加えて、消化管内での局所作用に起因すると考えられている。
  • 個別で見ると、ワルファリンに比べて、高用量プラザキサとリクシアナ、イグザレルト(国内臨床試験ではワルファリンよりも少ない)が劣性。低用量プラザキサとエリキュースは非劣性です。

▽消化管出血を予防するためにできること

  • 処方監査…腎排泄性薬剤のため、腎機能に応じた投与量設計が必要です。eGFRチェックによる過量投与を防ぐことが大切。特にプラザキサ!
  • 予防薬…PPIやH2拮抗薬で消化管出血を予防できるとの報告あり(現時点で保険適応外)

▽早期発見とモニタリングのポイント

  • 胃部不快感や食欲不振、貧血症状(ふらつきや倦怠感など)などの自覚症状に加えて、BUN、Creのチェックが有用。BUN/Cre>30を超えると上部消化管出血のリスクが高いと判断できる!

★ ★ ★ ★ ★
今回はDOACの消化管出血に注目。安全管理のために薬剤師が押さえておきたいことを解説しました。

DOAC投与中は、「便が黒くなったり血が混じることはないですか?」というフレーズが決まり文句になりそうですね。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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