クロピドグレルとプラスグレルの特徴、共通点と相違点をまとめてみた!

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今回のテーマは

クロピドグレルとプラスグレルの特徴!

どちらもチエノピリジン系の抗血小板薬です。

どのような特徴があるのか、共通点相違点をまとめたので共有します。

それでは、見ていきましょう。

目次

クロピドグレルとプラスグレルの基本情報

まずは、基本情報の比較から。

一般名クロピドグレルプラスグレル
製品名プラビックスエフィエント
国内販売日2006年5月2016年5月
分類チエノピリジン系チエノピリジン系
作用機序血小板のP2Y12受容体を阻害
(血小板凝集を抑制)
血小板のP2Y12受容体を阻害
(血小板凝集を抑制)
規格25mg/75mg2.5mg/3.75mg/5mg/OD20mg
禁忌・出血している患者(血友病、頭蓋内出血、消化管出血、尿路出血、喀血、硝子体出血等)
・過敏症の既往歴のある患者
・出血している患者(血友病、頭蓋内出血、消化管出血、尿路出血、喀血、硝子体出血等)
・過敏症の既往歴のある患者
適応症①経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される
・急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
・安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
②虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制
③末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制
①経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される
・急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
・安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
② 虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る
用法用量①75mg×1(負荷投与300mg)
②75mg×1(50mgに減量可)
③75mg×1
①3.75mg×1(負荷投与20mg)
②3.75mg×1
※体重<50kg…2.5mg考慮
投与回数1日1回1日1回
プロドラッグ
CYP相互作用CYP2C19…オメプラゾール、リファンピシン
CYP2C8…レパグリニド、セレキシパグ
特になし

ここからは共通点と相違点を見ていきます。

クロピドグレルとプラスグレルの共通点

大きく3つあります。

  1. チエノピリジン誘導体
  2. 作用機序
  3. 用法

チエノピリジン誘導体

まず一つ目の共通点。クロピドグレルとプラスグレルはチエノピリジン誘導体です。

チエノピリジン骨格とは?

ピリジン(窒素Nを一つ含む六員環構造)と
チオフェン(硫黄Sを一つ含む五員環構造)が縮合した二環式化合物

下図のように、どちらもチエノピリジン骨格を有しています。

参考までに

チクロピジン(商品名パナルジン)もチエノピリジン誘導体です。

パナルジン錠、インタビューフォームより

作用機序

続いて2つ目の共通点。

クロピドグレルとプラスグレルは作用機序が同じです。

クロピドグレル…P2Y12受容体拮抗薬
プラスグレル…P2Y12受容体拮抗薬

ターゲットは血小板のP2Y12受容体。ADPの結合を選択的かつ不可逆的に妨げ、血小板凝集反応を抑制します。血小板が活性化する経路はいくつかありますが、その一つがADPを介したものです。

血小板が活性化する仕組み

エフィエント錠、添付文書

重要な役割を果たすのが、フォンウィルブランド因子 (vWF)や ADPなどの血小板凝集惹起物質です。

(動脈血の高いずり応力による)vWFとGPIb の相互作用により活性化されたGPIIb/IIIaはフィブリノゲンやvWF などの血漿蛋白質と高い結合能を示します。一方で、血小板から放出されたADPはGiタンパクを介して、①PI3キナーゼを活性化、②cAMPの産生低下(Caイオン濃度の増加)により血小板凝集反応を促進します。

vWF:フォン・ウィルブランド因子
PI3K:ホスファチジルイノシトール3キナーゼ
GPIb/IX/V、GPIIb/IIIa:血小板膜糖蛋白

プラスグレルの作用機序

プラスグレル(クロピドグレルも)はADP受容体に結合し、①PI3キナーゼを抑制(GPIIb/IIIaの活性化を阻害)②Caイオン濃度の低下(血小板凝集惹起物質の放出抑制)により血小板凝集反応を妨げます。

用法

最後に3つ目に共通点。

クロピドグレルとプラスグレルはどちらも1日1回投与です。

服薬アドヒアランスの点で優れています。

P2Y12受容体拮抗薬の用法
1日1回

・クロピドグレル
・プラスグレル

1日2回

・チカグレロル

1日2〜3回

・チクロピジン

クロピドグレルとプラスグレルの相違点

相違点も大きく3つあります。

  1. 適応症
  2. 代謝経路
  3. 臨床的な位置付け

適応症

クロピドグレルとプラスグレルは適応に違いがあります。

クロピドグレル
プラスグレル
  1. 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
  2. 虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制
  3. 末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制
  1. 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
  2. 虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る

違いは大きく2つです。

末梢動脈疾患(PAD)の適応
虚血性脳血管障害の対象患者

順番に解説します。

末梢動脈疾患:適応の有無

クロピドグレルは、

末梢動脈疾患(PAD)の血栓・塞栓予防に使えます

海外のCAPRIE試験で(PADを対象とした部分集団解析でも)、アスピリンを上回る血管性イベントの抑制効果が示されているからです。また国内の臨床試験(SFY10810)においても、チクロピジンに比べて複合エンドポイント(脳梗塞、心筋梗塞、血管死、虚血性イベントによる入院)の割合が同程度(0.9% vs 0.9%)でした。

CAPRIE試験

  • 対象…動脈硬化性疾患(脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患等)のある患者19185例(PAD患者6452例)
  • 方法…クロピドグレル75mg/日
  • 比較…アスピリン325mg/日

結果は以下のとおり

  • 脳梗塞、心筋梗塞、血管死
    ・クロピドグレル5.32% vs アスピリン5.83%(p=0.043)
    →8.7%相対リスクを低下
  • 重篤な有害事象…両群で大きな差は認められなかった

→クロピドグレルはアスピリンに比べて血管性イベントのリスクを抑制、安全性も同程度であることが示されました

Lancet 1996; 348: 1329-39

(CAPRIE試験、PAD患者集団の成績)本試験における有効性の主要評価項目とされた、初発の血管性イベント(脳梗塞、心筋梗塞、その他の心血管死の複合エンドポイント)の累積発現率は、本薬群では 0.5 年目 1.3%、 1 年目 3.0%、2 年目 7.1%及び 3 年目 11.9%、アスピリン群では 0.5 年目 2.2%、1 年目 5.0%、2 年目 9.2%及び 3 年目 13.4%であり、Cox 比例ハザードモデルによる本薬群のアスピリン群に対する相対リスク減少率(95%CI)は 23.7%(8.9%〜36.2%)であった。

審議結果報告書、クロピドグレル錠

PADに対する抗血小板療法として推奨されています!

(下肢閉塞性動脈硬化症に対する抗血小板療法)

・症候性ASO患者に対して、脳心血管イベント予防のためにアスピリンを投与する. レベル C
症候性 ASO 患者に対して,脳心血管イベント予防のためにクロピドグレル(clopidogrel)を投与する. レベル C
・症候性 ASO 患者に対して,脳卒中の二次予防のため にシロスタゾール(cilostazol)を投与する.

末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン (2015 年改訂版)

一方で、プラスグレルはPADに適応がありません。作用機序的には効果が期待できそうですが、臨床試験において有効性と安全性が認められていないのが現状です。

虚血性脳血管障害患者:対象の違い

2021年12月にプラスグレルに虚血性脳血管障害の適応が追加されました

従来の治療薬であるアスピリンやクロピドグレル、チクロピジン、シロスタゾールに新たな選択肢が増えたわけです。

しかし、注意すべきは、

プラスグレル対象患者が限定的である点!

具体的には、

  • 脳梗塞の病態が限定
    …アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞
  • 再発リスクが高い人に使用
    …高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、最終発作前の脳梗塞既往のいずれか

(効能又は効果に関連する注意)

・虚血性脳血管障害の病型分類を十分に理解した上で、TOAST分類の大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う虚血性脳血管障害の患者に投与すること。同分類のその他の原因による又は原因不明の虚血性脳血管障害の患者には、有効性が認められていないため投与しないこと

高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、最終発作前の脳梗塞既往のいずれかを有する患者に投与すること。

エフィエント錠 添付文書

つまり、プラスグレルはTOAST分類で、アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞と診断された人以外には使えません。

TOAST分類
  • アテローム血栓性脳梗塞
    ・責任血管に50%以上のアテローム狭窄、狭窄病変
    ・皮質、脳幹、小脳、皮質下に1.5cm以上の梗塞巣
  • 心原性脳塞栓症
    ・心塞栓源
    ・皮質、脳幹、小脳、皮質下に1.5cm以上の梗塞巣
  • ラクナ梗塞
    ・1.5cm未満の梗塞巣
    ・臨床的にラクナ症候群を呈す
  • その他の原因による脳梗塞
    ・非アテローム性の動脈狭窄、凝固異常などを起こす疾患
    ・梗塞巣の部位やサイズはさまざま
  • 原因不明の脳梗塞
    ・複数の病因が重複して存在
    ・精査の結果、原因特定できない
    ・検査不十分

血栓止血誌2017;28(3):267-277

心原性脳塞栓症に使えないのはなぜ?

心房細動などを原因とする凝固因子主体の血栓であり、抗凝固薬が治療薬としてふさわしいからです。ワルファリンやDOACの出番ですね。

その他の原因による脳梗塞とは?

調べて見ると多くの病態がありました。血管炎、非炎症性のもの、血液疾患等。脳動脈解離やもやもや病は有名ですね。

潜因性脳卒中の診断手順
原因不明の脳梗塞とは?

たとえば

  • 複数の病因が重複して存在
    ・頸動脈に狭窄(アテローム血栓性脳梗塞?)と心房細動を合併(心原性脳塞栓症?)する場合など
  • 精査の結果、原因特定できない
    ・潜因性の心房細動(未検出の発作性心房細動)など

血栓止血誌2017;28(3):267-277

なぜ、プラスグレルは対象が限定されているのか?

脳血管障害患者を対象とした国内臨床試験において、脳心血管系イベントの発現率がクロピドグレルに比べて非劣性を検証できなかったからです。クロピドグレル群に対するプラスグレル群のリスク比(95%信頼区間)は1.045(0.757~1.443)と、95%信頼区間の上限値が事前に設定した非劣性限界値1.35を上回りました。

その理由として、原因不明の脳梗塞患者で発現率が高かったことが指摘されています。

エフィエント錠 インタビューフォーム

そこで、脳梗塞の病態をアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞に絞り、さらにハイリスク患者を対象とした追加の国内臨床試験を行い、クロピドグレルと同程度の有効性を示唆することができたわけです。

脳梗塞再発のリスク因子 a)を有する血栓性脳梗塞患者 b)234 例を対象とした J305 c)試験における投与 48 週後までの脳心血管系イベントの発現率は、プラスグレル群で 6.8%(8/118例)、クロピドグレル群で 7.1%(8/112例)であった。クロピドグレル群に対するプラスグレル群のリスク比(95%信頼区間)は、0.949(0.369〜2.443)であった。

a) 高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病の合併又は最終発作前の脳梗塞既往
b) TOAST分類における大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞のいずれかに該当

c)本試験の主たる目的はクロピドグレル群に対するプラスグレル群のリスク比の点推定値が1を下回ることの確認

エフィエント錠、インタビューフォーム

クロピドグレルと非劣性が証明されていない!

(効能又は効果に関連する注意)

 「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、有効性についてクロピドグレルに対する非劣性が検証されていないことや臨床試験の対象患者等を十分に理解した上で、本剤投与の適否を判断すること。

エフィエント錠、添付文書

海外では適応なし

プラスグレルは虚血性脳血管障害に対する適応はありません。非心原性脳梗塞患者を対象に行われたPLASTRO-1試験において、主要評価項目(脳梗塞、心筋梗塞、血管死の複合エンドポイント)がクロピドグレルに比べて非劣性を達成できなかったからです。

一方で、

クロピドグレルは非心原性脳塞栓症を除くすべての病態に使用可能です。適応の制限がないし、再発リスクに関する記載も見当たりません。虚血性脳血管障害患者(心原性脳塞栓症は除く)を対象とした国内臨床試験で、血管性イベントの発現率がチクロピジンと非劣性が検証されています。また、安全性においては優れた結果でした。

クロピドグレル:国内第3相臨床試験

  • 対象…発症後8日以上の脳梗塞患者1151例(心原性脳塞栓症は除く)
  • 方法…クロピドグレル75mg/日、52週間投与
  • 比較…チクロピジン200mg/日 52週間投与

結果は以下のとおり

  • 脳塞栓症、心筋梗塞症、その他の血管死
    ・クロピドグレル3.0% vs チクロピジン2.6%(非劣性)
  • 副作用の発現率(臨床検査値異常を含む)
    ・クロピドグレル35.0% vs チクロピジン47.8%
  • 血液毒性(白血球減少、好中球減少、血小板減少)、肝機能障害、非外傷性出血およびその他の重篤な副作用の総計
    ・クロピドグレル 7.0% vs チクロピジン15.1%(優越性)

→クロピドグレルはチクロピジンに比べて有効性は非劣性安全性は優越性が認められました

エフィエント錠、インタビューフォームより

となると、

虚血性脳血管障害におけるプラスグレルの位置付けは限定的な印象を受けます。クロピドグレルの代替薬という扱いです。たとえば、副作用で使えない、または効果不十分の場合(CYP2C19の酵素活性が低い人、後述します)とかが出番だと考えられます。

代謝

続いて2つ目の相違点。

クロピドグレルとプラスグレルは代謝が異なります。

クロピドグレルプラスグレル
CYPの種類主)CYP2C19
副)CYP1A2、CYP2B6、CYP3A4
CYP3A及びCYP2B6
CYPの反応2段階1段階

ポイントは大きく2つです。

①クロピドグレルは効果に個人差がある
②プラスグレルは速効性が期待できる

クロピドグレルは効果に個人差がある

主な代謝酵素であるCYP2C19は遺伝子多型の影響を受けやすいからです。プロドラッグであるクロピドグレルは同酵素によって活性化され、抗血小板作用を発揮します。

CYP2C19の遺伝子多型は3パターンです

  • 変異遺伝子を持たない(extensive metabolizer:EM)
  • 片方が変異遺伝子である(intermidiate metabolizer:IM)
  • 両方が変異遺伝子である(poor metabolize:PM)

酵素活性はEM>IM>PMの順です。PMの人はCYP2C19活性が弱く、クロピドグレルの薬効が低下する可能性があります。日本人は欧米人に比べてPMの割合が多く、約2割を占めるそうです。

一方で、プラスグレルは効果に個人差が少ないとされています。主な代謝酵素はCYP3A及びCYP2B6で、CYP2C19の影響はほとんどないからです。クロピドグレルよりも安定した効果が期待できます。

実際に遺伝子多型が血小板凝集能に与える影響は以下のとおりです。

エフィエント錠、インタビューフォーム、PRASFIT-ACS 試験

プラスグレルは血小板凝集抑制作用が安定している一方で、クロピドグレルは遺伝子多型に影響を受けることがわかります。

参考までに

CYP2C19の酵素活性が弱いと、抗血小板作用の減弱により心血管イベントのリスクは上がるのか?気になったので、調べてみました。

PCI適応のACS患者を対象にクロピドグレルとプラスグレルの臨床効果を比較したTRITON-TIMI38試験のサブ解析によると、クロピドグレル投与群でCYP2C19 変異遺伝子を1つ以上ある人では、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発生率が高いことが示されました。

▽イベント発生率
・クロピドグレル群 12.1% vs プラスグレル群 8.0%
【ハザード比…1.53倍 (1.07-2.19 ) :P=0.01】

N Engl J Med. 2009 ;360:354-62.

添付文書にも記載がありました。

(臨床使用に基づく情報)海外における経皮的冠動脈形成術施行を予定した患者を対象とした臨床試験及び複数の観察研究において、CYP2C19のPMもしくはIMでは、CYP2C19のEMと比較して、本剤投与後の心血管系イベント発症率の増加が報告されている。

プラビックス錠 添付文書

プラスグレルは速効性が期待できる

クロピドグレルに比べて薬物動態が改善された薬剤だからです。以下のように、早期に血小板凝集作用が現れます。

エフィエント錠、インタビューフォーム PRASFIT-ACS 試験

ポイントは大きく2つです

  1. CYPの代謝がスムーズ
  2. 代謝効率が良い

①CYPの代謝

プラスグレルはCYPの代謝が1段階とスムーズです。小腸のカルボキシエステラーゼで速やかに代謝された後、肝臓(又は小腸)でCYPの働きにより活性代謝物へ変換されます。

エフィエント錠 インタビューフォーム

一方で、クロピドグレルはCYPの代謝が2段階です。まず、2-オキソ-クロピドグレル中間代謝物が生成され、その後に活性代謝物であるチオール誘導体が生成されます。

血栓止血誌20(6):589-593,2009

②代謝効率

プラスグレルは代謝効率が良いです。投与後プラスグレルは血漿中に検出されません。エラスターゼで速やかに代謝され、CYPにより活性代謝物に変換されるからです。上図のように一方向に反応が進みます。

一方で、クロピドグレルは代謝効率が良くありません。エラスターゼによりほとんどが不活化(主代謝物SR26334)されるからです。活性代謝物(H4)に変換されるのは投与量のわずかだと推定されます。

代謝物の85%がエラスターゼで不活化される!

Metabolism
Clopidogrel is extensively metabolized by two main metabolic pathways: one mediated by esterases and leading to hydrolysis into an inactive carboxylic acid derivative (85% of circulating metabolites) and one mediated by multiple cytochrome P450 enzymes. Cytochromes first oxidize clopidogrel to a 2-oxo-clopidogrel intermediate metabolite. 

DAILYMED PLAVIX

以上から、プラスグレルはクロピドグレルよりも薬物動態が改善され、速効性と安定した効果が期待できるP2Y12拮抗薬といえます。

臨床の位置付け:PCIの適応

最後に3つ目の相違点。

クロピドグレルとプラスグレルはどちらもPCI後のステント血栓症の予防に用いますが、臨床的な位置付けがやや異なります。

・クロピドグレル…安定冠動脈疾患の第一選択薬!
・プラスグレル…急性冠症候群(ACS)の第一選択薬!

順番に解説します。

クロピドグレルは安定冠動脈疾患の第一選択薬

海外のガイドラインによると

PCIが適用される安定冠動脈疾患の第一選択薬として推奨されています。ACSの場合には、他のP2Y12受容体拮抗薬(プラスグレロルやチカグレロルなど)が禁忌や出血リスク等で使えないときの代替薬という位置付けです。

国内でも同様にPCIが適用される安定冠動脈疾患に推奨されています。でも、実臨床ではプラスグレルを選択するケースが多い印象です。

(安定冠動脈疾患患者)冠動脈ステント留置後、アスピリンとクロピドグレルまたはプラスグレルのDAPTを1〜3 ヵ月間継続する

2020年 JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法

海外大規模臨床試験もチェック!

CURE試験

  • 対象…非ST上昇ACS患者12562例
  • 方法…アスピリン+クロピドグレル(初回300mg、維持75mg)
  • 比較…プラセボ

結果は以下のとおり

  • 心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中
    ・クロピドグレル群9.3% vs プラセボ11.4%
    【ハザード比 0.80 (0.72-0.90) : p<0.001】
  • 大出血
    ・クロピドグレル3.7% vs プラセボ 2.7%
    【ハザード比 1.38 (1.13-1.67) : p=0.001】
  • 生命を脅かす出血
    ・クロピドグレル 2.1% vs プラセボ 1.8%
    【ハザード比 1.21 (0.95-1.56): p=0.13】

→クロピドグレルはプラセボに比べて虚血性イベントを抑制しました。一方で、大出血のリスクを増加させるという結果でした(生命を脅かす出血は有意差なし)

N Engl J Med. 2001 ;345:494-502.

プラスグレルはACSの第一選択薬

強力かつ迅速な抗血小板作用と安定した効果が期待できるからです。PCIが適用される急性冠症候群(ACS)の第一選択薬とされています。

冠動脈ステント留置後は、アスピリン(81〜162mg/日)とプラスグレル(3.75mg/日)またはクロピドグレル(75 mg/日)を3〜12ヵ月間併用投与する

2020年 JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法

クロピドグレルも記載(推奨)されていますが、ほぼプラスグレル一択の印象です。

プラスグレルの方が有効性が高い!

TRITON-TIMI 38試験

  • 対象…PCIが適用される急性冠症候群13608例
  • 方法…アスピリン+プラスグレル(初回60mg、維持10mg)
  • 比較…アスピリン+クロピドグレル(初回300mg、維持75mg)

結果は以下のとおり

  • 心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中
    ・プラスグレル 9.9% vs クロピドグレル 12.1%
    【ハザード比 0.81 (0.73-0.90) : p<0.001】
  • ステント血栓症
    ・プラスグレル 1.1% vs クロピドグレル 2.4%
    【ハザード比 0.48  : p<0.001】
  • 大出血(TIMI基準)
    ・プラスグレル 2.4% vs クロピドグレル 1.8%
    【ハザード比 1.32 (1.03-1.68) : p=0.03】

→プラスグレルはクロピドグレルに比べてステント血栓症を含む虚血性イベントを抑制しました。一方で、大出血のリスクを増加させるという結果でした。

N Engl J Med. 2007;357:2001-2015

参考までに

米国でもACSにプラスグレルが第一選択として推奨されています。ただし、プラスグレルは出血リスクが高いため、出血リスクが高くなく脳卒中やTIAの既往がない場合という条件付きです。

2016 ACC/AHA Guideline Focused Update on Duration of Dual Antiplatelet Therapy in Patients With Coronary Artery Disease

海外と国内で用量が異なる!

(TRITON-TIMI38試験による)出血リスクを考慮して、国内において低用量(海外の1/3の用量)で試験を行い、有効性と安全性が認められたからです。プラスグレルはベネフィットとリスクバランスをうまく取るかたちで日本に導入されました。

PRASFIT-ACS 試験

  • 対象…PCIが適用される急性冠症候群1363名
  • 方法…アスピリン+プラスグレル(初回20mg、維持3.75mg)
  • 比較…アスピリン+クロピドグレル(初回300mg、維持75mg)

結果は以下のとおり

  • 心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中
    ・プラスグレル 9.4% vs クロピドグレル 11.8%
    【ハザード比 0.77 (0.56-1.07) 】
  • 大出血(TIMI基準)
    ・プラスグレル 1.9% vs クロピドグレル 2.2%
    【ハザード比 0.82 (0.39-1.73) 】

→プラスグレルはクロピドグレルに比べてステント血栓症を含む虚血性イベントを抑制し、大出血のリスクを増加させなかった。

Circ J. 2014;78:1684-92.

出血リスクが高い場合の対応

プラスグレルは維持量を2.5mgに減量することが可能です。

(用法及び用量に関連する注意)

低体重の患者(体重50kg以下)では、出血の危険性が増大するおそれがあるので、必要に応じて維持用量1日1回2.5mgへの減量も考慮すること

ちなみに、クロピドグレルはPCIで用いる場合に減量基準がありません。

まとめ

今回はクロピドグレルとプラスグレルの共通点と相違点をまとめました。

ポイントは以下のとおりです。

共通点

  • 構造(チエノピリジン骨格)
  • 作用機序(P2Y12受容体拮抗)
  • 用法(1日1回)

相違点

  • 適応
    ・クロピドグレル…Heart、Stroke、PAD
    ・プラスグレル…Heart、Stroke(2021/12追加、対象が限定)
  • 代謝
    ・クロピドグレル…効果に個人差あり(CYP2C19)
    ・プラスグレル…速効性が期待できる(代謝がシンプル、効率的)
  • 臨床の位置付け(PCI)
    ・クロピドグレル…安定冠動脈疾患の第一選択薬
    ・プラスグレル…急性冠症候群の第一選択薬

どちらも臨床でよく見かける薬なので、ポイントを整理しておきたいですね♪

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