抗血栓薬

クロピドグレルとプラスグレルの違いは?

クロピドグレルとプラスグレルは一体何が違うのか?

今回のテーマです。

最近ではPCI(冠動脈ステント治療)後にクロピドグレルではなくプラスグレルが使用されるケースが増えてきました。

どちらもチエノピリジン系に分類される抗血小板薬です。どのような違いがあるのか勉強がてら調べたので共有しますね。

それでは、見ていきましょう。

クロピドグレルとプラスグレル:基本情報

まずは、基本情報の比較です。

クロピドグレル プラスグレル
製品名 プラビックス エフィエント
国内販売日 2006年5月 2016年5月
規格 25mg,75mg 2.5mg,3.75mg,5mg,20mg
適応症 ①PCI適用の急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
②末梢動脈疾患における血栓塞栓症の抑制
③虚血性脳血管障害後の再発抑制
①PCI適用の急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
用法用量 ①75mg×1(負荷投与300mg)
②75mg×1
③50〜75mg×1
①3.75mg×1(負荷投与20mg)
2.5mgへ減量可
投与回数 once daily once daily
プロドラッグ
CYP相互作用 CYP2C19…オメプラゾール
CYP2C8…レパグリニド、セレキシパグ
特になし

簡単に共通点を押さえておきます。

1)基本骨格が同じ

どちらもチエノピリジン系です。血小板のP2Y12受容体に選択的かつ不可逆的に作用し、ADPの結合を妨げ、血小板凝集反応を抑制します。

2)PCI後に用いる

また、PCI後のステント血栓症予防に用いる点は同じです。強力な抗血小板作用を期待してアスピリンと併用するのが基本ですね。DAPTといいます。

緊急PCIの場合には負荷投与が必要です。

3)プロドラッグ・1日1回型

どちらも有効成分自体に活性がなく、肝臓で代謝を受けて活性化されるプロドラッグです。投与回数は1日1回と同じですね。

ここからは相違点を見ていきますね。

クロピドグレルとプラスグレル:相違点

大きく3つあります。

  1. 適応症
  2. 代謝
  3. 臨床的な位置付け

1)適応症

クロピドグレルは適応が広い

PCI後における心臓領域の適応だけではありません。脳梗塞の二次予防や末梢動脈疾患(PAD)の適応もあります。PCI後はDAPTですが、StrokeとPADは単独療法です。クロピドグレルは適応の広さが魅力ですね。

脳梗塞の二次予防にも使える

臨床試験の結果は下記です。

  • 対象者…発症後8日以上の脳梗塞患者1151例(心原性脳塞栓症は除く)
  • クロピドグレル75mg/日 vs チクロピジン200mg/日 52週間投与
  • 主要評価項目…脳塞栓症、心筋梗塞症、その他の血管死
  • 結果…クロピドグレル3.0% vs チクロピジン2.6%(非劣性)
  • 副作用の発現率(臨床検査値異常を含む)…クロピドグレル35.0% vs チクロピジン47.8%
  • 血液毒性(白血球減少、好中球減少、血小板減少)、肝機能障害、非外傷性出血およびその他の重篤な副作用の総計…クロピドグレル 7.0% vs チクロピジン15.1%(優越性)

→脳梗塞の二次予防では、クロピドグレルはチクロピジンと比べて有効性が同等、安全性に優れます。

末梢動脈疾患(PAD)にも使える

CAPRIE試験の結果は以下のとおりです。

  • 対象者…動脈硬化性疾患(脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患等)のある患者19185例(PAD患者6452例)
  • クロピドグレル75mg/日 vs アスピリン325mg/日
  • 主要評価項目…脳梗塞、心筋梗塞、血管死
  • 結果…クロピドグレル5.32% vs アスピリン5.83%(p=0.043)
    8.7%相対リスクを低下
  • 重篤な有害事象…両群で大きな差は認められなかった

参考文献)Lancet 1996; 348: 1329-39

・PADを含む動脈硬化性疾患患者に対するクロピドグレロルの長期投与はアスピリンに比べて脳梗塞、心筋梗塞、血管死を抑制し、安全性に関しては少なくとも中用量のアスピリンと同等であることが示されています。

国内では、PAD患者を対象としたSFY10810試験において、脳梗塞、心筋梗塞、血管死、虚血性イベントによる入院を含めた複合エンドポイントがチクロピジンと同程度でした。(0.9% vs 0.9%)

海外ではアスピリン、国内ではチクロピジンとの比較です。CAPRIE臨床試験、SFY10810試験を総合的に判断し、PADの適応が承認されました。

プラスグレルは心臓領域に限定的

プラスグレルはPCIが適用される急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞に適応があります。

クロピドグレルと異なり、脳梗塞の再発予防に使用できません。非心原性脳梗塞患者を対象に行われたPLASTRO-1試験において、主要評価項目(脳梗塞、心筋梗塞、血管死の複合エンドポイント)がクロピドグレルに比べて非劣性を達成できなかったからです。

クロピドグレルとプラスグレルは適応に違いがある点を押さえておきましょう。

  • クロピドグレル…Heart(DAPT)、Stroke、PAD
  • プラスグレル…Heart(DAPT)

2)代謝経路

続いて2つ目の違いです。クロピドグレルとプラスグレルは代謝が異なります。

クロピドグレルは効果に個人差がある

クロピドグレル抵抗性という言葉を聞いたことありますか?クロピドグレルは代謝酵素の活性により効果にバラツキがあって薬が効きにくい人がいます。

理由を順番に説明しますね。

先述のように、クロピドグレルはプロドラッグです。成分自体に活性がないので、肝臓で薬物代謝酵素CYPによる2段階の代謝を経て活性化されます。

おもな基質はCYP2C19です。遺伝子多型があることで有名な酵素ですね。

CYP2C19の遺伝子多型は大きく3つに分類されます。

  • 変異遺伝子を持たないEM(extensive metabolizer)
  • 片方が変異遺伝子であるIM(intermidiate metabolizer)
  • 両方が変異遺伝子であるPM(poor metabolize)

酵素活性はEM>IM>PMの順に低くなります。

PMの人はCYP2C19活性が弱くクロピドグレルが活性化されにくい状態で、十分な効果が期待できません。日本人は欧米人に比べてPMの割合が多く、約2割の人がクロピドグレルが効きにくいといわれています。

では、CYP2C19の酵素活性が弱いと、抗血小板作用の減弱により心血管イベントのリスクは上がるのか?気になったので、調べてみました。

・PCI適応のACS患者を対象にクロピドグレルとプラスグレルの臨床効果を比較したTRITON-TIMI38試験のサブ解析。

クロピドグレル投与群でCYP2C19 変異遺伝子を1つ以上ある人では、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発生率が高いことが示されました。

▽イベント発生率
・クロピドグレル群 12.1% vs プラスグレル群 8.0%
【ハザード比…1.53倍 (1.07-2.19 ) :P=0.01】
(※ N Engl J Med. 2009 ;360:354-62.)

クロピドグレル抵抗性は心血管イベントの発生率を増加させるわけです。

一方で、遺伝子多型と心血管イベントの関連は認めらないとする報告もいくつかされてます。(※参考文献 JAMA. 2011;306:2704-14.)

今のところは、遺伝子多型CYP2C19と心血管有害事象との関連については議論が続いている状況です。

といっても、CYP2C19の遺伝子多型により、クロピドグレルの活性化が妨げられ、活性体血中濃度や血小板凝集抑制作用が低下することはわかっており、酵素活性が低い人では心血管イベントの予防効果が十分に得られない可能性があると考えられます。

クロピドグレルは、遺伝子多型によっては効果にバラツキがある点に注意が必要ですね。

プラスグレルは安定した効果が期待できる

クロピドグレルよりも薬物動態が改善された薬剤だからです。

ポイントは大きく3つです。

1つ目、プラスグレルは効果に個人差がありません。主な代謝酵素はCYP3A及びCYP2B6で、CYP2C19の影響はほとんどないためです。

2つ目は速効性が期待できます。肝臓におけるCYPの代謝が1段階とスムーズだからです。2段階で代謝されるクロピドグレルよりも速やかに効果を発揮します。PCI後、ステント血栓症は早期に現れることを考えると、高い有用性が期待できますね。

3つ目は代謝効率の良さです。クロピドグレルはCYPで活性化される前に多くが血中エラスターゼにより不活性物質に代謝され、残りが肝臓で活性化されます。投与量の大半は不活化されてしまうのです。

一方で、プラスグレルはエラスターゼで代謝されるものの、クロピドグレルほどではなく、投与量の大半が肝臓で活性化されます。つまり、代謝効率がいいのです。

以上から、プラスグレルはクロピドグレルよりも薬物動態が改善され、速効性と安定した効果が期待できるP2Y12拮抗薬といえます。

3)臨床的な位置付け

クロピドグレルとプラスグレルは臨床的な位置付けがやや異なります。

クロピドグレルは安定冠動脈疾患の第一選択薬

海外のガイドラインによれば、PCIが適用される安定冠動脈疾患の第一選択薬として推奨されています。

クロピドグレルは、世界中で広く使用されており、豊富なエビデンス、使用実績からPCI後のDAPTにおける標準薬です。

ACSの場合には、他のP2Y12受容体拮抗薬(プラスグレロルやチカグレロルなど)が禁忌などで使えないときの代替薬です。

参考文献)ESCガイドライン2017、ACC/AHAガイドライン2016

海外大規模臨床試験(CURE試験)の結果は以下のとおりです。

  • 対象者…非ST上昇ACS患者12562例
  • アスピリン75〜325mg/日+クロピドグレル初回300mg、以降75mg/日 vs プラセボ
  • 主要評価項目…心血管死、心筋梗塞、脳卒中
  • 結果…クロピドグレル群9.3% vs プラセボ11.4%(p<0.001)
    →19.6%の相対リスクを低下
  • 生命を脅かす出血…両群で大きな差は認められなかった

→クロピドグレルの投与は非ST型急性冠症候群に有効であり、一方で大出血のリスクを増加させると結論されています。

参考文献N Engl J Med. 2001 ;345:494-502.

国内でも、安定冠動脈疾患において推奨されています。

冠動脈ステント留置後、アスピリンクロピドグレルまたはプラスグレルのDAPTを1〜3 ヵ月間継続する

2020年 JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法

また、クロピドグレルは、適応症の関係(脳梗塞既往など)や低コストを理由に選択される場合もあります。とにかく適用場面が広いのが特徴です。

プラスグレルはACSの第一選択薬

強力かつ迅速な抗血小板作用と安定した効果から、PCIが適用される急性冠症候群(ACS)の第一選択薬とされています。

・ESC2017(※致死的な出血リスクがない場合)
・ACC/AHA2016(※出血リスクが高くなく脳卒中やTIAの既往がない場合)

海外の臨床試験を確認しておきましょう。

TRITON-TIMI 38試験

対象は、PCIが適用される急性冠症候群13608例。
アスピリンをベースにプラスグレルを併用した群とクロピドグレル併用群について、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントを比較したものです。

結果は以下のとおり。

▽心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイント
・プラスグレル 9.9% vs クロピドグレル 12.1%
【ハザード比 0.81 (0.73-0.90) : p<0.001】

▽ステント血栓症発生率
・プラスグレル 1.1% vs クロピドグレル 2.4%
【ハザード比 0.48  : p<0.001】

▷大出血発生率(TIMI基準)
・プラスグレル 2.4% vs クロピドグレル 1.8%
【ハザード比 1.32 (1.03-1.68) : p=0.03】
(※参考文献 N Engl J Med. 2007;357:2001-2015)

プラスグレルは、虚血性イベントを有意に抑制した一方で、出血のリスクを増加させるという結果でした。

効果が強くなるほど、出血リスクも上昇させることが示され、以下のリスク因子が明らかになりました。

  • 75歳以上の高齢者
  • 60kg以下の低体重
  • 脳梗塞/TIAの既往歴

この結果から、米国の添付文書では脳卒中の既往のある患者には禁忌、60kg以下の場合には5mgの低用量投与が推奨されています。(※海外用量は初回が60mg、維持が10mg)

また、欧州のESCガイドラインでも、高出血リスク群または心房細動の治療などでワルファリンやDOACなど抗凝固薬を併用する場合には、出血リスクに配慮してクロピドグレルの選択が望ましいとの記載です。

こうした出血リスクに配慮して、日本に導入される際には海外の約1/3の用量で有効性と安全性を検証することになりました。(※国内用量は初回が20mg、維持が3.75㎎)

国内の臨床試験を見てみましょう。

PRASFIT-ACS 試験

ACS患者1363名を対象に、プラスグレル併用群とクロピドグレル併用群について複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)と出血性イベントを比較検討したところ、結果は以下の通りでした。

▽心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイント
・プラスグレル 9.4% vs クロピドグレル 11.8%
【ハザード比 0.77 (0.56-1.07) 】

▽大出血発生率(TIMI基準)
・プラスグレル 1.9% vs クロピドグレル 2.2%
【ハザード比 0.82 (0.39-1.73) 】
(※参考文献  Circ J. 2014;78:1684-92.)

日本人においては虚血性イベントが少なく、大出血のリスクを増加させないという結果でした。有効性と安全性のバランスをとるかたちで日本に導入されたのがプラスグレルです。

このような経緯からプラスグレルは国内と海外の用量が異なります。海外では、ACS患者における第一選択薬ですが、出血リスクに注意が必要ですね。

国内のガイドラインでも、ACSにプラスグレルが推奨されています。

冠動脈ステント留置後は、アスピリン(81〜162mg/日)とプラスグレル(3.75mg/日)またはクロピドグレル(75 mg/日)を3〜12ヵ月間併用投与する

2020年 JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法

まとめ

ポイントは以下のとおりです。

▽クロピドグレル

  • 豊富なエビデンスと適応の広さが魅力(PAD、脳梗塞二次予防にも使える)
  • 海外では安定冠動脈疾患の第一選択薬という位置付け
  • クロピドグレルレジスタンスに注意!

▽プラスグレル

  • 速効性と安定した効果が強み(PCI後のみ適応)
  • 海外ではPCIが適用されるACSの第一選択、ただし出血リスクに注意!
  • 国内と海外では用量が異なる。

今回はクロピドグレルとプラスグレルの違いついて解説しました。どちらも臨床でよく見かける薬なので、ポイントを整理しておきましょう♪

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