抗血栓薬

脳梗塞を予防する薬!抗凝固薬と抗血小板薬の使い分けとは?

脳梗塞を予防するクスリといえば、”血液をサラサラにする薬”。真っ先に頭に思い浮かびますよね。

といっても、どういう状況でクスリが処方されたのか?人によってさまざまです。

たとえば、自宅で倒れていたところを発見!救急搬送されて一命を取り止めた患者さん。このイメージが一番多いでしょうか?

ほかにもいくつか状況があります。生活習慣病の既往や年齢的にみて「そろそろ飲んでおこか」と言われ、処方された人や不整脈を理由に飲むケース……など。

・脳梗塞を予防する血液サラサラ系は、抗血小板薬と抗凝固薬の2種類!

今回はどのような病態に対して、どう使い分けるのか?わかりやすく解説していきます。

まずは基本の知識、考え方を確認!

脳梗塞で血液サラサラ系を飲んでいる人は、大きく4つのタイプに分けることができます。

  • 心原性脳塞栓…1次予防
  • 心原性脳塞栓…2次予防
  • 非心原性脳梗塞…1次予防
  • 非心原性脳梗塞…2次予防

以下の2つの視点から考えるとわかりやすいです。

  1. 1次予防 or 2次予防 ?
  2. 心原性脳塞栓 or 非心原性脳梗塞 ?

順番に説明しますね。

一次予防と二次予防の違いは?

脳血管疾患の既往があるかどうかです。

一次予防は、一度も脳梗塞や脳出血などを起こしたことがない人が疾患を予防すること。それに対して、二次予防は、脳卒中の既往がある人が再発を予防する場合です。

一次予防と二次予防では、治療方針が異なります。

たとえば、一次予防の場合はまず、生活習慣の改善です。食生活や運動習慣の見直しがキホンですね。一方、二次予防の場合には再発を予防するために、食事療法と運動療法に加えて薬物治療を行います。再発リスクが高いので積極的な治療が必要なのです。

脳梗塞の分類は?

脳梗塞は、以下のように大きく3種類に大別できます。

  • ラクナ梗塞
  • アテローム血栓性脳梗塞
  • 心原性脳塞栓

ラクナ梗塞は、脳の細い動脈に血栓ができるタイプです。日本人に多いのが特徴ですね。アテローム血栓性脳梗塞の方は、脳の太い動脈に血栓ができるタイプで、コレステロールなどが血管壁にたまってできたアテロームによる動脈硬化が原因です。

ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞を合わせて、非心原性脳梗塞といいます。

一方で、心原性脳塞栓は、心臓でできた血栓が脳に運ばれて血管を閉塞するタイプで、原因は心房細動や弁膜症などです。

心原性脳塞栓と非心原性脳梗塞では血栓の種類が違う

脳梗塞の病型によって、できる血栓の種類が異なります。ここは超大事なところですよ。

心原性脳塞栓は、静脈にできた凝固因子主体の血栓が詰まるものです。一方で、ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞の方は、動脈で形成された血小板を多く含んだ血栓が閉塞します。

  • 心原性脳塞栓…静脈血栓症(凝固因子を多く含む血栓)
  • 非心原性脳梗塞…動脈血栓症(血小板を多く含む血栓)

血栓の種類によって抗血栓薬を使い分ける

血液サラサラ系はできる血栓の種類によって使い分けるのが基本です。

具体的には、静脈血栓症(心原性脳塞栓)には抗凝固薬を、動脈血栓症(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞)には抗血小板薬を選択します。

  • 心原性脳塞栓…ワルファリンやダビガトランなどのDOAC
  • ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞…アスピリンやクロピドグレルなど

これを踏まえて、脳梗塞を4つのタイプに分けて、どのようなクスリを選択するのかを具体的に見ていきましょう。

心原性脳塞栓に使うクスリ

A. 心原性脳塞栓の一次予防

まず、心原性脳塞栓の一次予防から。心原性脳塞栓で問題となるのは静脈血栓なので、使うのは抗凝固薬ですね。

どの薬剤を選択すれば?

はじめにすることは、脳塞栓の発症リスク評価です。

「心房細動の患者さんがどのくらい脳塞栓を起こしやすいのか?」抗凝固薬の必要性を評価します。

CHADS2スコアでリスクを評価!

以下の5つの項目に該当した数をスコア化します。点数は0〜6点ですね。点数が多くなればなるほど発症リスクが高くなることを意味します。

5項目なのに最大6点になるのはCHADS2(チャズツー)のSが、2ポイントだからです。

  • C…Congestive heart failure / LV dysfunction(心不全/左室機能不全)
  • H…Hypertension (高血圧)
  • A…Age≧ 75 (年齢75歳以上)
  • D…Diabetes mellitus (糖尿病)
  • S2…Stroke/TIA (脳卒中/TIA既往)

点数ごとのにおける脳梗塞の年間発症率は以下のとおり。

  • 0点…1.9%
  • 1点…2.8%
  • 2点…4.0%
  • 3点…5.9%
  • 4点…8.5%
  • 5点…12.5%
  • 6点…18.2%

2点を超えると発症率が急に上がります。(※JAMA 285:2864-2870,2001.)

スコアを求めたらあとは簡単!

点数ごとに薬剤選択の方法が示されています。非弁膜症性心房細動患者さんにおける薬剤の選択は以下のとおりです。

  • 2点以上…DOAC or ワルファリン 推奨
  • 1点…ダビガトランとアピキサバン推奨(※他は考慮可)
  • 0点…心筋症や65〜74歳、心筋梗塞の既往などの血管疾患があればDOACやワルファリンを考慮可

例えば、心不全と糖尿病があれば2点。予防のために「DOACを飲みましょう」となります。一方、人工弁置換術後や僧帽弁狭窄症の場合にはDOACは適応ではありません。

・スコアに関係なくワルファリンのみが推奨されているからです。

このように、心房細動の患者さんは、脳塞栓を予防するために、CHADS2スコアによって薬物治療の適応を検討していきます。基礎疾患があったり高齢の人では高スコアとなりやすく、ハイリスクの一次予防例では、抗凝固薬が適応になります。

参考文献)心房細動治療(薬物)ガイドライン2013年改訂版

B.心原性脳塞栓の二次予防

二次予防では抗凝固療法がスタートします。

CHADS2スコアを用いて評価するのは一緒です。二次予防では脳塞栓症やTIA(脳虚血発作)の既往があるので、自動的に2点が加算され、薬物療法を行うのが基本になります。

ちなみに、脳卒中治療ガイドラインでも、心房細動患者さんの二次予防に推奨されているのは、DOACやワルファリンです。

非弁膜症性心房細動(NVAF)のある脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)患者の再発予防には、 ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンないしワルファリンによる抗凝固療法が勧められる。

脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017]

非心原性脳梗塞に使うクスリ

C.非心原性脳梗塞の一次予防

今度は非心原性脳梗塞の方です。動脈血栓つまり血小板が止血に大きく関わっているので、予防には抗血小板薬を使います。

一次予防における抗血小板薬の有用性は確立していない。

意外なことに、非心原性脳梗塞の一次予防は、有効性を示すエビデンスに乏しく、現時点で積極的に推奨されているわけではありません。

といっても、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の一次予防で、抗血小板薬(特にアスピリンが多い?)を飲んでいる人、よく見かけますけどね……。

日本人を対象としたJPPP試験(2014年に発表)では、以下のように結論づけられてます。

・糖尿病や高脂血症、高血圧など危険因子のある高齢者において、アスピリンの少量投与は心血管イベントの発生を抑制できず、出血性イベントを増加させる。

参考文献)JAMA. 2014; 312: 2510-20.

非心原性脳梗塞の一次予防では、抗血小板薬を投与しないのが基本です。

D.非心原性脳梗塞の二次予防

抗血小板薬の投与がバッチリ推奨!

一次予防と違って、非心原性脳梗塞の慢性期における再発予防には、抗血小板薬が推奨されています。

・シロスタゾール 200mg/day(グレードA)
・クロピドグレル 75mg/day(グレードA)
・アスピリン 75〜150mg/day(グレードA)
・チクロピジン 200mg/day(グレードB)

参考文献)脳卒中治療ガイドライン2015

ちなみに、冠動脈ステント治療後に投与されるプラスグレルとチカグレロルは使用できません。脳梗塞に対する有効性が示されておらず、適応外だからです。

抗血小板薬、それぞれの特徴は?

ポイントだけを簡単に確認。

アスピリン
  • 使用実績があり、エビデンスも豊富、しかも低コスト
  • 消化管出血や頭蓋内出血のリスクに注意が必要
シロスタゾール
  • 脳卒中、特にラクナ梗塞の発生を抑制(プラセボ比較、CSPS試験)
  • アスピリンに比べて脳卒中(脳出血も含む)の発生を抑える、頭蓋内外出血も少ない(CSPS2試験)
  • 血管拡張作用により血流改善効果あり、一方で頭痛や頻脈などの副作用が多い
クロピドグレル
  • アスピリンに比べてアテローム血栓症(虚血性脳卒中、急性冠症候群、末梢動脈疾患)の発症を抑える、消化管出血が少ない(CAPRIE試験)
  • チクロピジンよりも安全性が高い(肝障害、顆粒球減少、血小板減少性紫斑病など)
チクロピジン
  • 副作用が懸念されるため新規処方は減っている

ガイドラインでは、チクロピジンが推奨グレードB。
ほかの3つは推奨グレードAです。

それぞれの特徴をもとに、有効性と安全性を勘案して、患者ごとに適した薬剤を選択します。

SAPTとDAPTを使い分ける

脳梗塞慢性期の再発予防では、SAPT(サプト)が基本!

抗血小板剤単独療法( Single Anti-Platelate Therapy : SAPT)のことです。

しかし、急性期から亜急性期までの期間は、再発予防と神経症状の悪化を防ぐ目的でDAPTが推奨されています。

・例えば、アスピリンとクロピドグレル、またはシロスタゾールの組み合わせです。強力な抗血小板作用により脳細胞が障害されるのを防ぐための処方ですね。

ところが、重篤な出血合併症のリスクが高まるので、長期間の投与は避けるのが基本です。一般的には3週間、長くて3ヶ月まで。そのあとはDAPTからSAPTに切り替えます。

非心原性脳梗塞の二次予防においては再発予防のために抗血小板薬の投与が推奨。急性期にはDAPTを選択する場合もあることを押さえておきましょう。

まとめ

最後にポイントをまとめますね。

  • 脳梗塞治療薬は病態によって使い分ける
  • 心原性脳塞栓…静脈血栓→抗凝固薬を使う
  • ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞…動脈血栓→抗血小板薬を使う
  • 心原性脳塞栓・二次予防…再発予防のために抗凝固薬の投与が基本
  • 心原性脳塞栓・一次予防…基礎疾患や年齢などを考慮、患者さんごとに投与の要否を検討
  • 非心原性脳梗塞・二次予防…再発予防のために抗血小板薬の投与が推奨
  • 非心原性脳梗塞・一次予防…基本的には投与しない

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今回は脳梗塞をテーマに、病態ごとに抗血栓薬の使い分けについて解説しました。

脳梗塞で血液サラサラ系を飲んでいたら処方目的を考えてみるのがオススメです。

・なぜなら、処方目的がわからないと、「血液をサラサラにするクスリ」という薬効中心の説明で終わってしまうからです。

どうして抗血栓薬を飲んでいるのか?病態と脳梗塞既往の有無から処方目的を判断できれば、服薬の重要性を意識した説明ができるようになります。そうなれば、きっと服薬アドヒアランスの向上にもつながるはずです。

「血液サラサラ系は一体どういう目的で飲んでるのか?」確認する習慣を身につけましょう。最後まで読んでいただきありがとうございます。

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