鎮痛薬

アブストラルの特徴【イーフェンバッカルと比較しながら解説!】

今回のテーマはアブストラル舌下錠!

一般名は、フェンタニルクエン酸塩。がん性疼痛に対するレスキュー薬です。

同じ口腔粘膜吸収剤であるイーフェンバッカル錠との比較を加えながら、アブストラルの特徴を解説します。

アブストラルとイーフェンバッカルの共通点

まずは共通点から。大きく3つあります。

  1. がん性疼痛治療薬
  2. レスキュー薬
  3. 経口投与が困難な人向け

がん性疼痛治療

アブストラルはがん性疼痛の治療薬です。強オピオイドであるフェンタニルクエン酸塩を成分とし、中等度から重度の痛みに使います。イーフェンバッカルも同じ位置付けですね。

がん性疼痛治療薬は大きく3つに分類されます。

  1. 非オピオイド鎮痛薬…アセトアミノフェン、NSAIDs
  2. 弱オピオイド鎮痛薬…コデイン、トラマドール
  3. 強オピオイド鎮痛薬…モルヒネ、オキシコドン、タペンタドール、ヒドロモルフォン、フェンタニル

強オピオイド薬のタペンタドールとヒドロモルフォンは下記に詳しくまとめているので、ご覧くださいね。

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がん性疼痛は、痛みの強さに合わせて薬剤を選択するのが基本です。WHOが提唱する三段階の除痛ラダーは有名ですね。

  • 軽度の痛み…非オピオイド
  • 軽度〜中等度の痛み…弱オピオイド
  • 中等度〜重度の痛み…強オピオイド

アブストラルとイーフェンバッカルは中等度から重度の痛みに使う強オピオイド薬です。

レスキュー薬

がん性疼痛は下記2つの痛みからなります。

  • 1日の大半を占める持続痛
  • 一過性の痛みである突出痛

治療は定時投与薬でベースの痛みを抑えながら、突出痛にはレスキュー薬を用いるのが基本です。アブストラルとイーフェンバッカルはレスキュー薬に分類されます。

定時投与薬とレスキュー薬の成分は同じものを選択するのが一般的です。たとえばベースの痛みはオキシコドンで抑えながら、突出痛には速放性製剤であるオキノームを使う形ですね。

定時投与薬とレスキューの組み合わせ
  • モルヒネ…MSコンチン+オプソ
  • オキシコドン…オキシコンチン+オキノーム
  • フェンタニル…フェントステープ+アブストラルまたはイーフェンバッカル
  • ヒドロモルフォン…ナルサス+ナルラピド

同成分のレスキュー薬がないタペンタドールやメサドンは、強オピオイドの速放性製剤で代用します。

アブストラルはROOと呼ばれる!

超即効型オピオイド(Rapid onset opioids:ROO)の略ですね。一方で、従来の短時間作用型オピオイドは、SAO(Short-acting opioid)といいます。

ROOは効果発現までの時間が短いのが特徴です。

  • SAO…約30分
  • ROO…約10〜15分

SAO製剤は効果発現までのタイムラグがあります。最大の痛みから遅れて効き始める可能性が問題視されていました。

一方で、ROO製剤であるアブストラルとイーフェンバッカルは、今すぐ抑えたい痛みにタイミングを合わせることができます。SAOの弱点を改善した製剤だといえますね。

臨床の位置付け

アブストラルとイーフェンバッカルはどのようなケースに選択されるのか?

大きく3つあります。

  1. 経口投与が困難な場合(悪心、嘔吐、嚥下機能低下など)
  2. 消化管が使用できない時(消化管閉塞など)
  3. 突出痛のコントロール不良時

基本的にはフェンタニル外用剤のレスキュー薬としての位置付けです。経口投与が難しかったり、消化管を使用できない時、又はオピオイドローテーションの際に選択します。

さらに、突出痛の疼痛管理が不十分な時にも有用ですね。突出痛は患者さんの苦痛に直結しやすく、QOLの低下につながるので、ROOの利点を活かした選択もありだと思います。

アブストラルとイーフェンバッカルの相違点

ここからは違いを見ていきますね。

大きく2つあります。

  1. 剤型の違い
  2. 用法用量の違い

剤形が違う

舌下錠かバッカル錠かの違いですね。

  • アブストラル…舌下錠
  • イーフェンバッカル…バッカル錠

舌下錠はイメージしやすいですね。狭心症発作時に飲むニトログリセリン製剤が有名です。唾液でスッと溶けて口腔内から速やかに吸収されます。肝初回通過効果を受けないのもメリットですね。

一方で、バッカル錠とは何か?

バッカル錠とは口腔内の歯茎と頬のあいだに錠剤を挟み、唾液で溶かしながら口腔粘膜から吸収させる剤型です。昔はバリダーゼバッカル錠(消炎酵素製剤)という製剤があったみたい…。今はイーフェンバッカルだけですね。

舌の下におくだけの舌下錠に比べて、バッカル錠は投与方法がやや煩雑です。下記服用時の注意事項があります。

本剤が溶けるまで、上顎臼歯の歯茎と頬との間に置いておくこと。また、30分経っても本剤の一部が口腔内に残っている場合、水等で嚥下してもよい

イーフェンバッカル添付文書

剤型だけでいうなら、アブストラルの方が断然使いやすいですね。

用法用量が違う

アブストラルとイーフェンバッカル、どちらもフェンタニルを有効成分とするROOです。使い方も基本的には同じですが、よく見ると細かい点が異なります。

アブストラルの服用方法から違いを確認しておきましょう。ポイントの比較は下記です。

アブストラル イーフェンバッカル
開始用量 1回100μg 1回50〜100μg
最大用量 1回800μg 1回800μg
投与量 6パターン(100、200、300、400、600、800) 6パターン(50、100、200、400、600、800)
投与錠数 4錠まで(規格の異なる製剤を同時服用不可) 4錠まで(規格の異なる製剤を同時服用不可)
投与回数 1日4回まで 1日4回まで
追加投与 可(用量調節期) 可(用量調節期)
投与間隔 2時間以上 4時間以上

違いは、大きく2つです。

  1. 開始用量
  2. 投与間隔

開始用量の違い

アブストラルは一律100μgです。わかりやすいですね。ベースのオピオイド製剤の量に関係ありません。

一方で、イーフェンバッカルは50〜100μgです。定時投与オピオイド薬の量によって、どちらかを選択します。具体的には下記です。

定時投与中の強オピオイド鎮痛剤としてモルヒネ経口剤30mg/日以上60mg/日未満又は同等の鎮痛効果を示す用量の他の強オピオイド鎮痛剤を定時投与中の患者では、1回の突出痛に対してフェンタニルとして50μgから投与を開始することが望ましい

イーフェンバッカル添付文書

海外に比べて国内のオピオイド投与量は少なめです。そこで、イーフェンバッカルは安全性に配慮して低規格50μgが設定されました。

対して、アブストラルは海外用量と同じです。ただし、国内臨床試験では、定時投与オピオイド薬の低用量群、高用量群において、有効性と安全性に顕著な差は見られませんでした。

※低用量群:1日用量が経口モルヒネ60mg、経口オキシコドン40mg、フェンタニル貼付剤25μg/hr未満
※高用量群: 1日用量が経口モルヒネ60mg、経口オキシコドン40mg、フェンタニル貼付剤25μg/hr以上

このように、両者は開始用量に違いがあります。副作用のリスクが高い場合には、低用量から開始できるイーフェンバッカルの方が良いかも知れませんね。

投与間隔の違い

同じROO製剤ですが、投与間隔が異なります。

  • アブストラル…2時間以上あけて
  • イーフェンバッカル…4時間以上あけて

投与間隔が違うのは海外でも同様です。国内臨床試験も上記の投与間隔で有効性と安全性が確認されました。

そして、どちらも1日4回までしか投与できません。このように、投与間隔と1日の投与回数に制限があるのは、過量投与に伴う呼吸抑制等の副作用を防ぐためです。

従来型レスキュー薬は投与間隔、投与回数の制限なし!

痛みが改善するまで繰り返し投与できます。

たとえば、ガイドラインによれば、経口の場合は1時間ごと、経静脈投与、皮下投与においては15〜30分ごとに追加投与が可能です(がん疼痛の薬物療法に関わるガイドライン2014)

用量調節期は追加投与可!

2時間又は4時間あけなくても投与できます。ここがややこしいところですね。

たとえば、突出痛に対してアブストラル(イーフェンバッカル)を使用、30分後に痛みを評価、改善なければ、その時点でもう1回分追加投与できるのです。

ここで疑問が出てきます。下記2点です。

追加投与は1日4回の投与制限に含まれるか
  • 含まれない
  • 1回の突出痛に1回追加投与可
  • 1日4回の突出痛→1日最大8回投与可(突出痛4回、追加投与4回)
  • 用量調節期のみ(用量が決まったら、追加投与は不可)
追加投与後の次回投与(突出痛に対して)までの間隔は?
  • 前回突出痛から2時間以上あける(アブストラル)
  • 前回突出痛から4時間以上あける(イーフェンバッカル)
  • 追加投与の時点から計算しない

Question and Answer

なぜ用量調節期があるのか?

アブストラルは至適投与量と定時オピオイド薬の投与量に相関が認められないからです。

つまり、鎮痛効果に個人差があるので、至適投与量を決めるための用量調節期が設定されているわけですね。

たとえば100μgから始めて、その後追加投与の感触を見ながら、200→300→400→600→800の順に患者さんに合わせて投与量を決めます。

ベースのオピオイドが高用量だからといって、アブストラルの量も多くなるとは限らないのです。

従来のレスキュー薬の場合は?

1回用量は定時投与薬の1日用量から求めます。

  • モルヒネ速放性製剤…モルヒネ1日用量の1/6
  • オキシコドン速放性製剤…オキシコドン1日用量の1/8〜1/4

たとえば、オキシコドンを1日20mgだったら、オキノーム散2.5〜5mg/回に相当します。わかりやすいですね。

アブストラルは効果に個人差があります。個々で投与量を決めるために用量調節期が必要です。イーフェンバッカルも同様ですね。

1回の突出痛に対して1回の本剤投与で十分な鎮痛効果が得られるよう、一段階ずつ漸増して、患者毎に用量調節を行うこと

アブストラル添付文書

誤って、飲んでしまったら?

アブストラルは見た目が錠剤なので誤って飲み込んでしまう可能性があります。「飲んでしまったけど、どうすればいいか」と、患者さんや看護師さんからときどき相談されることもありますよね。

その場合には、一回分投与とカウントします。

とっさにもう一錠追加してはいけません。過量投与により副作用の可能性が高くなるからです。

誤って飲み込んだ場合も1回の投与とし、再投与は避けること。

アブストラル添付文書

そもそも、アブストラルの経口投与は効果があるのか?

舌下投与時のバイオアベイラビリティは約50%です。経口投与したときのデータは不明ですが、イーフェンバッカルの経口投与が31%であることを考えると、だいたい30%くらいだと予想されます。

フェンタニル400μg静脈内投与時のAUC0-∞から算出した本剤400μgバッカル投与、本剤800μg経口投与及びOTFC800μg口腔粘膜投与時の絶対的バイオアベイラビリティ(BA)はそれぞれ65、31及び47%であった。

イーフェンバッカル審査報告書

だから、経口投与だからといって効果がないわけではありません。約半分くらいの効果が遅れて現れると予測されるので、経口投与時の再投与には注意が必要ですね。

まとめ

今回はアブストラルの特徴について、イーフェンバッカルとの比較を加えながら解説しました。

ROO製剤は使い勝手がイマイチですね。理由は下記です。

  • 舌下錠(バッカル錠)
  • 至適用量に個人差がある
  • 投与回数の制限あり(1日4回)
  • 投与間隔の制限あり(2または4時間以上)
  • 追加投与あり(用量調節期のみ)

痛い時に、痛みがとれるまで繰り返し投与できる従来のレスキュー薬と大違いですね。服薬アドヒアランスによって導入が難しいケースは多いと思います。また、医療スタッフが使い方をマスターするのもそれなりに大変そうですね。

一方で、大きなメリットもあります!

  • 経口投与が困難な人に使える
  • 消化管が使用できない時にも使える
  • 従来のレスキューよりも速く効く

アブストラル(イーフェンバッカル)の登場によりがん性疼痛治療薬の選択肢が増えました。疼痛管理はQOLを維持するために欠かせません。記事を書いていて、患者さんごとに最適な薬剤の選択を提案できるスキルが必要だと感じました。

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