鎮痛薬

タペンタ錠の特徴を2つの視点から解説【トラマドール、オキシコドンと比較する】

今回のテーマはタペンタ錠!

一般名はタペンタドールで、オピオイド鎮痛薬に分類されています。

最近ではモルヒネに加えてがん性疼痛に使える薬が増えました。その中でタペンタ錠はどんな特徴があるのか?2つの視点から解説します。

トラマドールとオキシコドン、それぞれと比較するとわかりやすいです。

  1. トラマドールとの比較
  2. オキシコドンとの比較

上記2点を見ていきましょう。

タペンタはトラマドールの改良版!

押さえておきたいポイントは大きく3つです。

  1. 作用機序
  2. 適応症
  3. 代謝

表にまとめると以下のように。

タペンタ
(タペンタドール)
トラマール
(トラマドール)
作用機序 オピオイドμ
SNRI
オピオイドμ
SNRI
適応症 中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛 疼痛を伴う各種がん、慢性疼痛(非オピオイド鎮痛剤で治療困難な場合)
代謝 グルクロン酸抱合 CYP2D6,CYP3A4

作用機序は同じ、親和性が異なる

まず、作用機序は共通です。

  • μ-オピオイド受容体刺激
  • セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害(SNRI)

上記2つの作用があります。

痛みを脳に伝える上行性経路を抑制するオピオイド作用下行性疼痛抑制経路の賦活により痛みを抑えるSNRI作用です。(デュアルアクション)

一方で、親和性や選択性に違いがあります。タペンタはトラマドールの鎮痛効果を高め、副作用を軽減するために開発された製剤です。

タペンタの方が鎮痛作用が強い!

オピオイドμ受容体への親和性が強化されています。結合親和性(Ki値)は以下のとおりです。(※Ki値は受容体と薬物の結合性の尺度で、低い方が親和性が高い)

成分名 ヒト(平均値)
モルヒネ 0.0090
タペンタ 0.16
トラマドール 17.0
トラマドール活性体 3.19

参考文献)タペンタ審議結果報告書、J. Pharmacol. 1996; 316: 369-372.

タペンタの方がトラマドールとその活性体よりもμ受容体への親和性が高い(数十〜数百倍程度)ので、強い鎮痛効果を発揮します。

トラマドールは、成分自体の親和性は低めです。代謝を受けて強くなりますがタペンタには及びません。親和性の高さは、モルヒネ>タペンタ>トラマドール活性体>トラマドールの順になります。

タペンタはモルヒネほどではないにせよ、μオピオイド受容体への親和性を高め、鎮痛効果が強化された製剤です。鎮痛効果の違いから臨床の位置付けも決まります。(後述します)

タペンタは副作用が軽減している?!

セロトニン(5-HT)取り込み阻害作用が弱いのが特徴です。ノルアドレナリン(NA)、5-HT再取り込み阻害作用のKi値は以下のとおりです。

成分名 NA 5-HT
モルヒネ >100 >100
タペンタ 0.48 2.37
トラマドール 1.8 1.9
トラマドール活性体 2.4 11

参考文献)タペンタ審議結果報告書

タペンタは5-HTに比べてNAに対する選択性が高くなっています(約5倍)。一方、トラマドールの選択性は同じくらいです。活性体になるとNAの方が強くなります。タペンタ>トラマドール活性体>トラマドールの順ですね。

NAの選択性を高めると、副作用が軽減できる!
5-HTに関連した副作用(セロトニン症候群など)の発現リスクを軽減させる効果が期待されます。

セロトニン症候群とは、5-HT作動性の神経が過剰に興奮した状態で、主な症状は不安感やイライラ感などの精神症状、手足が勝手に動いたり震えたりする錐体外路症状、冷汗や頻脈、下痢などの自律神経症状などです。

鎮痛効果はNAの寄与が大きい!
5-HTよりもNAのα2受容体刺激作用の関与が大きいといわれています。NAの選択性が高い方が強い鎮痛効果が得られるわけですね。

タペンタはNAの選択性を高めた製剤!副作用の軽減に加えて鎮痛効果の増強も期待できるわけです。まさに一石二鳥という感じですね。

臨床の位置付けが違う

まず、トラマドールは慢性疼痛にも使用できます。変形性膝関節症や関節リウマチ、腰痛症、帯状疱疹後神経痛など適応が広めです。

がん性疼痛に対しては、軽度から中等度まではトラマドール、中等度から重度にはタペンタを使います。有名なWHOの三段階除痛ラダーに基づいた使い分けです。

まずは非オピオイド薬!
ロキソプロフェン、ジクロフェナクなどのNSAIDsやアセトアミノフェン等です。

次のステップが弱オピオイド!
ここでトラマドールの出番です。ほかにはコデインの選択肢もあります。

最終ステップは強オピオイド!
トラマドールなどでコントロールが難しいケースには強オピオイドを選択します。モルヒネやオキシコドン、フェンタニルなどです。ここにタペンタも含まれます。

疼痛の強度を評価して、順に薬剤の選択を変えていく流れです。タペンタとトラマドールは、レセプターやポンプに対する親和性、選択性の違いから臨床の位置づけや適応が異なります。

代謝過程の違い

タペンタはシンプル!

成分は片方の鏡像異性体のみです。

成分自体に活性があり、肝臓でグルクロン酸抱合されて失活します。CYPの寄与は小さいです。

投与量のほとんどが尿中に排泄(99%)されますが、大部分が鎮痛効果を示さない非活性体のため腎機能に応じた投与量の調節が必要ありません。

一方で、トラマドールは複雑!

ラセミ体の混合物で、鏡像異性体を等量含みます。代謝は2段階です。

  • まずCYP2D6とCYP3A4で代謝…第一相反応
  • その後グルクロン酸または硫酸抱合…第二相反応

代謝物が活性を示すので、酵素活性により効果にばらつきが出る可能性があります。加えて以下の副作用にも注意が必要です。

遺伝的にCYP2D6の活性が過剰であることが判明している患者(Ultra-rapid Metabolizer)では、トラマドールの活性代謝物の血中濃度が上昇し、呼吸抑制等の副作用が発現しやすくなるおそれがある。

トラマールOD錠、添付文書より

しかも、活性体が腎臓から排泄されるので、高齢者やCKD患者さんでは効果、副作用を見ながら慎重に投与する必要があります。

ここまでが、タペンタとトラマドールの比較です。作用機序や適応、代謝の違いに注目するとそれぞれの特徴がくっきり見えてきます。特にオピオイド受容体への親和性やNAと5-HTの選択性の違いは、薬剤師として押さえておきたいところですね。

次は、オキシコドンとの比較を見ていきましょう。

オキシコドンと比べてどうなのか?

臨床効果はオキシコドンと同じ

日韓共同の第3相臨床試験、結果は以下のとおりでした。

  • 対象者…NRSスコアが4以上の中等度から高度のがん性疼痛を有するオピオイド新規導入患者340名
  • タペンタ25mg×2
    (適宜増減、最大200mg)
  • オキシコドン5mg×2
    (適宜増減、MAX40mg)
  • 主要評価項目…NRSベースラインからの平均変化量
  • 結果…タペンタ−2.69、オキシコドン−2.57

→非劣性が示されました。

オキシコドンはタペンタと同じ徐放錠で1日2回の製剤です。腎機能が低下した患者さんにも使いやすいのが特徴です。

タペンタとオキシコドンの有効性は変わりません。

タペンタのメリット

胃腸障害が少ない

オキシコドンよりもオピオイドに起因した胃腸障害の副作用のリスクが低いとされています。

上記臨床試験におけるオピオイド特有の副作用頻度は以下のとおりでした。

オピオイド特有の副作用 タペンタ オキシコドン
傾眠 17.3% 20.9%
悪心 28.6% 35.5%
嘔吐 25.0% 23.8%
便秘 30.4% 37.2%
呼吸抑制 0% 0.6%
浮動性めまい 1.8% 2.3%

参考文献)タペンタ審議結果報告書

オピオイドに特徴的な副作用のうち、胃腸障害(悪心と便秘)はタペンタの方が低い傾向が見られました。メーカーが売りにしている部分です。

なぜタペンタは胃腸障害が少ないのか?
理由はμオピオイド受容体に対する親和性が低いためで、モルヒネに比べて10分の1くらいです。

消化器症状の訴えがある患者さんに有用!
たとえば、新規導入時やオピオイド投与中に胃腸障害を認める場合ですね。タペンタが望ましいケースだと思います。

神経障害性疼痛に有効!?

タペンタはμオピオイド受容体刺激作用に加えて、NA再取り込み阻害作用を併せ持つので、神経障害性疼痛に効果が期待できます。

がんによる神経障害性疼痛のある患者に対して、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗不整脈薬、NMDA受容体拮抗薬、コルチコステロイドは痛みを緩和する可能性がある

がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014

ガイドラインでは上記です。抗うつ薬の中に三環系抗うつ薬やSSRI、SNRIなどが含まれます。がんによる神経障害性疼痛を緩和する可能性があるとのことです。

現時点ではタペンタに関する記載はありません。今後の研究、ガイドラインの改訂等に注目していきたいです。

次はタペンタの弱点ともいえる、使い勝手が良くない部分を紹介します。

タペンタのデメリット

経口投与が困難な場合に使えない

タペンタの剤型は内服のみです。経口投与が可能な患者さんが対象になります。

一方、オキシコドンは内服に加えて注射薬オキファストが2012年5月に販売されました。病状が進行して経口投与が難しくなった患者さんにも対応できます。

普通なら、嚥下機能が低下した人には粉砕して投与することが可能ですが、タペンタは錠剤が非常に固く、ミキサーなど通常の方法では粉砕ができません。乱用を防止するための改変防止技術(TRF)が施された製剤だからです。

溶解するとゲル化するため、注射器で吸うことも不可能です。水に溶かして胃ろうや腸ろうからの投与もできません

錠剤が大きい

かなり大きめです。

タペンタ錠
25/50/100mg
オキシコドンTR錠
大きさ 長径17mm
短径7mm
厚さ5mm
直径7.1mm
厚さ5.4mm

タペンタの規格は全部で3種類あります。トラムセット配合錠より一回り大きく、カロナール錠500mgと同じくらいです。

オキシコンチンTR錠に比べるとかなり大きいので、特に高齢者など嚥下機能が低下した患者さんでは飲みにくいですね。処方時にはきちんと内服できるか、確認が必要だと思います。

速放性製剤(レスキュー薬)がない

タペンタは成分が同じ速放性の薬がありません。

がん性疼痛の管理は定期投与の徐放性オピオイド薬で持続痛を抑えながら、突出痛に対しては速放性製剤(レスキュー薬)を投与するのが一般的です。

レスキュー薬の選択は、徐放性製剤と同成分の製剤が用いられます。たとえば、下記です。

  • オキシコドン徐放錠…オキノーム散
  • モルヒネ徐放錠…オプソ内服液
  • フェンタニルテープ…アブストラル舌下錠、イーフェンバッカル錠

こんな感じで、定期投与薬と同成分のレスキュー薬を選択するのが基本です。タペンタは速放性の製剤がないので、オキノーム散やオプソ内服液で代用することになります。

併用薬に注意!

タペンタはNAへの選択性を高めた製剤!といっても、5-HTへの作用も残されているのでセロトニン症候群のリスクに注意です。

以下のモノアミン酸化酵素阻害剤とは併用禁忌になっています。

  • セレギリン塩酸塩(エフピー)
  • ラサギリンメシル酸塩(アジレクト)

また、三環系抗うつ剤やセロトニン作動薬(SSRI、SNRI等)とは併用注意です。うつ症状や鎮痛補助薬としてタペンタに併用する場合もあるので副作用のモニタリングが欠かせません。

1日400mgを超えた初回投与量は推奨されていない

高用量のオキシコンチンからの切り替え時に注意です。

タペンタドールとして400mg/日を超える用量を初回投与量とした使用経験はない

タペンタ錠、添付文書

タペンタ25mgはオキシコドン5mgに相当するので、オキシコドンを1日80mgを超えて飲んでいる人がタペンタに切り替えることはできません。

高用量で服用されている人は意外と多いので、オピオイドローテーションの際には気をつけたいです。

初期用量でなければ400mgを超えることは可!
初回投与量がダメなだけで、最大投与量が400mgというわけではありません。ただし、500mgを超える使用経験はないので、増量の必要性を十分検討した上で投与することになります。

1日投与量が500mgを超える使用に関する成績は得られていないため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与すること。

タペンタ錠、添付文書

まとめ

ポイントは以下のとおりです。

  • タペンタ(一般名タペンタドール)はトラマドールを改良した製剤です。
  • 鎮痛効果を高め、副作用を軽減させるのが開発コンセプト。
  • 代謝過程がシンプルなので、遺伝子多型や代謝の影響を受けにくい。
  • タペンタはオキシコドンと有効性は変わらない。
  • オピオイド特有の副作用(傾眠、悪心、便秘など)の頻度が少ない傾向がある。
  • デメリットは剤型が内服のみ、錠剤が大きい、速放性製剤がない、セロトニン症候群のリスクなど。

今回はタペンタの特徴について、トラマドール、オキシコドンと比較しながら解説しました。2つの薬を比べてみると、共通点と違いがはっきりするので、より理解が深まると思います。

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