コレチメント錠とレクタブル注腸フォーム【共通点と相違点まとめ】

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今回のテーマはコレチメント錠!

一般名はブデソニド、潰瘍性大腸炎の治療薬です。

コレチメント錠の特徴は何か?
類似薬のレクタブル注腸フォームと何が違うのか?

両薬剤を比較しながら、共通点と相違点についてまとめたので共有します。

コレチメント錠は令和5年9月1日に発売されました!

目次

コレチメントとレクタブルの比較表

コレチメント錠レクタブル注腸フォーム
販売開始2023年9月1日2017年12月
一般名ブデソニドブデソニド
分類潰瘍性大腸炎治療剤潰瘍性大腸炎治療剤
規格錠9mg2mg注腸フォーム
適応活動期潰瘍性大腸炎
(重症を除く)
潰瘍性大腸炎
(重症を除く)
用法用量9mgを1日1回
朝経口投与
1プッシュ(2mg)を1日2回
直腸内に噴射
投与期間(目安)8週間6週間
薬価¥604.6/錠¥4860.8/瓶(14回分)
コレチメント錠、レクタブル注腸フォーム、電子添文等より作成 薬価2024.4時点

ざっとこんな感じです。

まずは共通点を簡単に押さえておきます。

コレチメントとレクタブルの共通点

大きく2つです。

  1. 有効成分:ブデソニド
  2. 適応:潰瘍性大腸炎

有効成分:ブデソニド

1つ目の共通点

コレチメント錠とレクタブル注腸フォームの有効成分はブデソニドです。グルココルチコイド受容体への親和性が強く、強力な抗炎症作用を示します。

代表的なステロイド:グルココルチコイド受容体に対する親和性の比較
レクタブル注腸フォーム インタビューフォーム

ブデソニドは局所でのみ作用し、全身の副作用が軽減できます。バイオアベイラビリティー(BA)が低く(10〜20%:コレチメント電子添文より)、消化管から吸収された成分が門脈を経て肝臓で速やかに代謝(不活化)されるからです。普通ならBAの低さ(初回通過効果が大きい)は、十分な薬効が発揮されず、デメリットになります。ブデソニドは全身利用率の低さを逆にメリットととして生かしたわけです。

ブデソニドは局所作用型のステロイド、初回通過効果が大きく、全身の副作用が少ないのが特徴です!

ブデソニドを有効成分とする製剤

BAの低さを武器に、副作用の軽減を目的に開発、臨床使用されている薬剤はいくつかあります。

製品名成分適応症
パルミコート吸入液0.25mg・0.5mgブデソニド気管支喘息
パルミコート100μgタービュヘイラー112吸入、パルミコート200μgタービュヘイラー56吸入・112吸入ブデソニド気管支喘息
シムビコートタービュヘイラー30吸入・60吸入ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解
ビレーズトリエアロスフィア56吸入・120吸入ブデソニド/グリコピロニウム/ホルモテロールフマル酸塩慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解
ゼンタコートカプセル3mgブデソニド軽症から中等症の活動期クローン病
レクタブル2mg注腸フォーム14回ブデソニド潰瘍性大腸炎(重症を除く)
コレチメント錠9mgブデソニド活動期潰瘍性大腸炎
(重症を除く)

適応:潰瘍性大腸炎

2つ目の共通点

コレチメント錠とレクタブル注腸フォームは潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)に用います。

ポイントは2つです。

病期について

潰瘍性大腸炎は症状がある「活動期」と症状が落ち着いている「寛解期」を繰り返す疾患です。コレチメント錠とレクタブル注腸フォームは活動期の寛解導入」に用います。ステロイドは長期使用に伴う副作用のリスクがあり、「寛解期の維持療法には推奨されていません。後述しますが、投与期間の目安が設定されています。

持田製薬株式会社 BelieveUCan
潰瘍性大腸炎治療薬:適応となる病期
分類・製剤寛解導入維持療法
アミノサリチル酸製剤(5-ASA)
副腎皮質ホルモン
免疫調節剤(チオプリン)
α4インテグリン阻害薬
抗α4β7インテグリン抗体
抗TNF-α抗体
抗IL-12/23p40抗体
JAK阻害薬
免疫抑制剤(タクロリムス、シクロスポリン等)

重症度による選択

潰瘍性大腸炎の治療薬は重症度によって使い分けます。コレチメント錠とレクタブル注腸フォームは軽症から中等症の病態が適応です。

潰瘍性大腸炎診断基準(令和6年3月31日改訂)より
  • 重症:1)および 2)に加えて、全身症状である 3)または 4)のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目以上を満たす
  • 軽症:6項目すべてを満たす
  • 中等症:重症と軽症の中間にあたる

重症例ではステロイド大量静注療法、改善を認めない場合(ステロイド抵抗例)には生物学的製剤やJAK阻害薬等が選択されます。潰瘍性大腸炎診断基準が令和6年3月31日改訂され、コレチメント(ブデソニド腸溶性徐放錠)の記載が追加されました。

潰瘍性大腸炎診断基準(令和6年3月31日改訂)より
参考:潰瘍性大腸炎診断基準(令和5年3月31日改訂)
潰瘍性大腸炎診断基準(令和5年3月31日改訂)より

コレチメントとレクタブルの相違点

では、コレチメントはレクタブルと何が違うのか?
ポイントは大きく4つです。

  1. 剤型の違い
  2. 作用部位の違い
  3. 投与方法の違い
  4. 臨床の位置付け(使い分け)

剤型の違い

ここは重要なポイント!

コレチメント…錠剤
レクタブル…注腸フォーム

コレチメントはDDS(ドラッグデリバリーシステム)を採用したMulti Matrix(マルチマトリックス:MMX)構造の錠剤です。薬剤の溶出制御により、大腸(上行結腸から直腸まで)に薬剤を行き渡せることができます。ここが強みですね!

でも、どうやって、そんなことができるのか?

コレチメントは下記2つの製剤設計により、溶出制御を行っています。

コレチメント錠:DDSの仕組み

pH応答性コーティング
有効成分を大腸に送達する技術。小腸下部で溶解するコーティングを施し、大腸に到達するまでの溶解(胃や小腸付近)に伴う薬剤ロスを軽減している。

マルチマトリックス(親水性基剤と親油性基剤を組み合わせた)
持続的な溶出を可能にする技術。親水性基剤はゲル化により膨潤化、緩やかに薬剤を放出し、親油性基剤は腸液の侵入を抑制し、溶出スピードを遅らせ、大腸全体に薬液が行き渡る。

実はコレチメント錠の製剤特性は、潰瘍性大腸炎治療薬のリアルダ(メサラジン)と同じです。

リアルダ錠の製剤学的特性は、メサラジンを親水性基剤及び親油性基剤からなるマトリックス中に分 散させた素錠部に、pH 応答性の高分子フィルムをコーティングすることで、メサラジンを標的部位である大腸に送達し、大腸全域へ持続的に放出させることである。

リアルダ錠1200mg インタビューフォーム

一方で、レクタブルは肛門から噴射して用いる注腸フォームです。ブデソニドを含有した液体を泡状にしたもので、患部に留まりやすく、注入後の液漏れを軽減できます。

作用部位の違い

コレチメント…大腸全体
レクタブル…直腸からS状結腸まで

コレチメントは大腸全体で薬効を発揮します。溶出制御により、上行結腸〜横行結腸〜下行結腸〜S状結腸部〜直腸まで薬剤が到達するからです。全大腸炎、左側大腸炎、直腸炎、右側あるいは区域性大腸炎、いずれの病型にも使用できます。一方で、レクタブルの薬効は直腸からS状結腸までに限定されます。肛門からの注入であり、下行結腸以降に薬液を十分に送達できないからです。

効能又は効果に関連する注意

本剤が腸内で到達する範囲は概ねS状結腸部までであり、直腸部及びS状結腸部の病変に対して使用すること。

レクタブル注腸フォーム 電子添文

投与方法の違い

コレチメントレクタブル
投与経路経口注腸
投与回数1日1回1日2回
1回量1錠(9mg)1プッシュ(2mg)
投与時点
投与期間8週間6週間

コレチメントは服薬アドヒアランスの点で優れています。経口薬であるし、1回1錠を1日1回あさに服用するだけのシンプルな投与方法だからです。錠剤も小さく(リアルダは大きい…)、患者さんの服薬負担も小さいと思います。一方で、レクタブルの投与方法は煩雑です。手技(1日2回の注腸)が大変なのに加えて、投与前のフォーム剤の加温、アプリケーターの接続等、患者さんの負担は少なくありません。

レクタブル2mg注腸フォーム14回を使用される方へ

また、どちらも投与期間の目安が決まっています。漫然とした長期投与は全身性の副作用が懸念されるからです。コレチメントは8週間、レクタブルは6週間を目安に投与継続の要否・可否を検討します。

用法及び用量に関連する注意

(コレチメント)本剤投与中は患者の病態を十分観察し、投与開始8週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないこと。
(レクタブル)本剤投与中は患者の病態を十分観察し、投与開始6週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないこと。

コレチメント錠、レクタブル注腸フォーム
ちなみに8週と6週の違いは何か?

第3相臨床試験におけるプロトコールの違いです。コレチメントは8週間、レクタブルは6週間後の有効性と安全性を確認しています。ちなみに、レクタブルは6週投与で治療反応を認めたものの、粘膜治癒には至らなかった患者を対象に6週間(計12週間)追加投与した臨床成績もあり、必要に応じて期間の延長が可能だと考えられます。

臨床の位置付け(使い分け)

では、両薬剤はどのように使い分けるのか?

コレチメント…ステロイド経口薬の改良版
レクタブル…ステロイド外用剤(坐剤、注腸剤)の改良版

上記、薬剤の特性から、コレチメント錠は軽症から中等症の全大腸炎型と左側大腸炎型において、ステロイド経口薬の前に選択する薬剤だと考えられます。MMX技術により大腸全域に局所的に作用し、バイオアベイラビリティーが低く全身性の副作用リスクを軽減できるからです。ここが1番の使い所だと考えられます。

一方で、レクタブル注腸フォームは、直腸炎型においてステロイド外用剤(坐剤や注腸剤)よりも優先的に使用する薬剤だといえます。ブデソニドはBAが低く、副作用のリスクを減らせるからです。また、注腸剤のように体位変換が不要だし、持ち運びがしやすいのも利点ですよね。

コレチメントはレクタブルにとって代わるのでは?

承認されたことを聞いて、はじめにそう思いました。なぜなら、大腸全域に薬剤が届くし、アドヒアランスの点で注腸よりも経口投与の方が断然優れているので。

当然ながら、コレチメント錠は直腸炎型にも使用できます。しかし、そこはレクタブルの方が良いのかなと思います。直接肛門から注入する方が、確実に薬剤を直腸に届けられるし、薬剤濃度も高いことが予想されるからです(上手く棲み分けがされる気がします^_^)。今までアドヒアランス等の理由で、レクタブルを含めステロイド外用剤が使用できなかった人では、コレチメントの登場で治療の選択肢が広がると考えられます。

まとめ

今回は、コレチメント錠の特徴は何か?類似薬レクタブル注腸フォームと何が違うのか?両薬剤を比較しながら、共通点と相違点についてまとめました。

記事を書きながら興味深かったのは、

コレチメント錠の開発コンセプト。ブデソニドの低いBAを逆手に取りつつ、そこに、pHフィルムコーティングとMMXの採用により、標的部位である大腸で薬効を発揮させる工夫は面白いと感じました^_^

コレチメントの登場により、潰瘍性大腸炎に対する治療薬の選択肢が広がります。どのように使い分けるのか、注目していきたいです!

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