ゼンタコートカプセルはどんな薬なのか?
・世界40カ国以上で承認、販売されているゼンタコートカプセル。2016年11月から国内でも販売されています。
今回は、ゼンタコートの特徴について内容をギュッと凝縮しました。
さっそく見ていきましょう。
ゼンタコートを理解するための4つのポイント

大きく4つのポイントがあります。
- 有効成分はブデソニド(吸入薬パルミコートと同じ)
- バイオアベイラビリティが低い(副作用を軽減!)
- 腸溶性、徐放性の顆粒を充填したカプセル
- 軽症〜中等度クローン病の治療、寛解導入目的で使用
有効成分はブデソニド
抗炎症作用を発揮する副腎皮質ホルモン剤です。
ブデソニドを含有する製剤は各種疾患に使用されています。
- 気管支喘息…パルミコート吸入(ブデソニド)
- 気管支喘息、COPD…シムビコート吸入(ブデソニド+ホルモテロール)
- 潰瘍性大腸炎…レクタブル注腸フォーム(ブデソニド)
- COPD…ビレーズトリエアロスフィア吸入(ブデソニド+ホルモテロール+グリコピロニウム)
- クローン病…ゼンタコートカプセル(ブデソニド)
今回のゼンタコートは、クローン病治療に用いる経口薬です。
欧米のガイドラインでは「回腸から上行結腸に病変を有する軽症から中等症のクローン病」の第一選択薬として推奨されてます。
初回通過効果を受けやすい
ブデソニドは経口投与すると、CYP3A4で代謝されて、活性が低い代謝物に変わります。
バイオアベイラビリティ(BA)は10〜20%と低く、全身性の副作用が少ないのがいいところです。
・易感染性、耐糖能異常、創傷治癒遅延、骨粗しょう症、副腎機能低下、白内障、緑内障など
BAの低さはデメリットであることが多いですが、腸管組織で局所作用を期待する薬剤からすれば逆にメリットとなるわけですね。
腸溶性徐放性顆粒を充填したカプセル
ゼンタコートは製剤に工夫があります。
顆粒のまわりにPH5.5以上で溶けるコーティング(メタクリル酸コポリマーLD)を施して、回腸から上行結腸で溶けるように製剤化されたものです。普通に投与したら、病変部位に届く前に吸収されて無効化されてしまうからですね。
さらに、ブデソニドに不溶性ポリマーを配合して、広範囲にわたりゆっくり有効成分が放出されるように工夫されています。
・ターゲットとする回腸から上行結腸に届くように設計された製剤です。
寛解導入目的で使用する
クローン病は原因不明の炎症性腸疾患で、慢性的に、寛解(症状が良くなる)と再燃(悪くなる)を繰り返す病態です。
薬物治療は2つの病期で使い分けます。
寛解導入目的に使用
・5-ASA(メサラジン、サラゾスルファピリジン)
・ステロイド
・抗TNF-α製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ)
・抗IL-12/23p40モノクローナル抗体(ウステキヌマブ)
・抗α4β7インテグリンモノクロナール抗体(ベドリズマブ)
寛解維持目的で使用
・5-ASA製剤
・AZA・6-MP(アザチオプリン・メルカトプリン)
・抗TNF-α製剤
・抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体
・抗α4β7インテグリンモノクロナール抗体[/box04]
※サラゾスルファジンは大腸型に限る、※6-MPは適応外
ゼンタコートは、軽症から中等症の活動期に寛解導入目的で使うクスリです(重症になると経口ではなくステロイドの経静脈投与が適応)
・副腎皮質ステロイドは寛解維持効果はなく、長期投与による副作用の問題もあって、有用でないとされています。
クローン病では病期にあわせて選択する薬剤が違って、ゼンタコートは寛解導入にのみ使えるクスリである点は押さえておきましょう。
参考文献)
・炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016
・潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針平成30年度改訂版
国内臨床試験も合わせて確認

サラッと確認しておきますね。
- 対象…主要病変が回腸から回盲部及び上行結腸又はそのいずれかに存在する軽症から中等症の国内の活動期クローン病患者
- ゼンタコート vs メサラジン(ペンタサ)
▽結果は以下のとおり(ゼンタコート9mg vs メサラジン1g×3→8週間投与)
- 寛解率…非劣性(30.4% vs 25.0%)
※クローン病活動性指数CDAI 150以下の割合 - 副作用発現率…16.1% vs 8.9%
- 副作用…便秘、ざ瘡様皮膚炎、アトピー性皮膚炎など
→寛解率はペンタサと同程度(非劣性)
・「回腸および上行結腸に病変を有する」軽症から中等症の国内の活動期クローン病患者にメサラジンと同程度の有用性が示されました。
副作用は経口ステロイドとの比較ではありませんが、BAの低さから安全性は高いと考えられます。
参考文献)ゼンタコートインタビューフォーム、添付文書
Question & answer

テーパリングが必要?
寛解導入のために使用するゼンタコート。
症状が良くなったら、いきなり中止しても良いのか?
通常、ステロイドは離脱症状を防止するために漸減(テーパリング)します。
・プレドニゾロンなら1〜2週間を目安に40mg→30mg→20mg→10mg→5mg→というふうに。
ゼンタコートも同じ。
以下のように添付文書にも書いてあります。
本剤を長期間投与した場合に、クッシング様症状や副腎皮質機能抑制等の全身作用があらわれることがあるため、漫然と投与せず、本剤を中止する場合には徐々に減量すること
例えば9mg→6mg→3mgというふうに症状を見ながら減量していくものと考えられます。
相互作用のあるクスリは?
ゼンタコートの成分であるブデソニドはCYP3A4で代謝されます。
下記のCYP3A4を基質とする薬剤や食物との併用には注意が必要です。
- イトラコナゾール等
- グレープフルーツ、グレープフルーツジュース
・添付文書にはこの2種類が書いてあるけど、クラリスロマイシンや一部のHIV薬などCYP3A4の基質になる代表薬にも注意が必要だと思います。
まとめ

最後にまとめておきますね。
・ゼンタコートのポイントは以下のとおり。
- 有効成分はブデソニド
ゼンタコートはクローン病治療に用いる経口薬。同成分は局所作用を期待して吸入薬や注入薬、注腸製剤としても承認。 - バイオアベイラビリティが低い
10〜20%と低く、全身性の副作用が少ないのがメリット! - 腸溶性、徐放性の顆粒を充填
病変部位に届く前に吸収されて無効化されない製剤設計。回腸から上行結腸にかけて放出される。 - 軽症〜中等症のクローン病治療、寛解導入目的で使用
ステロイドは寛解維持効果がなく長期使用は副作用が問題となる。寛解導入のみ適応。重症例には注射剤を選択。
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今回はゼンタコートカプセルについてまとめました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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