ゼップバウンドとウゴービの違い

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ゼップバウンドとウゴービの違い

今回のテーマはゼップバウンド注!肥満症の治療薬です。かなり注目されている薬剤ですよね。「どのような特徴があるのか」「先行発売のウゴービ皮下注との違いは何か」ポイントをまとめたので共有します。

目次

ゼップバウンドとウゴービの比較

商品名ゼップバウンドウゴービ
メーカー日本イーライリリーノボノルディスクファーマ
販売2025年4月11日2024年2月
一般名チルゼパチドセマグルチド
分類持続性GIP/GLP-1受容体作動薬持続性GLP-1受容体作動薬
規格6規格
2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mg
5規格
0.25mg/0.5mg/1.0mg/1.7mg/2.4mg
適応症肥満症
ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
・BMIが35kg/m2以上
肥満症
ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する 
・BMIが35kg/m2以上
用法週1回投与週1回投与
用量初回…2.5mg
維持…10mg
減量…5mgまで
増量…15mgまで
※4週ごとに2.5mgずつ増量
初回…0.25mg
維持…2.4mg
適宜減量
※4週ごとに0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgの順に増量
液量0.5mL0.5mL
1.7mgと2.4mgは0.75mL
針のサイズ29G29G
禁忌①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者②糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者③2型糖尿病を有する患者における重症感染症、手術等の緊急の場合①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者②糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者③2型糖尿病を有する患者における重症感染症、手術等の緊急の場合
半減期約5~6日155時間
デバイスアテオス(針付き)キット(針付き)
保管2〜8℃…24ヶ月
室温遮光…21日
2〜8℃…24ヶ月
室温遮光…?
薬価2.5mg…¥3,067
5mg…¥5,797
7.5mg…¥7,721
10mg…¥8,999
12.5mg…¥10,180
15mg…¥11,242
0.25mg…¥1,876
0.5mg…¥3,201
1mg…¥5,912
1.7mg…¥7,903
2.4mg…¥10,740
ゼップバウンド皮下注、ウゴービ皮下注電子添文より作成、薬価は2025年4月以降

glucagon-like peptide-1:GLP-1(グルカゴン様ペプチド)
glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)

ゼップバウンドとウゴービの特徴は上記のとおりです。簡単に共通点を押さえておきます。

共通点①適応症

ゼップバウンドとウゴービはどちらも肥満症の治療薬です。チルゼパチドとセマグルチドは2型糖尿病の適応で承認されたのちに、新たなエビデンスをもとに、別の製品名称を引っ提げて承認されています。

チルゼパチドセマグルチド
2型糖尿病
(販売年)
マンジャロ皮下注
(2023年6月)
オゼンピック皮下注
(2020年6月)
リベルサス
(2021年2月)
肥満症
(販売年)
ゼップバウンド皮下注
(未定)
ウゴービ皮下注
(2024年2月)

肥満症の治療薬はOTCも含めて3製品でしたが、ここにゼップバウンドが加わります。ウゴービ、サノレックス、アライの特徴は、別記事にまとめているので、ご覧頂けたら幸いです。

ゼップバウンドとウゴービは、「肥満症」の治療以外の目的(美容・痩身・ダイエット等)では使用できません。ここは重要です。加えて、肥満症に用いる場合でも、施設要件や対象患者、使用手順等を遵守すべき薬剤である点は押さえておきましょう。

共通点②対象者

ゼップバウンドとウゴービはどちらも下記の条件を満たした患者に用います。

適応:肥満症
ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
・BMIが35kg/m2以上

ポイント①

肥満症」の患者です。単にBMIが基準以上(肥満)あるだけでは投与できません。

ポイント②

BMI27以上35未満…健康障害が2つ必要(1つは高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずか)
BMI35以上…健康障害1つ以上(1つは高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれか)

ポイント③

食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない場合です

肥満と肥満症の違い
肥満肥満症
定義脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMIが25以上のもの(BMI25以上で)肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予想され、医学的に減量を必要とする疾患。
肥満症診療ガイドライン2022

BMI25以上は共通点。違いは健康障害を有するかどうかですね

肥満症の診断に必要な健康障害とは
  1. 耐糖能異常(2型糖尿病、耐糖能異常など)
  2. 脂質異常症
  3. 高血圧
  4. 高尿酸血症・痛風
  5. 冠動脈疾患
  6. 脳梗塞・一過性脳虚血発作
  7. 非アルコール性脂肪性肝疾患
  8. 月経異常・女性不妊
  9. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低過換気症候群
  10. 運動器疾患(変形性関節症、変形性脊椎症)
  11. 肥満関連腎臓病

肥満症診療ガイドライン2022

共通点③週1回皮下投与

ゼップバウンドとウゴービは週1回投与です。構造改変により半減期が延長された製剤だからです。

ゼップバウンドウゴービ
一般名チルゼパチドセマグルチド
構造ヒトGIP組み換え+長鎖脂肪酸ヒトGLP-1組み換え+長鎖脂肪酸
分子量4813.454113.58
半減期5〜6日約1週間
半減期延長の仕組みC20脂肪酸側鎖を付加(内因性アルブミンへの結合性アップ)アミノ酸修飾(DPP-4に安定)
長鎖脂肪酸を付与(血中アルブミンと結合性UP)
ゼップバウンド皮下注、ウゴービ皮下注、インタビューフォームより
共通点④糖尿病薬との併用に注意

ゼップバウンドとウゴービはどちらも2型糖尿病薬との併用に注意を要します

ゼップバウンド
GIP/GLP-1受容体作動薬
ウゴービ
GLP-1受容体作動薬
マンジャロ同成分
オゼンピック同成分
その他のGLP-1
受容体作動薬
ビグアナイド系薬剤
スルホニルウレア剤
速効型インスリン分泌促進剤
α-グルコシダーゼ阻害剤
チアゾリジン系薬剤
DPP-4阻害剤
インスリン製剤
SGLT2阻害剤等
ゼップバウンド皮下注、ウゴービ皮下注電子添文より 併用を避ける併用注意

ゼップバウンドとウゴービはどちらも①GLP-1受容体のアゴニスト作用を有する薬剤と併用はできません。過剰作用により、低血糖症状等の副作用のリスクが高まるからです。同成分の薬剤やトルリシティ、ビクトーザなど。あと、配合薬のソリクアやゾルトファイは見落としやすいので気をつけましょう。

ゼップバウンド皮下注と併用できない薬

また、ゼップバウンドとウゴービは②各種糖尿病薬と併用注意です。特に、インスリン製剤又はスルホニルウレア剤、グリニド系等との併用時は低血糖症状が起こりやすく、減量または減量を考慮することが電子添文で注意喚起されています。

ゼップバウンドとウゴービ:作用機序の違い

ゼップバウンドウゴービ
分類GIP/GLP-1受容体作動薬GLP-1受容体作動薬
作用機序本剤は中枢神経系においてGIP受容体及びGLP-1受容体に作用することにより食欲を調節し、また、脂肪細胞のGIP受容体に作用することにより脂質等の代謝を亢進させることで、体重減少作用を示すと考えられる本剤はGLP-1受容体を介して食事摂取の恒常的調節に関与する脳領域である視床下部及び脳幹に直接作用するものと考えられる。また、中隔、視床及び扁桃体を含む脳領域における直接的及び間接的作用を介して、報酬系にも作用する可能性もある
GLP-1を介する作用中枢:食欲抑制
末梢:蠕動運動抑制
中枢:食欲抑制
末梢:蠕動運動抑制
GIPを介する作用中枢:食欲抑制
肥満細胞:エネルギー消費増加
ゼップバウンド、ウゴービ皮下注、電子添文、審議結果報告書より作成

ゼップバウンドはGIPとGLP-1を介した作用があります。ここがGLP-1のみのウゴービとの大きな違いですね。GLP-1受容体を介した「食欲抑制+蠕動運動抑制」作用に加えて、GIPを介した「中枢:食欲抑制+肥満細胞:エネルギー消費亢進」により体重を減少させます。作用機序の違い(ダブルアクション)に注目すると、ゼップバウンドはより強い体重減少効果が得られそうですよね。

ゼップバウンドとウゴービ:投与方法の違い

作用点ゼップバウンドウゴービ
規格6種類
2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mg
5種類
0.25mg/0.5mg/1.0mg/1.7mg/2.4mg
漸増方法4週ごとに
2.5mg
ずつ増量
4週ごとに
0.5mg→1.0mg→1.7mg→2.4mg
に順に増量
初回2.5mg0.25mg
維持10mg2.4mg
増量12.5mg/15mg
減量5mg/7.5mg適宜減量
投与制限7268
ゼップバウンドは効果が不十分な時に増量できます

15mg群(増量用量)は、72週時の「体重変化率」と「5%以上の体重減少達成割合」がプラセボ群に比べて優越性を示し、10mg群(維持用量)を上回る傾向が認められているからです。12.5mgを4週投与し、忍容性を見ながら15mgへドーズアップできます。

ゼップバウンド皮下注 インタビューフォーム、国内第Ⅲ相臨床試験

一方で、ウゴービは2.4mgが維持用量であり増量の設定がありません。推奨用量検討のために設定された1.7mg群よりも、2.4mgの方が維持用量として好ましいと判断されたからです。逆にいうと、1.7mgを維持用量とすると、減量目標(肥満症では現体重の3%以上、高度肥満症では5〜10%以上)の達成には不十分と評価されたということになります。維持量2.4mgで効果が得られない場合には、他剤への変更や中止を検討するかたちです。

ウゴービ皮下注 インタビューフォーム
ゼップバウンドは減量基準が明確です

電子添文に減量用量5mgが明記されています。臨床試験において5mg群は72週時点における体重変化率が−16.5%、5%以上の体重減少達成割合が90.3%と、10mg群と15mg群には劣るものの十分な効果が期待できることが示されているからです。忍容性や効果によって、7.5mgや5mgの減量用量を選択できます。

ゼップバウンド皮下注 インタビューフォームより

一方で、ウゴービは減量用量が明記されていません。電子添文では「適宜減量」との記載です。基本的には前用量の1.7mgを選択し、忍容性によっては1.0mgも選択肢に上がると考えられます。

国際共同第Ⅲ相試験において1.0mg群は68週時点の体重変化率が−7.2%、5%以上体重減少達成割合が57.1%という結果でした

・ 2型糖尿病患者における既存のセマグルチド製剤の使用経験から、胃腸障害の発現状況、有効性等は個々の患者の状態によって異なるため、本剤についても日常診療では患者の状態に応じた用量調節がなされるものと考える。4382試験で検討された本剤2.4mg 及び1.7mgだけでなく、4374試験成績を踏まえると、本剤1.0mgでも臨床的には十分な体重減少効果が認められている。

ウゴービ 審議結果報告書
ゼップバウンドは72週まで投与できます

臨床試験において72週時点での有効性と安全性が確認されているからです。一方で、ウゴービは68週までしか投与できません。68週時点での臨床成績をもとに承認されており、それ以上を超えて投与しないように、肥満症・最適使用推進ガイドラインに明記されているからです。ゼップバウンドも同様に、72週の投与制限が加わると考えられます。

高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病並びに肥満症に関する最新の診療ガイドライン等を参考に、本剤投与中も適切な食事療法・運動療法を継続するとともに、2ヵ月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けたことが管理記録等で確認できること。日本人を対象とした臨床試験において、本剤の68週間を超える使用経験はないことから、本剤の投与は最大68週間とすること。

最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)

ゼップバウンドとウゴービ:投与忘れ時の対応の違い

ゼップバウンドウゴービ
投与を忘れた場合
次回投与までの期間が3日間(72時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与すること。次回投与までの期間が3日間(72時間)未満であれば投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与すること
投与を忘れた場合
次回投与までの期間が2日間(48時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与すること。次回投与までの期間が2日間(48時間)未満であれば投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与すること
週1回投与の曜日を変更する場合
前回投与から少なくとも3日間(72時間)以上間隔を空けること
週1回投与の曜日を変更する場合
前回投与から少なくとも3日間(72時間)以上間隔を空けること
ゼップバウンド皮下注、ウゴービ皮下注、電子添文より

投与忘れ時の対応を図で示すと

スクロールできます
予定日
ゼップバウンド忘れ
ウゴービ
気づいた時点で投与OK、忘れた分はスキップ

ゼップバウンドよりもウゴービの方が、投与忘れに伴う効果減弱(スキップ対応)の可能性が低いといえます。気づいた時点で投与できる期間が1日長いからです。例えば、毎週土曜日に投与する場合、ゼップバウンドは火曜日までに気付かないと1回分の投与を見送るかたちですが、ウゴービは水曜日であっても気付いた時点で投与できます。この違いをもって、アドヒアランスの悪い人はウゴービの方が向いているとまでは言いにくいですけどね(^^)。とにかく、投与忘れ時の対応は事前にしっかりと説明が必要ですね。

週1回投与の曜日を変更する場合
・ウゴービ:前回投与から少なくとも3日間以上空ける
・オゼンピック:前回投与から少なくとも2日間以上空ける

同じセマグルチドを成分としますが、対応が異なります。ここは盲点ですよね。

理由は以下の通り

週1回投与の定めた曜日を変更する場合、前回投与から少なくとも3日間(72時間)以上間隔を空けることとした。この間隔は2型糖尿病を効能又は効果とする皮下投与用セマグルチド製剤(以下、オゼンピック)での設定〔2日間(48時間)〕と比較して長いが、この理由は本剤の治療用量(2.4mg)がオゼンピックの最高治療用量(1.0mg)と比較して高いことによる安全性への配慮のためである

ウゴービ皮下注 インタビューフォーム

ゼップバウンドとウゴービ:操作方法の違い

作用点ゼップバウンドウゴービ
デバイスアテオスキット
使用回数単回使用単回使用
注入方法自動注入自動注入
取り付け不要
(29G内蔵)
取り付け不要
(29G内蔵)
操作①キャップを外す
②注射部位に当てて「ロック解除
③「注入ボタン」を押す
①キャップを外す
②注射部位に当てて
③「本体」を押しつける
注入時間長くても10秒5〜10秒
部位お腹、太もも、上腕お腹、太もも、上腕
ゼップバウンド皮下注、ウゴービ皮下注、取扱説明書より作成

ゼップバウンドとウゴービはどちらも単回使用の自動注入器です。針の取り外しが不要で、操作も簡便な製剤になります。あえていうなら、ウゴービの方が簡便な印象を持ちました。ロックを解除したり、注入ボタンを押す必要がないからです。注射部位に押し当てて、そのまま本体を押し当てるだけで注入がスタートします。慣れたら、どちらも大差はないと思いますが^_^

ゼップバウンド(チルゼパチド)取扱説明書
ウゴービ(セマグルチド)取扱説明書

まとめ

今回はゼップバウンドとウゴービの違いについてまとめました。1番の違いはGLP-1に加えてGIP受容体にも作用する点ですね。体重減少作用にどのくらい影響があるのか、気になりました。あと、ゼップバウンドは増量(15mg)の設定があり、ウゴービ効果不十分例からの切り替えや高度肥満症の方に対する選択肢として有用だと感じました。ゼップバウンドの発売により、肥満症治療薬の選択肢が増えます。本記事が知識の整理にお役立て頂けたら幸いです!

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