鎮痛薬

痛み止めNSAIDsによる胃潰瘍・消化管出血のリスク【予防方法も解説!】

痛み止めは胃が荒れるーー。

医療者はもちろん、患者さんだってわかってる人が多いです。あまりにメジャー過ぎて、記事にする必要ないんじゃない?

・という不安もあるけど、もしかすると、実はよく知らなかったり、有名な副作用なのできちんと知識を整理しておきたい…という人もいたりするかな?

そんな淡い期待から今回のテーマは「NSAIDsによる胃潰瘍・消化管出血」、適正使用のポイントを解説します。

この記事で解説するのは、以下の2点です。
・NSAIDsによる胃潰瘍・消化管出血のリスク
・胃潰瘍・消化管出血を防ぐためにできる3つの方法

さっそく見ていきましょう。

NSAIDsによる胃潰瘍・消化管出血のリスク

NSAIDsの基本的知識をまず、確認しておきましょう。

NSAIDsとは非ステロイド性抗炎症薬のこと

Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略。

解熱鎮痛作用に加えて抗炎症作用を示す、ステロイドを除いた薬剤の総称です。

NASAIDsは組織にあるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、炎症を惹起して痛みや腫れの原因となるプロスタグランジン(PG)の産生を低下させるのが作用機序ですね。

非選択的NSAIDsとCOX-2選択的阻害薬の違い

NSAIDsは2種類に分類されます。

  1. 非選択性NSAIDs
  2. COX-2選択的阻害薬

ターゲットとするCOXは、COX-1とCOX-2の2種類で、どちらにも作用するのが非選択的NSAIDs、COX-2により選択性が高いのがCOX-2選択的阻害薬です。

COX-1とCOX-2の違いは?

・COX-1は、血小板や消化管、腎臓などに常時発現し、血小板の働きを強めたり、粘膜組織の血流をよくするなど生体の恒常性を維持する役目があります。一方で、COX-2は主に炎症時に誘導され、痛みや腫れを引き起こします。

非選択性NSAIDsとCOX-2選択的阻害薬。代表的な薬剤は以下のとおりです。

  • 非選択性NSAIDs…アスピリン、ケトプロフェン、インドメタシン、ロキソプロフェンなど
  • COX-2選択的NSAIDs…メロキシカム、エトドラク、セレコキシブなど

NSAIDs潰瘍が起こる原因は?

恒常的に発現してるCOX-1を阻害してしまうからです。

PGの産生が低下し、胃粘膜組織の防御機能が破綻して、胃炎や潰瘍、ひどい場合には出血を引き起こすこともあります。

一方で、COX-2選択的NSAIDsは、胃に優しいNSAIDs。COX-1に対する作用が弱いので胃粘膜傷害が起こりにくいのが特徴です。

COX-1に加えて、COX-2も関係している!?

実はCOX-2選択的NSAIDsにも意外な盲点があります。

・COX-2阻害薬は傷ついた粘膜の修復を遅延させてしまうこと。

COX-2は組織の治癒を促す作用もあるので、直接的ではないにせよ胃潰瘍の発症に加担してしまうわけです。

NSAIDs潰瘍の機序は、2つの要素により起こるという理解になります。COX-1阻害による粘膜障害COX-2阻害による治癒反応の妨げです。

COX-2選択的阻害薬を飲んでいたら安心というわけではありません。非選択的NSAIDsよりは安全性が高いですが……。リスクはゼロではないのです。

胃潰瘍や消化管出血の頻度はどのくらい?

NSAIDsによる胃粘膜障害は、意外と多いです。

・1991年に日本リウマチ財団が実施した3カ月以上の長期間、NSAIDsを服用している関節炎患者1008 人を対象とした疫学調査によれば、上部消化管障害の発生率は、以下のとおりでした。
・胃炎…38.5%
・胃潰瘍…15.5%
・胃潰瘍瘢痕…8%
・十二指腸潰瘍…1.9%
(※リウマチ,31:96-111,1991)

胃潰瘍とその瘢痕までを合わせるとなんと約25%!

つまり、NSAIDsを長期に服用すると、10人のうち2〜3人に胃潰瘍が発症する計算です。胃炎まで含めると約6割に胃粘膜病変を認めることになります。

たしかに、手術後の疼痛管理でNSAIDsを服用している人が吐き気や食欲不振を訴えるのは稀ではないし、消化管出血で入院された人がNSAIDsを飲んでいたーーというのは日常的に目にする光景です。

やはり、NSAIDsの胃粘膜障害には注意が必要なんですね。あらためて思いました。

NSAIDs潰瘍のリスク因子とは?

NSAIDsによる潰瘍リスクを増強させる因子は以下のようなものがあります。

・ピロリ菌感染
・潰瘍の既往歴
・高用量NSAIDs
・NSAIDs併用(LDAを含む)
・血小板薬・抗凝固薬の併用
・ステロイド併用
・ビスホスホネート併用など

この中から、以下の4つのリスク因子について見ていきます。

  1. ピロリ菌感染
  2. NSAIDs併用(LDAを含む)
  3. ステロイド併用
  4. ビスホスホネート併用

ピロリ菌感染は、独立した胃潰瘍の危険因子!

NSAIDsもそうですが、ピロリ菌も独立した危険因子です。

両方の因子が重なると胃潰瘍や消化管出血のリスクが倍増することがわかってます。

・海外のメタ解析によればピロリ菌感染(なし)・NSAIDs服用(なし)の患者の胃潰瘍と消化管出血のリスクを、それぞれ1とした場合のオッズ比は以下のとおりでした。

・ピロリ菌(あり)・NSAIDs(なし)
→胃潰瘍18.1倍 / 消化管出血1.79倍
・ピロリ菌(なし)・NSAIDs(あり)
→胃潰瘍19.4倍 / 消化管出血4.85倍
・ピロリ菌(あり)・NSAIDs(あり)
→胃潰瘍61.1倍 / 消化管出血6.13倍

参考文献 )Lancet.2002 ;359:14-22.

ピロリ菌感染がある人がNSAIDsを飲むと胃潰瘍や消化管出血のリスクが増加するわけです。

・ピロリ菌感染が認められる人は、NSAIDs投与前に除菌療法が推奨されてます。

前もって潰瘍のリスクを下げておくためです。

一方で、もうすでにNSAIDsを飲み始めている人は、除菌療法は勧められていません。予防効果が十分ではないので。

参考文献)消化性潰瘍診療ガイドライン2015

ピロリ菌感染減少、NSAIDs潰瘍増加!?

最近では、除菌療法の普及に伴いピロリ菌を起因とした胃潰瘍のリスク自体は減っているそうです。

・一方で、高齢化により循環器疾患や整形外科疾患を持つ人も増え、NSAIDsや低用量アスピリン(LDA)を飲む人が増加しています。

今後は、NSAIDsを起因とした胃潰瘍がさらに増えると予想!

NSAIDs潰瘍を防ぐためにも早期発見や副作用のモニタリング、薬剤性評価など、より一層の関わりが薬剤師に求められています。

LDAやステロイドの併用は、消化性潰瘍リスクに要注意!

NSAIDs+LDA、NSAIDs+ステロイドはよく見かける処方です。

変形性膝関節症や関節リウマチなどの疾患で、NSAIDsを服用している人が、循環器疾患でLDAを、あるいは呼吸器疾患や自己免疫疾患などでステロイドを併用する場合ですね。

上部消化管出血のリスクはどのくらい増加するのでしょうか?

2014年に報告された海外の大規模なメタ解析。
NSAIDsにLDAやステロイドなど他の薬を組み合わせた場合の上部消化管出血の発症率について、内服薬なしのリスクを1とした場合の相対リスクを調査したものです。

結果は以下のとおり。(結果一部抜粋)

▽単独療法
・非選択的NSAIDs…4.27倍(4.11-4.44)
・COX-2阻害薬…2.90倍(2.67-3.15)
・LDA…3.05倍(2.94-3.17)
・ステロイド…4.07倍(3.83-4.32)

▽LDAとの併用療法
・LDA+非選択的NSAIDs…6.77倍(6.09-7.53)
・LDA+COX-2阻害薬…7.49倍(6.22-9.02)
→LDAを併用するとどちらもリスクが増加

▽ステロイドとの併用療法
・ステロイド+非選択的NSAIDs…12.82倍(11.17-14.72)
・ステロイド+COX-2阻害薬…5.95倍(4.25-8.33)
→ステロイドを併用すると非選択NSAIDsの方がより増加

参考文献)Gastroenterology. 147:784-792.2014.

単独療法において、COX-2阻害薬は胃に優しい!

やっぱり、COX-2阻害薬は安全性が高い。

単独療法では、COX-2阻害薬の方が非選択的NSAIDsよりもリスクが低めです。COX-1への影響がないので、上部消化管出血のリスクも低くなると考えられます。

併用療法になると、どちらもリスクが増大する!

・LDAを併用した場合、非選択的NSAIDsとCOX-2選択的阻害薬、どちらもリスクが増強します。

胃の負担が少ないCOX-2阻害薬のメリットが相殺されてしまうわけです。LDAのCOX-1阻害作用により、COX-2選択性の意味がなくなると考えられます。

・ステロイドを併用した場合、COX-2阻害薬よりも明らかに非選択的NSAIDsの方がリスクが増強する。

ステロイドには創傷治癒を遅延させる作用があるため、COX-1阻害作用で傷ついた粘膜の修復が阻害されるためですね。

ステロイドに併用する場合には、非選択的NSAIDsよりCOX-2阻害薬の方がリスクが低いといえます。

・上部消化管出血の発症リスクを増加させる、特に注意が必要な組み合わせは、①LDA + 非選択的NSAIDs or COX-2阻害薬、②「ステロイド + 非選択的NSAIDsですね。

ビスホスホネート製剤の併用も要注意!

高齢者ではよくある組み合わせ。

経口ビスホスホネート製剤(BP)とNSAIDsとの併用リスクも指摘されています。

・NSAIDsを3ヶ月以上服用している関節リウマチ患者196人を対象とした後ろ向きコホート研究によれば、内視鏡的潰瘍の発生率は以下のとおりでした。
・BP併用群…31%(21/68)
・非併用群…17%(22/128)
→BP併用群の方が、潰瘍リスクが高い
※多変量解析調整オッズ比 2.29(1.09-4.81)
参考文献 )J Gastroenterology 2009, 44, 113–120.

経口BP製剤は単独でも、直接粘膜を刺激して潰瘍を誘発します。NSAIDsとの併用によりさらにリスクが高まるので注意が必要です。

BP+NSAIDsを併用されている高齢者は多い

骨粗鬆症の患者さんの多くは、痛み止めを飲んでいます。

中でもNSAIDsのケースが多く、経口BP製剤との組み合わせ処方は日常的に遭遇する、あるある処方です。

胃部不快感や胃潰瘍などを認める場合には、NSAIDsの中止や安全性の高いアセトアミノフェンへの変更が基本ですが、静脈内投与ができるBP製剤への変更もリスク低減のための選択肢になります。

・経口BP製剤+NSAIDsを見かけたら副作用の確認、モニタリングを徹底しましょう。

潰瘍・消化管出血リスク低減のためにできる3つのこと

NSAIDs潰瘍を予防するための方法は大きく3つ。

  1. 早期発見とモニタリング
  2. 予防薬または代替薬を提案する
  3. NSAIDsの必要性を評価する

順番に見ていきましょう。

早期発見とモニタリング…その①

副作用の兆候をいち早くキャッチする!

まずは自覚症状の確認です。

・胃痛や吐き気
・めまいやふらつきなどの貧血症状
・血便

NSAIDsが処方時に事前に患者さんに説明しておくと、早期発見につながります。

それから検査値の確認。

貧血症状の悪化や消化管出血の兆候をいち早くキャッチするために必要です。

・ヘモグロビン値(Hb)
・尿素窒素(BUN)
・クレアチニン(Cre)

この中で、Hbのチェックはイメージしやすいです。推移から消化管出血の可能性を探ることができます。

BUNとCreは消化管出血の可能性を教えてくれる

一方、BUNとCreは腎機能を評価するための指標です。

なぜ、消化管出血の指標となるのか?

BUNは消化管出血でも上昇するからです。

・出血した血液に含まれるタンパク質が腸管内で代謝されてアンモニアを発生し、吸収されて、さらに代謝を受けて最終的に血中BUN上昇という形で表れます。消化管出血でもBUNは増加するわけです。

BUNの上昇は腎機能の悪化や脱水だけではないのですね。

一方で、Creは腎機能低下で上昇するものの、消化管出血による影響は受けにくい。

・Creと比較してBUNが高値を示すようであれば、腎障害ではなく脱水や上部消化管出血の可能性が高いと判断できるのです。

一般的には、BUN/Cre比>30 が上部消化管出血の可能性が高いと判断する目安になります。

NSAIDs投与中は自覚症状に加えて、検査値チェックを活用して消化管出血の早期発見に努めましょう。

予防薬または代替薬を提案する…その②

一次予防と二次予防に分けて考えるとわかりやすいです。

潰瘍の既往がない一次予防

・胃潰瘍や消化管出血を防ぐために予防薬の投与が提案されています。

例えば、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やプロスタグランジン製剤(PG)、ほかにはH2拮抗薬やレバミピドなど。一次予防で有効であったとの報告があります。ただし、保険適応がない点には注意が必要です。

また、COX-2選択的阻害薬を選択するのも一つ。非選択的NSAIDsよりも胃粘膜障害が少ない方を選んだ方がいいですよね。

一方、潰瘍の既往がある二次予防

・NSAIDsとの併用下でPPIまたはPGの投与が推奨されています。

ただし、 PGは下痢の副作用が多く、妊婦または妊娠の可能性のある人にも使用できないので、使い勝手の良いのはPPIの方です。

また、出血を伴う潰瘍既往歴がある高リスク例では、非選択的NSAIDsではなくCOX-2選択的阻害薬とPPIの併用が推奨されています。NSAIDs自体をCOX-2阻害薬に変更してリスクを最小化する方法です。

参考文献)消化性潰瘍診療ガイドライン2015

一次予防か二次予防に分けて、予防投与の必要性を患者さんごとに評価し、最適な処方提案を行いましょう。

NSAIDsは本当に必要?という視点をもつ…その③

痛みがあるからNSAIDsを飲んでいる……とは限りません。

例えば、こんなケースです。

  • もうすでに痛みが治まってるのに、痛み止めを未だに処方されている人(本人もそれに気づいてない)
  • 痛みがないのに、やめることが不安でいつまでも飲み続けてる人(そんなこと言ってたら永遠にやめられない ^_^;)

こんな風に、NSAIDsの必要性が低いのに飲み続けている人は意外と多いですよね。

痛みがないのであれば、NSAIDs投与のベネフィットがありません。それだけじゃなくて、胃潰瘍や消化管出血のリスクを増加させる危険性があります。

・NSAIDsを飲んでる人がいれば、「痛みの状態は?本当に飲まなければいけないの?」と、立ち止まって考えてみる」ことが大事です。

不要なNSAIDsを減らすことが潰瘍予防につながります。【痛みがあるからNSAIDs飲んでいる】という常識を疑うことから始めましょう。

まとめ:NSAIDs潰瘍・消化管出血のリスクと予防法

最後にまとめておきますね。

ポイントは以下のとおりです。

▽NSAIDsによる胃潰瘍・消化管出血のリスク

  • 非選択的NSAIDsよりもCOX-2選択的阻害薬の方が胃粘膜障害のリスクが低い!
  • NSAIDs潰瘍はCOX-1阻害による粘膜障害だけでなくCOX-2阻害による治癒遅延が関与している。COX-2阻害薬はノーリスクではない
  • NSAIDs潰瘍のリスクをあげる要因にピロリ菌感染、LDA・ステロイド・BP併用などがある!

▽潰瘍・消化管出血を防ぐためにできる3つの方法

  • 自覚症状に加えてCre、BUN、Hbなど検査値のチェック!消化管出血の兆候を早期にキャッチする!
  • 一次予防でも予防薬の投与が提案。二次予防では推奨されている。PPIやPGなどの併用を!出血性潰瘍の場合には非選択的NSAIDsではなくCOX-2阻害薬が推奨!
  • 疼痛コントロールを確認!不要なNSAIDsを減らす視点を持っておきたい

★ ★ ★ ★ ★

今回は「NSAIDsによる潰瘍・消化管出血」をテーマに、適正使用のポイントをあえて解説しました。

最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。

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