循環器系薬

マスーレッドの特徴を他のHIF-PH阻害薬と比較してみた!

今回のテーマはマスーレッド!

一般名はモリデュスタットナトリウム、国内5番目となるHIF-PH阻害薬です。2021年4月22日に発売されました。

  1. エベレンゾ…2019年11月
  2. ダーブロック…2020年8月
  3. バフセオ…2020年8月
  4. エナロイ…2020年12月
  5. マスーレッド…2021年4月

マスーレッドは使えるのか?

気になりますよね。

もちろん、遅れて出てくるからには、今までの薬剤よりも優れた点があるはず!と期待が膨らみます。一方で、さほど変わらなかったという残念な結果が待っているかも知れません。

それならハッキリさせよう!

ということで、マスーレッドの特徴について、下記4つのポイントを比較しながら考察しました。共有したいと思います。

  1. 適応
  2. 用量調節
  3. アドヒアランス
  4. 相互作用

順番に見ていきましょう。

適応

まずは一つ目のポイント、適応に注目します。5種類のHIF-PH阻害薬、適応を比較すると下記です。

適応
HD
PD
CKD
マスーレッド
エベレンゾ
ダーブロック
バフセオ
エナロイ

マスーレッドは腎性貧血の治療薬、以下3つのケースに用います。

  1. HD(血液透析)
  2. PD(腹膜透析)
  3. CKD(慢性腎臓病)

適応はほかのHIF-PH阻害薬と共通です。以前は違いがあったのはご存知ですか?エベレンゾは発売当初、HDとPDのみでしたが、2020年11月にCKDの適応が追加されました。

ということで、今ではHIF-PH阻害薬の間で相違はありません。適応の違いから薬剤を使い分けることはなくなったわけですね。

HIF-PH阻害薬とESAの使い分けは?

従来の注射薬であるエリスロポエチン製剤(erythropoiesis stimulating agent:ESA)とHIF-PH阻害薬はどちらを先に使えばいいのか?

基本的に同列です。HIF-PH阻害薬はESA製剤の代替薬(第二選択)ではありません。患者さんごとに、どちらが適切かを吟味して、ふさわしい方を選ぶかたちです。

ESAとHIF-PH阻害薬の選択は、個々の患者の状態や嗜好、通院頻度、ポリファーマシーや服薬アドヒアランス等に応じて、医師が判断する。

HIF-PH 阻害薬適正使用に関するrecommendation

用量設定

続いて2つ目のポイント、用量設定のわかりやすさ。5種類のHIF-PH阻害薬、評価は以下のとおりです。

煩雑
★★
★★★
簡単
マスーレッド
エベレンゾ
ダーブロック
バフセオ
エナロイ

3段階の評価は以下2つの基準で行いました。

  1. 開始用量(透析とCKD)
  2. 投与量調節の段階数
  • ①同じ・②少ない…★★★
  • ①異なる・②少ない…★★
  • ①異なる・②多い…★

たとえば、マスーレッドの場合は星一つですね。以下のように①開始用量が異なるし、②投与量調節も8段階と多いからです。

①開始用量
  • CKD…25〜50mg
  • HD・PD…75mg
②投与量調節の段階数
マスーレッド添付文書より

上記のように、マスーレッドは投与量の設定がややこしいですね。透析の有無で用量設定が異なるし、維持量まで頻回に処方変更が必要なケースもあるからです。また、薬剤師の視点からは複数の規格を取り扱わなければならないのもデメリットですね。在庫はできるだけ抱えたくないので…。

ただし、逆の見方をすると用量の調節性に優れます。5mg〜200mgの範囲内で効果や副作用を見ながら小刻みに用量を調節できるので。ここはメリットといえるかも知れません。

一方で、投与方法がわかりやすいのはバフセオです。4段階(150、300、450、600)で、開始用量(1回300mg)もHDとCKDで変わりません。非常にシンプルです!

用量設定の違いに注目するとHIF-PH阻害薬の間でも差があります。皆さんはどれが好みですか?電車に例えるなら、特急列車か普通列車かの違いだと思います。目的地(維持量)まで最短ルートをとるか、時間をかけながらゆっくりとゴールを目指すかの違いですかね。

目的地かどうかは到着しないとわからないので、特急の場合は通り越してしまう(副作用、過剰効果)可能性が高くなります。ここは要注意!

以上から、マスーレッドは用量設定が煩雑ですが、忍容性を見ながら維持量を目指せる点は強みだといえます。

HIF-PH阻害薬:用量設定の比較

  • エベレンゾ…HD=CKD、8段階
  • ダーブロック…HD≠CKD、8段階
  • バフセオ…HD=CKD、4段階
  • エナロイ…HD≠CKD、5段階

アドヒアランス

続いて3つ目のポイント、服薬アドヒアランスに注目です。5種類のHIF-PH阻害薬、評価は以下のようになります。

不良
★★
★★★
優良
マスーレッド
エベレンゾ
ダーブロック
バフセオ
エナロイ

評価の基準は下記です。投与回数と食事の影響から判断しました。

  • 1日1回・食事の影響なし…★★★
  • 1日1回・食事の影響あり…★★
  • 週に3回・食事の影響なし…★

マスーレッドは惜しくも二つ星ですね。1日1回投与はアドヒアランスの点で優れています。これだけなら一つ星でした。ワンランク下がったのは、食後投与の条件つきだからです。以下のように食事の影響を受けます。

食後投与と空腹時投与の比較
食後投与
1とした場合
空腹時AUC
約0.77倍
空腹時Cmax
約0.59倍

マスーレッドは空腹時に飲むと血中濃度が低下し、期待した効果が得られない可能性があります。ここは服薬説明の時に注意ですね。

一方で、1日1回のバフセオとダーブロックは食事の影響を受けません。食前、食後どちらで飲んでもOKです。ここは2剤の強みですね。

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ちなみに、エベレンゾは飲み方が変則的です。たぶん透析患者さんの利便性を考えてのことだと思いますが、意見が分かれる部分です。CKDの人やアドヒアランスが悪い人では飲み忘れの心配がありますね。

このように、HIF-PH阻害薬の間で投与方法に差があります。結局のところ、患者さんのアドヒアランスやライフスタイルに合わせて、柔軟に対応できるかどうかの違いですね。

バフセオとダーブロックは万人向けタイプ、エベレンゾは特別なケース(医療者が透析日に服薬を見守る)に向いています。マスーレッドとエナロイは基本的に誰にでも適していますが、仕事などで食事のリズムが不規則な人には使いにくいイメージですかね。

HIF-PH阻害薬:投与方法の比較

  • エベレンゾ…週に3回
  • ダーブロック…1日1回
  • バフセオ…1日1回
  • エナロイ…1日1回食前または就寝前

相互作用

最後に4つ目のポイント、相互作用に注目です。5種類のHIF-PH阻害薬、評価は以下のようになります。

多い
★★
★★★
少ない
マスーレッド
エベレンゾ
ダーブロック
バフセオ
エナロイ

評価基準は下記です。①併用頻度が高い金属イオン製剤の有無、②併用注意薬の種類(+α)をもとに行いました。

  • 金属イオン製剤(なし)  …★★★
  • 金属イオン製剤(あり) …★★
  • 金属イオン製剤(あり)+α…★

マスーレッドは星ひとつです。併用薬や相互作用のチェックが欠かせない薬剤ですね。併用注意薬は大きく2つのグループに分かれます。

①金属イオン
②UGT1A1阻害
  • 多価陽イオン(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム等)を含有する経口製剤
  • HIVプロテアーゼ阻害剤(アタザナビル、リトナビル、ロピナビル・リトナビル等)
  • チロシンキナーゼ阻害剤(ソラフェニブ、エルロチニブ、ニロチニブ等)
  • トラニラスト

マスーレッドは金属イオン製剤と併用注意です。吸収率低下により、効果減弱の可能性があります。併用時には前後1時間以上の間隔が必要です。また、UGT1A1(グルクロン酸転移酵素)を介した相互作用もあります。

一方で、ダーブロックは併用注意がほとんどありません。金属イオンの相互作用もないし、代謝酵素の影響も受けないからです。さすが三つ星ですね。

ちなみにエナロイはここでも2番手です。バランス型ですね。別記事に特徴や位置付けについてまとめているので合わせてご覧いただけたらと思います。

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このように相互作用に着目すると、マスーレッドはやや使いにくい印象があります。CKDや透析の患者さんは併用薬が多く、鉄剤や金属イオンを含む下剤や胃薬等を飲まれているケースが多いからです。他のHIF-PH阻害薬と同様にチェックが欠かせませんね(^_^;)

HIF-PH阻害薬:相互作用の比較

  • エベレンゾ…金属イオン、リン結合性ポリマー、スタチンなど
  • ダーブロック…CYP2C8、リファンピシン
  • バフセオ…金属イオン、BCRP、OAT3等
  • エナロイ…金属イオン、リン吸着薬等

まとめ

今回はマスーレッドの特徴について、他のHIF-PH阻害薬と比較しながら考察しました。

適応は共通ですが、用量設定や投与方法、相互作用等に違いがあり、患者さんごとに薬剤を使い分けるかたちです。それなりに個性的で棲み分けができています。

マスーレッドのプロファイルをまとめると下記です。

適応
HD
PD
CKD
用量設定
煩雑
簡単
用量調節
Bad
Good
アドヒアランス
不良
優良
相互作用
多い
少ない

1番の魅力は投与量の調節性に優れる点!用量設定は煩雑ですが、効果や副作用等に合わせて小刻みに調節できるのはメリットだといえます。

また、アドヒアランスの点でもまずまずの評価です。「1日1回食後」は汎用性があるので、幅広く対応できます。

一方で、併用注意薬が多いのは弱点ですね。金属イオンによる吸収不良、UDPグルクロン酸転移酵素阻害によるクリアランス低下に気をつけなければなりません。

国内5番目に登場するマスーレッド、巻き返しができるのか?発売後の使用動向を見守りたいと思います♪

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