【CDI治療薬】メトロニダゾールとバンコマイシンの特徴について

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「抗菌薬のこと」は医師からよく質問を受けます。

中でも、CDI治療薬に関する内容が特に多い印象です。

たとえば

医師

・CDIの治療薬は何を使ったらいいの?
・◯◯の投与量は?何日くらい投与したらいいの?
・経口投与が難しい人だけど、△△は粉砕できるの?

それに対して、すぐさま正確な回答を、自信をもって答えられたらかっこいいですよね(私も頑張っているけど、なかなか難しい…^_^)

CDIの治療薬は全部で4種類です。

一般名商品名販売年
メトロニダゾールフラジール内服錠250mg1961年
バンコマイシンバンコマイシン塩酸塩散0.5g1981年
メトロニダゾールアネメトロ点滴静注液500mg2014年
フィダキソマイシンダフクリア錠200mg2018年
各電子添文より作成

この中で代表的なメトロニダゾール(MNZ)とバンコマイシン(VCM)の特徴について、知識の整理がてらまとめたので共有したいと思います!

目次

メトロニダゾールとバンコマイシンの比較表

まずは基本情報を比較します。

メトロニダゾールバンコマイシン
略号MNZVCM
商品名フラジール内服錠250mg
アネメトロ点滴静注液500mg
バンコマイシン塩酸塩散0.5g
投与経路経口、静脈内経口
適応内服
トリコモナス症(腟トリコモナスによる感染症)、嫌気性菌感染症、感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)、細菌性腟症、ヘリコバクター・ピロリ感染症、アメーバ赤痢、 ランブル鞭毛虫感染症

注射
嫌気性菌感染症、感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)、アメーバ赤痢
感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)、骨髄移植時の消化管内殺菌
用法用量(感染性腸炎)内服
1回250mgを1日4回又は1回500mgを1日3回、10~14日間経口投与

注射
1回500mgを1日3回、20分以上かけて点滴静注。なお、難治性又は重症感染症には症状に応じて、1回500mgを1日4回投与可
1回0.125〜0.5gを1日4回経口投与(用時溶解)。年齢、体重、症状により適宜増減可
薬価内服
¥36.2/錠

注射
¥1,188/瓶
¥813〜909.6/瓶
各電子添文より作成、薬価は2024年4月時点です

ここからは押さえておきたいポイントを見ていきましょう。

大きく6つです。

  1. MNZとVCMの適応
  2. MNZとVCMの投与経路・方法
  3. MNZとVCMの使い分け
  4. MNZとVCM:粉砕・簡易懸濁の可否
  5. MNZとVCM:腎障害時の投与
  6. MNZとVCMのコスト

メトロニダゾールとバンコマイシンの適応

ここは共通点

・MNZ内服錠・点滴…感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)
・VCM散…感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)

どちらもCDIの治療に用います。適応は感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)、同じですね。

CDIとは?
  • クロストリジウム・ディフィシル感染症の略(Clostridium difficile infection:CDI)
  • 抗菌薬の使用等による消化管細菌叢の乱れによって起こる消化管感染症
  • 原因菌は偏性嫌気性菌であるClostridium difficile(CD)
  • CDは抗菌薬関連下痢症や腸炎を引き起こす
  • 症状は軽度の下痢から中毒性巨大結腸症や腸閉塞まで幅がある(死の転帰をとる症例も)
  • 偽膜性大腸炎はCDIの重症型であり、内視鏡検査によって診断される
  • 加齢や基礎疾患など宿主側因子が発症に影響し高齢者での罹患が多い

国立感染症研究所HP Clostridioides difficile感染症

メトロニダゾールとバンコマイシンの投与経路・方法

続いて投与経路について。

剤型の違いにより異なります

・MNZ内服錠…1回250mgを1日4回又は1回500mgを1日3回(経口投与
・MNZ点滴…1回500mgを1日3回、20分以上かけて(点滴静注
・VCM散…1回0.125〜0.5gを1日4回経口投与(用時溶解後に経口投与

フラジール内服錠は経口投与です。コップ一杯の水で服用します。アネメトロは有効成分500mgがあらかじめ溶解された製剤(100mL)です。一般的な抗菌薬のように、生食等で希釈する必要はありません。ガラス瓶のゴム栓に輸液セットを穿刺して20分以上かけて投与します。滴下スピードが遅い場合にはエアー針が必要ですね。

バンコマイシン散はフラジール同様、経口投与ですが、注射用水等で用時溶解してから服用します。

バンコマイシン散の服用方法:0.5g分4の場合
  • 服用方法…1瓶(0.5g)を注射用水20mLに溶解、1回5mLを服用
  • 苦味対策…単シロップの添加や5%ブドウ糖液20mLでの溶解も考慮
  • 保管・管理…1日分ずつ調製、冷蔵庫で保存

当院の調製手順と管理方法です。参考までに。

また、バンコマイシン散は注腸投与を行う場合もあります(後述します)。

参考までに

バンコマイシン注腸の方法
  • 調製…バンコマイシン0.5〜1gを生理的食塩水1〜2Lに溶解
  • 投与方法…バルーン付きのカテーテルで4〜8時間毎に注腸し、60分間バルーンで貯留させる

Clin Infct Dis.35:690-696 2002

メトロニダゾールとバンコマイシンの使い分け

続いて、MNZとVCMの使い分けについて。

「重症度」と「CDI既往の有無」によって使い分けます。

MNZとVCMの使い分け:重症度・CDI既往歴の有無

①軽症〜中等症(初発)

  • MNZ経口… 1回250mgを1日4回または1回500mgを1日3回
  • 経口困難時…MNZ点滴1回500mgを1日3回
  • MNZ使用できない時…VCM散1回0.125gを1日4回
  • 投与期間…10〜14日間

②重症または2回目以降の再発例

  • VCM散…1回0.125gを1日4回
  • 超重症例…1回0.5gを1日4回 ± MNZ点滴1回500mgを1日3回
  • 投与期間…10〜14日間

1回目の再発例(中等症まで)は一回目と同じ薬剤を選択します

重症例
:高齢者、白血球数高値(>15,000/μL)、ICU入室、低アルブミンなど)
超重症例
:ショック、低血圧、中毒性巨大結腸症、麻痺性イレウスの患者など

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―腸管感染症―

CDIの重症度別に、MNZとVCMを比較した試験があります

  • 対象…入院中のCDI患者172名のうち、最後まで治療を継続した150名
  • 方法…MNZ経口 250mgx4 vs VCM経口 125mgx4 10日間
  • 結果…治癒率
    ▽Mild CDI 81人:MNZ群 90%、VCM群 98% (p=0.36)
    ▽Severe CDI 69人:MNZ群 76%、VCM群 97% (p=0.02)

Mild CDIではMNZはVCMと同等(非劣性)
Severe CDIではVCMの方が治療成績が良い(優越性)

Clin Infect Dis 2007; 45:302–7

参考までに
Clostridioides(Clostridium)difficile 感染症 診療ガイドライン

\ CDIの再発抑制薬もあります!/

ジーンプラバ点滴静注の特徴
  • 分類…抗CDトキシンBヒトモノクローナル抗体
  • 適応…CDIの再発抑制
  • 用法用量…10mg/kg点滴静注(60分かけて)
  • 投与タイミング…CDI治療期間中に使用する
  • 対象…CDIの再発リスクが高い人(免疫不全状態、重症のクロストリジウム・ディフィシル感染症、強毒株(リボタイプ027、078又は244)への感染、過去3回以上の既往歴、その他の理由により重症化又は再発のリスクが高いと判断できる場合)
再発リスクが高い人に限定的に使用する薬剤です!

メトロニダゾールとバンコマイシン:粉砕・簡易懸濁の可否

続いて、粉砕・簡易懸濁の可否について。

MNZとVCMは、嚥下困難の人や胃ろうの方に投与できるのか?

薬剤投与の可否は以下のとおりです。

フラジール内服錠バンコマイシン散
嚥下困難
(粉砕の可否)
粉砕可懸濁で投与可
胃ろう、経鼻投与
(経管投与の適否)
不適懸濁で投与可

フラジール内服錠は粉砕できます。ただし、苦味がある点は留意が必要です。あと光の影響を受けるので直前粉砕の対応が望ましいと考えられます。また、経管投与には向いていません。水に溶けにくく、チューブ閉塞の恐れがあるからです。

一方で、バンコマイシン散は用時溶解して服用する製剤であり、嚥下困難の患者さんや経管投与の方でも特に問題ありません。

経口投与できない時は、アネメトロ点滴と先述のとおりバンコマイシン注腸が選択肢に挙がります。

ちなみに、バンコマイシンの点滴はCDIには使用できません。水溶性であり、腸管内への移行が少なく、病変患部に十分量の薬剤を到達できないからです。

メトロニダゾールとバンコマイシン:腎機能障害時の投与

続いて、腎機能障害時の投与について。

フラジール内服錠アネメトロ点滴バンコマイシン散
Ccr>15通常量通常量通常量
Ccr15未満50〜100%を12時間ごと(HD 患者では HD日にはHD後に投与)500mgを8〜12時間毎(活性代謝物が蓄積するかもしれないが血液透析で速やかに除去されるため透析後に補充)通常量※
薬剤性腎障害診療ガイドライン2016

メトロニダゾールは、Ccr15未満(透析患者を含む)では減量が必要になります。排泄遅延による副作用のリスクが上昇するからです。

ここは意外でした。メトロニダゾールは肝代謝の薬剤だと思っていたからです。たしかに肝臓で代謝され、尿中の未変化体は10%程度ですが、活性代謝物(ヒドロキシメトロニダゾール、酸代謝物)を含めると30〜50%程度が尿から排泄されます。

投与量の約7%〜12%が未変化体として、14%〜24.1%がヒドロキシメトロニダゾールとして、 9.6%〜12%が酸代謝物として尿中に認められた

ヒドロキシメトロニダゾール及び酸代謝物はそれぞれメトロニダゾールの約65%、5%の抗菌活性を示す

アネメトロ点滴静注 インタビューフォーム

一方で、バンコマイシン散は腎機能により減量の必要はありません。ご存知のとおり消化管からほとんど吸収されないからです。ただし、腎障害があり、重症偽膜性大腸炎の場合には、消化管からの吸収により血中濃度上昇の恐れがあるため、TDMが推奨されています。

通常、経口投与によってほとんど吸収されず、高い消化管内濃度が得られる。また、血中にはほとんど認められない。ただし、腸管に病変のある患者において、吸収され尿中に排泄されたとの報告がある

バンコマイシン散 電子添文

※バンコマイシン散:重症偽膜性大腸炎に長期 2g日投与により血中濃度異常上昇することがあるため要注意、TDM 実施を考慮するとガイドラインに記載があります。

メトロニダゾールとバンコマイシンのコスト


最後にコストを比較します。

フラジール内服錠
250mg
アネメトロ点滴静注
500mg
バンコマイシン散
0.5g
薬価36.2円/錠1,188円/瓶¥813〜909.6/瓶
用法用量1回500mg・1日3回1回500mg・1日3回1回0.125g・1日4回
(1回0.5g・1日4回)
1日の費用217.2円3,564円813〜909.6円
(3,252〜3,638.4円)
10日間の費用2,17235,6408,130〜9096
(32,520〜36,384円)
2024年4月時点の薬価です

重症・再発例(経口投与困難、VCM高用量)では費用が跳ね上がります。

バンコマイシンの通常量は?

バンコマイシンの添付文書用量は「0.5g〜2.0g/日」と幅がありますが、コストを考えて重症でなければ低用量を選択するのが基本です。低用量レジメン(=0.125g×4)と高用量レジメン(=0.5g×4)の臨床効果は同等であるとの報告があります。

Am J Med 1989;86:15-9

まとめ

今回は、CDI治療薬メトロニダゾール(MNZ)とバンコマイシン(VCM)の特徴についてまとめました。

本記事のポイント

フラジール内服錠250mgアネメトロ点滴静注液500mgバンコマイシン塩酸塩散0.5g
略号MNZMNZVCM
一般名メトロニダゾールメトロニダゾールバンコマイシン
投与経路経口静脈内経口
(又は注腸)
適応感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)
用法用量(感染性腸炎)1回250mgを1日4回又は1回500mgを1日3回1回500mgを1日3回、20分以上かけて点滴静注(重症では1回500mgを1日4回)1回0.125gを1日4回経口投与(重症では1
回0.5gを1日4回)
軽症〜中等症
(初発)
第一選択第一選択
(内服困難・不適例)
代替薬
重症
(2回目以降再発)
代替薬代替薬
(VCMに併用も)
第一選択
(超重症例は高用量)
腎障害時の投与減量
(Ccr<15)
減量
(Ccr<15)
通常量
粉砕
(苦味、光変化あり)
溶解して投与
簡易懸濁不適溶解して投与
コスト安い高いやや安い

日常業務、抗菌薬の相談、問い合わせ等にご活用いただけたら嬉しいです!

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