抗菌薬

ラスビック錠の特徴と位置付けは?レボフロキサシンと比較しながら考察してみた

今回のテーマは、ラスビック錠!

一般名はラスクフロキサシン(LSFX)、新しいキノロン系経口薬です。国内では2008年に発売されたシタフロキサシン(STFX)から約10年ぶりの新薬ですね。

特徴や臨床における位置付けはどうなのか?レボフロキサシンと比較しながら、個人的な考察も含め解説します。

ラスビックの特徴を理解する!5つのポイント

ポイントは大きく5つあります。

  1. 耳鼻咽喉科・呼吸器科領域に特化
  2. 低用量で組織移行性がよい
  3. 耐性化が起こりにくい
  4. 胆汁排泄型
  5. 錠剤が小さく高齢者でも飲みやすい

順番に見ていきますね。

1)耳鼻咽喉科・呼吸器科領域に特化

適応が限定されている!

ラスクフロキシンの適応は大きく2つです。

副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎など①耳鼻咽喉科領域の感染症と肺炎、急性気管支炎など②呼吸器感染症になります。ターゲットが絞られたキノロン系の経口薬です。

<適応症>

咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎

ラスビック錠75mg 添付文書

一方で、レボフロキサシンは幅広い疾患に使用できます。

LSFXの適応を含め、皮膚軟部組織や尿路、腹腔内感染など、紙面の関係で書き切れないくらいです。

表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、子宮頸管炎、胆嚢炎、胆管炎………

クラビット錠500mg 添付文書

同じキノロン薬であっても、適応症の幅が大きく異なります。ラスクフロキサシンは呼吸器・耳鼻咽喉科領域専用のレスピラトリーキノロンだといえますね。

有効性は、レボフロキサシンと同程度

副鼻腔炎と肺炎を対象した第3相臨床試験で非劣性が示されました。

▽副鼻腔炎

  • 8対象者…日本人の副鼻腔炎患者(急性または慢性の急性増悪)279例
  • LSFX 75mg/day vs LVFX 500mg/day 7日間投与
  • 主要評価項目…投与終了時の臨床効果
  • 結果(PPS)…LSFX 84.8% vs LVFX 84.6% →非劣性

▽肺炎

  • 対象者…日本人の市中肺炎患者277例
  • LSFX 75mg/day vs LVFX 500mg/day 7日間投与
  • 主要評価項目…治癒判定時(投与7日後)の臨床効果
  • 結果(PPS)…LSFX 92.8% vs LVFX 92.3% →非劣性

いずれも非劣性でした。ラスクフロキサシンは新規のニューキノロン薬のため期待が膨らみますが、有効性は既存のレボフロキサシンと変わりません

気になる薬価は?

レボフロキサシンの先発品と同じです。

類似薬との比較は以下のようになります。

薬剤名 1日薬価(通常量)
ラスクフロキサシン
(LSFX)
¥361.4
レボフロキサシン
(LVFX)
¥361.4
ガレノキサシン
(GRNX)
¥433.8
モキシフロキサシン
(MFLX)
¥444.0
シタフロキサシン
(STFX)
¥324.0

比較的新しいGRNXやMFLXに比べると約20%割安です。一方でLVFXの後発品(¥78.5〜117.9)に比べるとかなり割高になります。有効性が同じならLVFXのジェネリックの方が、コスパがいいですね。

次は2つめのポイントです。

2)低用量で組織移行性がよい

ラスクフロキサシンの開発コンセプトは下記です。

  • 低用量で副作用を軽減する
  • 組織移行性を高め抗菌力を維持する

ラスビック錠の規格は75mg!

LSFXはかなり低用量です。500mg錠のレボフロキサシンと比べると明らかですね。

血漿中濃度比は15.0〜56.4倍!

組織移行性も良好です。肺胞上皮被覆液中濃度が平均15.0〜22.4倍、肺胞マクロファージで平均18.5〜56.4倍でした。(臨床薬理試験の結果参照)

in vitroの検討でも、LSFXはLVFXよりも優れています。結果は下記です。

本薬、 LVFX又はGRNX (いずれも 25μg/mL)存在下で、ヒト末梢血好中球をインキュベーションし(37℃、30分間)、細胞内外の薬物濃度の比(細胞内薬物濃度/細胞外薬物濃度)を指標に、各被験薬の細胞内移行性が検討された。その結果、細胞内外の薬物濃度の比は、本薬で15.9LVFXで4.2、GRNXで11.0であった。

ラスビック錠75mg PMDA 審査結果報告書

ラスクフロキサシンは低用量で、組織移行性に優れたキノロン薬だといえます。

3)耐性化が起こりにくい?!

メーカーの売りですね。

キノロン系薬の耐性機序は、作用点である下記コード遺伝子の変異です。

  • DNAジャイレース…(1)
  • トポイソメラーゼⅣ…(2)

単一または複数の変異により段階的に耐性が獲得されます。

ラスクフロキサシンは耐性化が起こりにくいのが特徴です。点変異が増えるとMICが上昇するものの、LVFXに比べて増加率が低いことがわかっています。下記です。

肺炎球菌 LSFX
MIC(μg/mL)
LVFX
MIC(μg/mL)
親株 0.06 1
一重変異株 0.06〜0.125(1〜2倍) 2(2倍)
二重変異株 0.25〜0.5(4〜8倍) 16(16倍)

承認時評価資料:ラスクフロキサシンの薬効薬理試験より作成

なぜなのか?

ラスクフロキサシンが作用点である(1)と(2)を同程度阻害するためといわれています。デュアルエフェクトだそうです。(LVFXは阻害活性にカタヨリあり)

耐性化によりMICが上昇しても、LSFXの抗菌活性が得られるMIC以下であることが確認されています。

本薬でも、他のキノロン系抗菌薬と同様に標的酵素遺伝子への点変異により、MICが上昇した。しかし、標的酵素の遺伝子変異を有するS.pneumoniae、S.aureus又はE.coliに対する本薬のMICは2μg/mL以下であり、本薬は、他のキノロン系抗菌薬に対して低感受性を示す菌株に対しても抗菌活性を保持していることが示唆された。

参考文献)ラスビック錠 PMDA 審査結果報告書

4)胆汁排泄型のキノロン

腎機能による投与量調節が不要

ラスクフロキサシンはCKD(慢性腎臓病)や透析患者さんでも通常量投与できます。腎臓からの未変化体排泄率は8.38%と低く、胆汁排泄型のキノロンだからです。

一方で、レボフロキサシンは腎排泄型。尿中未変化体排泄率は79.6%と高く、腎機能に応じた投与設計が欠かせません。

特にCcr<20の場合や透析患者さんでは飲み方が煩雑です。

「初日は500mg、3日目以降は250mgを隔日投与」

しかも、透析で除去されるので透析日は透析後投与です。投与期間は短いとはいえ、飲み忘れの可能性があります。

一方で、ラスクフロキサシンはわかりやすいです。腎機能に関係なく、1日1回75mgを投与すればOK。使い勝手が良いのが魅力ですね。

といっても、LVFXもきちんと投与量設計さえすれば、CKD、透析患者さんでも安全に使用できます。腎機能が悪いからといってすぐにLSFXが代替薬になるわけではありません。

肝臓で薬物代謝酵素CYPで代謝される

ラスクフロキサシンはCYP3A4で代謝されるため、下記薬剤と併用注意です。

  • リファンピシン
  • カルバマゼピン
  • フェニトイン…など

併用によりLSFXの血中濃度が下がり、効果減弱の可能性があります。

本薬とイトラコナゾールとを併用したときの本薬のAUC増加の程度1.46倍を踏まえると、本薬の代謝におけるCYP3Aの寄与は大きくはないと考えられるものの、本薬とCYP3A誘導剤との併用により、本薬の曝露量低下が想定されること、本薬の曝露量が低下すると、本剤の有効性が減弱する可能性があること等を踏まえると、本薬とCYP3A誘導剤との併用について注意喚起する

参考文献)ラスビック錠 PMDA 審査結果報告書

また、中等度以上の肝機能障害患者は慎重投与です。

ラスクフロキサシン見たら、CYP3A4との相互作用、肝機能障害の有無等についてチェックが必要ですね。

5)錠剤が小さく高齢者でも飲みやすい

ラスビック錠は小型化された製剤です。

LVFXと比べると以下のようになります。

  • LSFX…直径7.8mm、厚さ3.8mm
  • LVFX500mg…長径16.2mm、短径7.9mm、厚さ5.6mm
  • LVFX250mg…長径13.7mm、短径6.6mm、厚さ4.1mm

LSFXはかなり錠剤が小さいので高齢者でも飲みやすいです。しかも1日1回なので服薬負担も少なくて済みます。

一方でレボフロキサシンは大きめです。ただし、剤型の選択肢がいくつかあります。

錠剤のほかに、細粒や内用液、水なしで飲めるOD錠など。けれども、細粒は1包あたり2.5g(通常5g服用)と多いし、何より原薬が苦いのが欠点です。

仮に、剤型と投与の簡便さだけで経口キノロン薬を選ぶなら、ラスビック錠一択だと思います。「ラスビック」という印字も識別性の点でメリットです。

ラスビックの臨床における位置付け

低用量で組織移行性に優れたラスビック!どのような場面で使えばいいのか、以下考察しました。

耳鼻咽喉科領域

そもそも抗菌薬が本当に必要なのか検討することが大切です。

添付文書には下記の記載があります。

咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、副鼻腔炎への使用にあたっては、「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し、抗菌薬投与の必要性を判断した上で、本剤の投与が適切と判断される場合に投与すること。

抗微生物薬適正使用の手引き第1版によると、たとえば急性咽頭炎では基本的に抗菌薬は不要です。原因微生物はウイルスによるものがほとんどだからです。抗菌薬を投与する意味がありません。

迅速抗原検査又は培養検査でA群β溶血性連鎖球菌(GAS)が検出されていない急性咽頭炎には抗菌薬を投与しないことが推奨されています。

逆に、検出された場合にのみ抗菌薬が適応です。投与の検討が推奨されています。

ちなみに、治療薬はアモキシシリンです(10日間)。

「キノロン薬ではありません」

ペニシリンアレルギーなどで使用できない場合でも、セファレキシンやクリンダマイシンが代替薬になります。

急性鼻副鼻腔炎、急性気管支炎でも、基本的な考え方は同じです。抗菌薬の投与は通常、不要ですし、ラスビックとレボフロキサシン含めキノロンが推奨という記載は見当たりません。

呼吸器科領域ではどうか?

基本的に第一選択ではありません!

市中肺炎において、キノロン薬はβラクタム薬が使えない時の第二選択薬です。代替薬という位置付けになります。

たとえば、ペニシリンやセファロスポリンなどβラクタム薬のアレルギーがある場合などです。

「キノロンが第一選択になる状況はかなり限定的!」

COPDや気管支拡張症など慢性の呼吸器疾患がある場合には推奨です。※JAID/JSC感染症治療ガイド2019

市中肺炎でレスピラトリーキノロンを使用するケースは少ないと思います。薬剤耐性菌防止の観点から、できるだけ使用しないのが基本的な考え方です。

出番はかなり限定的!

ラスビックを積極的に使う場面は、ほぼないと考えられます。キノロン全般そうです。

といっても、安易に処方される可能性があります!

ラスビック錠はレスピラトリーキノロンの中でも、さらに使い勝手が良くなった製剤だからです。腎機能低下例でも通常量を投与できるし、錠剤が小さいので嚥下機能が低下した高齢者にもメリットがありますからね。

「ラスビック錠の乱用は避けるべきです!」

薬剤耐性(AMR)対策の観点からキノロン系薬は温存するべき状況だからですね。そもそもラスビックじゃないとダメなケースはかなり少ないと考えられます。

乱用は新たな耐性菌を生む可能性があるし、約10年ぶりに登場した新薬が使い物にならない状況も避けたいものです。記事を書いていて、抗菌薬適正使用の重要性を改めて感じました。

まとめ

“ラスク”フロキサシン、ポイントは以下のとおりです。

  • 耳鼻咽喉科、呼吸器科領域感染症にターゲットを絞った経口キノロン薬
  • 低用量で組織移行性をよくするのが開発コンセプト
  • 有効性はレボフロキサシンと変わらない(非劣性)
  • 胆汁排泄型であり、CKD、HD患者にも投与量の調節が不要(肝機能やCYPの相互作用は注意)
  • 錠剤が小型化されているので、嚥下機能が低下した高齢者でも飲みやすい
  • 臨床の位置付けは?そもそも経口キノロン薬の出番が少ない中で、ラスビックを積極的に選択するケースはほとんどない

今回は新規経口キノロン薬ラスビックについて、特徴と臨床的な位置づけを解説しました。AMR対策の重要性が叫ばれています。抗菌薬の適正使用を進めていきましょう♪

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