JAK阻害薬の特徴と処方監査のポイント【7種類を比較】

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今回のテーマはJAK阻害薬!

気がついたら経口薬が6種類に増え、最近では外用薬まで登場しているではないですか。たしかに近頃、ちらほらと見かける機会が増えましたね。

さらに、2021年12月に、7剤目の経口薬が発売されました。

私は正直いって、このあたりの薬がよくわかってないです。日常業務でほぼ扱わないので…。薬剤師だからといって全ての薬を網羅してるわけではないですよね(言い訳)

「リウマチの患者さんが飲んでいる」
「免疫抑制作用がある?」

くらいの知識しかありません。少なすぎ…(^_^;)
なので、処方箋で見かけると軽いパニックを起こします。

  • なんで飲んでるの?
  • 用量は合ってるの?
  • 相互作用とか大丈夫?
  • 入院中も飲んでいいの?
  • 何に気をつけたらいいの?

頭の中はハテナだらけ!そこで、勉強がてら知識を整理しました。

JAK阻害薬に馴染みのない薬剤師が最低限押さえておきたい特徴と処方監査のポイントを共有したいと思います。処方を見た時に慌てなくても済む程度の内容ですので、あらかじめご了承下さいね。

それでは見ていきましょう。

目次

JAK阻害薬の基本情報

まずはJAK阻害薬の基本から。

JAK阻害薬の種類

現在国内で使用できるJAK阻害薬は全部で8種類あります。経口薬7つと外用薬1つですね。

商品名一般名販売日
ゼルヤンツトファシチニブ2013年7月
ジャカビルキソリチニブ2014年9月
オルミエントバリシチニブ2017年9月
スマイラフペフィシチニブ2019年7月
リンヴォックウパダシチニブ2020年4月
ジセレカフィルゴチニブ2020年11月
コレクチム軟膏デルゴシチニブ 2020年 6月
サイバインコアブロシチニブ2021年12月
リットフーロリトレシチニブ未発売
各電子添文より

JAK阻害薬は次から次に発売されています。一般名はややこしいけど、◯◯チニブという部分が共通です。まずは、商品名を覚えておきましょう

今後、リットフーロ(JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬)も発売される見込みです。2023年5月29日に承認が了承されました。ということで、9種類になります。

JAK阻害薬の作用機序

続いて作用機序!言葉で説明するより図を見た方がわかりやすいです。

ジセレカ錠 インタビューフォーム

JAKとは?

ヤヌスキナーゼ(Janus kinase)の略で、チロシンキナーゼの1種です。図のように、4種類(JAK1、JAK2、JAK3、TYK2)に分類されます。

JAKの働きは?

STAT(シグナル伝達兼転写活性化因子)を介して、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、エリスロポエチンなど)の刺激を核内へ伝えるのが役割です。

JAK阻害薬はJAKに結合し、JAK-STAT伝達経路を妨げます。これにより、炎症性サイトカインが引き起こす過剰な免疫応答を抑制するわけです。

JAK阻害薬と生物学的製剤の比較

JAK阻害薬の特性は何か?生物学的製剤との違いを比べるとわかりやすいです。たとえば、関節リウマチには以下の生物学的製剤が使用されます。

分類一般名商品名
TNFモノクローナル抗体インフリキシマブレミケード
TNFモノクローナル抗体アダリムマブヒュミラ
TNFモノクローナル抗体シンポニーゴリムマブ
TNFモノクローナル抗体シムジアセルトリズマブペゴル
TNFモノクローナル抗体オゾラリズマブナノゾラ
可溶型TNF受容体エタネルセプトエンブレル
IL-6受容体モノクローナル抗体アクテムラトシリズマブ
IL-6受容体モノクローナル抗体ケブザラサリルマブ
T細胞選択的共刺激調節剤アバタセプトオレンシア

押さえておきたいポイントは大きく3つです。

  1. 経口薬 vs 注射薬
  2. 細胞内 vs 細胞外
  3. 非選択性 vs 選択性

①経口薬が強み

JAK阻害薬は経口製剤であり、簡便に投与できます。注射による侵襲がなく、(自己注射の場合)手技の理解も不要です。

②作用点が違う

JAK阻害薬は低分子であり、細胞内へ移行して効果を発揮します。一方で、生物学的製剤は高分子です。刺激を伝えるサイトカインを細胞外でブロックします。

③非選択的に作用

作用機序の図からもわかるように、JAK阻害薬は複数のサイトカインの働きを非選択的に調整します。TNF、IL、エリスロポエチン、トロンボポエチンなど。一方で、生物学的製剤はモノクローナル抗体であり、特定のサイトカインに選択的に作用します。

違いは、ざっとこんな感じです。

JAK阻害薬:投与前のチェック

JAK阻害薬の処方は増えていますが、誰にでも使えるわけではありません。専門医が必要性と許容性を吟味して適切な管理のもと用いる薬だからです。

投与前の注意事項が警告にあります。真っ赤な文字で長々と書いており、読む気が失せるので、最後までしっかりと読んでいない人も多いのではないでしょうか。要約すると下記2つのリスクについて書いてあります。

  • 感染症(結核や肺炎、敗血症、ウイルス感染等)や悪性腫瘍発現のリスクがある
    患者説明が必要、有益性が上回る場合のみ投与
  • 結核の発症、既感染者における症状の顕在化及び悪化
    結核の有無を確認(十分な問診及び胸部X線検査、インターフェロンγ遊離試験、ツベルクリン反応検査等で)

どちらも免疫抑制作用に起因するリスクになります。ちなみに外用剤であるコレクチム記載がありません。局所作用でありリスクが低いためですね。

JAK阻害薬の注意すべき副作用

JAK阻害薬はどのような副作用に気をつければいいのか?医薬品リスク管理計画書(RMP)には、以下の記載があります。

重要な特定されたリスク
  • 重篤な感染症(結核、肺炎、ニューモシスチス肺炎、敗血症、日和見感染症を含む)
  • 帯状疱疹
  • 好中球減少、リンパ球減少、ヘモグロビン減少
  • 肝機能障害
  • B型肝炎ウイルスの再活性化
  • 消化管穿孔
  • 間質性肺疾患
  • 静脈血栓塞栓症

※ゼルヤンツ、ジセレカ、リンヴォック、オルミエントは共通
※スマイラフは静脈血栓塞栓症の記載なし
※ジャカビは・骨髄抑制・感染症・結核 ・肝機能障害患者における使用 ・腎機能障害患者における使用・肝機能障害・出血性事象・間質性肺疾患・心不全
※サイバインコは血小板減少の記載あり

薬剤師としてどう関わればいいのか?ポイントは大きく3つあると思います。

まず①感染症の発現に注意が必要です

警告にあるとおりですね。発熱や倦怠感、持続する咳など前駆症状の説明・フォローが求められます。特に帯状疱疹は頻度が高いようです。

また②検査値のチェックも欠かせません

骨髄機能や肝機能など。投与前と投与中において定期的に確認する必要があります。

それから③薬剤性の評価!

消化管穿孔、間質性肺疾患、静脈血栓塞栓症など。イメージしにくい副作用ですが、要注意です。入院経緯と服薬歴から、薬剤性を疑えるかどうかは重要だと思いました

ここまでは、経口JAK阻害薬、全体にいえることです。

JAK阻害薬:処方監査のポイント

ここからは、個別の特徴を見ていきましょう。処方監査のポイントを順に読み進めていくと、各薬剤の特徴(違い)がぼんやり見えてきます。チェック項目は全部で6つです。

STEP
適応
STEP
禁忌
STEP
用法用量
STEP
腎機能
STEP
肝機能
STEP
相互作用

JAK阻害薬の適応…STEP1

まずは適応の確認です。

適応ゼルヤンツオルミエントスマイラフリンヴォックジセレカサイバインコジャカビ
関節リウマチ
潰瘍性大腸炎
2018/5追加

2022/9追加

2022/3追加
アトピー性皮膚炎
2020/12追加

2021/8追加
関節症性乾癬
2021/5追加
強直性脊椎炎
2022/5追加
SARS-CoV2
2021/4追加
円形脱毛症
2022/6追加
X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎
2023/2追加
骨髄線維症、真性多血症
クローン病2023/6/2承認了承(追加予定)
各製剤の電子添文より作成

ポイントは2つです。

①関節リウマチ薬として登場(ジャカビ、サイバインコ除く)

基本的にRAに用いる薬です(2種は除く)。2つ目の適応として、潰瘍性大腸炎(UC)に、ゼルヤンツ、ジセレカ、リンヴォックが、3つ目の適応としてアトピー性皮膚炎にオルミエント、リンヴォックが使えます。

あと、SARS-CoV-2による肺炎にオルミエント、関節症性乾癬、強直性脊椎炎にリンヴォックが適応追加されました。

さらに、2021年12月にサイバインコがADのみの適応で承認、2022年6月にはオルミエントに「円形脱毛症」の適応が追加されました。

加えて、リンヴォックは2022年9月に「潰瘍性大腸炎」が追加されています。JAK阻害薬としては3剤目です。さらに2023年2月、「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎」の適応が追加されました。

リンヴォックは2023年6月2日にクローン病の適応追加が承認了承されています。今後追加される予定です。

このように、JAK阻害薬は適応の拡大が進んでいます。ますます頭が混乱しますよね…

②JAK阻害薬は第一選択ではありません

既存治療で効果が不十分な場合という文言がくっついていることから明らかです(SARS-CoV-2は記載なし)。RAの場合はメトトレキサートが効果不十分な場合に併用または切り替えて使います。

・過去の治療において、メトトレキサート(MTX)8mg/週を超える用量を3ヶ月以上継続投与してもコントロール不良の関節リウマチ患者
・現時点において安全性の観点からMTXを投与できない患者(感染症リスクの高い患者、腎機能障害・間質性肺炎のためMTXを投与できない患者など)は原則として対象としないことが望ましい

全例市販後調査のためのフィルゴチニブ使用ガイド、日本リウマチ学会 ※他のJAK阻害薬も同内容

過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること。

各添付文書

UCとAD、PsA、ASも同様です。

潰瘍性大腸炎
過去の治療において、他の薬物療法(ステロイド、免疫抑制剤又は生物製剤)による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与すること。

ゼルヤンツ錠 添付文書

アトピー性皮膚炎
ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の抗炎症外用剤による適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に用いること。

オルミエント錠、リンヴォック錠 添付文書

関節症性乾癬
既存の全身療法(従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(以下「csDMARD」)等)で十分な効果が得られない、難治性の関節症状を有する患者に投与すること

強直性脊椎炎

 過去の治療において、既存治療薬(非ステロイド性抗炎症薬等)による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与すること

リンヴォック錠 添付文書

まとめると、JAK阻害薬はRAの治療薬として最初に登場し、薬剤ごとにUCやAD、PaS、AS等に適応が拡大している状況で、出番は第一選択ではなく、既存治療がうまくいかない時です。今後もJAK阻害薬の適応拡大と臨床の位置付けに注目していきたいと思います。

JAK阻害薬の禁忌…STEP2

続いて、禁忌に該当しないかを確認します。項目は大きく9つです。スペースの関係で過敏症は省略しています。

禁忌ゼルヤンツオルミエントスマイラフリンヴォックジセレカサイバインコジャカビ
重篤な感染症
活動性結核
好中球500/mm3未満
リンパ球500/mm3未満
1000m3未満

1000m3未満

1000m3未満
ヘモグロビン8g/dL未満
妊婦
血小板
5万/mm3未満
肝機能障害
重度

重度

重度

重度

重度
腎機能障害
重度

末期
各製剤の電子添文より作成

オルミエントのSARS-CoV-2による適応は別途設定があります

禁忌:SARS-CoV-2による肺炎
・透析患者又は末期腎不全(eGFRが15mL/分/1.73m2未満)の患者
・リンパ球数が200/mm3未満の患者

オルミエント錠 電子添文

JAK阻害薬は感染症(敗血症、活動性結核など)を悪化させる恐れがあります。全身性の免疫抑制作用があるからです。受診・入院経緯等を確認の上、該当するなら中止の可否を主治医に相談する必要があります。

また、JAK阻害薬は骨髄抑制を起こす可能性があります。GM-CSFやEPO、TPO等のシグナル伝達を妨げるからです。上記のように薬剤によって基準が異なる(ジセレカとリンヴォック、サイバインコは厳しい)ので注意が必要ですね。

加えてJAK阻害薬は妊婦又は妊娠の可能性がある人に使用できません。動物実験で催奇形性が認められるからです。

あとJAK阻害薬は腎機能と肝機能のチェックが欠かせません(後述します)

JAK阻害薬の用法用量…STEP3

続いて、飲み方が適切なのか?投与方法の確認です。

製品名投与回数投与量
ゼルヤンツ1日2回RA:1回5mg
UC:導入1回10mg
UC:維持1回5mg(10mgに増量可)
オルミエント1日1回RA:1回4mg(適宜2mgに減量)
AD:1回4mg(適宜2mgに減量)
SARS-CoV-2による肺炎:1回4mg(14日まで)
スマイラフ1日1回RA:1回150mg食後(適宜100mgに減量)
リンヴォック1日1回RA:1回15mg(適宜7.5mgに減量)
PsA:1回15mg
AS:1回15mg
AD:1回15mg(30mgに増量可)
UC:導入1回45mg
UC:維持1回15mg(30mgに増量可)
ジセレカ1日1回RA:1回200mg(適宜100mgに減量)
UC:導入1回200mg
UC:維持1回100mgに減量可
サイバインコ1日1回AD:1回100mg(適宜200mgに増量可)
ジャカビ1日2回1回5mg~25mg(真性多血症は10mgから開始)
RA:関節リウマチ、UC:潰瘍性大腸炎、AD:アトピー性皮膚炎、PsA:関節症性乾癬、AS:強直性脊椎炎

押さえておきたいのは2点です。

①JAK阻害薬は服薬回数が2パターン。ゼルヤンツとジャカビは1日2回服用です。一方で、オルミエント以降の製剤は1日1回。服薬アドヒアランスの点で有利ですね。

③スマイラフは食後投与になります。食事の影響を受けるからです。ここは盲点かも。以下のように、食後投与の方が吸収が良く、空腹時に飲むと効果減弱が懸念されます。

日本人健康成人(18例)にペフィシチニブ150mgを単回経口投与したとき、空腹時投与に比べ食後投与ではCmaxは56.4%、AUClastは36.8%増加した 

スマイラフ錠 電子添文

JAK阻害薬:腎機能障害時の対応…STEP4

JAK阻害薬の一部は腎機能のチェックが欠かせません。数値によって投与量を減量したり、禁忌になる場合があるからです。

腎機能障害時の対応

重度中等度軽度
ゼルヤンツ減量減量
オルミエント禁忌
(RA,AD:eGFR<30)
(SARS-CoV:eGFR<15)
減量
(SARS-CoV:15≦eGFR<30)
減量
(RA,AD:30≦eGFR<60)
(SARS-CoV:15≦eGFR<30)
スマイラフ
リンヴォック
(AD:増量不可)
(UC:導入30mg、維持30mg増量不可)

ジセレカ禁忌
(eGFR<15)
減量
(15≦eGFR<30)
減量
(減量可)
サイバインコ減量減量
(通常量も可)
ジャカビ減量考慮減量考慮減量考慮
各電子添文より作成 eGFRの単位はmL/分/1.73m2

ポイントは3つです。

①リンヴォック(ADとUC以外)とスマイラフは腎機能に応じた用量調節が必要ありません。尿中排泄率が低く、腎機能に合わせた用量調節が必要ないからです。CKDの患者さんには使いやすいJAK阻害薬ですね。

・尿中排泄率:スマイラフ…12.5〜16.8%
・尿中排泄率:リンヴォック…24%(未変化体)
各電子添文より

リンヴォックを重度の腎機能障害患者に用いる場合、ADは増量不可、UCは減量(導入)又は増量不可(維持)の設定です。

②オルミエントとジセレカは、重度腎機能障害がある人には投与できません。尿中未変化体(+活性代謝物)排泄率が高く、排泄遅延による副作用発現の危険性が高いからです。それぞれの薬剤でeGFRの基準が異なるし、適応によっても対応が違う点はややこしいですね。

また、禁忌でなくても減量が必要なケースがあります。eGFRのチェックが欠かせません。

・尿中排泄率:オルミエント…69%(未変化体)
・尿中排泄率:ジセレカ…87%(未変化体+活性代謝物)
各電子添文より

③それから、ゼルヤンツとジャカビ、サイバインコは腎機能に応じた投与設計が必要です。詳細は電子添文をご確認下さい。

・尿中排泄率:ゼルヤンツ…80%(未変化体29%)
・尿中排泄率:ジャカビ…74%(未変化体1%未満)※活性代謝物あり
・尿中排泄率:サイバインコ…85%(未変化体1%未満)※活性代謝物あり
各電子添文より

こうしてみると、薬剤ごとに対応が異なり煩雑な印象がありますね。ややこしい…。

JAK阻害薬:肝機能障害時の対応…STEP5

腎機能と同様に、JAK阻害薬の一部は肝機能の程度によって減量や禁忌の設定があります。

肝機能障害時の対応

重度中等度軽度
ゼルヤンツ禁忌減量
オルミエント
スマイラフ禁忌減量
リンヴォック禁忌
ジセレカ禁忌
サイバインコ禁忌
ジャカビ減量考慮減量考慮減量考慮
各電子添文より作成

オルミエントは肝機能障害の方に使用しやすい思います。肝機能によって減量、禁忌の設定もないからです。ただし、重度の方は臨床試験行っていない点は留意しておきましょう。

一方で、ゼルヤンツとスマイラフは中等度(Child-Pugh分類 B)で減量、重度(Child-Pugh分類 C)で禁忌(ジセレカ、サイバインコも)です。ジャカビは禁忌ではありませんが、減量基準が広く設定されています。軽度肝機能障害(Child-Pugh分類 A)以上でAUCの上昇や半減期の延長が見られるからです(電子添文参照)

こうしてみると、薬剤ごとに基準が異なり煩雑ですね。オルミエント以外はChild-Pugh分類による肝機能の評価が欠かせません

JAK阻害薬の相互作用…STEP6

最後に相互作用の確認!JAK阻害薬は併用注意薬の有無から2種類に分かれます。

CYP、P-gp関連の
併用注意あり
CYP、P-gp関連の
併用注意なし
  • ゼルヤンツ
  • オルミエント
  • リンヴォック
  • ジャカビ
  • サイバインコ
  • スマイラフ
  • ジセレカ

スマイラフとジセレカは併用注意薬(CYPやトランスポーターを介する)がありません。使い勝手が良い印象です。一方で、その他の薬剤は以下の相互作用があります。

製品名併用注意薬(CYP、トランスポーター関連)
ゼルヤンツ・CYP3A4阻害剤(マクロライド系抗生物質、ノルフロキサシン等、アゾール系抗真菌剤、カルシウム拮抗剤、アミオダロン、シメチジン、フルボキサミン、抗HIV剤、抗ウイルス剤)、グレープフルーツ
・CYP2C19阻害剤(フルコナゾール)
・CYP3A4誘導剤(抗てんかん剤、リファンピシン、リファブチン、モダフィニル)、セイヨウオトギリソウ含有食品
オルミエントOAT3(プロベネシドのみ)
リンヴォック・CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、リトナビル、クラリスロマイシン等)、グレープフルーツ
・CYP3Aを強く誘導する薬剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等)セイヨウオトギリソウ含有食品
ジャカビ・強力なCYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、リトナビル、クラリスロマイシン等)
・CYP3A4及びCYP2C9を阻害する薬剤(フルコナゾール等)
・CYP3A4阻害剤(エリスロマイシン、シプロフロキサシン、アタザナビル、ジルチアゼム、シメチジン等)
・CYP3A4誘導剤(リファンピシン、フェニトイン、セイヨウオトギリソウ含有食品等)
サイバインコCYP2C19の強い阻害薬(フルコナゾール、フルボキサミン、チクロピジン)
CYP2C19及びCYP2C9の強い誘導薬(リファンピシン)
P-gpの基質となる薬剤(ダビガトランエテキシラート、ジゴキシン等)
各電子添文より

JAK阻害薬と併用薬の組み合わせにより対応はさまざまです。

併用注意時の対応例
  • ゼルヤンツ+CYP3A4阻害剤→ゼルヤンツを減量する
  • リンヴォック+CYP3Aを強く阻害する薬剤→副作用のモニタリング、ADは増量不可、UCは減量(導入)又は増量不可(維持)の設定
  • ジャカビ+強力なCYP3A4阻害剤→代替薬を考慮(CYP阻害作用の少ない)、または併用時はジャカビの減量を考慮

だから、電子添文の確認が欠かせません。こうしてみると、またしても薬剤ごとにまちまちです。本当にややこしいですね。

まとめ

今回は、経口JAK阻害薬の特徴と処方監査のポイントについてまとめました。

JAK阻害薬は処方監査を強化すべき!

記事を書きながら、改めてそう思いました。

上述のように免疫抑制作用に起因するリスクとベネフィットを十分に考えて処方すべき薬剤であるだけでなく、安全に使用するための確認項目や内容も薬剤ごとに異なるからです。

たとえば、◯◯という薬は腎機能によって投与量が変わるとか、△△は肝機能障害があると使えないとか、□□は併用注意薬が多いとか…。

薬剤ごとに丁寧な確認作業が求められます。

もちろん全部を覚える必要はありません。頻繁に遭遇しないので。でも、大まかな特徴と処方監査のポイントを頭の片隅においておくと、処方を見かけた時には慌てずに対処できると思います♪

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