インスリンカートリッジ製剤のまとめ【種類・特徴・ペン型注入器等】

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今回のテーマはインスリンのカートリッジ製剤!

専用のペン型注入器に装着して使う製剤です。

プレフィルド製剤(インスリンと注入器が一体化)の登場により、処方量は少なくなっていますが、個人的にはもっと使われてもよい製剤だと思います。記事を書きながら、確信しました^_^

本記事では

・インスリンカートリッジ製剤の種類・特徴は?
・プレフィルド製剤に比べてのメリットは?
・専用ペン型注入器の種類・特徴は?

知識の整理がてらまとめたので共有します。

目次

インスリン製剤の種類

まずはインスリン製剤の種類について。

大きく3つに分類されます。

分類特徴製剤名(例)
プレフィルド製剤インスリンと注入器が一体化された製剤。注射針を取り付けて使用する。ノボラピッド注フレックスペン、ヒューマログ注ミリオペン、ランタス注ソロスター
カートリッジ製剤インスリンがカートリッジに充填された製剤。専用のペン型注入器に装着、注射針を取り付けて使用する。ノボラピッド注ペンフィル、ヒューマログ注カート、ランタス注カート
バイアル製剤インスリンがバイアルに充填された製剤。専用の注射器により計量して使用する。ノボラピッド注100単位/mL、ヒューマログ注100単位/mL、ランタス注100単位/mL

プレフィルド製剤は薬液(インスリン)と注入器が一体化した製剤です。日常よく目にするタイプですね。専用の注射針を取り付けて使います。カートリッジ製剤は先述のように、専用のペン型注入器に装着して使う製剤です。最近はほとんど見かけず、操作性・利便性に優れたプレフィルド製剤にとって代わられた印象があります。バイアル製剤は主に病棟で用いる製剤です。血糖値補正の指示に従って、必要量を計りとって使います。

プレフィルド製剤は別記事に詳しく、
まとめているので合わせてご覧頂けたら幸いです^ ^

インスリンカートリッジ製剤の種類

続いて、カートリッジ製剤の種類について。

実は、製剤のラインナップは限られています。
プレフィルド製剤に対応するカートリッジ製剤の有無は以下のとおりです。

分類製剤名デバイスカートリッジ
超速効型フィアスプフレックスタッチ
ルムジェブミリオペン
ミリオペンHD
超速効型ノボラピッドフレックスタッチ
フレックスペン
イノレット
ヒューマログミリオペン
ミリオペンHD
アピドラソロスター
インスリンアスパルトBS注 NR「サノフィ」ソロスター
インスリンリスプロBS注HU「サノフィ」ソロスター
速効型ノボリンRフレックスペン
ヒューマリンRミリオペン
中間型ノボリンNフレックスペン
ヒューマリンNミリオペン
混合型ノボラピッド30ミックスフレックスペン
ノボラピッド50ミックスフレックスペン
ヒューマログ25ミックスミリオペン
ヒューマログ50ミックスミリオペン
ノボリン30Rフレックスペン
イノレット
ヒューマリン3/7ミリオペン
配合溶解ライゾデグ配合注フレックスタッチ
持効型トレシーバフレックスタッチ
レベミルフレックスペン
イノレット
インスリングラルギンBS注「リリー」ミリオペン
インスリングラルギンBS注「FFP」キット
ランタスソロスター
ランタスXRソロスター

ノボ製品はノボリンR、ノボリンN、ノボラピッド50ミックス、ノボリン30R、ライゾデグ配合注に対応するカートリッジ製剤がありません。同様にサノフィのランタスXRもカートリッジの設定がありません。

一方で、リリーの製品はプレフィルド製剤に対応するすべてのカートリッジ製剤がラインナップされています。同製品であれば、インスリンの種類に関係なく、カートリッジ製剤の導入、プレフィルドからの切り替えが可能です。ここは強みですね。

インスリンカートリッジ製剤の特徴

カートリッジ製剤はどのような特徴があるのか?

プレフィルド製剤と比較すると以下のとおりです。

カートリッジプレフィルド
コスト安い高い
廃棄物カートリッジと針プレフィルド製剤(カートリッジ+注入器)と針
薬液の取り付け必要不要
付属機能あり
ノボ製品

ポイントは大きく3つです。

カートリッジ製剤はプレフィルド製剤に比べてコストが抑えられます

ここが1番のメリットです。以下のように、300単位あたり200〜500円くらい安くなります。使用期間が長い1型糖尿病の患者さんや、インスリンの使用量(単位数)が多い人では、カートリッジ製剤を選択することで、経済的負担を軽減できます。

プレフィルドとカートリッジの薬価
ノボラピッド注フレックスペン
1627円
ノボラピッド注ペンフィル
1124円
ヒューマログ注ミリオペン
1218円
ヒューマログ注カート
1023円
ランタス注ソロスター
1368円
ランタス注カート
1076円
カートリッジ製剤はプレフィルド製剤に比べて廃棄量を減らせます

空になったカートリッジ部分のみを廃棄すればよいからです。プレフィルド製剤のように注入器丸ごとを捨てる必要はありません。ペン型注入器は種類によります(後述します)が、使用期限は年単位の設定です。ここはエコですね^_^

カートリッジ製剤(一部)はプレフィルド製剤に比べて付属機能があります

ノボ製品に限りますが、インスリンの投与履歴を閲覧できる機能があります(後述します)。また、ノボペンエコープラスとラグジュラHDは0.5単位刻みの単位設定であり、血糖コントロールの微調整が可能です。

インスリンペン型注入器の種類

続いて、専用ペン型注入器の種類について。全部で6種類です。

スクロールできます
ノボペン6ノボペンエコープラスヒューマペンラグジュラヒューマペンラグジュラHDヒューマンサビオイタンゴ
メーカーノボリリーサノフィ
グレー
ブルー
レッド
ライトブルー
レッド
ゴールド
グリーン銀色
水色
あずき色
うぐいす色
ブラック
マットゴールド
単位調節1〜600.5〜301〜600.5〜301〜601〜60
単位過剰設定時逆回し可
残量以上の設定不可不可不可
対象薬ノボラピッド注ペンフィルタ、レベミル注ペンフィルタ、トレシーバ注ペンフィル、フィアスプ注ペンフィル、ノビラピッド30ミックス注ペンフィルヒューマログ注・ミックス25注・ミックス50注、ヒューマリンR注・N注・3/7注のカートリッジ製剤、インスリン グラルギンBS注カート「リリー」(100単位/mL)、ルムジェブ注カートインスリンアスパルトBS注カートNR「サノフィ」、インスリンリスプロBS注カートHU「サノフィ」、アピドラ注カート、ランタス注カート
注入保持6秒以上5秒以上10秒以上
耐用年数5年
電池4〜5年
3年2年
各製品、取扱説明書より作成

ヒューマペンラグジュラは販売中止
新規と切り替えは改良型のヒューマペンサビオです(HDは継続)

インスリンペン型注入器の特徴

薬剤師が押さえておきたいポイントを見ていきます。

まずは共通点から、大きく2つです

カートリッジ製剤(メーカー)ごとに、専用のペン型注入器が決まっています

たとえば、ノボ製のインスリンはノボペン6またはノボペンエコープラス、リリー製はヒューマペンラグジュラ・サビオ、サノフィ製はイタンゴを選択するかたちです。このように、カートリッジに適合したペン型注入器を選択しなければなりません。もし他社の注入器を用いると、接続不良により血糖コントロールに支障をきたす可能性があるからです。不適切な接続事例の報告を受けて、メーカーより注意喚起がされている点は押さえておきましょう。

カートリッジと注入器の他社品との取り違え防止資材

1つのカートリッジ製剤に対して1つの注入器を用意します

たとえば、アピドラとランタスを処方する場合には、イタンゴを2本準備します。ヒューログとランタスを使う人では、ヒューマペンサビオとイタンゴの組み合わせです。1つの注入器で2つのカートリッジ製剤をタイミングごとに付け替えてはいけません。取り替え忘れ・間違いによる誤投与のリスクがあるからです。一度取り付けたインスリンカートリッジは、使い終わるまで取り外さないのが基本となります。

本品にはグレーとブルーの2色があります。操作方法は全て同じです。

複数の種類のインスリン製剤を処方されている場合は、各々ごと製剤ごとに専用の注入器をご使用ください

ノボペン6 取扱説明書

また、同じ会社のペン型注入器が2本必要な場合には、それぞれ別のカラーを選択すると識別しやすく、取り違いリスクを低減できます。

続いて相違点について、大きく5つです

設定できる単位数に違いがあります

ノボペンエコープラスとヒューマペンラグジュラHDは0.5単位刻みで投与量を調節できるペン型注入器です。他の注入器は1単位刻みになります。血糖コントロールの微調整が必要な場合に有用ですね。ただ、高用量のインスリンを必要とする場合には向いていません。30単位を超える単位数の選択ができないからです。2回に分けての投与は可能ですが…。

残量を超える単位設定に関する対応が異なります

基本的には残量を超えた単位の設定はできません。例えば10単位残った状態で、16単位に合わせようとしても、11単位以上にはダイアルが回らない仕組みです。この場合には10単位分を打って、新しいカートリッジに交換後、不足分6単位を投与します。一方で、ヒューマペンラグジュラ・同HDは、残量を超えてダイアルが回る仕組みです。ただし、10単位分しか注入ボタンを押せず、メモリが0になりません。その時点で表示された数値が不足単位数であり、新カートリッジに交換して再投与するかたちです。ヒューマペンサビオは残量を超えて単位数設定が不可となるように改良されています。

、注射を行ったのに単位設定ダイアルが「0」に戻らないのはどうしてですか?
、これは、インスリンカートリッジ内のインスリン残量が、設定した単位数より少なかったためです。単位表示窓に表示されている数字は、カートリッジ内のインスリン残量が不足して注射できなかったインスリン量を示しています。この場合は、いったん注射針を取り外し、 新しいカートリッジと交換し、ペンを空打ちしてください。そして、注射できなかったイン スリン量を設定し、注射してください。

ヒューマペンラグジュラ 取り扱い説明書
ノボ製品はインスリンの投与歴を記録できます

ノボペン6とノボペンエコープラスはインスリンの投与歴(日時と単位数)を自動記録(最大800回分)する機能を備えており、スマートフォンの専用アプリでデータを確認できます。診察時などに使用状況の確認が可能です。また、前回の投与単位と経過時間を本体の液晶画面に表示する機能(図参照)も有しています。

注入保持時間も異なります

ノボは6秒以上、リリーは5秒以上、サノフィは10秒以上です。複数のメーカーのインスリンを使う場合にはややこしいですね。長い方に統一しても良いかと思います。

耐用年数も異なります

イタンゴは2年、ヒューマペンラグジュラ・サビオは3年で交換です。一方で、ノボ製品は6年。他社に比べて倍以上の期間設定です。導入時に使用期限を書いたカードをご本人へ渡し、期限の管理を行います。

ノボペンとエコープラスは使用期限は6年ですが、電池の寿命が4-5年とされており、基本的には液晶が表示されなくなった時点で交換です。液晶の機能を使わなければ、6年は使えます。

インスリンカートリッジ製剤:Q&A

専用のペン型注入器の購入方法は?

基本的には病院が医薬品卸から購入し、患者さんに手渡します。

専用のペン型注入器の費用は?

注入器加算(300点)に収まる価格です。ヒューマペンサビオやノボペン6、ノボペンエコープラスの定価は3000円に設定されています。

まとめ

今回は、インスリンカートリッジ製剤とペン型注入器の種類・特徴についてまとめました。

記事を書きながら、カートリッジ製剤の有用性を強く感じました。

とにかく安価。ここが魅力です。

医療費の削減、患者負担の軽減に、もっと活用するべきだと思いました。

確かに、カートリッジ交換は手間です。注射手技を覚える(説明する)だけでも大変なのに、取り付け替え作業も加わると、プレフィルド製剤の簡便性には敵いません。医療従事者側も、導入にかかる労力・時間が少なく済みますよね。

でも、実際やってみると、意外と簡単です。
慣れたら、難なくこなせます^_^

そうはいっても、新規導入はさすがにハードルが高いので、まずはプレフィルド製剤で注射手技に慣れて、計画的にカートリッジへの切り替えを進めていくのが良いのではないでしょうか。患者さんの受け入れも良いし、医療従事者側も準備期間があり、難易度が下がると思います。

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