循環器系薬

エベレンゾ錠(腎性貧血治療薬)の特徴は?【臨床の位置付けも考察】

今回のテーマはエベレンゾ!

一般名はロキサデュスタット、HIF-PH(ヒフピーエイチ)阻害薬です。

腎性貧血、初の経口治療薬として注目されています。

エベレンゾはどんな特徴があるのか、臨床における位置付けと合わせて解説しますね。

エベレンゾの特徴

HIF-PH阻害薬

HIFとは低酸素誘導性因子(hypoxia-inducible factor:HIF)のことです。ヒフといいます。

低酸素ストレスに対して、細胞が応答するための転写因子です。遺伝子の転写領域に結合して、さまざまなタンパク質の合成を促します。

その中の一つがエリスロポエチン(EPO)です。

低酸素状態で、EPOの産生が増加するのはよく知られています。スポーツ選手の高地トレーニングは、EPOの産生を刺激するのが目的ですね。標高1500〜3000mくらいの低酸素環境で練習を行うと、赤血球が増えて酸素運搬能力の向上が期待できます。

ノーベル賞を受賞!

話題になりましたね。細胞における低酸素応答の仕組み(HIF活性化経路)を解明した3名の教授がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

  • 米ジョンズ・ホプキンズ大学のセメンザ教授
  • 英オックスフォード大学のラトクリフ教授
  • 米ハーバード大学のケーリン教授

記念すべき年に発売されたのがHIF活性化薬エベレンゾです。

腎性貧血を改善する仕組み

HIFを分解するHIF-PHを阻害する

HIFは2つのサブユニットからなります。

HIF-αとHIF-βです。

HIF-αはHIF-プロリン水酸化酵素(HIF-PH)によって水酸化を受け、プロテアソームによって分解されます。

エレベンゾはHIF-PHによる分解を妨げてHIFを活性化する薬です。

酸素がある状況では

HIF-PHによる水酸化反応が盛んです。

周囲の酸素(O2)によってHIF-αが水酸化を受けて、プロテアソームによる分解が進みます。HIF活性化経路が抑制された状態です。

→酸素が多い状況下では、EPOの産生も低下します。

一方、低酸素状態では

HIF-PHによる水酸化反応が抑制されます。

周囲の酸素(O2)が少ないため、HIF-αの水酸化が妨げられます。HIF-αによる転写反応の亢進によりEPOの産生が促進される仕組みです。

→酸素が少ない状態では、HIFが活性化しEPOの産生が増加します。

低酸素状況であっても腎不全患者ではHIFが活性化しにくい

ここがポイント!

腎不全が進むと腎血流の不足により、酸素の供給が低下します。となると、HIFの活性化により、EPOが生成される仕組みが働いて、恒常性が維持されるはずです。

しかし、そうはならずに腎性貧血が進みます。尿細管組織の障害等により腎組織の酸素利用量も減るので、相対的に低酸素状態にはならないからです。結果、HIFの活性化が抑制されます。

腎不全患者のHIF経路を活性化、貧血を改善する

HIF-PH阻害薬であるエベレンゾはHIF経路を活性化させます。腎不全患者においてもEPOの産生を高め貧血を改善できるわけですね。

エベレンゾは低酸素ストレスに応答するための生体の仕組みをうまく利用した腎性貧血の治療薬だといえます。

処方目的

貧血を改善するメリットは大きく3つあります。

  1. 輸血回数の減少、輸血による合併症のリスク回避
  2. 倦怠感や動悸、息切れ、めまいなどの貧血症状の改善
  3. 心臓病や腎臓病の進展を抑制する効果

エベレンゾの処方目的は、腎性貧血の改善により、輸血の回避または回数の減少、心臓病、腎臓病の進展抑制など生命予後やQOLを良くすることです。

腎性貧血は腎機能、心機能に悪影響を及ぼす!

Cardio-Renal-Anemia症候群(CRA)という概念が提唱されています。心腎貧血症候群のことで、貧血とCKD、心臓病は相互に関連し、悪循環をきたすという考え方です。

貧血はうっ血性心不全の重症度を増加させたり、死亡や入院、栄養障害の原因となり、また腎機能をさらに悪化させます。(貧血のない人にくらべて)

一方で、CKDは貧血を進行し、うっ血性心不全に貧血が合併することは周知の事実です。

参考文献)Nephrol Dial Transplant. 2003 Nov;18 Suppl 8:viii7-12.

腎性貧血はCKD、心臓病にくらべて治療介入が容易で、CRAの悪循環を断ち切るために、速やかに治療を始めることが重要であるといわれています。

エベレンゾの臨床的な位置付け

適応

エベレンゾの適応は、「透析施行中の腎性貧血」です。

つまり血液透析(HD)と腹膜透析(PD)の患者さんが対象になります。

透析前のCKD保存期の患者さんには使用できません(今後、適応取得の予定です)

※保存期CKDに適応があるHIF-PH阻害薬、バフセオとダーブロックが承認されました。今後使用できる見込みです。

バフセオとダーブロックの特徴【共通点と相違点から読み解く】今回のテーマはバフセオとダーブロックの違い! どちらもHIF-PH(ヒフ・ピーエイチ)阻害薬です。先行発売のエベレンゾに続き、20...

臨床効果

エベレンゾの有効性は、国内第3相臨床試験においてネスプ(ダルベポエチンアルファ)と比べて非劣性でした。

  • 対象者…血液透析施行中の腎性貧血患者302例
  • 主要評価項目…投与18〜24週のベースラインからの平均Hb値変化量
  • 対照薬…ネスプ(ダルベポエチンアルファ:DA)

結果は以下のとおり

  • エベレンゾ群-0.04±0.06g/dL、DA群-0.03±0.06g/dL
    (※群間差は-0.02[-0.18〜0.15]g/dL)

→エベレンゾは、ネスプと比べて非劣性

エベレンゾはネスプと臨床効果が同等ですね。

どのような患者さんに有用か?

透析患者では、経口薬のメリットが少ない!?

エベレンゾは経口投与できるのが魅力です。しかし、透析患者さんにとってメリットは大きくありません。ネスプをはじめESA製剤は透析回路から、投与できるからです。

新たに注射針を穿刺する必要はなく、医療機関で検査値を確認しながら、透析終了時に確実に投与できます。

一方、エベレンゾは週に3回透析日のみ服用するタイプです。特にご高齢の方では服薬コンプライアンスの点が懸念されます。

保存期CKDの患者には有用(※適応が追加されたら)

一方で、保存期のCKD患者さんには大きな利点があります。

注射に伴う不快な痛みから解放されるし、ESA製剤投与のための通院回数も減らせるからです。服薬アドヒアランスが良ければ、確実に経口薬の方が利便性が良いですよね。

ESA製剤の反応性が低い患者

じゃあ、保存期CKDの適応が取得されるまでは使いどころがないのか?

そんなことはなくて、ESA製剤の効きが悪い人には有用です。

十分な効果が得られず、高用量のESA製剤を使ってる人はエベレンゾの方が良いと考えられます。

なぜなら、海外で行われたCHOIR試験の事後解析で、死亡、心筋梗塞、心不全入院、脳卒中など一次エンドポイントのリスク上昇ともっとも強く関連していたのは,高用量ESA製剤の使用であることが示されているからです。(Kidney Int 2008;74:791‒8. )

目標Hb濃度を高めに設定し、高用量のESAを使用している人は、生命予後を改善する効果が期待できないばかりか悪化させる可能性があります。

ESA製剤の反応性が悪い透析患者さんでは、エベレンゾの投与が有用だ考えられます。

Question and answer

エベレンゾとESA製剤の違いは?

経口薬と注射薬の違い

エベレンゾは経口投与できます。

一方で、高分子たんぱく質製剤であるESA製剤は、皮下または静注による投与方法でないと効果が期待できません。消化管で分解されるためですね。

エベレンゾは小分子化合物です。経口投与できるのが最大の魅力ですね。

外部から補充するか、内因性に高めるかの違い

ESA製剤は補充療法です。不足したエリスロポエチンを体外から補うものですね。

一方で、エベレンゾは生体内におけるHIF経路を活性化し、内因性にEPOを産生します。外因性ではないので、抗エリスロポエチン抗体が産生される心配もありません。

同じ腎性貧血の薬であっても、開発コンセプトが全く異なるわけですね。

鉄の利用率を高める遺伝子にも作用

HIFはEPO遺伝子の発現だけではなく、鉄の利用を亢進する遺伝子にも働きかけます。

たとえば、下記です。

  • 鉄の貯蔵や運搬を行うトランスフェリン(Tf)やTf受容体
  • 消化管で鉄の吸収に関わるDMT1(二価金属トランスポーター)、Dctb(十二指腸シトクロムb)…など

その結果、生体内での鉄の利用率が亢進し、赤血球の産生を促します。

なぜ、週3回なのか?

毎日投与の方がわかりやすいのに何故?という感じですよね。

理由は下記です。

  • 1日1回少量投与では、効果不十分となる可能性あり
  • 週一では1回最大容量3.0mg/kgを超える可能性あり

本薬の曝露量は概ね用量に比例して増加したものの、 本薬の用量反応関係に線形性は認められず、有効性の観点から1回の投与量をある程度高く設定する必要があった。1日1回連日投与では1回の投与量が少量ずつとなり期待した効果が得られない可能性が考えられた。また、週1回投与では、多くの患者において 1 回投与量が国内第 I 相試験で反復投与時に安全性が確認されている最高用量3.0 mg/kg を超えた量が必要となることが推測された。

参考文献)PMDA審議結果報告書、エベレンゾ錠

エベレンゾは、週3回の透析に合わせて飲むのが基本です。たとえば、(月・水・金)や(火・木・土)などですね。

透析ではほとんど除去されないので、透析後である必要はなく、服薬時点はいつでもOKです。

飲み忘れ時の対応は?

変則的な飲み方なので、慣れるまでは飲み忘れに注意が必要です。

飲み忘れ時の対応は下記のとおり。

  • 次回服用までに24時間の間隔があるなら、気づいた時点で内服。
  • 24時間未満なら休薬し、次回服用時点に飲む。まとめて2回分を飲まない。

”飲み忘れた”という問い合わせに即答できるようにしておきたいのと、投与前にも忘れずに説明したほうが良さそうですね。

ESA製剤からの切り替え方法は?

70mgと100mg、どちらを使うのかが問題になります。

ESAごとに切り替え用量は以下のとおり。

1回70mgが開始投与量の目安
・エリスロポエチン製剤…4500IU未満/週
・ダルベポエチンアルファ…20μg未満/週
・エポエチンベータペゴル…100 μg以下/4週

1回100mgが開始投与量の目安
・エリスロポエチン製剤…4500IU以上/週
・ダルベポエチンアルファ…20μg以上/週
・エポエチンベータペゴル…100 μg超/4週

先行投与していたESA製剤の投与量によって、切り替え用量が決まっています。切替ではなく新規で処方する場合には、開始用量は一律50μgです。

ヘモグロビンの治療目標値は?

腎性貧血の治療を始めるとして、治療目標はどのくらいなのか?国内のガイドラインでは以下のとおりです。

・成人の血液透析(HD)…週初めの採血で10g/dL以上12g/dL未満
・保存期CKD…11g/dL以上13g/dL未満
(重篤な心・血管系疾患の既往や合併のある患者,あるいは医学的に必要のある患者にはHb値12g/dLを超える場合に減量・休薬を考慮する)
・成人の腹膜透析(PD)…11g/dL以上13g/dL未満
参考文献)2015年版日本透析医学会慢性腎不全における腎性貧血治療のガイドライン

正常値まで改善すると逆効果

腎性貧血の治療にはさまざまなメリットがあります。先述したとおりですね。しかし、ヘモグロビン値を正常値まで上げると逆効果であることがわかっています。

CKD患者1432例を対象としたCHOIR試験。

エポエチンαの投与により目標ヘモグロビン濃度を13.5g/dLとした群と11.3g/dLとした群で、心血管疾患や心血管死のリスクを比較したものです。

  • 主要評価項目…死亡+心筋梗塞+うっ血性心不全による入院(腎代償療法を除く)+脳卒中
  • 結果…高値群17.5%、低値群13.5% 、ハザード比1.34(1.03~1.74)p=0.03

→目標ヘモグロビン値13.5g/dLの方がリスクを悪化させることが明らかに。

参考文献)N Engl J Med. 2006; 355: 2085-98.

腎性貧血の治療は、治療目標値内でのコントロールが重要ですね。

エベレンゾの治療開始基準と投与量調整基準

添付文書によると、治療開始基準は以下のとおりです。

  • 血液透析HD→Hb10g/dL未満
  • 腹膜透析PD→Hb11g/dL未満

投与量の調整は、4週前と当該週におけるHbの変化量と当該週のHb値から決定します。Hb12.5g/dLをこえると休薬です。詳しくは添付文書をご確認くださいね。

エベレンゾ服用中はHb値の定期的なチェックが必要ですね。

注意すべき(特徴的な)副作用は?

エベレンゾで注意すべき有害事象は大きく5つです。

  1. 血栓塞栓症
  2. 高血圧
  3. 肝機能障害
  4. 悪性腫瘍
  5. 網膜出血

PMDA審議結果報告書、エベレンゾ錠参照

その中から、血栓塞栓症と網膜出血について見ていきます。

血栓塞栓症に注意

添付文書の警告に以下の記載があります。

本剤投与中に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の重篤な血栓塞栓症があらわれ、死亡に至るおそれがある。本剤の投与開始前に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の合併症及び既往歴の有無等を含めた血栓塞栓症のリスクを評価した上で、本剤の投与の可否を慎重に判断すること。また、本剤投与中は、患者の状態を十分に観察し、血栓塞栓症が疑われる徴候や症状の発現に注意すること。血栓塞栓症が疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。

HD患者対象の国内第3相試験の併合データにおいて血栓塞栓症関連事象の発現割合(重篤な有害事象)は以下のとおりでした。

  • エベレンゾ群8.2% (32/388例)
  • DA群2.6% (4/152例)

→エベレンゾの方が高い傾向が見られました。

内訳は以下のとおりです。

  • シャント閉塞 17 例
  • 脳梗塞 3 例
  • 急性心筋梗塞、血管形成、深部静脈血栓症及び末梢動脈閉塞性疾患各 2 例
  • 血管ステント閉塞、ラクナ梗塞、血栓除去、冠動脈形成、表在性血栓性静脈炎及び静脈閉塞各 1 例

赤血球増加に伴う血液粘稠度の上昇が理由の一つとされています。

エベレンゾは、DAと同様に血栓症のリスクに注意が必要です。透析患者さんは動脈硬化が進んだ人が多いので、投与前のリスク評価が欠かせません。それから副作用のモニタリングも忘れないようにしたいですね。

網膜出血にも注意

国内第II相試験における発生頻度は以下のとおりです。

  • エベレンゾ群…9.3%(9/97例)
  • DA 群…0%。

エベレンゾに特有?と思われますが、実は違うみたいです。

理由は下記のとおり。

当該試験では網膜出血リスクを有する疾患を割付け因子と設定しておらず本薬群に網膜出血リスクとなる合併症を有する患者が偏ったことと考えられる

参考文献)PMDA審議結果報告書、エベレンゾ錠

そこで、HD切替え維持試験では、網膜血管疾患の既往又は合併、糖尿病を割付け因子として追加しました。

網膜出血の発現割合は下記です。

  • エベレンゾ群3.3%(5/150例)
  • DA群3.9%(6/15例)

→発現割合は同程度、症状は軽度であり、重篤なものはなく、投与中止もありませんでした。

しかし、HIF経路の活性化は、血管内皮細胞増殖因子VEGFの誘導を促します。エベレンゾ投与中は網膜血管の増殖による網膜出血に注意が必要ですね。

まとめ

エベレンゾのポイントは以下のとおりです。

  1. HIF-PH阻害薬、HIF-αの分解を抑制→HIFを活性化
  2. HIFは低酸素ストレスに応答する転写因子、EPOの産生を刺激→腎性貧血を改善
  3. 腎性貧血は心臓病やCKDと相互に深く関わっている。貧血治療はCRAの悪循環を断ち切るための第一歩。
  4. 処方目的は、輸血回数の減少、輸血による合併症リスクの低下、貧血症状の改善、心臓病やCKDの進展抑制など生命予後、QOLを良くするなど
  5. 適応は透析施行中の腎性貧血、現時点で保存期には使用できません。有効性は、ネスプと非劣性
  6. 経口投与できるのが利点!だけど透析回路から投与できる透析患者ではメリットが生かせない。ESAの反応性が低い人に有用だと考えられる
  7. 注意すべき副作用は、血栓塞栓症(警告に記載)、網膜出血など

今回はHIF-PH阻害薬エベレンゾについて解説しました。今後、いくつかのHIF-PH阻害薬が登場する予定です。特徴や臨床での使い分け等、注目していきたいですね♪

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