循環器系薬

コララン錠を理解する【HCNチャネル遮断、慢性心不全治療薬、臨床の位置付け】

コララン錠が承認されました。(2019/11/19に薬価収載)

・一般名はイバブラジン、日本初のHCNチャネルブロッカー。世界では、100ヵ国以上で慢性心不全の治療薬として使用されています。

今回は、コララン錠を理解するためのポイントについて解説します。

コラランはHCNチャネルを遮断する慢性心不全治療薬

心臓の洞結節にあるHCN4に作用する

コラランはHCN4チャネルを遮断して、心拍数を低下させる薬です。

HCN4チャネルって何?

新しい名前のチャネルが出てきました。

・Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated:HCN。日本語で過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネルのこと。

HCNは1〜4のサブタイプがあって、洞結節では主にHCN4が存在します。HCNは細胞膜が過分極したときに活性化するチャネルです。

簡単にいうとHCN4は心拍のリズムを作っている

HCN4は、心臓の洞結節にあって、ペースメーカーの役割を担っているチャネルです。

第4相において脱分極する時に陽イオンが流入してIf電流が発生します。If電流はペースメーカー電流といわれ、電気刺激は洞結節から以下の順に伝わります。

  1. 洞結節
  2. 房室結節
  3. ヒス束
  4. 右脚、左脚
  5. プルキンエ繊維

一回のIf電流の発生により、心筋が1回収縮します。

血圧や心臓収縮力を低下させずに心拍数を下げる

コラランはHCNチャネルを遮断する薬です。

If電流を抑えて脱分極の立ち上がりをゆっくりにして心拍数を減少させます。

β遮断薬と違って、血圧や心筋収縮力に対する影響なしに心拍数を減少させることができる。心拍数のみというのがポイントですね。

慢性心不全の治療薬

心拍数を低下させるコララン。

慢性心不全の治療薬で、抗不整脈薬ではありません。
適応は以下のとおりです。

洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全。ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

洞調律で心拍数75回以上の患者さんに使用する

慢性心不全の人、誰にでも使えるクスリではありません。

洞調律、これは心臓が正常なリズムで拍動している状態。心電図波形を見ると、P波、QRS波、T波が規則正しく繰り返されている患者さんが対象です。

加えて、安静時の心拍数が1分間に75回以上という制限があります。海外では70回以上ですが、国内では75回以上です。(理由は後述します)

主要な心不全治療薬を使用した後に上乗せする薬剤

さらに、単独で使用することはありません。

・慢性心不全の治療方針は、まずACE阻害薬(またはARB)、それにβ遮断薬、抗アルドステロン薬、利尿薬等が追加するのが一般的です。

コラランは、標準治療薬を投与しても効果が不十分な人に、上乗せして使用するクスリです。

国内臨床試験では、LVEF35%以下の方が対象

心機能の程度を表すのにLVEFという指標が使われます。

左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)のこと。左室が1回収縮すると、全身へどのくらい血液を送り出せるのかを評価するためのものです。

・LVEF=(左室拡張末期容積ー左室収縮末期容積)/左室拡張末期容積

心不全はLVEFの程度により下記のように分類されます。

  • LVEFの低下した心不全…40%未満
    (heart failure with reduced ejection fraction; HFrEF)
  • LVEFの保たれた心不全…50%以上
    (heart failure with preserved ejection fraction; HFpEF)
  • LVEFが軽度低下した心不全…40%以上、50%未満
    (heart failure with midrange ejection fraction; HFmrEF)

参考文献)急性・慢性心不全診療ガイドライン2017改訂版

コラランはLVEFが35%以下のヘフレフ(HFrEF)の患者さんを対象としています。

処方目的、有用性は?

心拍数が増えると死亡率も上昇する

心拍数の増加と死亡率は相関しています。

フランスの疫学調査(定期検診者19,386名、40〜69歳、追跡期間18.2年)によると、安静時の心拍数が上昇するにつれて、死亡率が増加することが示されています。

安静時心拍数ごとに4つのグループに分類。
①HR<60
②60≦HR≦80
③80<HR≦100
④HR>100

結果は以下のとおりでした。
・Male…①12.3%、②15.7%、③22.3%、④26.8%(p=0.001)
・Female…①5.0%、②8.2%、③9.7%、④11.4% (p=0.001)
心拍数が高くなるにつれて死亡率が増加

参考文献)Hypertension. 1999;33:44-52.

一方で、心拍数の低下は死亡リスクを低下させる

β遮断薬の有用性はよく知られた事実です。

慢性心不全を対象としたβ遮断薬の無作為化比較試験、メタ解析(n=19209、23試験)結果は以下のとおりでした。

・β遮断薬の投与は、総死亡リスクを軽減 ※RR比0.76[0.68-0.84]
心拍数5回/分減少すると、死亡リスクは18%低下 ※RR比0.82[0.71-0.94]

参考文献)Ann Intern Med 2009; 150: 784-94

慢性心不全患者にβ遮断薬が推奨される根拠ですね。

心血管死、心不全による入院を減少させるのが処方目的

コラランの処方目的は?

心拍数を下げて心血管死や心不全による入院を減少させる。これが、患者さんが服用して得られるメリットです。心拍数を減少させると、LVEFが改善して、心機能が改善することが期待できます

ここからは、臨床試験の結果を確認します。

コラランの臨床的な位置付け

海外第3相臨床試験(SHIFT試験)

  • 対象者…β遮断薬を含む慢性心不全に関する最善の既存治療下にあるNYHA心機能分類II~ IV度、LVEFが35%以下、洞調律下での安静時心拍数 70 回/分以上の外国人慢性心不全患者:6505例
  • 主要評価項目…心血管系死又は心不全悪化による入院
  • 副次評価項目…すべての死亡、心血管系死、心不全による死亡、すべての入院、心血管系の理由による入院、心不全悪化による入院
  • コララン群 vs プラセボ群

主要評価項目は優越性。一方、すべての死亡、心血管死では有意差が認められず

結果は、以下のとおりでした。

▽主要評価項目(心血管系死又は心不全悪化による入院)

  • コララン群は24.5%、プラセボ群は28.7%
    ※ハザード比0.82 [0.70-0.95]

コララン群がプラセボに比べて優越性という結果でした。

▽副次評価項目

  • すべての死亡…15.5%(プラセボ群16.9%) 0.90[0.80-1.02]
  • 心血管系死…13.9%(プラセボ群15.0%) 0.91[0.80-1.03]
  • 心不全による死亡…3.5%(プラセボ群4.6%)0.74 [0.58-0.94]

すべての死亡、心血管死ではプラセボと差がつかず

・主要評価項目は達成できたけど、一部の副次評価項目ではハザード比が高く95%信頼区間の上限が1を上回る結果になりました。

そこで、心拍数75回/分以上を対象に事後解析

事後解析の結果は、以下のとおり。

▽主要評価項目(心血管系死又は心不全悪化による入院)

  • コララン群26.6%、プラセボ群32.8%
    ハザード比0.76 [0.68-0.85]

▽副次評価項目

  • すべての死亡…16.6%(プラセボ群19.4%)0.83 [0.72-0.96]
  • 心血管系死…14.8%(プラセボ群17.4%)0.83 [0.71-0.97]
  • 心不全による死亡…3.8%(プラセボ群6.0%)0.61 [0.46-0.81]
  • すべての入院…38.8%(プラセボ群44.4%)0.82 [0.75-0.90]
  • 心血管系の理由による入院…31.2%(プラセボ群37.1%)0.79 [0.71-0.88]
  • 心不全悪化による入院…17.7%(プラセボ群24.0%)0.70 [0.61-0.80]

主要評価項目、副次評価項目でプラセボと有意差が認められました

・心拍数が高い人ほど、心血管イベントリスクが高いので、75回以上のリスクがより高い人で解析するとすべての死亡、心血管死ともに優越性が認められるという結果に。

国内での適応は心拍数75回/分以上

国内の第3相臨床試験でも、SHIFT試験と同じ傾向が見られました。

  • 対象者…β遮断薬を含む慢性心不全に関する最善の既存治療下にあるNYHA心機能分類II~ IV度、LVEFが35%以下、洞調律下での安静時心拍数75 回/分以上の日本人慢性心不全患者:254例

▽主要評価項目(心血管系死又は心不全悪化による入院)

  • コララン群20.5%(プラセボ群29.1%)0.67 [0.40-1.11]
    (※プラセボに比べて、ハザード比の点推定値が1未満になることを確認するために計画された試験)

→海外と違って、国内では心拍数が75回/分以上の方が対象です。

ガイドラインでの位置付け

コララン(イバブラジン)を投与するまでの薬剤選択について確認します。

ESCガイドライン2016では

以下のとおりです。

HFrEF(NYHA 心機能分類II~IV度、LVEF<40)に対しては、まずACE阻害薬(またはARB)とβ遮断薬を導入(忍容性がある最大投与量まで投与)

それでも、効果不十分LVEF≦35のときには、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬追加(忍容性がある最大投与量まで投与)

にもかかわらず、効果不十分LVEF≦35のとき。
→ここでイバブラジンが登場します。(洞調律で安静時心拍数70回/分以上が条件です)

また、β 遮断薬に忍容性がなく使用できない又は禁忌の患者に対しても、イバブラジンを追加することが推奨されています。

参考文献)Eur Heart J 2016; 37: 2129-200

ACC/AHA/HFSAのガイドラインでは

以下のようになっています。

・最善の既存治療下にある安静時心拍数70回/分以上の症候性(NYHA 心機能分類II~III度)でLVEFの低下(35%以下)した慢性心不全患者に対して本剤を追加することが推奨されています

参考文献)Circulation 2017; 136: e137-61

ACE阻害薬(またはARB)+β遮断薬を忍容性のある最大量で投与、効果不十分の際にイバブラジンを追加します。

・慢性心不全の標準治療薬を使用しても、効果が不十分な場合にイバブラジンを追加する。基本の考え方は変わりません。

question & answer

特徴的な副作用は?

作用機序からすると、徐脈ですが、イバブラジンに特徴的なのが光視症と霧視です。

光視症と霧視に要注意!

光視症は、目に光が当たっていないのに、目の前にヒカリが見える状態のこと。チカチカと点滅したり、ピカッと稲妻のような光が走ります。

霧視は視界がぼやけて見える、かすんで見える。好発時期は投与後3ヶ月以内といわれています。

なぜ起こるのか?

以下のように考えられています。

視機能への影響について、安全性薬理試験において点滅光を識別する能力である時間分解能の低下及び光刺激に対する反応の低下が認められた。本薬は、マウス視細胞におけるIhを阻害し、IC50は2.7 μmol/L であった。また、30 μmol/Lで網膜標本における点滅光に対する電気応答を抑制したことから、本薬によるIh阻害により光刺激の減衰が弱まり、光に対する感受性が亢進すると考えた

参考文献)PMDA審議結果報告書、コララン

簡単にいうと、コラランは網膜における光刺激を弱める。その結果、光に敏感になるというのが機序です。

暗闇(光刺激が弱い)から、明るい場所へ移動したときに、より光を眩しく感じる(光に対する感受性が亢進)というイメージですね。作用は可逆的なので、減量または中止により改善が見られます。

投与中は車の運転に関する説明が必須!

添付文書には以下の記載があります。

光視症、霧視、めまい、ふらつきがあらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作をする際には患者に十分注意させること。また、これらの症状が認められた場合は、自動車の運転等危険を伴う操作に従事しないよう指導すること

・車の運転などには気をつける(注意)→光視症、霧視、めまい、ふらつきなどあり→従事しない(禁止

注意しながら運転することは可。でも、症状があれば禁止という対応ですね。

コラランは自動車の運転等に関する説明が欠かせません。光視症、霧視、めまい、ふらつきなど副作用の説明と合わせて行いましょう。

β遮断薬の投与が必須か?

コラランは、β遮断薬との併用が基本です。

確立したエビデンスと使用実績から、まずはβ遮断薬でレートコントロールを行う。β遮断薬よりも優先される薬ではありません。

β遮断薬が使いにくいときには併用しない場合も

β遮断薬が使いにくいとき、例えば、喘息やCOPDを合併した患者さん。または副作用が発現したり、禁忌にあたるケースではコラランが代替薬になります。

SHIFT試験、国内第3相試験においても、β遮断薬の投与がない人が10%程度含まれています(喘息、COPD、低血圧を理由に)

β遮断薬投与の有無による有効性は以下のとおりでした。

▽主要評価項目(心血管系死又は心不全悪化による入院)
※SHIFT試験(事後解析)

・β遮断薬なし…イバブラジン27.5%(プラセボ45.1%)ハザード比0.53[0.39-0.71]
・β遮断薬あり…イバブラジン26.4%(プラセボ31.1%)ハザード比0.81[0.71-0.92]

参考文献)PMDA審議結果報告書、コララン

β遮断薬の有無に関わらず、有効性が示されています。併用が基本ですが、β遮断薬が使えない場合には、コラランだけの場合もあります。

注意すべき併用薬は?

イバブラジンはCYP3Aで代謝されるので、以下の薬剤が併用禁忌です。

  • リトナビル含有製剤
  • ジョサマイシン
  • イトラコナゾール
  • クラリスロマイシン
  • コビシスタット含有製剤
  • インジナビル
  • ボリコナゾール
  • ネルフィナビル
  • サキナビル
  • テラプレビル
  • ジルチアゼム
  • ベラパミル

CYP3Aで阻害される代表的な薬剤がズラリ。

循環器疾患でよく使われるジルチアゼムとベラパミルには注意です。併用により、イバブラジンの血中濃度が上がるだけでなく、相互に心拍数減少作用が増強してしまいます。

コラランを見たら、相互作用のチェックを忘れないようにしましょう。

まとめ

最後にまとめておきますね。

ポイントは以下のとおりです。

  1. コラランはHCNチャネル阻害薬。洞結節のペースメーカー電流を抑えて心拍数を減少させる。
  2. 適応は慢性心不全。洞調律で安静時心拍数が75回以上で、ACE阻害薬(またはARB)、β遮断薬などの標準治療に追加して使用する薬剤です。
  3.  処方目的は、心拍数を下げて心血管死や心不全悪化に伴う入院を減少させること。
  4. β遮断薬の併用が基本であるものの、喘息やCOPD患者、低血圧などのケースでは、単独で使用する場合も(ACEやARBなどは必須)
  5. 特徴的な副作用に光視症と霧視がある。車の運転等に対する説明が必須!
  6. CYP3A阻害薬との併用について要チェック!

★ ★ ★ ★ ★

今回は慢性心不全治療薬コラランについて解説しました。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

できる薬剤師を目指すなら!

医療サイトm3.comがオススメ!


「薬剤師は一生勉強です…」わかってるけど、毎日忙しいし、やる気も出ない……働きながらの勉強は大変ですよね。でも、大丈夫。

m3.comなら、日常のちょっとしたスキマを利用して、自分のペースで少しずつ学習できます。


勉強は大変だけど、頑張った分だけ自分に返ってきます。それに薬剤師になった時点で、勉強からは逃げられないですよね(^ ^)

\一生勉強がんばる人(笑)はぜひ登録を!/

m3.comに登録する

もちろん登録は無料です!貯まったポイントはAmazonギフト券等に交換して、参考書を購入できますよ♪できる薬剤師を目指してスタートしましょう!