循環器系薬

コララン錠の特徴は?3つのポイントからわかりやすく!

今回のテーマはコララン錠!

一般名はイバブラジン、慢性心不全の治療薬です。2020年12月から長期投与ができるようになります。

注目すべきはHCNチャネルブロッカーという新しい機序ですね。

コララン錠はどのような特徴があるのか?

下記3つのポイントからわかりやすく解説します。

  1. HCNチャネルブロッカー
  2. 慢性心不全の治療薬
  3. 投与時に注意すべき点

順番に見ていきましょう。

HCNチャネルブロッカー

コラランは新しい機序を有します。その名もHCNチャネルブロッカー!心臓の洞結節にあるHCN4チャネルの遮断作用により心拍数を低下させます。

HCNチャネルとは

過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(Hyperpolarization-activated Cyclic Nucleotide-gated)チャネルのこと。

初めて聞く人も多いのではないでしょうか?HCNは細胞膜が過分極したときに活性化するチャネルです。1~4のサブタイプがあり、洞結節には主にHCN4が存在します。

HCN4の働き

簡単に言うと心拍のリズムを作る働きがあります。いわゆるペースメーカーの役割ですね。

具体的なメカニズムを確認しましょう。

コララン錠 インタビューフォームより

まず、洞結節にあるHCN4チャネルは拡張期の脱分極相(第4相)において活性化します。活動電位のスイッチを入れるわけです。陽イオン(主にNa+)が細胞内へ流入し、If(過分極活性化陽イオン電流)が形成されます。Ifはペースメーカー電流と呼ばれ、電気刺激が洞結節から以下の順に伝わります。

  1. 洞結節
  2. 房室結節
  3. ヒス束
  4. 右脚、左脚
  5. プルキンエ繊維

1回のIfが発生すると心筋が1回収縮します。Ifを流すのがHCN4チャネルの役割です。コラランはHCN4チャネルの遮断により、Ifを抑制、脱分極相において活動電位の立ち上がり速度をゆっくりにし、心拍数を減少させます。

心拍数だけを下げる

ここがβブロッカーとの違いですね。メリットは大きく2つあります。

  1. 血圧を下げない
  2. 気管支平滑筋を収縮しない

コラランは血圧に影響を及ぼしません。βブロッカーのように心収縮力を低下させないからです。また、気管支平滑筋への影響も心配もありません。β2受容体遮断作用により気道の抵抗を上げることもないからですね。

後述しますが、コラランは低血圧や気管支喘息、COPDの患者さんには使い勝手が良いといえます。

慢性心不全の治療薬

続いて2つ目のポイント。コラランは慢性心不全に使う薬です。臨床における位置付けを見ていきましょう。

長期予後を良くする効果

慢性心不全の治療薬は大きく2種類に分かれます。自覚症状を改善するか、長期予後を良くするかです。

自覚症状を改善する
心不全の予後を良くする薬
  • ループ利尿薬
  • チアジド系利尿薬
  • バソプレシン受容体拮抗薬
  • 血管拡張薬
  • ACE阻害薬
  • ARB
  • βブロッカー
  • 抗アルドステロン薬
  • HCNチャネル遮断薬
  • ARNI
  • SGLT2-阻害薬(フォシーガ)※適応追加予定

コラランは心不全の予後を良くする効果が期待できます。ACE阻害薬やARB、βブロッカー等と同じ位置付けですね。

具体的にどのような効果が期待できるかについては後述します。

ところで、ARNIはご存知ですか?下記に詳しくまとめているので、合わせてご覧くださいね。

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心不全の治療薬に上乗せする

慢性心不全だからといって、いきなりコラランを選択するわけではありません。ARBやβ遮断薬、MR拮抗薬などの標準治療薬に追加する薬剤になります。

洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全、ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る

コララン添付文書より

同調律かつ心拍数の基準あり

上記適応にあるように、同調律かつ心拍数の基準について条件が設定されています。

洞調律、これは心臓が正常なリズムで拍動している状態です。心電図波形においてP波、QRS波、T波が規則正しく繰り返されている患者さんが対象になります。コラランは洞結節に作用するため、異所性に刺激が生じる不整脈のある人には有効性の観点から使えないのです。

加えて、安静時の心拍数が1分間に75回以上という制限があります。国内と違って海外では70回以上です(理由は後述します)

HFrEF患者さんが対象

コラランは慢性心不全の患者さん、誰にでも使えるわけではありません。HFrEF患者さんが適応です。心拍出量の指標である左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)が低下した患者さんに用います。

LVEFとは左室が1回収縮すると、全身へどのくらい血液を送り出せるのかを評価するためのものです。以下の式で求めることができます。

LVEF=(左室拡張末期容積ー左室収縮末期容積)/左室拡張末期容積

参考までに、心不全はLVEFの程度により下記のように分類されます。

  • LVEFの低下した心不全40%未満
    (heart failure with reduced ejection fraction; HFrEF)
  • LVEFの保たれた心不全…50%以上
    (heart failure with preserved ejection fraction; HFpEF)
  • LVEFが軽度低下した心不全…40%以上、50%未満
    (heart failure with midrange ejection fraction; HFmrEF)

参考文献)急性・慢性心不全診療ガイドライン2017改訂版

コラランは国内の臨床試験においてLVEFが35%以下のヘフレフ(HFrEF)の患者さんを対象としています。

ここからは、慢性心不全患者さんに対する有効性を確認しておきましょう。

SHIFT試験

海外の大規模臨床試験です。概要は以下のようになります。

外国人、無作為化、二重盲検比較試験です。
SHIFT試験
  • 患者:HFrEF症例(NYHA心機能分類II〜IV度、LVEFが35%以下、洞調律下での安静時心拍数70回/分以上)でβ遮断薬を含む最善の既存治療下にある6505例
  • 介入:標準治療+イバブラジン(2.5、5、7.5mg)を1日2回投与
  • 比較:標準治療+プラセボを1日2回投与
  • 結果:主要評価項目である心血管死又は心不全悪化による入院の発生率は以下のとおり
心血管死又は心不全悪化による入院(発生率)
イバブラジン群
24.5%
プラセボ群
28.7%

→イバブラジン群がプラセボ群に比べて優越性という結果でした。※HR0.82 [0.70-0.95]

コラランは心血管死や心不全による入院を抑制できるわけですね。これが処方目的になります

海外と国内で心拍数の適応基準が違う

海外ではSHIFT試験の結果から70回/分以上が適応ですが、国内では75回/分以上になります。先述のとおりですね。

なぜなのか?SHIFT試験の事後解析結果を受けて、国内臨床試験が組まれたからです。

SHIFT試験では一部の副次評価項目でハザード比が高く、95%信頼区間の上限が1を上回る結果でした。主要評価項目は達成できたのですが…。

その後、心拍数75回/分以上を対象に事後解析が行われた、主要評価項目に加えて、下記副次評価項目においても95%信頼区間の上限が1を下回る結果が得られたのです。

心拍数が高い人ほど、イベントリスクが高くプラセボ群と差がつきやすいためですかね。

このような経緯から、国内では安静時心拍数75回/分以上のHFrEF患者さんを対象に臨床試験が組まれ、SHIFT試験と同じ有効性が期待できるとして適応が承認されました。

海外と国内では、安静時心拍数の適応基準が異なる点は押さえておきましょう。

使いどころ

大きく2つのケースが考えられます。

  1. β遮断薬を十分量投与しても効果が得られない
  2. β遮断薬が使いにくい

①はまさに適応どおりですね。標準治療下においても心拍数が75回/分を超える時にはコラランの出番です。

②は低血圧や気管支喘息、COPDなどの患者さんですね。コラランは血圧や気管支平滑筋に対する影響が少ないので、β遮断薬の代替薬として有用であると考えられます。

ここからは、海外のガイドラインも確認しておきますね。

ガイドラインの位置付け

ESCガイドライン2016

HFrEF患者(NYHA 心機能分類II〜IV度、LVEF<40)における薬剤の選択は以下のとおりです。

✔︎まずACE阻害薬(またはARB)とβ遮断薬を導入します(忍容性がある最大投与量まで)

✔︎それでも、効果不十分LVEF≦35のときには、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬の追加です(忍容性がある最大投与量まで)

✔︎にもかかわらず、効果不十分LVEF≦35のときに、イバブラジンが登場します(洞調律で安静時心拍数70回/分以上が条件です)

また、β遮断薬に忍容性がなく使用できない又は禁忌の患者に対しても、イバブラジンを追加することが推奨されています。

参考文献)Eur Heart J 2016; 37: 2129-200

ACC/AHA/HFSAのガイドライン

イバブラジンの選択基準は以下のようになっています。

最善の既存治療下にある安静時心拍数70回/分以上の症候性(NYHA心機能分類II〜III度)でLVEFの低下(35%以下)した慢性心不全患者に対して推奨されています。

参考文献)Circulation 2017; 136: e137-61

ACE阻害薬(またはARB)+β遮断薬を忍容性のある最大量で投与、効果不十分の際にイバブラジンを追加します。

このように、慢性心不全の標準治療薬を使用しても、効果が不十分な場合にイバブラジンを追加するという基本の考え方は変わらないですね。

投与時に注意すべき点

最後に3つ目のポイントです。コラランを投与する際に注意すべき点はいくつかありますが、個人的に気になった2点を紹介します。

  1. 光視症と霧視の副作用
  2. CYPによる相互作用

順番に見ていきましょう。

光視症と霧視の副作用

コララン錠は特徴的な副作用があります。光視症と霧視です。作用機序からはイメージしにくいですね。

光視症とは、光が当たっていないのに、目の前に光が見える状態のことです。チカチカと点滅したり、ピカッと稲妻が走る症状を自覚します。霧視は視界がぼやけたり、かすんで見える状態です。

どうして起こるのか?不思議ですよね。心拍数を下げる機序からは想像しにくいので…。

実は、コラランには網膜の光刺激を弱める働きがあります。結果、光を感じにくくなり、また逆に光に敏感になることで、霧視や光視症といった異常な感覚を生じるそうです。

光視症はちょうど、暗闇(光刺激が弱い)から、明るい場所へ移動したときに、より光を眩しく感じる(光に対する感受性が亢進)ような感覚でしょうか。

視機能への影響について、安全性薬理試験において点滅光を識別する能力である時間分解能の低下及び光刺激に対する反応の低下が認められた。本薬は、マウス視細胞におけるIhを阻害し、IC50は2.7 μmol/L であった。また、30 μmol/Lで網膜標本における点滅光に対する電気応答を抑制したことから、本薬によるIh阻害により光刺激の減衰が弱まり、光に対する感受性が亢進すると考えた

PMDA審議結果報告書、コララン

発現時期は3ヶ月以内が多いとされています。また、作用は可逆的です。減量または中止等により改善が見られます。コララン服用中に症状を認めた場合には、医師に減量又は中止の要否について相談が必要ですね。

ちなみに、必ず減量等の対応が必要かというとそうではなく、臨床試験では同一用量で継続した場合でも症状の回復、軽快が見られたという結果でした。

いずれの臨床試験においても本剤群で光視症や霧視に対して治療薬等の処置はされておらず、光視症又は霧視を発現した被験者の約70〜80%で本剤が同一用量で継続され、 一部の被験者では本剤の減量、休薬又は中止により対応された結果、約80~90%の患者で回復又は軽快を認め、プラセボ群での処置及び転帰と大きな違いはなかった。光視症の80%以上は投与開始から3カ月以内に発現していた。

PMDA審議結果報告書、コララン

それから、投与に際しては車の運転に関する説明が欠かせません。具体的には下記です。

光視症、霧視、めまい、ふらつきがあらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作をする際には患者に十分注意させること。また、これらの症状が認められた場合は、自動車の運転等危険を伴う操作に従事しないよう指導すること

コララン添付文書

つまり、服用中は車の運転などに気をつけること(注意)、光視症や霧視、めまい、ふらつきなどを認める場合には従事しないこと(禁止)を、患者さんに理解して頂く必要があります。

CYPによる相互作用

コラランはCYP3Aで代謝されます。相互作用に注意が必要な点は覚えておきましょう。

以下の薬剤が併用禁忌です。特に循環器疾患でよく使われるジルチアゼムとベラパミルには注意ですね。コラランの血中濃度上昇に加え、相互に心拍数の減少作用があるので、徐脈のリスクが増大します。

併用禁忌

リトナビル含有製剤、ジョサマイシン、イトラコナゾール、クラリスロマイシン、コビシスタット含有製剤、インジナビル、ボリコナゾール、ネルフィナビル、サキナビル、テラプレビル、ジルチアゼム、ベラパミル

あとは、処方頻度が高いクラリスロマイシンは押さえておきたいところ。

もちろん、併用注意薬も多くあります(詳細は添付文書を参照)。コラランは併用薬のチェックが不可欠である点、忘れないようにしたいですね。

まとめ

今回は慢性心不全薬コラランについて3つのポイントから特徴を解説しました。

記事を書きながら、レートコントロールの重要性を再認識しました。コラランには心血管死や心不全による入院を減らせるというエビデンスがあるからです。しかも、ARBやACE阻害薬、βブロッカー、MR拮抗薬に上乗せすることで、さらに有用性が期待できるのは驚きました。単に心拍数を下げるだけの薬ではないんですね…当たり前ですが(^_^;)

一方で、使用にあたって注意点もあります。標準治療薬に上乗せする薬剤であるし、心拍数、LVEF等を考慮して投与の必要性を検討しなければならないから。あと、CYP3Aの相互作用があるのは覚えておきたいですね。

今のところ、コラランの出番はそれほど多くないみたいです。一年経とうとしてますが、あまり見かけません。長期投与できるようになったら、変わるのかも。今後の使用動向に注目していきます♪

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