今回のテーマはイノフィード!経腸栄養に用いる経管投与専用の製剤です。

どのような特徴があるのか?
従来のラコールNF配合経腸用液剤(以下、ラコール)との違いに注目しながら、ポイントをまとめたので共有します。
イノフィードとラコールの比較
| イノフィード配合経腸用液 | ラコールNF配合経腸用液 | |
|---|---|---|
| 販売開始 | - | 2011年6月 |
| 規格 | 300mL/バッグ | 200mL/パウチ 400mL/バッグ |
| カロリー | 1kcal/mL | 1kcal/mL |
| 糖質 | 13.8g/100mL 41.25g/バッグ | 15.6g/100mL 31.24g/パウチ(200mL) 62.48g/バッグ(400mL) |
| たんぱく質 | 4.5g/100mL 13.50g/バッグ | 4.4g/100mL 8.76g/パウチ(200mL) 17.52g/バッグ(400mL) |
| 脂質 | 2.8g/100mL 8.34g/バッグ | 2.2g/100mL 4.46g/パウチ(200mL) 8.92g/バッグ(400mL) |
| 水分含量 | 約84% | 約85% |
| 粘度(mPa・S) | 約7.4 (20℃) | 5.51〜6.52 (25℃) |
| 電解質 | ナトリウム カリウム カルシウム マグネシウム リン 塩素 | ナトリウム カリウム カルシウム マグネシウム リン 塩素 |
| ビタミン | レチノールパルミチン酸エステル コレカルシフェロール トコフェロール酢酸エステル フィトナジオン チアミン リボフラビン ピリドキシン シアノコバラミン アスコルビン酸 ニコチン酸アミド パントテン酸 葉酸 ビオチン | レチノールパルミチン酸エステル コレカルシフェロール トコフェロール酢酸エステル フィトナジオン チアミン リボフラビン ピリドキシン シアノコバラミン アスコルビン酸 ニコチン酸アミド パントテン酸 葉酸 ビオチン |
| 微量元素 | 鉄 亜鉛 マンガン 銅 ヨウ素 セレン クロム モリブデン | 鉄 亜鉛 マンガン 銅 |
| その他 | イヌリン カルニチン コリン | |
| 脂質成分 | トリカプリリン リノール酸 α-リノレン酸 ドコサヘキサエン酸 | トリカプリリン リノール酸 α-リノレン酸 |
| 用法用量 | 成人標準量として1日900~1,500mL(900~1,500kcal)を経管投与する。投与速度は50~400mL/時間とし、持続的又は1日数回に分けて投与する。 | 成人標準量として1日1,200~2,000mL(1,200~2,000kcal)を経鼻チューブ、胃瘻又は腸瘻より胃、十二指腸又は空腸に1日12~24時間かけて投与する。投与速度は75~125mL/時間とする。経口摂取可能な場合は1日1回又は数回に分けて経口投与することもできる。 |
簡単に共通点を押さえておきます。大きく5点です。
イノフィードとラコールの共通点
- ①経腸栄養に用いる
-
イノフィードとラコールは経腸栄養に用います。栄養管理は「静脈栄養」と「経腸栄養」に分かれ、消化管が使用できない場合には静脈栄養、使用できる場合は経腸栄養を選択するのが基本です。経口からの食事摂取が困難な手術後や胃瘻等からの長期栄養管理等に用います。


大塚製薬工場HP 経腸栄養 - ②半消化態栄養剤
-
イノフィードとラコールは半消化態栄養剤です。経腸栄養剤は主にタンパク質の組成の違いにより3つのグループに分かれます。
- 半消化態栄養剤
- 消化態栄養剤
- 成分栄養剤
半消化態栄養剤 消化態栄養剤 成分栄養剤 製剤名
液体イノラス、エンシュアリキッド、エンシュアリキッド・H、エネーボ、ラコール、イノフィード ツインライン エレンタール 製剤名
半固形イノソリッド 窒素源 タンパク質 アミノ酸、ジまたはトリペプチド アミノ酸 消化の要否 要 一部要 不要 イノフィードとラコールは窒素源がタンパク質であり、腸管で消化を受けて吸収されます。逆にいうと、消化機能が低下した人には向いていません。消化吸収不良を起こすからです。
栄養剤は、消化管の機能によって選択します。たとえば、しばらく絶食が続いた人では、消化吸収機能が落ちており、消化が不要な成分栄養剤から始めます。その後、消化機能の回復に応じて、消化体栄養剤や半消化態栄養剤へ変更し、最終的には普通の食事に移行するかたちです。下図のように、消化機能に合わせて段階的に栄養剤の形態をアップしていきます。
STEPまず、成分栄養剤を選択消化機能低下消化を要しない栄養剤を選択
STEP次に、消化態栄養剤や半消化態栄養剤消化機能やや改善消化を要する栄養剤を選択
STEP続いて、普通の食事に移行 - ③適応
-
イノフィードとラコールは「適応が同じ」です。周術期(消化機能が維持された)や胃瘻からの長期栄養管理等に用います。
(効能又は効果)
一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する。
イノフィード配合経腸用液、ラコールNF配合経腸用液 電子添文 - ④カロリー
-
イノフィードとラコールは「カロリーが同じ」です。1gあたり1kcal、一袋で300kcal(イノフィード)を補給できます。イノラスはハイカロリーの栄養剤です。1gあたり1.6kcal、少ない液量でカロリーアップを行えます。
イノフィード
配合経腸用液ラコールNF
配合経腸用液イノラス
配合経腸用液イノソリッド
配合経腸用半固形剤300kcal/バッグ
(300mL)200kcal/袋
(200mL)
400kcal/バッグ
(200mL)300kcal/袋
(187.5mL)
200kcal/袋
(125mL)300kcal/バッグ
(300g)1kcal/g 1kcal/g 1.6kcal/g 1kcal/g あわせて読みたい
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-
イノフィードとラコールは「水分量がほぼ同じ」です。イノフィードは100mLあたり84〜85mLの水分を補給できます。半固形製剤イノソリッドは水分含有率が低く、切り替えの場合には水分量を調節(約10%)する必要があります。
イノフィード
配合経腸用液ラコールNF
配合経腸用液イノラス
配合経腸用液イノソリッド
配合経腸用半固形剤300mL/バッグ 200mL/袋
400mL/バッグ187.5mL/袋
125mL/袋300g/袋 約84% 約85% 約75% 約76% あわせて読みたい
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イノフィードとラコールの相違点
ここからが本題!イノフィードとラコールの違いを見ていきましょう!大きく7つです。
- 投与量
- 成分量(糖質・タンパク質・脂質)
- ビタミン
- 電解質
- 微量元素
- 食物繊維
- その他の成分
)投与量
| イノフィード 配合経腸用液 | ラコールNF 配合経腸用液 | |
|---|---|---|
| 1日量 | 900~1500mL | 1200~2,000mL |
| 1日熱量 | 900~1500kcal | 1200~2000kcal |
ここが1番の違いですね。イノフィードは1日投与量(カロリー)が少なめの設定です。ラコールの3/4量に相当します。これは、実臨床における投与量を考慮したためです。特に高齢者では1日2000kcalを必要とするケースは少なく、1日1000kcal程度で栄養管理をされている方が多くを占めます。
1日投与量(カロリー)の比較
イノフィード:ラコール=3:4
もちろん、ラコールを減量して投与することも可能ですが、長期の栄養管理においては望ましくありません。1日最大投与量に合わせてビタミンやミネラルを配合しており、減量時には欠乏症状を引き起こす可能性があるからです(ここはポイント!)
)栄養成分量(糖質・タンパク質・脂質)
| イノフィード 配合経腸用液 300mL | ラコールNF 配合経腸用液 300mL換算 | |
|---|---|---|
| 規格 | 300mL/バッグ | 200mL/パウチ 400mL/バッグ |
| カロリー | 1kcal/mL | 1kcal/mL |
| 糖質 | 13.8g/100mL マルトデキストリン | 15.6g/100mL マルトデキストリン 精製白糖 |
| たんぱく質 | 4.5g/100mL 濃縮乳たん白質 カゼインナトリウム | 4.4g/100mL 乳カゼイン 分離大豆たん白質 |
| 脂質 | 2.8g/100mL トリカプリリン ダイズ油 シソ油 魚油 | 2.2g/100mL トリカプリリン ダイズ油 シソ油 パーム油 |
- ①糖質 イノフィード<ラコール
-
糖質は100mLあたり1.8gの差です。同じ用量ならラコールの方が糖質が多くなります(それほど大差はないですが)。成分はマルトデキストリンが共通、ラコールには白糖が入っているのが相違点。この違いによって血糖値への影響が気になるところですね。
- ②タンパク質 イノフィード≒ラコール
-
タンパク質は100mLあたり0.1gの差。ほぼ同じですね。イノフィードは牛乳タンパク質(カゼインも牛乳に含まれるタンパク)を原料としています。一方で、ラコールは牛乳のタンパク質に加えて、大豆タンパクが入っているのが特徴です。
ここで押さえておきたいのが、食物アレルギーのある方への対応です!
イノフィード
配合経腸用液ラコールNF
配合経腸用液牛乳
アレルギー禁忌 禁忌 大豆アレルギー 注意
(避ける)ラコールNF配合経腸用液及びラコールNF配合経腸用半固形剤には「乳カゼイン」と「分離大豆たん白質」が配合されているため、牛乳アレルギーや大豆アレルギーのある患者に投与することはできません。
イノソリッド配合経腸用半固形剤には、「濃縮乳たん白質」と「カゼインナトリウム」が配合されているため、牛乳アレルギーのある患者に投与することはできません。「ダイズ油」が配合されており、ダイズ油中のアレルゲンに関する詳細な知見は得ておりませんが、大豆由来アレルゲン以外の物質に対してもアレルギー反応が出てくる可能性がありますので、大豆アレルギーのある患者の場合は十分に経過観察を行いながら投与してください。
ラコールNF配合経腸用液の製品Q&A - ③脂質 イノフィード>ラコール
-
脂質は100mLあたり0.6gの差です。同じ用量ならイノフィードの方が脂質が多くなります(こちらも大差ないですが)。あと、イノフィードには魚油が入っているのが特徴です。魚の油といえば、EPAやDHAが想起されますよね。血流を良くする効果が期待できるかも知れません。一方で、周術期には出血のリスクが懸念されますが、微量なので問題ないかと思います。イコサペント酸エチルのように、出血のリスクに関する記載はありません。
)ビタミン
| 種類 | ①イノフィード 配合経腸用液 300mL | 比較 | ②ラコールNF 配合経腸用液 300mL換算 | ①÷② |
|---|---|---|---|---|
| チアミン | 369μg | < | 1,140μg | 0.32 |
| リボフラビン | 534μg | < | 735μg | 0.73 |
| ピリドキシン | 468μg | < | 1,125μg | 0.42 |
| シアノコバラミン | 1.500μg | > | 0.960μg | 1.56 |
| アスコルビン酸 | 66.9mg | < | 84.3mg | 0.79 |
| ニコチン酸アミド | 5.01mg | < | 7.50mg | 0.67 |
| パントテン酸 | 2001μg | < | 2,874μg | 0.70 |
| 葉酸 | 80.1μg | < | 112.5μg | 0.71 |
| ビオチン | 16.68μg | > | 11.58μg | 1.44 |
| レチノールパルミチン酸エステル | 300μg | > | 621IU 186.3μg | 1.61 |
| コレカルシフェロール | 5.01μg | > | 40.8IU 1.02μg | 4.91 |
| トコフェロール酢酸エステル | 7,479μg | > | 1,950μg | 3.84 |
| フィトナジオン | 24.99μg | > | 18.75μg | 1.33 |
種類は一緒ですが、上記の通り含量が異なります。イノフィードは維持エネルギー量の低い患者さんの栄養管理にも配慮し 900kcal の投与で 1 日に必要なビタミンをほぼ充足できる処方設計となっています。単にラコールの含有量を4/3倍(常用量換算)したわけではありません。
ラコールと比較してイノフィードで増量した成分はシアノコバラミン、ビオチン、レチノールパルミチン酸エステル、コレカルシフェロール、トコフェロール酢酸エステルです。一方で、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸、葉酸は減量されています。
ビタミンKのフィトナジオン含有量はイノフィードとラコールで1日量に換算すると同じです。ワルファリンカリウムとの相互作用には注意が必要ですね。
\フィトナジオンの含有量 /
| イノフィード 配合経腸用液 | ラコールNF 配合経腸用液 | |
|---|---|---|
| 300g/袋 | 24.99μg | 18.75μg |
| 1日用量 | 75〜125μg (900〜1500mL) | 75〜125μg (1200〜2000mL) |
併用注意
フィトナジオン(ビタミンK1)がワルファリンの作用に拮抗するため(本剤はフィトナジオンを24.99μg/300g含有する)。
イノフィード配合経腸用液 電子添文
)電解質
| 種類 | ①イノフィード 配合経腸用液 300mL | 比較 | ②ラコールNF 配合経腸用液 300mL換算 | ①÷② |
|---|---|---|---|---|
| ナトリウム | 393mg (17mEq) | > | 221.4mg (9.6mEq) | 1.78 |
| カリウム | 552mg | > | 414mg | 1.33 |
| カルシウム | 293.4mg | > | 132.0mg | 2.22 |
| マグネシウム | 123.6mg | > | 57.9mg | 2.13 |
| リン | 333.6mg | > | 132.0mg | 2.53 |
| 塩素 | 663mg | > | 351mg | 1.89 |
種類は一緒ですが、上記の通り含量が異なります。先述のようにイノフィードは維持エネルギー量の低い患者さんの栄養管理にも配慮し 900kcal の投与で 1 日に必要なビタミン・微量元素をほぼ充足できる処方設計であり、単位あたりの電解質も増量されています。
ラコールと比較してイノフィードで増量した成分はNa、Ca、Mg、P、 Clです。Kを除いて電解質は基本的に増量していますね。
カリウム含有量はイノフィードとラコールで1日量に換算するとほぼ同じです。
\カリウムの含有量 /
| イノフィード 配合経腸用液 | ラコールNF 配合経腸用液 | |
|---|---|---|
| 300g/袋 | 552mg | 414mg |
| 1日用量 | 1656〜2760mg (900〜1500g) | 1656〜2760mg (1200〜2000g) |
)微量元素
| 種類 | ①イノフィード 配合経腸用液 300mL | 比較 | ②ラコールNF 配合経腸用液 300mL換算 | ①÷② |
|---|---|---|---|---|
| 鉄 | 3669μg | > | 1,875μg | 1.96 |
| 亜鉛 | 3669μg | > | 1,920μg | 1.91 |
| マンガン | 1335μg | > | 399μg | 3.35 |
| 銅 | 300μg | < | 375μg | 0.80 |
| ヨウ素 | 43.5μg | |||
| セレン | 16.8μg | |||
| クロム | 13.5μg | |||
| モリブデン | 10.2μg |
イノソリッドはラコールに含まれないヨウ素、セレン、クロム、モリブデンを配合しています。ここは大きな違いですね。
ラコールと比較してイノフィードで増量した成分はFe、Zn、Mnです。一方で、Cuは減量されています。
)食物繊維
| イノフィード 配合経腸用液 | ラコールNF 配合経腸用液 |
|---|---|
| 食物繊維 | 食物繊維 |
| イヌリン |
イノフィードには食物繊維としてイヌリンが入っています。ここはラコールとの明確な違いですね。イヌリンはごぼうや玉ねぎに多く含まれる水溶性食物繊維であり、下記の効果等が期待されます。
- 腸内環境を改善する(善玉菌を増やす)
- 食後の血糖上昇を抑える(糖の吸収を緩やかに)
- 血中中性脂肪を低減する(脂肪の吸収を抑える)
)その他の成分
| イノフィード 配合経腸用液 | ラコールNF 配合経腸用液 |
|---|---|
| カルニチン | |
| コリン |
イノフィードにはカルニチンとコリンを含みます。ここも大きな違いですね。いずれも長期栄養管理において欠乏リスクがあります。医薬品・経腸栄養剤エネーボとイノラスにも配合されていますね。
- 4級アンモニウムイオンのトリメチルアミノエタノール
- 生体の細胞膜の成分(ホシファチジルコリン、スフィンゴミエリンとして存在)
- 神経伝達物質アセチルコリンの前駆物質
- メチル基の転移反応に関与する
- 欠乏症:肝機能障害、認知機能低下、免疫機能の低下等
- アミノ酸(メチオニンとリジンから生成)の1種
- 長鎖脂肪酸のβ酸化(ミトコンドリア内)に関与、エネルギー産生を促す
- カルニチン欠乏症(筋力低下、こむら返り、倦怠感等)
- 長期の経管栄養で不足しやすい
まとめ
今回は、イノフィード配合経腸用液とラコール配合経腸用液の違いについてまとめました。イノフィードは現状の栄養管理上の問題点を考慮して開発された製剤です。標準投与量が1日900〜1,500mLと少なく、低い維持エネルギー(1000kcal前後)で栄養管理中の患者さんでも、1日に必要なビタミンと微量元素を充足できます。また、ヨウ素・セレン・クロム・モリブデンなどの微量元素やイヌリン(食物繊維)、カルニチン、コリン等も配合されており、栄養管理が長期に及ぶ場合にも、欠乏症リスクを軽減できるのが強みですよね。一方、イノフィードの規格はバッグ製剤のみです。経管投与のみの適応であり、ラコールを経口投与している方では切り替えができない点に注意が必要だと思います。

