ビルタサ懸濁用散分包の特徴【読み解く9つのポイント】

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今回のテーマは、ビルタサ懸濁用散分包!

一般名はパチロマーソルビテクスカルシウム、高カリウム血症の治療薬です。

ビルタサの特徴は?
従来薬ロケルマとの違いは何か?

勉強がてらまとめたので共有します。

執筆時点で、ビルタサは未発売です

目次

高カリウム血症の治療薬

代表的な高カリウム血症の治療薬は4種類です。

スクロールできます
一般名パチロマーソルビテクスカルシウムジルコニウムシクロケイ酸ナトリウムポリスチレンスルホン酸Naポリスチレンスルホン酸Ca
製品名ビルタサロケルマケイキサレート、
、ポリスチレンスルホン酸Na
カリメート、カリエード、ポリスチレンスルホン酸Ca
剤型懸濁用散分包懸濁用散分包散・原末・ドライシロップ散・原末・ドライシロップ・顆粒分包・散分包・ゼリー・経口液
適応高カリウム血症高カリウム血症急性および慢性腎不全による高カリウム血症急性および慢性腎不全による高カリウム血症
禁忌①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
②腸閉塞の患者
なしなし①腸閉塞の患者
用法用量開始
1回8.4gを1日1回
(最大25.2g/日)
開始
1回10gを1日3回
2日間(最大3日)

維持
1回5gを1日1回
(最大15g/日)

透析患者
1回5gを1日1回
非透析日のみ
(最大15g/日)
経口
1日30g分2〜3

注腸(散・原末)
1回30gを水または
2%メチルセルロース液100mlに懸濁
経口
1日15〜30g分2〜3

注腸(散・原末)
1回30gを水または
2%メチルセルロース液100mlに懸濁
懸濁方法1回1包
約40~80mLの水に懸濁

1回2〜3包
約80mLの水に懸濁
1回1〜3包
約45mLの水に懸濁
1回量
水50〜150mLに懸濁
1回量
水30〜50mLに懸濁
分包品は懸濁不要ゼリー、経口液は水なし
相互作用ニューキノロン系抗生物質、甲状腺ホルモン製剤、メトホルミン抗HIV薬、アゾール系抗真菌薬、チロシンキナーゼ阻害剤、タクロリムスジギタリス製剤、Al,Ca,Mg含有制酸剤または緩下剤
、甲状腺ホルモン製剤
ジギタリス製剤、Al,Ca,Mg含有制酸剤または緩下剤
、甲状腺ホルモン製剤
貯法2〜8℃で保存室温保存室温保存室温保存
各製剤の電子添文より作成

高カリウム血症の薬といえば①カリメートやケイキサレートなど陽イオン交換樹脂製剤ですね。ご存知のとおり、飲みにくさを改善するために、さまざまな剤型が開発されています。「散・原末・ドライシロップ・顆粒分包・散分包・ゼリー・経口液」のラインナップから患者さんに合ったものを選ぶかたちですね。

②ロケルマは2020年に発売された非ポリマーの無機結晶製剤、選択的にカリウムを補足するのが特徴です。陽イオン交換樹脂製剤に比べて、飲みやすいというのも強みですね。

今回承認された③ビルタサの特徴は何か

従来薬ロケルマと比較しながら見ていきましょう!

ビルタサの適応

製品名ビルタサロケルマ
適応高カリウム血症高カリウム血症
  • ビルタサは「高カリウム血症」の治療薬です(ロケルマと同じ)
    5.5mEq/L以上、6.5mEq/L未満(国内臨床試験の選択基準)
  • ビルタサは緊急の高カリウム血症には用いません(ロケルマと同じ)
    効果発現が緩徐であるため
ビルタサの有効性

ビルタサは血清カリウムを低下させます(プラセボと比較)

ビルタサ懸濁用散分包 電子添文より

投与1週後の時点で

血清カリウム値が正常化(3.8〜5.0mmol/L)した割合は、
8.4g群で70.6%(36/51例)
16.8g群で84.3%(43/51例)
プラセボ群で36.0%(18/50例)でした。

  • 対象…高カリウム血症患者184例(非透析患者162例、血液透析患者22例)
  • 方法…パチロマーとして開始用量1回8.4g又は16.8gを53週間投与
    血清K値が3.8~5.0mmol/Lになるように、投与量を増減(最大25.2g)
  • 比較…プラセボ
  • 主要評価項目…NDC1における投与1週後の血清カリウム値の変化量
    NDC1:血清カリウム値が5.1〜5.9mmol/Lの非透析患者

国内第2相臨床試験

ビルタサは血清カリウムの正常化を維持します(プラセボと比較)

ビルタサ懸濁用散分包 電子添文より

治療導入期最終時において

血清カリウム値が正常化(3.5〜5.0mmol/L)した割合は
90.4%(66/73例)でした

  • 対象…高カリウム血症患者(非透析患者)
  • 方法…パチロマーとして開始用量1回8.4gを4〜5週間投与、治療導入期に正常カリウム値(3.5〜5.0mmol/L)に達した患者を対象に、パチロマー又はプラセボに割付け、治療導入期最終時の用量を4週間投与
    血清K値が3.8~5.0mmol/Lになるように、投与量を増減(最大25.2g)
  • 比較…プラセボ
  • 主要評価項目…二重盲検期4週後の血清カリウム値の変化量

国内第3相臨床試験

ビルタサは高カリウム血症の治療薬(緊急性が高い場合は)です。血清K値を低下し、正常化を維持する効果が期待できます。適応や位置付けはロケルマと同様ですね。

参考までに:高カリウム血症の緊急治療
  • GI療法(グルカゴン-インスリン療法)
  • 重炭酸ナトリウムの静脈投与
  • 血液透析

ビルタサの剤型

製品名ビルタサロケルマ
剤型懸濁用散分包懸濁用散分包
  • ビルタサは懸濁用の散剤(分包品)です
  • ビルタサは用時懸濁して服用します

ビルタサは懸濁用の散剤、飲む前に水で懸濁する点はロケルマ(やポリスチレンスルホン酸Na製剤)と同じですね。参考までに、ポリスチレンスルホン酸Ca製剤は経口液やゼリーなど懸濁不要の剤型もあります。

ビルタサの作用機序

製品名ビルタサロケルマ
分類ポリマー非ポリマー
作用機序消化管でカリウムと結合消化管でカリウムと結合
カリウム結合能高い高い
遊離イオンCaNa、H
  • ビルタサは非吸収性の陽イオン吸着ポリマーです
    陰イオンポリマー(パチロマー)とカルシウム・ソルビトールの対イオンで構成
  • カリウムの能動分泌が行われる結腸管腔でKを吸着し、糞便中へ排泄します
  • ビルタサはカリウム(吸着)とカルシウム(遊離)の交換を行います
    Naイオンを放出しない(ロケルマと相違)ため、水分貯留に伴ううっ血性心不全のリスクがない(後述します!)
ビルタサのカリウム結合能

ビルタサは他のポリマー製剤に比べて、1.5〜2.5倍のカリウム結合能を示します。

ビルタサ懸濁用散分包 電子添文
ロケルマのカリウム結合能

ロケルマは細孔の大きさが約3Åで、ちょうど2.98ÅのKがピッタリと収まります。

※ロケルマ、インタビューフォームより作成

Kに対する選択性は以下のとおりです(in vitro)

K+:NH4+:Ca2+:Mg2+が 1:1:1:1 の割合で存在する場合、本薬の陽イオン交換容量はそれぞれ 1.034 mEq/g、0.842 mEq/g、0.019 mEq/g、0.006 mEq/g であり、K+に対する本薬の選択性は、NH4+よりわずかに高く、Ca2+及び Mg2+の交換はほとんど認められなかった

ロケルマ懸濁用散、審査報告書

遊離Caイオンに関する注意事項

ビルタサは低リン血症を引き起こす可能性があります。遊離したCaイオンは食事中のリンと結合するためです。

本剤に含まれるカルシウムイオンが食事中に含まれるリンと結合することで消化管からのリン吸収を抑制し、血清リン値低下を認める可能性がある。

ビルタサ懸濁用散分包 電子添文

ビルタサは薬物相互作用の可能性もあります。Caイオンとのキレート形成により、併用薬の吸収を妨げる可能性もあるからです(後述します)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
ニューキノロン系抗生物質
・シプロフロキサシン塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩錠、メシル酸ガレノキサシン水和物錠等

甲状腺ホルモン製剤
・レボチロキシンナトリウム水和物 等
本剤との併用により、これらの薬剤の吸収が低下し、作用が減弱する可能性がある。併用する場合は、3時間以上空けて服用すること。消化管内で本剤に含まれるカルシウムと難溶性のキレートを形成し、これらの薬剤の吸収を低下させるおそれがある。
ビルタサ懸濁用散分包 電子添文、併用注意

ビルタサはカリウムに加えて、マグネシウムも吸着する可能性があり、低MG血症にも注意が必要です。

本剤がマグネシウムイオンを吸着する可能性があり、血清マグネシウム値低下を認める可能性がある。

ビルタサ懸濁用散分包 電子添文

ビルタサはカリウム結合能が高いのが特徴(ロケルマと同じ)です。代わりに遊離するカルシウムイオンにより、低リン血症の可能性、併用薬剤との相互作用がある点は押さえておきたいですね。

ビルタサの投与方法

ビルタサロケルマ
規格1種類
8.4g分包
2種類
5g分包/10g分包
投与回数(透析の有無に関係なく)
1日1回
非透析患者
1日1回
(初期1日3回)

透析患者
非透析日のみ
負荷投与非透析患者のみ
1回10g1日3回
2〜3日間
通常用量1回8.4gで開始非透析患者
負荷投与後、1回5gで開始

透析患者
1回5gで開始
投与量調節3段階
8.4g/16.8g/25.2g
3段階
5g/10g/15g
増量のタイミング8.4gずつ、1週間以上あけて5gずつ、1週間以上あけて
減量・中止を考慮血清K値
3.5mmol/L未満
血清K値
3.5mmol/L未満
中止血清K値
3.0mmol/L未満
血清K値
3.0mmol/L未満
ビルタサ懸濁用散分包、ロケルマ懸濁用散分包、電子添文より作成
  • ビルタサは1日1回投与です
    透析の有無で投与方法が変わるロケルマとの相違点
  • 開始用量は1回8.4gと一律です。
    非透析患者でローディングを行うロケルマとの相違点
  • 症状に合わせて1回8.4〜25.2gの範囲で用量を調節します

ビルタサは1日1回投与であり、服薬アドヒアランス向上の点で有用だといえます。ローディングや透析時の変則的な投与方法が煩雑なロケルマに比べてシンプルですね。

ビルタサの懸濁方法

ビルタサロケルマ
水分量1包
約40~80mLの水

2〜3包
約80mLの水
(投与量に関係なく)
約45mLの水
懸濁手順2ステップ
①半量の水で懸濁
②残りの水で再度懸濁
1ステップ
①全量で懸濁
配合変化コーヒー、お茶、ジュース等の飲み物、ヨーグルト、ゼリー等の食べ物に混ぜて服用可能
ビルタサ懸濁用散分包の懸濁方法
ビルタサ懸濁用散分包の配合変化
ビルタサ懸濁用散分包 インタビューフォーム

本剤は、常温又は冷蔵の飲食物に懸濁して服用すること。本剤を加熱した飲食物に懸濁したり、懸濁後に電子レンジ等で加熱したりしないこと

ビルタサは水以外の飲み物や、ヨーグルトやゼリー等の食べ物に混ぜて服用できます。服薬アドヒアランスの点で良いですね。ここはロケルマというよりは、陽イオン交換樹脂製剤に比べての利点ですかね。

ビルタサの相互作用

スクロールできます
ビルタサロケルマ
機序Caとキレート形成水素イオン吸着による胃内pH上昇
併用注意ニューキノロン系抗生物質
・シプロフロキサシン塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩錠、メシル酸ガレノキサシン水和物錠等

同時服用(CPFX500mgとパチロマー25.2g)
Cmax42.1%、AUC28.5%低下

甲状腺ホルモン製剤
・レボチロキシンナトリウム水和物 等

同時服用(レボチロキシンナトリウムとして600μg投与40分以内とパチロマー25.2g)
Cmax8.4%、AUC18.6%低下
抗HIV薬
・アタザナビル硫酸塩、ネルフィナビルメシル酸塩、リルピビリン塩酸塩 等

アゾール系抗真菌剤
・イトラコナゾール、フルコナゾール
ボリコナゾール 等

チロシンキナーゼ阻害剤
・エルロチニブ塩酸塩、ダサチニブ水和物、ニロチニブ塩酸塩水和物 等

タクロリムス(経口剤)
対応3時間以上空けて(ビルタサを)服用する2時間前又は2時間後に(ロケルマ)投与する

ビルタサは成分に含まれるCaによる相互作用に注意が必要です。併用時には、3時間以上の間隔を空けて投与する点は押さえておきたいですね。ロケルマは水素イオン放出による胃内pH上昇を招きます。投与間隔をあける点は共通ですね。

ビルタサの注意すべき副作用

スクロールできます
ビルタサロケルマ
禁忌腸閉塞の患者
重要な潜在的リスク
承認時の臨床試験において、副作用報告なし、類薬で報告あり可能性否定できないため

なし
重大な副作用低カリウム血症
重要な潜在的リスク
承認時の臨床試験において、副作用1例(0.7%)重大な副作用は認めず



腸管穿孔、腸閉塞
重要な潜在的リスク
承認時の臨床試験において、副作用報告なし、類薬で報告あり可能性否定できないため
低カリウム血症
重要な特定されたリスク
国際共同第三相試験、補正期で3例(1.1%)、維持期で10g群で10例(10.1%)、5g群で6例(6.1%)、10g群のうち2例は3.0mmmol/Lとなった

うっ血性心不全
重要な特定されたリスク
国際共同第三相試験(維持期)、10g群で2例(2.0%)、5g群で2例(2.0%)、国内第三相長期試験で10例(6.7%)に心不全関連事象が認められた。重篤例の報告もあり

ビルタサは低カリウム血症を引き起こす可能性がありますロケルマとの共通点)。定期的な血清K値のモニタリングによる早期発見が重要です。

低カリウム血症により不整脈等が生じるおそれがあるので、本剤投与中は、定期的に血清カリウム値を測定すること。また、血清カリウム値に影響を及ぼす薬剤(レニン-アンジオテンシン系阻害剤、抗アルドステロン剤、利尿薬等)の用量に変更が生じた場合、血清カリウム値の変動に注意すること

ビルタサ、ロケルマ電子添文

②ビルタサは腸閉塞や腸管穿孔のリスクが指摘されていますロケルマとの相違点)。服用中は排便状況の確認、早期発見に努めなければなりません。陽イオン交換樹脂製剤と同様の対応ですね。

腸管穿孔、腸閉塞を起こす可能性が否定できないため、患者に排便状況を確認させ、便秘に引き続き持続する腹痛、嘔吐等の症状があらわれた場合には、医師等に相談するよう指導すること

ビルタサ電子添文
ビルタサ懸濁用散分包の患者説明用紙

③ビルタサはナトリウム貯留のリスクがありません。ロケルマのようにNaを含まないからです。ここは強みですね。心機能の低下した患者さんには使いやすいといえます。

ビルタサ、飲み忘れ時の対応

ビルタサロケルマ
飲み忘れに気づく
同日に服用可すぐに服用
同日に服用不可スキップ

過量投与を防ぐため、服用を忘れ、同日中に服用できない場合は、翌日以降に2日分をまとめて服用しないよう患者に指導すること(ビルタサ電子添文)
飲み忘れに気づく
同日に服用可スキップ
同日に服用不可スキップ

過量投与を防ぐため、服用を忘れた場合は、次の服用予定時間に通常どおり1回分の用量を服用するよう患者に指導すること(ロケルマ電子添文)

ここは意外な相違点です。ビルタサは気づいた時点で遅れて服用可(1日分)です。一方で、ロケルマはスキップ(遅れて服用はできず)、翌日に通常通り飲む対応になります。

ビルタサの保管

ビルタサロケルマ
2〜8℃で保存

本剤を室温(1~30℃)で保管(冷蔵庫外で保管)した場合には、冷蔵庫外で保管し始めた日から3ヵ月を超えたときは、服用せず廃棄すること。(ビルタサ電子添文)
室温保存

ここは大きな相違点です。ビルタサは保管に注意が必要です。基本は冷所保存(2〜8℃)、室温で保管する場合には3ヶ月を超えると廃棄の対応になります。患者さんに説明が必要ですね。

まとめ

今回は高カリウム血症治療薬ビルタサの特徴について、従来薬ロケルマと比較しながら解説しました。

ビルタサの強みは
①投与方法が簡便(1日1回投与)
②Na貯留のリスクなし(心機能への悪影響がない)
③水以外の飲食物に混ぜて投与できる

の3点ですかね。

一方で、①味と②ポリマー製剤のリスク(腸閉塞、腸管穿孔)は気になります。それから③冷所保存なのはやはり扱いにくいですよね。ここは残念な部分です…。

ビルタサは従来の高カリウム血症治療薬にとって代わるのか?
発売後の使用状況等、注目していきたいと思います!

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