循環器系薬

ロケルマ懸濁用散のメリットと注意点を解説

今回のテーマはロケルマ!

名前の由来は下記です。

下げる(lower)とカリウム血症(kalemia)から「LOKELMA」

高カリウム血症治療薬としてはなんと45年ぶりの新有効成分の医薬品だそうです。

一般名は、ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム。従来の治療薬との違いにも触れながら、ロケルマのメリットと注意点について解説します。

ロケルマ懸濁用散の基本情報

まず、類似薬との比較を表にまとめました。

ロケルマ ケイキサレート カリメート、アーガメイト
一般名 ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム ポリスチレンスルホン酸Na ポリスチレンスルホン酸Ca
剤型 懸濁用散
ドライシロップ

ドライシロップ
顆粒
ゼリー
経口液
適応 高カリウム血症 急性および慢性腎不全による高カリウム血症 急性および慢性腎不全による高カリウム血症
禁忌 なし なし 腸閉塞の患者
用法用量 成人…5g×1(最大15g)
※初回10g×3を2日(3日も可)
透析…5g×1非透析日のみ(最大15g)
内服…30g分2〜3
注腸…30gを水または2%メチルセルロース液100mlに懸濁
内服…15〜30g分2〜3
注腸…30gを水または2%メチルセルロース液100mlに懸濁
溶解方法 水45mLで溶解(大さじ3杯) 内服…水50〜150mL 内服…水30〜50mL
※ゼリー、経口液を除く
相互作用 抗HIV薬
アゾール系抗真菌薬
チロシンキナーゼ阻害剤
ジギタリス製剤
AL,Ca,Mg含有制酸剤または緩下剤
甲状腺ホルモン製剤
ジギタリス製剤
Al,Ca,Mg含有制酸剤または緩下剤
甲状腺ホルモン製剤

表は左右にスライドできます。

簡単にポイントだけを確認しますね。

新有効成分、非ポリマー製剤

ロケルマは今までの薬と分類が違います。

  • ロケルマ…非ポリマー無機陽イオン交換化合物
  • ケイキサレート、カリメート…ポリマー型陽イオン交換樹脂

一般名はジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム、構造式は下記です。

構造式:NaxHyZrSi3O9・zH2O (x+y=2, 2≦z≦3)

炭素原子を含まない無機化合物になります。

一方で、ケイキサレートとカリメートは有機化合物です。ベンゼン環の一つの水素原子がビニル基に置換されたスチレンが複数連なったポリマー構造を有します。

それぞれの構造式を比較すると下記です。

※各インタビューフォームより作成

ロケルマは従来の樹脂製剤と構造そのものが大きく異なるわけですね。

適応は高カリウム血症

ロケルマは高カリウム血症に使用します。従来薬も同様です。消化管内のカリウムイオンを捕捉して糞便と共に排泄し、血清K値を低下させるのが作用機序ですね。

Kを捕捉する代わりに放出するイオンの種類がそれぞれ違います。

  • ロケルマ…Naイオンおよび水素イオン
  • ケイキサレート…Naイオン
  • カリメート…Caイオン

消化管から吸収されない

ロケルマは吸収されません。粒子径が消化管粘膜の間壁の比べて極めて大きいからです。

樹脂製剤も同様ですね。

各製剤ともに消化管内でのみ作用するので、肝機能障害、腎機能障害があっても投与可能で、投与量の減量も必要ありません。

剤型は懸濁用散のみ

ロケルマの剤型は懸濁用のみです。

一方で、ケイキサレートは散剤に加えてドライシロップ(DS)、カリメートはDSに加えて顆粒やゼリー、経口液の選択肢があります。

剤型ごとの特徴は下記です。

  • 散剤…水で懸濁して服用
  • ドライシロップ…懸濁性向上、舌のざらつき軽減
  • ゼリー…水なしで服用可、嚥下機能が低下した人でも服用しやすい
  • 経口液…水なしで服用可、携帯しやすいスティック包装

ロケルマの剤型は今後増えるかも知れませんが、現状は懸濁用散のみです。

ここからは、ロケルマのメリットと注意点を見ていきましょう。

ロケルマ懸濁用散のメリット

メリットは大きく6つあります。

  1. カリウムを選択的に捕捉する
  2. 消化管全体で作用する
  3. 水分で膨潤しない
  4. 透析患者さんに特に有用!?
  5. 金属イオン含有製剤と併用OK!
  6. 飲みやすい?!

1)カリウムを選択的に捕捉する

一つ目のメリットはKに対する選択性の高さです。

ロケルマは均一な微細孔構造を有しています。細孔の大きさが約3Åで、ちょうど2.98ÅのKがピッタリと収まる形です。

※ロケルマ、インタビューフォームより作成

Kに対する選択性を調べた結果は以下のとおりです(in vitro)

K+:NH4+:Ca2+:Mg2+が 1:1:1:1 の割合で存在する場合、本薬の陽イオン交換容量はそれぞれ 1.034 mEq/g、0.842 mEq/g、0.019 mEq/g、0.006 mEq/g であり、K+に対する本薬の選択性は、NH4+よりわずかに高く、Ca2+及び Mg2+の交換はほとんど認められなかった

ロケルマ懸濁用散、審査報告書

一方で、ケイキサレート非選択性です。陽イオンに対する親和性は以下のとおりです。

親和性(ポリスチレンスルホン酸Na)

・Ca>Mg>K>Na

※ケイキサレートIFより

ケイキサレートはKに対する選択性が高く、CaやMgなどの陽イオンに対する影響はほとんどありません。樹脂製剤で見られる低Ca血症や低Mg血症などの電解質異常が起こりにくいのがメリットです。

2)消化管全体で作用する

ロケルマは小腸から大腸にかけて広範囲にわたって効果が期待できます。胃ではほとんど作用しません。

in vitro 試験の結果、pH 1.2 では K+の交換はほとんど認められなかったものの、pH 4.5 及び 6.8 では K+の交換が認められた。以上より、胃のような低pHの環境では、低濃度の場合には 本薬は K+を交換しないものの、小腸及び大腸(pH 4.5~6.8)を含む消化管全体では、本薬は K+を交換することが示唆された

ロケルマ懸濁用散、審査報告書

一方で、ケイキサレートの作用部位はおもに結腸下部です。緊急時に注腸投与を選択できますが、内服の場合には効果発現に時間がかかります。

作用部位の違い
  • ロケルマ…消化管全体
  • 樹脂製剤…結腸下部

ロケルマは、消化管全体で作用するので、ある程度速効性が期待できると考えられます。国際共同第III相試験(HARMONIZE Global試験)では、投与開始1時間から血清K値が低下して、24〜48時間で正常値に達することが示されました。

3)水分で膨潤しない

ロケルマは便秘が起こりにくいとされています。非ポリマー型のため水で膨潤することがなく、消化管への負担が少ないためです。

本薬及びポリスチレンスルホン酸ナトリウムを水と混合したときの体積の変化を検討した。有機ポリマー樹脂であるポリスチレンスルホン酸ナトリウムの体積は混合40分後に水の吸収により約92%増加した一方、本薬(ロケルマ)の体積は混合20分後に約17%減少した

ロケルマ、審査報告書

一方で、従来の陽イオン交換樹脂製剤は水を含むと膨潤します。ケイキサレートでは、体積が約2倍になるそうです。

ポリマー型の樹脂製剤は消化管内で蓄積すると腹満感、腹痛、場合によっては消化管穿孔に至る危険もあるため注意喚起がされています。

腸管穿孔に関する注意喚起の有無
  • ロケルマ…添付文書に記載なし
  • ケイキサレート…重大な副作用に記載あり
  • カリメート…禁忌、重要な基本的注意、重大な副作用に記載あり

ロケルマは水を含んで膨潤化しないので、便秘の副作用が起こりにくく(起こっても症状が比較的軽度)、消化管穿孔のリスクも低いのがメリットです。

4)透析患者さんに特に有用性が高い!

DIALIZE試験(国際共同第III相試験)で有用性が示されました。透析患者さんを除く成人を対象とした試験(HARMONIZE Global試験)でもプラセボ群に比べて有意に血清カリウム値を低下させたわけですが、インパクトの強さを感じた方を紹介します。

結果はロケルマ群はプラセボ群と比較して奏効例が有意に高いことが明らかに。

ロケルマ群 vs プラセボ群 41.2% vs 1.0%:p<0.001

奏功例というのは、後半の4週間における最大透析間隔後の4回中3回で透析前血清カリウム値が4.0-5.0mmol/Lで、レスキュー治療を受けなかった人の割合です。

透析患者さんは透析でKを補正します。しかし、次の透析日までにK値が上昇するのがネックでした。ロケルマは非透析日のみの服用により、次回の透析日まで血清Kを低下させた状態が維持できたわけです。

非透析日だけの投与は理にかなっているものだと思います。わずかでも服用に伴う水分負荷を抑えることができるし、透析日の低K血症のリスクも軽減できるからです。

5)金属イオン含有製剤と同時服用できる

ロケルマは金属イオンを含有する製剤と併用注意ではありません。先述したようにKに選択性が高く、他の金属イオンに対する影響が小さいためです。

一方で、ケイキサレートやカリメートは併用注意です。相互作用を防ぐために食間や食前投与へ変更が欠かせません。

ロケルマは食後のままでOKです。服薬コンプライアンスの点で優れているし、服用時点が増えないので、患者さんはもちろん、介護者の負担も少なくなりますね。

6)飲みやすい!?

試飲がまだなので、はっきりとわかりませんが…。

ロケルマは無味無臭でサラサラした飲み心地だそうです。

これは期待できるかも!

カリメートやケイキサレートは不評です。DSやゼリー、経口液の登場により若干飲みやすくなったみたいですけど、

「砂を食べてる感じがする」「まずいなあ」

と、不満を漏らす患者さんは多いですよね。

ロケルマは「高カリウム血症薬はマズい」という常識を覆すことができるのか、試飲が楽しみです。患者さんの不満が解消されることを願っています(^_^)

ロケルマ懸濁用散の注意点

大きく5つあります。

1)投与方法が煩雑

大きく3パターンあります。

  1. 1日3回(補正期)
  2. 1日1回(維持期)
  3. 非透析日のみ(透析患者用)

補正期のローディングは2日、効果不十分の時は3日間に延長する場合もあります。維持期は5、10、15gと3段階の用量設定です。

薬剤師目線でいくと、処方監査が大変ですね。「透析の有無」と「初回または維持」によって、投与方法が異なるからです。まあ、これは何とかなります。

一方で、患者さんの服薬コンプライアンスが心配です。ローディングがやや分かりにくい。維持期に比べ1回量が多いし、投与回数も増えるから。また、非透析日だけの服用も飲み忘れの原因にならないか?

毎日、同じタイミングで同じ量を服用する樹脂製剤に比べるとロケルマの投与方法は煩雑です。

さらに溶かし方も微妙…。

「水45mLで懸濁しながら飲む(5gと10g分包に共通)」

50mLじゃないみたい。目安は計量スプーン大さじ3杯だそうです……。

飲み方の説明は患者さん指導用のパンフレットが活用できると思います。

服用の手引きや服薬ダイアリーがセットになっており、溶かし方や副作用についても記載されています。結構、使えるかも知れません。

初回指導はゆっくりと時間をかけて丁寧に説明した方が良さそうです(^_^*)

2)緊急時には使用できない

ロケルマは高カリウム血症の急性期に使用できません。効果発現が緩やかだからです。

 本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用しないこと

ロケルマ懸濁用散、添付文書

一方で緊急時には注腸できる製剤の出番です。他にも選択肢がいくつかあります。

  • ケイキサレートやカリメートなどの注腸投与
  • GI療法(グルカゴン-インスリン療法)
  • 重炭酸ナトリウムの静脈投与
  • 透析

ロケルマの適応は経口投与のみ。非緊急性の高カリウム血症に使用するのが基本です。

3)浮腫やうっ血性心不全に注意

ロケルマはKイオンを捕捉する代わりにNaイオンを放出します。そのため、Na貯留に伴う浮腫やうっ血性心不全に注意が必要です。(重大な副作用に「うっ血性心不全」の記載あり)

ロケルマ1gあたり、ナトリウム80mgを含有しています。食塩(NaCl)に換算すると0.2gです。通常の飲み方で、NaCl量を計算すると以下のようになります。

  • 初回ローディング…10g×3/日
    (NaCl 6gに相当)
  • 維持用量…5〜15g/日
    (NaCl 1〜3gに相当)

思ったよりも多く含まれている!

高血圧の人は、NaCl 6g未満/日が目標です。それを考えるとかなり多いことがわかります。副作用の頻度は下記です。

国内長期投与試験(維持期)
  • 浮腫関連事象…22.1%
  • 心不全関連事象…6.7%

ロケルマ服用中は、Na貯留に伴う浮腫やうっ血性心不全について定期的なモニタリングが必要です。特に高血圧、心機能や腎機能が低下した患者さんは注意ですね。

また、塩分制限のある人では、医師や看護師、栄養士さんとの情報共有(ロケルマからのナトリウム摂取について)が必要になる場合もあると思います。まさか、服用中の薬にNaが含まれているとは、普通思わないので…。

ケイキサレートにもポリスチレン酸Na1gあたり、100mgのNa(0.25gの食塩に相当)が含まれます。1日用量30gだと7.5gのNaClに相当するので、過剰摂取に注意が必要です。

塩分摂取が問題になる場合には、Ca塩のカリメートやアーガメイトなどの選択が望ましいといえます。

4)低カリウム血症に注意

当たり前ですが…

ロケルマの薬効が過剰な場合には低カリウム血症を引き起こす可能性があります。

国内長期投与試験(維持期)

・カリウム低値…22.1%
※血清K値が3.5mmol/Lを下回った割合

ロケルマ投与中は、血清K値のチェックが必要になります(樹脂製剤も同様)。減量や中止の基準は以下のとおりです。

血清カリウム値が3.5mEq/L未満に低下した場合、本剤の減量又は中止を考慮すること。血清カリウム値が3.0mEq/L未満に低下した場合、本剤を中止すること。血清カリウム値に応じて、カリウム補充の必要性を検討すること。

ロケルマ懸濁用散、添付文書

5)制酸剤以外の薬と相互作用がある

先述したようにロケルマは、金属イオンを含む制酸剤や緩下剤と同時投与できます。メリットの5つ目でした。しかし、PHに溶解性が依存する下記の薬剤とは併用注意です。

  1. HIV薬
    ・アタザナビル硫酸塩
    ・ネルフィナビルメシル酸塩
    ・リルピビリン塩酸塩 等
  2. アゾール系抗真菌剤
    ・イトラコナゾール
    ・フルコナゾール
    ・ボリコナゾール 等
  3. チロシンキナーゼ阻害剤
    ・エルロチニブ塩酸塩
    ・ダサチニブ水和物
    ・ニロチニブ塩酸水和物 等

なぜなのか、というとロケルマは一時的に胃の中で水素イオンと結合し、PHを上昇させるからです。相手の薬剤の吸収が悪くなり効果が減弱する可能性があります。併用する場合には2時間の間隔が必要です。

従来の樹脂製剤とは異なる点ですね。日常的に汎用される薬剤ではないものの、相互作用には気をつけましょう。

まとめ

今回は高カリウム血症治療薬、ロケルマ懸濁用散についてまとめました。

個人的にはすごく期待が膨らみます。便秘が起こりにくいし、日常的に使用されている制酸剤や緩下剤との同時服用も可能なので、従来薬に比べて使い勝手が良い製剤だからです。あとは飲みやすいことを祈るだけですね。

ロケルマの登場により、高カリウム血症の治療薬の選択肢が広がります。どのように使い分けがされるのか注目していきたいです。

患者さんの利便性を考えて薬剤師が積極的に処方提案を行なう場面も増えているので、従来の樹脂製剤を含め、それぞれ薬の特性を整理しておいた方が良いと思いました。

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