【クローン病治療薬】ゼンタコートの特徴を理解する5つのポイント

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今回のテーマはゼンタコートカプセル!

一般名はブデソニド、クローン病に用いる経口ステロイド薬です。

どのような特徴があるのか?

まとめたので共有したいと思います。

目次

ゼンタコートカプセルの基本情報

まずは基本情報から。

製品名ゼンタコートカプセル
発売2016年11月
一般名ブデソニド
規格3mg/カプセル
薬効分類クローン病治療剤
適応軽症から中等症の活動期クローン病
用法用量1回9mgを1日1回朝経口投与する
禁忌・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
・有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者
重大な副作用なし
相互作用・CYP3A4阻害薬
・グレープフルーツ(ジュース含む)
薬価¥185.4/cap(2024.4時点)
ゼンタコートカプセル 電子添文より作成

ゼンタコートの特徴を理解するための
ポイントは大きく5つです。

  1. 有効成分
  2. 成分の特性
  3. 製剤の特性
  4. 臨床の位置付け
  5. 相互作用

順番に見ていきましょう。

ゼンタコートの有効成分

まずは一つ目のポイント、有効成分について。

ゼンタコートの有効成分ブデソニドです!

抗アレルギー、抗炎症作用を示すステロイドホルモン製剤に分類されます。

(作用機序)

ブデソニドは強力な合成副腎皮質ステロイドであり、抗アレルギー作用及び抗炎症作用を示す。各種炎症性メディエータ及びサイトカインの産生及び遊離(in vitro)、好酸球数増加(イヌ、ラット)、血管透過性亢進(ハムスター)並びに炎症性浮腫形成(ラット)などの抑制が知られている。

ゼンタコートカプセル 電子添文
ブデソニドを有効成分とする製剤

BAの低さを武器に、副作用の軽減を目的に開発、臨床使用されている薬剤はいくつかあります。

製品名成分適応症
パルミコート吸入液0.25mg・0.5mgブデソニド気管支喘息
パルミコート100μgタービュヘイラー112吸入、パルミコート200μgタービュヘイラー56吸入・112吸入ブデソニド気管支喘息
シムビコートタービュヘイラー30吸入・60吸入ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解
ビレーズトリエアロスフィア56吸入・120吸入ブデソニド/グリコピロニウム/ホルモテロールフマル酸塩慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解
レクタブル2mg注腸フォーム14回ブデソニド潰瘍性大腸炎(重症を除く)
コレチメント錠9mgブデソニド活動期潰瘍性大腸炎
(重症を除く)

コレチメント錠は令和5年9月1日に、潰瘍性大腸炎の治療薬として発売されました!

ゼンタコート:成分特性

ブデソニドは経口薬ですが、全身作用が弱く、局所的に効きます。

なぜなら初回通過効果を受けやすいからです。ゼンタコートは消化管で吸収された後、肝臓のCYP3A4で代謝されて、活性が低い代謝物に変わります。

(代謝)

ブデソニドの肝初回通過効果は大きく、糖質コルチコイド活性の低い代謝物に代謝される。主代謝物である6β-ヒドロキシブデソニド及び16α-ヒドロキシプレドニゾロンの糖質コルチコイド活性はブデソニドの1%以下である。ブデソニドは主としてチトクロームP450の分子種であるCYP3A4によって代謝される

ゼンタコートカプセル 電子添文

バイオアベイラビリティ(BA)はかなり低く(10〜20%)、全身性の副作用が少ないのが利点です。

 (バイオアベイラビリティ)

単回経口投与後のバイオアベイラビリティは約10~20%であった

ゼンタコートカプセル 電子添文
ステロイドの副作用
  • 易感染性
  • 耐糖能異常
  • 創傷治癒遅延
  • 骨粗しょう症
  • 副腎機能低下
  • 白内障
  • 緑内障など

BAの低さはデメリットであることが多いですが、腸管組織で局所作用を期待する薬剤からすれば逆にメリットとなるわけですね。

ゼンタコート:製剤の特性

続いて3つ目のポイント、製剤の特性について。

ゼンタコートは

腸溶性徐放性顆粒を充填したカプセルです!

顆粒のまわりにPH5.5以上で溶けるコーティング(メタクリル酸コポリマーLD)を施して、回腸から上行結腸で溶けるように製剤化されています。普通に投与したら、病変部位に届く前に吸収されて無効化されてしまうからです。

ゼンタコートカプセル インタビューフォーム

さらに、ブデソニドに不溶性ポリマーを配合して、広範囲にわたりゆっくり有効成分が放出されるように工夫されています。

ゼンタコートはターゲットとする回腸から上行結腸に届くように設計された製剤です!

ゼンタコート:臨床の位置付け

続いて4つ目のポイント、臨床の位置付けについて。

メサラジンとの比較は下記です。

ゼンタコートペンタサ
病期寛解導入寛解導入と維持療法
重症度軽症から中等症軽症から中等症
作用部位回腸、上行結腸小腸、大腸
各電子添文より作成

ポイントは3つです。

①病期

クローン病は原因不明の炎症性腸疾患で、慢性的に、寛解(症状が良くなる)と再燃(悪くなる)を繰り返し、病状が進行していく病態です。

持田製薬 クローン病を知るための情報サイト

ゼンタコートは寛解導入目的で使用します。症状や炎症を和らげるのが処方目的です。もちろん、ペンタサも寛解導入で用います。

違いは維持療法の可否です!

ゼンタコートは維持療法に使用できません。ステロイドは寛解後の状態を保つ効果はなく、長期使用は副作用の懸念があるからです。一方で、ペンタサは寛解導入後、症状の維持目的でも使用できます。

IBD治療における副腎皮質ステロイドの有用性・使用上の注意点は?

・副腎皮質ステロイドは強力な抗炎症作用を有し、UCおよびCDの寛解導入に有用である

・副腎皮質ステロイドに寛解維持効果はなく、長期投与による副作用もあり、寛解維持に有用ではない

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020
令和5年度クローン病治療指針(内科)

②重症度

ゼンタコートは軽症から中等症のクローン病治療に用います。ここは共通点、ペンタサも同様です。

令和5年度クローン病治療指針(内科)

③作用部位

ゼンタコートとペンタサは作用部位に違いがあります。

先述したように、ゼンタコートは腸溶性・徐放性顆粒を充填したカプセルで、回腸から上行結腸にかけて薬剤が放出される製剤設計です。

ゼンタコートカプセル インタビューフォーム

逆にいうと、回腸より上部、上行結腸より下部の病変には効果が期待できません。臨床試験において直腸又は肛門のいずれかに病変を有する患者は除外されています。

(重要な基本的注意)

本剤の回腸及び上行結腸以外の病変に対する有効性は確立していない

ゼンタコートカプセル 

一方で、ペンタサは広範囲に効果が期待できます。小腸から大腸にかけて有効成分が放出される仕組みだからです。エチルセルロースによる徐放化はゼンタコートと共通ですが、ペンタサの方が作用部位が広いようですね。

メサラジンをエチルセルロースでコーティングした顆粒を錠剤又は顆粒剤に製剤化したものであり、小腸から大腸までの腸管全域において顆粒からメサラジンが放出されるよう製剤設計されている。

ペンタサ錠 インタビューフォーム

クローン病では病期、重症度、作用部位にあわせて選択する薬剤が違って、ゼンタコートは寛解導入、軽症から中等症、回腸、上行結腸に限局した病態に使える薬である点は押さえておきましょう

参考までに:有効性について

ゼンタコートはメサラジン(ペンタサ)と有効性が非劣性という結果です。

国内第3相臨床試験

  • 対象…主要病変が回腸から回盲部及び上行結腸又はそのいずれかに存在する軽症から中等症の国内の活動期クローン病患者112例
  • 方法…ゼンタコート9mg×1を8週間投与 [2週間の漸減期間あり、6mg(1週間)→プラセボ(1週間)]
  • 比較…メサラジン1000mg×3を8週間投与

結果は以下のとおり

  • 主要評価項目…30.4% vs 25.0%
    ※投与8週後の寛解率(CDAIスコア※≦150の患者の割合)

軽症から中等症の活動期クローン病患者において、投与8週後の寛解率はゼンタコートとメサラジンで非劣性でした。

ゼンタコートカプセル インタビューフォーム

ゼンタコートの相互作用

最後に5つ目のポイント、相互作用について。

ゼンタコートCYP3A4で代謝されます

下記のCYP3A4を基質とする薬剤や食物との併用には注意が必要です。

  • イトラコナゾール等
  • グレープフルーツ、グレープフルーツジュース

ゼンタコートカプセル 電子添文より

電子添文には上記2種類が書いてありますが、クラリスロマイシンや一部のHIV薬などCYP3A4の基質になる代表薬にも注意が必要だと思います。

ゼンタコート:Q&A

ゼンタコートは寛解導入のために使用します。

では、症状が良くなったら、いきなり中止しても良いのか?

テーパリング(漸減)が必要になります。離脱症状を防ぐためです。

(重要な基本的注意)

本剤を長期間投与した場合に、クッシング様症状や副腎皮質機能抑制等の全身作用があらわれることがあるため、漫然と投与せず、本剤を中止する場合には徐々に減量すること

ゼンタコートカプセル 電子添文

例えば9mg→6mg→3mgというふうに症状を見ながら減量していくかたちだと思います。

まとめ

今回は経口ステロイド薬ゼンタコートカプセルの特徴について解説しました。

本記事のポイント

  1. 有効成分
    ブデソニドは様々な疾患に利用されている
    (クローン病、潰瘍性大腸炎、気管支喘息、COPD等)
  2. 成分の特性
    バイオアベイラビリティが10〜20%と低く、全身性の副作用が少ないのがメリット!
  3. 製剤の特性
    病変部位に届く前に吸収されて無効化されない製剤設計。腸溶性、徐放性の顆粒で回腸から上行結腸にかけて放出される。
  4. 臨床の位置付け
    軽症〜中等症のクローン病治療、寛解導入目的で使用
    有効性はメサラジンと非劣性
  5. 相互作用
    併用注意あり…CYP3A4阻害薬、グレープフルーツ(ジュースも)

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