ザビセフタとザバクサの違い

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今回のテーマは

ザビセフタとザバクサの違い!

どちらも、

セファロスポリン系抗菌薬」に「βラクタマーゼ阻害剤

を配合した抗菌薬です。特に最近話題になっている薬剤耐性を示すグラム陰性桿菌による感染症に使用します。

ザビセフタの特徴は何か?
類似薬ザバクサと何が違うのか?
気になりますよね。

今回は、ザビセフタとザバクサの違いについて調べたので共有したいと思います。

目次

ザビセフタとザバクサの比較表

まずは基本情報の比較から。

ザビセフタザバクサ
販売開始年月2024年11月2008年10月
一般名アビバクタム/セフタジジムタゾバクタム/セフトロザン
略号AVI/CAZTAZ/CTLZ
規格ザビセフタ配合点滴静注1.5g
(AVI0.5g・CAZ2g)
ザバクサ配合点滴静注1.5g
(TAZ0.5g・CTLZ1g)
適応菌種大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、インフルエンザ菌、緑膿菌レンサ球菌属、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、インフルエンザ菌、緑膿菌
適応①敗血症、肺炎、膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍①膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍
②敗血症、肺炎
投与方法
1回2.5gを1日3回
※腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍ではMNZ併用

1回1.5gを1日3回
※腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍ではMNZ併用


1回3gを1日3回
腎機能障害時の投与要減量要減量
貯法室温2~8℃
ザビセフタ配合点滴静注用、ザバクサ配合点滴静注用、電子添文より作成

まずは共通点を確認しておきます。

大きく5つです

ザビセフタとザバクサの共通点
  1. 臨床の位置付け
  2. 適応症
  3. 抗菌スペクトル
  4. 腎機能に応じた投与設計
  5. PK-PDパラメータ
共通点
臨床の位置付け

ザビセフタとザバクサは臨床の位置付けがほぼ同じです。

主に、薬剤耐性を示すグラム陰性桿菌による感染症治療に用います。

具体的には、

  • βラクタマーゼ産生菌
  • 薬剤耐性緑膿菌

等をターゲットに使う薬剤です。細菌における耐性機序の1つである「βラクタマーゼによる抗菌薬の分解(失活)」に対して、βラクタマーゼ阻害剤(アビバクタムとタゾバクタム)を配合し、抗菌活性の維持(セフタジジムやセフトロザンの分解を防ぐ)を図っています。

カルバペネム系薬に対する耐性菌が問題になっている昨今において、ザビセフタとザバクサはカルバペネム系薬の温存に寄与できる薬剤です。

βラクタマーゼ阻害薬の一覧(5種類)
種類一般名商品名
クラブラン酸(CVA)クラブラン酸/アモキシシリン(CVA/AMPC)オーグメンチン、クラバモックス
スルバクタム(SBT)①スルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC)
②スルバクタム/セフォペラゾン(SBT/CPZ)
①ユナシン
②スルペラゾン
タゾバクタム(TAZ)①タゾバクタム/ピペラシリン(TAZ/PIPC)
タゾバクタム/セフトロザン(TAZ/CTLZ)
①ゾシン
②ザバクサ
レレバクタム
(REL)
レレバクタム/イミペネム/シラスタチン
(REL/IPM/CS)
レカルブリオ
アビバクタム
(AVI)
アビバクタム/セフタジジム
(AVI/CAZ)
ザビセフタ
共通点
適応症

ザビセフタとザバクサは適応が同じです。

薬剤耐性菌(疑い)による

敗血症、肺炎、膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍

「βラクタマーゼの関与が疑われる薬剤耐性菌」による上記感染症に用います。「薬剤耐性菌」がポイントですね。

適正使用のために、細菌培養の結果や臨床試験の対象者を考慮して、投与の要否を慎重に検討する薬剤である点は押さえておきましょう。

効能又は効果に関連する注意

〈効能共通〉5.1 本剤の使用に際しては、β-ラクタマーゼの関与が考えられ、本剤に感性の原因菌による感染症である場合に投与すること。

〈肺炎〉5.2 臨床試験の対象が院内肺炎患者であったことを踏まえ、適切な患者に投与すること。(ザバクサ)

5.2 臨床試験の対象が院内肺炎(人工呼吸器関連肺炎を含む)患者であったことを踏まえ、適切な患者に投与すること。(ザビセフタ)

ザビセフタ配合点滴静注用、ザバクサ配合点滴静注用、電子添文
共通点
抗菌スペクトル

ザビセフタとザバクサは類似の抗菌スペクトルを有します。大まかな理解として、一部のグラム陽性球菌と腸内細菌や緑膿菌等のグラム陰性桿菌(広域)に抗菌活性を示す薬剤です。

一方で、嫌気性菌に対する活性が不十分であり、腹膜炎や腹腔内膿瘍等、嫌気性菌が関与しうる感染症にはメトロニダゾール注(MNZ)を併用しなければなりません。

グラム陽性球菌グラム陰性桿菌グラム陰性桿菌嫌気性菌
耐性菌(βラクタマーゼ産生)
CAZ一部
AVI/CAZ
TAZ/CTLZ
一部
上記+MNZ一部

βラクタマーゼ阻害剤の配合により、セフタジジムやセフトロザンでは抗菌活性が期待できなかったグラム陰性桿菌(ESBL産生菌等の薬剤耐性菌)に抗菌スペクトルが広がったという理解ですね。

共通点
腎機能に応じた投与設計

ザビセフタとザバクサは腎機能に応じた投与設計が欠かせません。腎排泄型の薬剤であり、排泄遅延に伴い副作用のリスクが高まるからです。

ザビセフタ

日本人健康成人男性7例にアビバクタム0.5gとセフタジジム2gを併用して1日3回反復点滴静注したとき、最終投与開始後24時間までの尿中未変化体の排泄率(幾何平均値)はアビバクタムで95%、セフタジジムで96%であった

ザビセフタ配合点滴静注用 インタビューフォーム

ザバクサ

本剤1.5gを健康成人男性に単回静脈内投与したときの排泄率(fe)の幾何平均はタゾバクタムで 58.7%〜87.1%、セフトロザン74.1%〜106%であった

ザバクサ配合点滴静注用、インタビューフォーム
ザビセフタの腎機能別投与量
Ccr(mL/min)投与量
51以上1回2.5g × 1日3回
31~501回1.25g × 1日3回
16〜301回0.9375g × 1日2回
6〜151回0.9375g × 1日1回
血液透析の末期腎不全
(<6)
1回0.9375gを2日に1回
ザビセフタ配合点滴静注用、インタビューフォームより作成

ザビセフタはCcr50を超えると通常量、下回ると減量を考慮するかたちです。腎機能に合わせて、「1回量の減量」や「投与間隔の延長」等により用量調節を行います。

ザバクサの腎機能別投与量
Ccr(mL/min)敗血症、肺炎腹腔内感染、尿路感染
51以上3g × 31.5g × 3
30〜501.5g × 30.75g × 3
15〜290.75g × 30.375g × 3
15<推奨量データなし推奨量データなし
血液透析0.45g × 3
(初回は2.25g)
※透析日は透析終了後に
0.150g × 3
(初回は0.75g)
※透析日は透析終了後に
ザバクサ配合点滴静注 電子添文より作成

Ccr50を超えていたら通常量、以下なら減量を考慮します。この点、ザビセフタと同じですね。一方で、用量調節は「1回量の減量」のみです。

参考までに、腹腔内感染症の場合に併用するメトロニダゾールはCcr15以上あれば減量は必要ありませんが、Ccr15未満の場合には減量を考慮します。

500mgを8〜12時間毎(活性代謝物が蓄積するかもしれないが血液透析で速やかに除去されるため透析後に補充)

薬剤性腎障害診療ガイドライン2016
共通点
PK-PDパラメータ

ザビセフタとザバクサのPK-PDパラメータはtime above MICです。1日投与量が同じなら複数回に分けて投与した方が高い有効性が得られます。いわゆる時間依存性の抗菌薬ですね。MICを超えた濃度を維持する必要があり、両薬剤ともに1日3回(通常量)の投与回数が設定されています。

ザビセフタ

セフタジジムを含むセファロスポリン系抗菌薬のPK/PD指標は%fT>MIC、そのターゲット値は50%以上とされていることから

ザビセフタ配合点滴静注用、インタビューフォーム

ザバクサ

他のセファロスポリン系抗菌薬と同じく、セフトロザンの in vivo での有効性と最も関連する PK 指標は、血漿中薬物濃度が MIC を超えている時間の割合(%T>MICであった。

ザバクサ配合点滴静注用、インタビューフォーム

ここからが本題!ザビセフタとザバクサの違いについて。

大きく4つです。

  1. 有効成分
  2. 投与方法
  3. 溶解方法
  4. 保管

順に見ていきましょう。

ザビセフタとザバクサの有効成分

相違点①

ザビセフタザバクサ
セファロスポリン薬セフタジジム
(CAZ)
セフトロザン
(CTLZ)
βラクタマーゼ阻害剤アビバクタム
(AVI)
タゾバクタム
(TAZ)

セフタジジムとセフトロザンの違い

どちらもセファロスポリン系薬に分類されており、抗菌スペクトルも大きく変わりません。違いは何か?インタビューフォームによると、「ペニシリン結合蛋白質への親和性」「AmpCに対する耐性」に違いがあるとのことです。緑膿菌にはセフトロザン(ザバクサの成分)の方が、大腸菌にはセフタジジム(ザビセフタの成分)の方が、ペニシリン結合タンパク質への親和性が高いとされています。

・セフトロザンは強力なペニシリン結合白質(PBP)阻害剤であり、Pseudomonas aeruginosa(P.aerginosa)の PBP1b、PBP1c、PBP3に対してセフタジジムより高い親和性を示した。

・Escherichia coli(E. coli)のPBP に対する親和性では、セフトロザンはセフタジジムと比べてやや低い傾向がみられた。

ザバクサ インタビューフォーム

とはいえ、この違いを持って使い分けることは基本的にないと思います。

一方、セフトロザンはAmpCに安定であるという特徴を有します。AmpCはAmblerクラスCに分類されるβラクタマーゼの1種です。エンテロバクターやシトロバクター、セラチアなどがコード遺伝子を持っており、抗菌薬の投与中に産生量が増加して、セフタジジムも含め第3世代までのセファロスポリン系薬を分解します。ここはセフトロザンに優位性がありますね。

といっても、AmpCの産生を疑うケースにおいて、ザビセフタはザバクサに劣るともいえません。なぜなら、後述するアビバクタムにAmpCの阻害活性があるからです。

セフトロザンの特性は、

緑膿菌に対する抗菌力の強さです。緑膿菌はさまざまなメカニズム(下記)で抗菌薬に耐性を示します。セフトロザンはポーリンの欠損、AmpC亢進、薬剤排出タンパク質のいずれに対しても安定であることが示されています。(ザバクサ、インタビューフォーム)

  • 外膜透過性低下…ポーリン孔が減少し、抗菌薬が作用点に到達できない
  • 抗菌薬の不活化亢進…βラクタマーゼ(AmpC、カルバペネマーゼ等)を産生して、抗菌薬を無力化させる
  • 排出ポンプの機能亢進…ペプチドグリカンに到達する前に抗菌薬が菌外へ排出される
  • ペニシリン結合蛋白(PBP)の変異…抗菌薬が作用点に結合できない

アビバクタムとタゾバクタムの違い

:阻害活性あり

βラクタマーゼアビバクタムタゾバクタム
ESBL
(クラスA)
メタロβラクタマーゼ
(クラスB)
AmpC
(クラスC)
KPC
(クラスA)
OXAカルバペネマーゼ
(クラスD)
ザビセフタ配合点滴静注用、ザバクサ配合点滴静注用、インタビューフォーム、海外添付文書より作成

どちらもセリン-βラクタマーゼ阻害剤です。共通点は、AmblerクラスB(亜鉛型)のβラクタマーゼには阻害活性を示さないこと。メタロβラクタマーゼはカルバペネム系薬を含め広範囲のβラクタム薬を分解します。AmblerクラスA.C.Dはセリン型です。タゾバクタムは主にAmblerクラスAのβ-ラクタマーゼを阻害します。中でもCTX-M、SHV、TEMなどの基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)に対する親和性が高いのが特徴です。

タゾバクタムは多くのAmblerクラスAのβ-ラクタマーゼ(CTX-M、SHV、TEM)に対して阻害作用を示すことによりセフトロザンが加水分解されることを防ぐ。セフトロザンはセファロスポリン系に属する抗菌薬で、細菌のペニシリン結合蛋白質に作用し、細胞壁合成を阻害して殺菌作用を示す。本剤は、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼや他のタイプのβ-ラクタマーゼ(TEM、SHV、CTX-M、OXA)産生の腸内細菌科細菌に対して抗菌活性を示し、また、染色体性AmpC産生、菌体外膜蛋白質のポーリン(OprD)欠損あるいは排出ポンプ(MexXY、MexAB)の亢進した緑膿菌に対しても抗菌活性を示す

ザバクサ配合点滴静注用、電子添文

一方で、アビバクタムは、ESBLに加えてKPC(どちらもAmblerクラスA)、それからクラスCのAmpCとクラスDのOXAにも広く阻害活性が認められます。ここは大きな違いですね。セフタジジムは新規のβラクタマーゼ阻害剤アビバクタムを配合することで、AmpC産生菌にも有効性が期待できます。

ザビセフタ配合点滴静注用 インタビューフォーム
参考までに

①βラクタマーゼは大きく4つのグループ(Ambler分類)に分かれます。クラスAとC、Dは酵素の活性にセリンが、クラスBは亜鉛が必要です。クラスAは主にペニシリンを、クラスCはセファロスポリン、クラスDはオキサシリンを分解します。有名なESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)はクラスAに属し、ペニシリンに加えて、第三世代セファロスポリン、モノバクタムまで分解する酵素です。AmpC型βラクタマーゼはクラスCに属します(第三世代セファロスポリンまで分解、第四世代は分解されない)。一方で、クラスBはメタロβラクタマーゼと呼ばれ、カルバペネム系薬を含むほぼすべてのβラクタム薬を分解する性質を有します。

Ambler分類
β-ラクタマーゼセリン-β-ラクタマーゼクラスA(ペニシリナーゼ)
クラスC(セファロスポリナーゼ)
クラスD(オキサシリナーゼ)
亜鉛(メタロ)-βラクタマーゼクラスB(カルバペネマーゼ)

②βラクタマーゼ阻害剤の種類によって阻害活性に違いがあります。クラブラン酸とスルバクタム、タゾバクタムは主に、クラスAの阻害活性が強いのが特徴です。一方で、レレバクタムは新規のβラクタマーゼ阻害剤。クラスAとクラスCのβラクタマーゼに強い阻害活性を示します。イミペネム/シラスタチンに配合された製剤(商品名レカルブリオ)はカルバペネム系耐性のグラム陰性桿菌による各種感染症に使用する抗菌薬です。

レカルブリオ配合点滴静注用 審議結果報告書より

ザビセフタはアビバクタムの配合により、セフタジジムの抗菌活性(ESBL、AmpC、KPC、OXAによる分解を防ぐ)を維持、ザバクサはタゾバクタムの配合により、セフトロザンの抗菌活性(主にESBLによる分解を防ぐ)を維持するという理解ですね

ザビセフタとザバクサの投与方法

相違点②

ザビセフタザバクサ
投与方法適応によらず
一律
適応によって
2パターン
投与回数1日3回
腎機能によって1日1〜2回、隔日投与
1日3回
腎機能障害時の用量調節1回量を減らす
投与間隔を伸ばす
1回量を減らす
透析患者の初回ローディングあり
投与速度2時間1時間
ザビセフタ配合点滴静注用、ザバクサ配合点滴静注用、電子添文より作成

相違点2つ目、投与方法の違いについて。ポイントは3つです。

ザビセフタの投与方法は適応に関係なく一律です。通常1回2.5gを1日3回投与します。一方で、ザバクサは適応によって通常量(1回1.5g・1日3回)と高用量(1回3g・1日3回:肺炎と敗血症)の設定があります。

なぜ、なぜザバクサは高用量の設定があるのか?肺炎の場合は組織移行性を考慮したためです。肺上皮被覆液中AUCは血漿中AUCに比べて半分程度(CTLZ0.61、TAZ0.63)であり、1回量を2倍として組織内濃度の向上を図っています。敗血症は短期間のうちに重症化しやすく、早期に高用量を投与する必要性を考慮しています。(インタビュフォームより)

ザビセフタは腎機能によって1回投与量と投与間隔を調節します1回量は2段階(半量:1.25g又は3/8量:0.9375g)、投与間隔は3パターン(1日2回、1日1回、2日に1回)です。

ザビセフタの腎機能別投与量
Ccr(mL/min)1回量投与回数
51以上2.5g 1日3回
31~501.25g1日3回
16〜300.9375g1日2回
6〜150.9375g1日1回
血液透析の末期腎不全
(<6)
0.9375g2日に1回
※透析日は透析終了後に
ザビセフタ配合点滴静注用、インタビューフォームより作成

一方で、ザバクサの投与回数は1日3回の固定です腎機能によって1回投与量を調節します。1回量は6段階です。

ザバクサを透析患者さんに投与する場合、初回のみローディングの設定があります。

ザバクサの腎機能別投与量
Ccr(mL/min)1回量
(敗血症、肺炎)
1回量
(腹腔内感染、尿路感染)
投与回数
50>3g1.5g1日3回
30〜501.5g0.75g1日3回
15〜290.75g0.375g1日3回
15<推奨量データなし推奨量データなし
血液透析0.45g
(初回は2.25g)
※透析日は透析終了後に
0.150g
(初回は0.75g)
※透析日は透析終了後に
1日3回
ザバクサ配合点滴静注 電子添文より作成

ザビセフタの投与速度は2時間です。以下のように、PK-PD解析の結果、投与方法と速度を決定しています。2時間かけて投与する注射用抗菌薬は珍しいですね。一方で、ザバクサの投与速度は1時間です。これはよくあるパターンですね。

CAZのPK/PD目標値 
・50%fT>MIC8mg/L
1回2gを8時間ごとに2時間かけて投与

CTLZのPK/PD目標値 
・30%T>MIC8mg/L
1回1.5gを8時間ごとに1時間かけて投与

適応による用量設定、投与速度、腎機能障害時の投与間隔に違いがあります。ザビセフタは2時間投与(ザバクサは1時間)である点は忘れないように気をつけましょう。

ザビセフタとザバクサの溶解方法

相違点③

ザビセフタザバクサ
溶解液注射用水のみ生理食塩液
注射用水
溶解量10mL10mL
希釈液生理食塩水、5%ブドウ糖液、乳酸リンゲル液生理食塩液、5%ブドウ糖液
希釈後の液量濃度による
50〜250mL/1瓶
25〜125mL/0.5瓶
19~93mL/0.375瓶
固定
100mL
調製後の使用期限薬液濃度をセフタジジムとして8mg/mLに調製後、25℃で6時間まで、また、2~8℃で12時間まで保存した後、25℃で4時間まで安定性が確認されている。セフタジジムとして8mg/mLを超え、40mg/mL以下に調製後は、25℃で4時間まで安定性が確認されている。調製後は25℃以下では24時間以内、2~8℃では4日以内に使用し、凍結させないこと。
ザビセフタ配合点滴静注用、ザバクサ配合点滴静注用、電子添文より作成

相違点3つ目、溶解方法の違いについて。ポイントは4つあります。

ザビセフタの溶解液は注射用水です

こんな感じのオーダーになります!
・ザビセフタ1瓶+注射用水(溶解用)+生食100mL(希釈用)

ここは注意ですね。通常、注射用の抗菌薬は生食で溶解することが多いからです。溶解用の注射用水を忘れずにオーダーする必要があります。残念なことに、溶解操作が簡便な生食キット製剤も使用できません。一方で、ザバクサの溶解液は注射用水に加えて生理食塩液を選択できます。汎用の注射抗菌薬と同様に、「薬剤+希釈液」のオーダーになります。生食キット製剤の使用も可能(全量使用する場合)です。溶解操作はザバクサの方が簡便ですね。

ザビセフタは希釈濃度(8〜40mg/mL)によって液量を選択します

ザビセフタ使用量希釈後濃度
40mg/mL
希釈後濃度
20mg/mL
希釈後濃度
8mg/mL
2.5g50mL100mL250mL
1.25g25mL50mL125mL
0.975g19mL38mL93mL
ザビセフタ配合静注用インタビューフォーム

必要な水分量に合わせて、液量の調整が可能です。例えば、心不全の方で水分負荷を抑えたい場合は1瓶あたり50mL(40mg/mL)の希釈が可能です。水分を負荷したい場合は1瓶あたり250mL(8mg/mL)に希釈します。一方で、ザバクサの液量は100mLと固定です。減量・増量の可否はインタビューフォームやメーカーQ&Aに記載がありません。個別対応を検討するかたちですね。

ザビセフタは乳酸リンゲル液で希釈できます

・ザビセフタ1瓶+注射用水(溶解用)+乳酸リンゲル液(希釈用)

ここはメリットといえるのかよくわかりません。希釈用量に制限があり、1瓶なら全量50〜250mLに希釈するわけで、汎用の500mL製剤は半分以上廃棄しなければなりません。250mLの製剤があれば、手間は省けますが、腎機能が悪く減量する場合には、不要な分量を抜き取る手間が発生します。一方で、ザバクサの希釈液は生食又はブドウ糖5%です。乳酸リンゲル液による希釈はできるのか?配合変化のデータが限られており、勧められていません。

ザビセフタは希釈濃度によって使用期限が変わります

1瓶あたりの希釈量セフタジジム濃度25℃における
安定性
2〜8℃における
安定性
50mL40mg/mL4時間
100mL20mg/mL4時間
250mL8mg/mL6時間12時間
+25℃で4時間

常温の場合、1瓶あたりの希釈量が50〜249mLでは4時間、250mLの場合は6時間以内です。2時間の投与速度を考えると、直前に溶解・希釈を行い、速やかに投与を始めなければなりません。一方で、ザバクサは常温なら24時間以内、冷所なら4日間まで安定性が認められています。抗菌薬は投与直前の調製が基本ですが、急な指示変更も少なくありません。調製後の使用期限が長いザバクサは廃棄のリスクも減らせますね。

また、調製後の安定性は腎機能障害時の投与量調節にも関係し、ザバクサは調製に伴う廃棄ロスも減らせます。クリーンベンチで無菌調製後に冷所保存を行えば、1バイアルを分割して、2回分以上を準備できるからです。一方で、ザビセフタは常温における調製後の使用期限が短く、1バイアルの分割使用はできません。希釈量250mLで冷所保存を行えば、2回分の準備が可能となるケースもありますが…。

ザビセフタの溶解・希釈方法
STEP
溶解液)注射用水を準備

注射器で10mLを測りとり、バイアルに注入する

STEP
溶解後、必要量を抜き取る
ザビセフタ使用量抜き取る量
2.5g全量
(約12mL)
1.25g6mL
0.975g4.5mL
ザバクサ配合静注用インタビューフォーム
STEP
希釈液)生理食塩水、5%ブドウ糖液、乳酸リンゲル液を準備

抜き取った薬液(必要量)を希釈液に注入する

ザビセフタ使用量
(抜き取り量)
希釈後の液量
2.5g
(12mL)
50〜250mL
1.25g
(6mL)
25~125mL
0.975g
(4.5mL)
19~93mL
ザビセフタ配合静注用インタビューフォーム
ザバクサの溶解・希釈方法
STEP
溶解液)生理食塩液または注射用水を準備

注射器で10mLを測りとり、バイアルに注入する(全量11.4mL)

STEP
溶解後、必要量を抜き取る
ザバクサ配合静注用インタビューフォーム
STEP
希釈液)生理食塩液または5%ブドウ糖液100mLを準備

抜き取った薬液(必要量)を希釈液に注入する

ザビセフタは注射用水による溶解、希釈濃度ごとの液量設定等、取り扱いが煩雑ですね。調製後の使用期限が短い点も押さえておきましょう。

ザビセフタとザバクサの保管方法

相違点④

ザビセフタザバクサ
室温保存冷所保存
13028

相違点4つ目。ザビセフタは室温保存、対してザバクサは冷所保存です。この点、管理上はもちろん、医療安全においてもザビセフタに優位性があります。冷所薬は使用直前まで病棟の冷蔵庫で保管するケースがほとんどであり、誤って室温に放置したり、冷蔵庫にあることに気づかず投与漏れとなる可能性があるからです。病院ではインシデント事例は多くないにせよ、コンスタントに発生しています。あと、冷蔵庫故障による廃棄リスクもありますよね。

ザビセフタは室温保存であり、医薬品管理や医療安全の観点からザバクサよりも優れています。

まとめ

今回は薬剤耐性菌の治療薬、「ザビセフタ」と「ザバクサ」の違いについてまとめました。

本記事のポイント

ザビセフタザバクサ
セファロスポリンセフタジジム(CAZ)
AmpCで分解
セフトロザン(CTLZ)
AmpCに安定
βラクタマーゼ阻害剤アビバクタム(AVI)
広くESBL、AmpC、KPC等
タゾバクタム(TAZ)
主にESBL
投与方法適応によって変わらず
1日3回
2時間かけて
肺炎と敗血症は高用量
1日3回
1時間かけて
腎機能障害時の調節1回量
投与間隔
1回量
透析患者初回ローディング
溶解液注射用水のみ注射用水と生食
希釈量19〜250mL
濃度による
100mL
固定
保管室温保存冷所保存

違いは意外とありましたね!
私は「βラクタマーゼ阻害薬」の特性が興味深かったです。あと、記事を書きながら薬剤耐性菌の出現を防ぐことの重要性も改めて感じました。

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