今回のテーマはスピジア点鼻液!ジアゼパムを有効成分とするてんかん重積状態の治療薬です。従来の注射薬はもちろん、口腔用液に比べても簡便に投与できる点が注目されています。どのような特徴があるのか?同効薬ブコラム口腔用液と比較しなから、スピジア点鼻液の特徴をまとめたので解説します。
スピジアとブコラムの比較表
| スピジア点鼻液 | ブコラム口腔用液 | |
|---|---|---|
| 販売 | 2025年12月 | 2020年12月 |
| 一般名 | ジアゼパム | ミダゾラム |
| 規格 | 5mg・7.5mg・10mg | 2.5mg・5mg・7.5mg・10mg |
| 適応 | てんかん重積状態 | てんかん重積状態 |
| 投与方法 | 成人及び2歳以上の小児 5~20mgを1回鼻腔内に投与する 効果不十分な場合には4時間以上あけて2回目の投与ができる。ただし、6歳未満の小児の1回量は15mgを超えないこと | 修正在胎52週以上1歳未満 ・1回2.5mg 1歳以上5歳未満 ・1回5mg 5歳以上10歳未満 ・1回7.5mg 10歳以上18歳未満の患者 ・1回10mg 頬粘膜に投与する |
| 禁忌 | ①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 ②急性閉塞隅角緑内障の患者 ③重症筋無力症の患者 ④リトナビル(HIVプロテアーゼ阻害剤)、ニルマトレルビル・リトナビルを投与中の患者 | ①重症筋無力症を有する患者 ②本剤の成分に対し過敏症の既往を有する患者 ③HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビルを含有する製剤、ネルフィナビルメシル酸塩、アタザナビル硫酸塩、ホスアンプレナビルカルシウム水和物、ダルナビルを含有する製剤)、エファビレンツ及びコビシスタットを含有する製剤を投与中の患者 ④急性閉塞隅角緑内障の患者 ⑤ショックの患者、昏睡の患者、バイタルサインの抑制がみられる急性アルコール中毒の患者 |
| 保管 | 室温 | 室温 |
| 薬価 | 5mg:8,366.5円 7.5mg:9,337.6円 10mg:10,120円 | 2.5mg:1,688.7円 5mg:2,966.7円 7.5mg:2,750.0円 10mg:3,474.6円 |
どちらも適応は①てんかん重積状態です。②在宅において症状発現時に使用する③レスキュー薬として用います。従来薬のダイアップ坐薬(一般名、ジアゼパム)も同じような位置付けですね。参考までに、医療機関においては主に以下の注射薬が用いられます。
てんかん重積状態に使用する注射薬
| 分類 | 一般名 | 商品名 |
|---|---|---|
| GABAA受容体刺激薬 | ミダゾラム | ミダフレッサ静注0.1% |
| GABAA受容体刺激薬 | フェノバルビタール | ノーベルバール静注用250mg |
| 電位依存性Naチャネル遮断薬 | ホスフェニトイン | ホストイン静注750mg |
| SV2A(Synaptic Vesicle Protein 2A)阻害薬 | レベチラセタム | イーケプラ点滴静注500mg |
| GABAA受容体刺激薬 | ロラぜパム | ロラピタ静注2mg |
ここからはスピジアとブコラムの違いについて見ていきましょう。大きく6つです。
- 成分
- 剤型
- 対象年齢
- 使用方法
- 救急搬送の目安
- 相互作用
スピジアとブコラムの成分
| スピジア点鼻液 | ブコラム口腔用液 | |
|---|---|---|
| 有効成分 | ジアゼパム | ミダゾラム |
| 添加物 | ベンジルアルコール、無水エタノール、ドデシルマルトシド、トコフェロール | pH調節剤 |
| バイオアベイラビリティ(BA) | 97% | 74.5% |
| 同成分薬 | セルシン注射液・ホリゾン注射液 ホリゾン錠・セルシン錠 ダイアップ坐剤 | ドルミカム注射液 ドルミカムシロップ ミダフレッサ静注 |

スピジアの有効成分はジアゼパムです。吸収促進剤ドデシルマルトシドにより、吸収率が改善されています。トコフェロールは可溶化剤です。同成分薬としてセルシンやホリゾン(注射薬・内服薬)、ダイアップ(坐剤)等があります。一方で、ブコラムの有効成分はミダゾラムです。ミダフレッサはてんかん重積のみに適応を有します。2025年11月に発売されたドルミカムシロップは小児の麻酔に用いる製剤です。
スピジアとブコラムの剤型
| スピジア点鼻液 | ブコラム口腔用液 | |
|---|---|---|
| 一般名 | ジアゼパム | ミダゾラム |
| 製剤写真 | ![]() ![]() | ![]() ![]() |
| 剤型 | 点鼻 | 用液 |
| 投与経路 | 鼻腔内 | 頬粘膜 |



スピジアはスプレー式の点鼻液です。一方でブコラムは薬液が充填されたシリンジタイプです。歯ぐきと頬の間に注入します。どちらも従来の注射薬に比べて簡便に投与できますが、嘔吐や口腔内分泌過多等のケースではスピジアの方が向いていると考えられます。
スピジアとブコラムの対象年齢
| スピジア点鼻液 | ブコラム口腔用液 | |
|---|---|---|
| 一般名 | ジアゼパム | ミダゾラム |
| 成人 | ||
| 小児 | 2歳以上 | 52週以上 |



スピジアは小児と成人にも使用できます。一方で、ブコラムの対象は小児のみです。18歳以上の方に対する有効性と安全性は確認されていません。ここも大きな違いですね。
スピジアとブコラムは年齢によって在宅使用の可否が異なります。
| スピジア点鼻液 | ブコラム口腔用液 | |
|---|---|---|
| 在宅可能 | 6歳以上 | 7ヵ月以上18歳未満 |
| 不可 | 2〜5歳 | 3〜6ヵ月 |
2歳以上6歳未満の小児に投与する場合は、患者の状態を観察することができ、必要時に救急蘇生のための医療機器、薬剤等の使用が可能な医師の監視下においてのみ行うこと(スピジア点鼻液、電子添文)
3~6ヵ月の乳幼児に本剤を投与する場合は、患者の状態を観察することができ、必要時に救急蘇生のための医療機器、薬剤等の使用が可能な医師の監督下においてのみ行うこと(ブコラム口腔用液、電子添文)
スピジアとブコラムの使用方法
| スピジア点鼻液 | ブコラム口腔用液 | |
|---|---|---|
| 一般名 | ジアゼパム | ミダゾラム |
| 剤型 | 点鼻 | 用液 |
| 規格 | 3規格 5mg/7.5mg/10mg | 4規格 2.5mg/5mg/7.5mg/10mg |
| 投与量 | 年齢と体重で判断 4パターン(5/10/15/20mg) 6歳未満の小児の1回量は15mgを超えないこと | 年齢で判断 4パターン(2.5/5/7.5/10mg) |
| 追加投与 | 可能 4時間空けて | |
| 医療機関の受診 | 必要に応じて | 原則必要 |
①スピジアの投与量は年齢と体重により求めます。海外のジアゼパム直腸ゲルと相対的バイオアベイラビリティーがほぼ同じであり、臨床試験において同一の用量が設定されたからです。例えば、12歳で40kgの場合には1回に10mgを片方の鼻に噴霧します。一方で、ブコラムは年齢区分別の固定用量です。在宅や緊急時に簡便かつ迅速な投与ができるように、欧州の承認用法・用量をもとに同等の用法用量を設定した経緯があります。
スピジアの年齢・体重区分別の投与量


ブコラムの年齢区分別の投与量


②スピジアは追加投与が可能です。1回目の投与後に、「再度発作が起きた場合」に、「4時間以上の間隔を空けて」2回目を投与できます。1回目投与で発作が改善しない時や再度の発作に対して4時間未満である時には追加投与せずに救急搬送を行わなければなりません。ここは医師と追加投与のタイミングについて打ち合わせが必要ですね。一方で、ブコラムは医療機関においてのみ追加投与が可能です。病院外において追加投与は認められておりません。
・本剤を追加投与(シリンジ2本目を投与)することにより、本剤の曝露量が増加する可能性がある。やむを得ず追加投与する際には、呼吸抑制及び血圧低下等のおそれがあるため、患者の状態を十分に観察し追加投与の可否を慎重に判断し、呼吸及び循環動態の連続的な観察ができる施設においてのみ用いること
ブコラム口腔用液 電子添文
③スピジアは3規格です。低用量(5mg、10mg)と高用量(15mg、20mg)で使用する製剤の個数が異なります。低用量は1個を片方の鼻に注入しますが、高用量の場合は、両方の鼻に1回ずつ、計2個噴霧するかたちです。一方でブコラムは4規格、それぞれの投与量に対応する規格が用意されています。基本的に、片方の頬粘膜に全量使用しますが、以下のケースでは両頬に半量ずつの投与も可能です。
本剤のシリンジ液剤の全量を片側の頬粘膜に緩徐に投与すること。体格の小さい患者や用量が多い場合は、必要に応じて両側の頬粘膜に半量ずつ投与すること。
ブコラム口腔用液 電子添文



スピジアは年齢と体重をもとに投与量が決まります。1回15mg以上の場合には2個必要です。症状再燃時に追加投与できる点はブコラム口腔用液との大きな違いですね。
スピジアとブコラムの救急搬送の目安
| スピジア点鼻液 | ブコラム口腔用液 | |
|---|---|---|
| 1回目投与 | 10分以内に発作が停止しない場合 浅表性呼吸や意識消失等が認められた場合 | 10分以内に発作が停止しない場合 薬剤を全量投与できなかった場合 浅表性呼吸や意識消失等が認められた場合 |
| 2回目投与 | 上記 +発作が再発した場合 | |
| 医療機関の受診 | 特に記載なし | 必要 |
ブコラム使用ガイドブック参照



基本的には救急搬送のタイミングは個別対応です。患者さんごとに主治医と相談の上決まります。参考までに、電子添文の比較によると、スピジアと異なりブコラムは投与後に全量注入できなかった時にも救急搬送が必要です。スピジアは追加投与後に再発した場合には救急搬送します。あと、ブコラムは原則、投与後に医療機関を受診しなければなりません。
スピジアとブコラムのCYP相互作用
| スピジア点鼻液 | ブコラム口腔用液 | |
|---|---|---|
| 併用禁忌 | リトナビル ニルマトレルビル・リトナビル | リトナビルを含有製剤 ネルフィナビルメシル酸塩 アタザナビル硫酸塩 ホスアンプレナビルカルシウム水和物 ダルナビルを含有する製剤 エファビレンツ及びコビシスタットの含有製剤 |
| 併用注意 | あり | あり |
| 代謝 | CYP2C19とCYP3A4 | 主にCYP3A4 |



スピジアとブコラムは代謝酵素に違いがあります。スピジアはCYP3A4に加えてCYP2C19関連の相互作用にも注意が必要です。
まとめ
今回はスピジア点鼻液の特徴について同効薬ブコラム口腔用液との違いに注目しながら解説しました。とにかく、点鼻薬であり簡便に投与できる点が強みですね。あと、成人の適応を有していることも大きく異なります。本記事が知識の整理にお役立ていただけたら幸いです。



