スキルアップ

薬剤師に求められる職能は?スペシャリスト or ジェネラリスト?

今の自分は、『スペシャリスト』なのか、それとも『ジェネラリスト』なのかを考えている人は少ないかも知れません。

「私はスペシャリスト薬剤師です」っていう人、きっといないですよね(*^_^*)

しかし、ビジネスでは自分の職能を表す言葉として使われています。

今回は【薬剤師に求められる職能】に注目。ジェネラリストとスペシャリスト、どちらを目指すべきなのかを考察しました。

特に、薬学生や新人薬剤師の方が目指す薬剤師像がクリアになればうれしいです。

薬剤師の職能には2つの方向性がある

薬剤師になって仕事をしていくうちに、いつしか分岐点にたどり着きます。

どちらに進もうか、以下の2つの分かれ道です。

  1. スペシャリスト薬剤師(Ph)
  2. ジェネラリスト薬剤師(Ph)

順番に見ていきますね。

スペシャリスト薬剤師(Ph)

そもそもスペシャリストとは?

ビジネスにおけるスペシャリストとは、仕事に関する特定の分野において専門的な知識と能力を身につけた人のことです。

新しい技術や価値を生み出す技術職や専門職に多く見られる職能ですね。例えば下記です。

  • エンジニア
  • デザイナー
  • ディレクター
  • 弁護士

ほかにもたくさんありますね。ではスペシャリストPhとは?

特定の分野に磨きをかけて、その道を極めようとしている人

たとえば、専門薬剤師や認定薬剤師など資格を武器に活躍している薬剤師ですね。

そもそも薬剤師は「薬のスペシャリスト」です。

すでに、専門職であるのに、さらに得意分野を身につけて薬物療法をリードしていく。高い専門性をさらに極めようと頑張っている薬剤師はスペシャリストPhといえますね。

専門性を目指している人はもちろんのこと、働く環境によってもスペシャルPhの要素は強くなります。

たとえば、がん治療や緩和、循環器、整形外科など特定の診療科病棟に配属されていたり、小児科や皮膚科医院など特定の診療科の門前薬局で働いていると、日常業務で特定の分野が強化されていく。

・意識的にまたは意識せずとも、高い専門性を発揮している薬剤師のことを、ここではスペシャルPhと定義します。

ジェネラリスト薬剤師(Ph)

そもそもジェネラリストとは?

ビジネスにおけるジェネラリストとは、仕事に関する広範囲の知識と経験をもった人のことです。

全体を見渡してマネージメントできる大企業の総合職や管理職、経営陣で多く見られる職能のことをいいます。例えば下記です。

  • プロデューサー
  • 映画監督
  • 役員

……などですね。では、ジェネラリストPhはどんな人?

広範囲にわたる分野の知識と経験を積んで活躍してる人

「わたし、こっちかも?」と思った人もいるのではないでしょうか?(^_^)

特定の分野にこだわらず、さまざまな領域に活躍の場を広げている薬剤師はジェネラリストPhといえるでしょう。

循環器科や消化器内科、外科、整形外科、脳神経外科などいろんな診療科を横断的に活動したり、総合病院の前やさまざまな診療科の薬を扱う薬局で働いていると、ジェネラリストPhの要素が養われていきます。

・特定の分野にこだわらず多方面、多系統の業務にあたってるような人を、ここではジェネラリストPhと定義しますね。

もちろん、スペシャリストPhとジェネラリストPhを明確に線引きすることは不可能なので、あくまでも個人的なイメージですよ。(*^_^*)

では、どちらを目指すべきか?

詰まるところ、専門性と総合力どちらを自分の強みとするのかーー?ということ。

・専門性を鍛えて頑張ってるスペシャリストPh、総合力を養ってがんばってるジェネラリストPh、大きく2つの方向性があるわけです。

さすがに、「私はスペシャリストPhオンリーです」という人はいませんよね。みんな両方の要素を備えています。ただ、人によってバランスに偏りがあり、立ち位置が違うのです。

ここで、質問です!

あなたは今、スペシャリストPhとジェネラリストPhどちらのウエイトが大きいでしょうか?これから薬剤師になる人、若手・新人薬剤師はどちらを目指すべきなのか?

病院薬剤師会をはじめとする学会が専門薬剤師や認定薬剤師の育成に積極的なので、専門性を高めたいと考える人も多いですね。薬学生の頃から〇〇専門薬剤師の資格をとりたいーーと意欲的な声を聞いたりします。

しかし、作者は総合力を養ってジェネラリストPhのウエイトを大きくすることを断然おススメしたいです。(資格や認定制度を批判してるわけではなくて……^_^;)

理由は大きく2つあります。

ジェネラリストPhを勧める2つの理由

医師と信頼関係を築きやすい…①

ジェネラリストPhを勧める一つ目の理由です。

医師は苦手分野を薬剤師にサポートして欲しい

「この薬の使い方は?」「どの薬を選んだらいいの?」など医師からの問い合わせ、多いですよね。

・相談内容からいえるのは、自分が専門とする領域(得意分野)の薬について尋ねる医師は少ないということです。

例えば、心不全の患者さんに対するβブロッカーの使い方。循環器医が尋ねることはまずないだろうし、そんなことを聞いてくるようであれば逆に患者さんが心配になりますよね。

同じように感染症科の医師が黄色ブドウ球菌の第一選択薬を聞くこともなければ、糖尿病内科医がメトホルミンとDPP-4阻害薬の使い分けを尋ねることも無いのです。

・一方で、普段使い慣れていない薬や専門外とする薬の相談はよくあります。

例えば、抗菌薬の使い方について。感染症専門医がいない病院では特に多いですね。また、前立腺肥大や過活動膀胱薬について手術後に外科の先生に質問されたり、「喘息やCOPDでよく使われてる吸入薬は何か」、整形外科の先生に尋ねられたりと……。

医師は、普段使い慣れない専門外のことを薬剤師に聞く傾向があります。つまり、苦手分野を薬剤師に補って欲しいわけです。

医師に頼りにされるためには、広範囲にわたる薬の知識が必要!

どんな質問、相談にも対応できる幅広い薬学的知識が必要になります。

もちろん、得意分野をピンポイントで質問されるラッキーな場合もあります。しかし、強運の持ち主であっても、いつまでも高い正答率を維持することは、普通に考えて不可能です。

・医師からのさまざまな質問、相談に対応するためには、とにかく全体的な薬の知識を増やすしかありません。これが大変なんですけど…(^_^;)

医師が納得する答えを提示できれば、薬剤師に対する信頼度はぐんと上がります。日常の積み重ねが、薬剤師の経験となり医師との信頼関係を築いてくれるのです。

信頼関係を築くことができれば

医師からの信頼度が上がるメリットは大きく2つです。

①患者さんの薬物療法に関わる機会が増える

医師からの信頼度が増すと、日に日に薬に関する相談が増えていく!

患者さんの問題点を医師と一緒に考える機会が増え、薬剤師の仕事を患者さんに届けるチャンスも増えていきます。薬剤師のスキルアップにもつながりますね。

②薬剤師からのアプローチが通りやすくなる

信頼度アップは医師とのコミュニケーションを円滑にする効果も期待できる!

疑義照会や処方提案など、薬剤師の意見が医師に受け入れられやすくなります。安心、安全な薬物療法を行なっていく上で大きなメリットですね。

医師の信頼を勝ち取って、薬剤師の仕事を患者さんへ届けるためには、総合力を鍛えてジェネラリストPhのウエイトを大きくすることが近道になる!

薬剤師の職能にマッチしている…②

ジェネラリストPhをオススメする2つ目の理由です。

薬剤師はあつかう薬の種類がとにかく多い

薬剤師があつかう薬の種類は、1000〜2000成分といわれています。

治療薬マニュアルという愛読書には約2000成分と記載されていました。

日常的にあつかう薬の種類は、働く環境や経験年数によっても異なります。ここでは、便宜上、約1000種類としておきますね。

医師があつかう薬の種類は?

「内科医の薬100」というベストセラー本があります。

・キャッチフレーズは「これだけ知っていればほとんどの内科診療をカバーできる100種類の良い薬」1993年の初版発行後も長きにわたって受け継がれている名著です。

抗菌薬をはじめ循環器疾患、呼吸器疾患、消化管疾患、神経疾患、内分泌代謝疾患などの治療薬、抗炎症・鎮痛薬、向精神薬などの代表的な薬剤の使い方が解説されています。

比較的、薬を使う内科医でも100種類で診療をカバーできるとなれば、一般の医師があつかう薬は50種類くらいかなと思います。

となると、薬剤師があつかう薬は一般医師の約20倍という計算ですね。

では、なぜ医師は50種類、薬剤師の方は1000種類必要なのか?

理由は簡単です。

医師は専門化が進んでいるので、専門外の疾患は他の専門医が診療して薬を出してくれる一方で、薬剤師には得意分野でないからといって他の薬剤師に診てもらうことができないからです。

・例えるなら、医師は20の診療科でそれぞれ50種類の薬を扱っているのに対して薬剤師は1000種類の薬を一人で扱わなければならないということ。

だから、医師に比べて幅広いクスリの知識が要求されるわけですね。

広範囲な知識がないと日常業務をこなせない!

2016年の厚生労働省の調査によれば、薬局で薬をもらっている75歳以上の約4割が5種類以上。うち半数は7種以上を処方されていることがわかっています。

高齢者の多くは複数の疾患を抱えており、特定の疾患だけの薬を飲んでいる人は稀ですよね。

となれば、特定分野だけの薬に詳しくても、調剤監査や服薬指導などを安定的に行うのは難しいです。

「かたよりのある薬の知識では、日常業務をこなせません…」

今後、薬剤師の専門化が進んで、内科薬剤師、消化器外科薬剤師、循環器薬剤師、整形外科薬剤師などに分化すれば話は別ですが……。

現状はもちろん今後も、日常業務をこなすためには広範囲な薬学的知識が必要であることに変わりはないと思います。

・薬剤師は特定の分野に偏った知識では、そもそも日常業務すらこなせない。

薬剤師は、薬のことなら何でも聞かれる!

薬剤師なら共感できる部分ですよね!

「薬剤師はクスリ全般に詳しい」というのが世間の一般認識です。患者さんはもちろん、医師や看護師、栄養士など医療者はみんな、「薬のことはなんでも薬剤師に聞けばよい」と思っています。

だから、がん専門薬剤師でなくても

「大腸がんの化学療法のファーストラインは?」

感染制御専門薬剤師でなくても

「尿の培養でE.faecalisが出たけど、抗菌薬の選択は?」

妊婦・授乳婦専門薬剤師でなくても

「授乳婦に使える解熱薬と鎮痛薬は?」

こんな感じで、専門分野とかは関係なく薬のことなら何でも聞かれるのが薬剤師なのです。

薬のことは、なんでも薬剤師が引き受ける=社会のニーズ

医師は専門分野でない場合には、他科受診や他院紹介などその道のプロに聞いたり任せることができます。

・しかし、薬剤師は専門分野でないからといって誰かに任せることはできず、自分の力でなんとかしなければなりません。

つまり、薬全般に詳しくないと社会のニーズに応えられないのです。

薬剤師だからといってクスリのことを全部知っているわけじゃない」と心の中では叫びながらも必死に答えを見つけようとしている薬剤師は多いと思います。

残念ながら、薬剤師に対する世間の期待やニーズは変わることなく「薬剤師は薬のことをなんでも知っている」は今後も続きそうです……。

薬剤師である限り、「この薬は専門外なのでよくわかりません」なんて決して言えないので、どんな内容にも対応できる幅広いクスリの知識と考え方を身につけておくことが求められています。

まとめ

今回は、「薬剤師に求められる職能は?」をテーマに、スペシャリストとジェネラリストどちらを目指すべきなのかについて考えました。

個人的にはジェネラリストがおススメ
ですが、決してスペシャリストを否定しているわけではありません。誤解がないようにして欲しいです。

むしろスペシャルな要素は必要で、作者も専門資格を持っています。

ただ、ですね。特定分野だけであったり、スペシャルな部分に大きく偏りがあるのは薬剤師にとってよくないことを伝えたいのです。

薬剤師は「薬のプロ」

この事実は変わらないので、ジェネラリストのウエイトを大きくしておかないと日常業務をこなせないばかりか医師や看護師、患者さんから頼りにされることは難しいのです。

ジェネラリストであってこそスペシャルな部分も、より輝くと思っています。

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