siRNA製剤のまとめ

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今回のテーマはsiRNA製剤!

略は

small interfering RNAです
日本語では、短鎖干渉RNAといいます

RNA干渉とは

二本鎖RNAと相補的な配列を持つmRNAが特異的に分解される現象のこと
研究ネット、研究用語辞典、RNAiとは

siRNA製剤の構造と作用機序
  • 構造…20数塩基対の短い2本鎖のRNAのこと
    パッセンジャー鎖とガイド鎖からなる
  • 作用…標的となるmRNAの分解を誘導する
    ウイルス感染に対する生物防御機構RNA干渉(RNA interference:RNAi)に関与
  • 機序…RNA誘導サイレンシング複合体(RNA Induced Silencing Complex:RISC)のアルゴノート2蛋白質(Argonaute2:Ago2)に取り込まれ、1本鎖となり(ガイド鎖)、RISCによって標的のmRNAを切断

日経バイオテク siRNA/siRNA医薬とは

siRNA製剤はもともと生体に備わっている遺伝子の発現を調節する仕組みを利用したものです。特定のmRNAを分解し、疾患の原因となるタンパク質の生成を妨げ、症状を改善します。

現時点で、国内で承認されたsiRNA製剤は4種類です。

どのような特徴があるのか?

知識の整理がてらまとめたので共有します。

目次

siRNA製剤の一覧

スクロールできます
製品名一般名標的タンパク適応国内承認
オンパットロパチシラントランスサイレチン(TTR)トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー2019年6月
ギブラーリギボシランアミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)急性肝性ポルフィリン症2021年6月
アムヴトラ
ブトリシラントランスサイレチン(TTR)トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー2022年9月
オクスルモルマシラングリコール酸オキシダーゼ原発性高シュウ酸尿症1型
レクビオインクリシランPCSK9家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症2023年9月

ルマシラン(オスクルモ)は国内では承認されていません

オンパットロ点滴静注2mg/mL

オンパットロの特徴

一般名はパチシランナトリウム。米国のアルナイラム社が開発した世界初のsiRNA製剤です。国内では2019年6月にトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療薬として承認されています。疾患の原因となるトランスサイレチン(TTR)というタンパク質のmRNAを分解し、アミロイドの蓄積を妨げるのが作用機序です。

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーとは
  • 遺伝性ATTRアミロイド―シス又はFAP(Familial Amyloid Polyneuropathy)とも呼ばれる
  • アミロイドーシスという疾患の1つ(繊維状の物質アミロイドが体内に沈着し、機能障害を生じる病気の総称)
  • トランスサイレチン(TTR)というタンパク質が原因トランスサイレチン型アミロイドーシスという
  • トランスサイレチン型アミロイドーシスのうち、遺伝性のものをトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーという
  • TTR遺伝子の異常により、不安定なTTRが産生され、分解されずに組織に沈着する
  • 沈着したTTRにより手足のしびれ、立ちくらみ、息切れ、不整脈や下痢・便秘などの症状が出現する

the BRIDGEトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー疾患情報ステーション

オンパットロ点滴静注2mg/mL
規格5mLバイアル
一般名パチシランナトリウム
標的タンパク質トランスサイレチン
適応症トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー
用法用量3週に1回、0.3mg/kgを点滴静注
104kg以上…31.2mg/kg
有効性APOLLO試験
対象:TTR-FAP患者225例
介入:0.3mg/kgを3週に1回(104kg以上は…31.2mg)
比較:プラセボ
結果:補正神経障害スコア(mNIS+7)の変化量(18ヶ月まで)
-6.0%、28.0%(p<0.001)
N Engl J Med. 2018 Jul 5;379:11-21.
保管冷所保存(2〜8℃)

押さえておきたいポイント

前投薬が必要!
・デキサメタゾン、アセトアミノフェン、クロルフェニラミン、ファモチジン(Infusion reaction予防:27.0%)
調製方法が煩雑!
・フィルターによるろ過が必要、1バイアルあたり4.4mLしか取れない
・インラインフィルター輸液セット、DEHP非含有のバッグを選択
投与後のフォロー!
・ビタミンAの補給が必要(夜盲の予防)
・心電図、心エコーでモニタリング(心筋症、早期発見)

ギブラーリ皮下注189mg

ギブラーリの特徴

一般名はギボシランナトリウム。国内では2番目に承認されたsiRNA製剤です。遺伝性の急性肝性ポルフィリン症(AHP)に用います。疾患の原因となるアミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)のmRNAを分解し、代謝物であるALA(アミノレブリン酸)とPBG(ポルフォビリノーゲン)の蓄積を妨げるのが作用機序です。

ギブラーリはGalNAc(Nアセチルガラクトサミン)がsiRNAに結合した構造を有します(パチシランとの相違点)。GalNAcはアシアロ糖タンパク質レセプター(ASGPR)のリガンドであり、肝臓に選択的に取り込まれるための製剤設計です。

急性肝性ポルフィリン症(AHP)
  • ヘム生成に関わる酵素の異常により、中間代謝物が体内に蓄積する遺伝性疾患
  • 代償的にヘム生成に関わるALAS1(アミノレブリン酸合成酵素1)が活性化、中間代謝物であるALA(アミノレブリン酸)とPBG(ポルフォビリノーゲン)が蓄積する
  • その結果、腹痛+下記1つ以上の症状が出現する
    • 末梢神経症状(四肢痛/背部痛、筋力低下)
    • 中枢神経症状(不安、幻覚・妄想、行動の変化)
    • 自律神経症状(嘔吐、便秘)
    • 皮膚症状(日光露出部の皮膚障害)
ギブラーリ皮下注189mg
規格1mLシリンジ
一般名ギボシランナトリウム
標的タンパク質アミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)
適応症急性肝性ポルフィリン症
用法用量2.5mg/kgを1ヵ月に1回皮下投与
有効性対象:AHP患者94例
介入:2.5mg/kgを1ヵ月に1回皮下投与
比較:プラセボ
結果:年換算複合発作回数
ギボシラン3.2回、プラセボ12.5回(p<0.0001)
N Engl J Med. 2020 Jun 11;382:2289-2301.
保管冷所保存(2〜8℃)

押さえておきたいポイント

重度の過敏反応に注意
・アナフィラキシー1例報告あり(海外第I/II相臨床試験)
肝機能障害に注意
・投与前と投与開始後6ヶ月は月1回、それ以降は定期的に検査
(投与後に肝機能障害の有害事象報告あり、機序不明)
腎機能障害に注意
・投与後、定期的に検査値を確認
(投与後に腎機能障害の有害事象報告あり、機序不明)
相互作用に注意
・CYP1A、CYP2D6の基質となる薬剤をチェック!

アムヴトラ皮下注25mgシリンジ

アムヴトラの特徴

オンパットロと同じトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療薬です。違いはsiRNAにGalNAcが結合している点。肝細胞で速やかに取り込まれ、肝臓での滞留時間を延長させるための製剤設計です。その結果、3ヶ月に1回の投与で済み、患者さんの通院回数が減り、また皮下注射であり投与時間も短縮できます。

アムヴトラ皮下注25mgシリンジ
規格0.5mLシリンジ
一般名ブトリシランナトリウム
標的トランスサイレチンmRNA
適応症トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー
用法用量25mgを3ヵ月に1回皮下投与
有効性HELIOS-A試験
対象:TTR-FAP患者164例
介入:25mgを3ヵ月に1回皮下投与
比較:パチシランナトリウム、外部プラセボ(APOLLO試験)
結果:補正神経障害スコア(mNIS+7)の変化量(9ヶ月まで)
ブトリシラン:-2.24%、外部プラセボ:14.76%(p<0.0001)
Amyloid. 2023 Mar;30:1-9.
保管室温保存

押さえておきたいポイント

オンパットロとの相違点
①前投薬が不要!
・注入に伴う反応:ブトリシラン0%、パチシラン23.8%(10件)
②調製が不要!
・薬液が充填されたプレフィルドシリンジ製剤、注入後に注射針が格納される安全設計
③固定用量
・体重に関係なく、25mgを3ヵ月に1回皮下投与

オンパットロとの共通点
①ビタミンAの補給が必要(夜盲の予防)
②心電図、心エコーでモニタリング(心筋症、早期発見)

レクビオ皮下注300mgシリンジ

レクビオの特徴

レクビオは、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症の治療薬です。2023年9月に承認されました。LDL受容体の再利用を妨げるPCSK9というタンパク質のmRNAを分解するのが作用機序です。ギブラーリ、アムヴトラ同様にGalNAcが結合した製剤であり、肝細胞への特異性、滞留時間の延長により、維持投与は6ヶ月に1回で済みます。

レクビオ皮下注300mgシリンジ
規格1.5mLシリンジ
一般名インクリシランナトリウム
標的PCSK9mRNA
適応症・家族性高コレステロール血症
・高コレステロール血症
※心血管イベントの発現リスクが高い
※HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、治療が適さない
用法用量初回、3ヶ月後、以降6ヶ月後ごとに
有効性対象:日本人高コレステロール血症患者312例
※心血管イベント高リスク、スタチン最大耐用量を投与中、又は1種類以上のスタチン不耐
介入:初回、3ヶ月後、以降6ヶ月後ごとに皮下投与
比較:プラセボ
結果:180日目のLDLコレステロールのベースラインからの変化率
インクリシラン:-56.3%、プラセボ9.0%(p<0.0001)
Study of Efficacy and Safety of Inclisiran in Japanese Participants With High Cardiovascular Risk and Elevated LDL-C (ORION-15)
保管室温保存

PCSK9を標的にした類似薬レパーサとの相違点は以下のとおりです。

相違点レクビオレパーサー
①作用機序PCSK9の生成PCSK9の働き
②適応ホモ接合体患者は
投与の適否を慎重に判断
③投与間隔長い:投与回数短い:投与回数
④用法用量固定用量個別用量
⑤自己注射

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まとめ

今回は、話題のsiRNA製剤についてまとめました。

RNA干渉を利用した薬剤は、疾患の原因となる特定のタンパク質を標的とした、画期的な作用機序を有しており、今までの治療法を大きく変える可能性を秘めています。

多くは遺伝性の希少疾患が適応ですが、レクビオのように身近な疾患(対象は限定的)に使える薬剤も承認されました。

今後、続々とsiRNA製剤が登場しそうな予感がします。注目していきたいです!

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