令和6年度秋冬に、新型コロナワクチンの定期接種が始まります。使用可能なワクチンは5製品です。電子添文、メーカー情報等をもとにまとめたので共有します。
令和6年度の定期接種は令和7年3月31日で終了しています。
新型コロナワクチン:定期接種の対象者
厚生労働省の案内によると
<対象>
・65歳以上の方
・60歳~64歳で対象となる方( )
心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
接種にかかる費用は原則、有料です。自治体によって負担額が異なります。
新型コロナワクチンの比較表
定期接種に用いるコロナワクチンは全部で5種類です。
コミナティ筋注シリンジ12歳以上用 | スパイクバックス筋注 | ダイチロナ筋注 | ヌバキソビッド筋注1mL | コスタイベ筋注用 | |
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製剤写真 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
製造販売 | ファイザー | モデルナ・ジャパン | 第一三共 | 武田薬品 | Meiji Seikaファルマ |
分類 | mRNAワクチン | mRNAワクチン | mRNAワクチン | 不活化ワクチン | レプリコンワクチン |
抗原株 | オミクロン株 LP.8.1 | オミクロン株 LP.8.1 | オミクロン株 XEC | オミクロン株 LP.8.1 | オミクロン株 XEC |
包装 | シリンジ | シリンジ | バイアル | バイアル | バイアル |
容量 投与人数 | 0.3mL 1人分 | 0.5mL 1人分 | 1.5mL 2人分 | 1mL 2人分 | 粉末 2人分 |
包装 (投与人数) | 1本/箱 (1人分) 5本/箱 (5人分) | 1本/箱 (1人分) | 1瓶/箱 (2人分) | 1瓶/箱 (2人分) | 1瓶/箱 (2人分) |
貯法 | 2~8℃ | -20±5℃ | 2~8℃ | 2~8℃ | -20±5℃ |
有効期限 | 12ヵ月 | 9ヶ月 | 8ヵ月 | 9ヶ月 | 6ヶ月 |
投与方法 | 筋肉内 | 筋肉内 | 筋肉内 | 筋肉内 | 筋肉内 |
初回免疫 | 1回0.3mL 合計2回 (4週間) | 1回0.5mL 合計2回 (4週間) | 1回0.6mL 合計2回 (4週間) | 1回0.5mL 合計2回 (3週間) | 1回0.5mL 合計2回 (4週間) |
追加免疫 | 1回0.3mL 3ヶ月経過後 | 1回0.5mL 3ヶ月経過後 | 1回0.6mL 3ヶ月経過後 | 1回0.5mL 6ヶ月経過後 | 1回0.5mL 3ヶ月経過後 |
希釈・溶解 | 生食1.5mL | ||||
薬液充填 | 必要 | 必要 | 必要 | ||
期限 | 8~30℃で12時間以内に使用(要遮光) キャップを外した後、2~30℃で保存、4時間以内に使用(要遮光) | 8~25℃で24時間以内に使用(要遮光) 2~8℃で最長30日(要遮光) | 冷蔵庫から取り出して12時間以内に使用 穿刺後2~8℃で保存し、24時間以内に使用(要遮光) | 穿刺後2~8℃で保存し、24時間以内に使用(要遮光) | 調製後2〜25℃で9時間以内に使用(要遮光) 調製前2〜8℃で1ヶ月間保存 |
相違点は大きく4つです!
- 抗原組成
- 作用機序
- 調製方法
- 接種人数
順に見ていきましょう。
新型コロナワクチン:抗原組成の違い
製品 | コミナティ | スパイクバックス | ダイチロナ | ヌバキソビッド | コスタイベ |
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抗原組成 2025/2026 | LP.8.1 | オミクロン株LP.8.1 | オミクロン株XEC | オミクロン株LP.8.1 | オミクロン株XEC | オミクロン株
抗原組成 2024/2025 昨年 | オミクロン株JN.1系統 | オミクロン株JN.1系統 | オミクロン株JN.1系統 | オミクロン株JN.1系統 | オミクロン株JN.1系統 |
昨年は5製品全てオミクロンのJN.1系統でしたが、今年度より抗原の組成に違いがあります。LP.8.1とXECの2種類です。ただし、いずれもオミクロンJN.1の下位または近縁の系統であり、抗原性に大きな差はありません。現在流行しているNB.1.8.1も同様であり、ワクチン接種による効果が期待できます。
現在増加している NB.1.8.1に対する今年度使用予定のワクチン(LP.8.1およびXEC対応ワクチン)の効果については、LP.8.1、XEC、NB.1.8.1のいずれもJN.1の下位及び近縁の系統であり、それぞれの抗原性(免疫系が認識するアミノ酸配列の特徴)には大きな違いはないこと2、及び、XEC 感染者の回復血清において各変異株への中和抗体値はほぼ同等であることから 28、効果が期待できます。
2025年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解
新型コロナワクチン:作用機序の違い
種類 | mRNAワクチン | 不活化ワクチン | 自己増幅型mRNAワクチン |
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製品 | コミナティ スパイクバックス ダイチロナ | ヌバキソビッド | コスタイベ |
特徴 | 新型コロナウイルスの膜表面にあるスパイクタンパク質(ヒトの細胞へ侵入するために必要)の設計図となるmRNAを脂質の膜に包んだワクチン | 新型コロナウイルスの膜表面にあるスパイクタンパク質(ヒトの細胞へ侵入するために必要)の遺伝子をもとに作られた組換えスパイク蛋白質をナノ粒子化し、免疫の活性化を促進するためのアジュバントが添加されたワクチン | 新型コロナウイルスの膜表面にあるスパイクタンパク質(ヒトの細胞へ侵入するために必要)の設計図となるmRNAとそれを増幅するために必要なレプリカーゼをのアミノ酸配列をコードするmRNAを結合し、脂質の膜に包んだワクチン |
作用機序 | 投与後に、mRNAが転写、タンパク質が生成され、それに対する免疫が誘導される | 投与後に、組み換えタンパク質に対する免疫が誘導される | 投与後に、mRNAが増幅、転写、タンパク質が生成され、それに対する免疫が誘導される |
ダイチロナ筋注は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(receptor-binding domain:RBD)をコードする配列のmRNAを含む点がコミナティやスパイクバックスと異なります。
コスタイベ筋注は米国のアークトゥルス・セラピューティクス社が開発した自己増幅型のmRNAワクチン。投与したmRNAを複製するレプリカーゼをコードする遺伝子が組み込まれており、自己複製により従来のmRNAに比べて投与量が少なく、効果の持続化が期待される点が特徴です。
- コミナティ:投与量0.3mL(RNA総量:30μg)
- コスタイベ:投与量0.5mL(RNA総量:5μg)
mRNAの投与量が少ないのであれば、副反応が気になるとこですが、大きく変わりません。コスタイベによる発熱や頭痛、倦怠感などの全身症状はコミナティとほぼ一緒です。一方で、紅斑や腫脹、硬結等の注射部位反応が少ない傾向が見られます。投与量の少なさは注射部位反応が軽減されるものの、複製により免疫応答を誘導するため、全身の症状は軽減されないという理解ですかね。

不活化ワクチンの作用機序(ヌバキソビッド)

mRNAワクチンの作用機序(スパイクバックス)

sa–mRNAワクチンの作用機序(コスタイベ)

新型コロナワクチン:調製方法の違い
製品 | コミナティ | スパイクバックス | ダイチロナ | ヌバキソビッド | コスタイベ |
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形状 | シリンジ | 昨年はバイアル | シリンジバイアル | バイアル | バイアル |
溶解・希釈 | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 | 必要 |
薬液充填 | 不要 | 昨年は必要 | 不要必要 | 必要 | 必要 |
シリンジとバイアル製剤があります。昨年からの変更はスパイクバックスがプレフィルドシリンジになったことです。コミナティ同様に調製の手間が不要な点が強みですね。一方で、ダイチロナ、ヌバキソビッドは昨年同様、薬液が充填されたバイアルです。希釈せずに必要量を抜き取って使用します。コスタイベは粉末製剤であり、生食による溶解操作を必要とします。調製にかかる労力・手間がかかるのが難点ですね。

新型コロナワクチン:接種人数の違い
製品 | コミナティ | スパイクバックス | ダイチロナ | ヌバキソビッド | コスタイベ |
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容量① | 0.3mL | 0.5mL 昨年は2.5mL | 1.5mL | 1mL | 粉末 |
1回量② | 1回0.3mL | 1回0.5mL | 1回0.6mL | 1回0.5mL | 1回0.5mL |
接種人数 ② ① | 1人 | 昨年は5人 | 1人+残0.3mL | 2人2人 | 2人 昨年は16人 |
包装 | 1本/箱 5本/箱 | 1瓶/箱 | 1瓶/箱 | 1瓶/箱 | 1瓶/箱 |
接種人数 (包装あたり) | 1人 5人 | 1人 | 2人 | 2人 | 2人 |
一包装あたりの接種人数に違いがあります。コミナティとスパイクバックスは1人分です。因みにコミナティは5本包装もあります。その他のワクチンは2人分です。ダイチロナは明らかに薬液が残る設定です。計算上は、1包装(2瓶)あたり、5人分秤量できます。なぜ、そうなっているのか?よくわからないですね…。コスタイベは今回2人用のバイアル製剤が発売されます。包装も1瓶であり、廃棄のリスクは少ないですね。
ここはコミナティとスパイクバックスに優位性があります。1人用の製剤であり、廃棄の心配がないからです。予約人数の調整・確保が不要な点も現場では好評ですよね。
まとめ
今回は、秋冬に始まる定期接種で用いる新型コロナワクチン5製品(オミクロンLP.8.1、XEC)について、特徴や違いをまとめました。どのワクチンがもっとも使われるのか?
使用実績からコミナティですかね。使い勝手が頭ひとつ分飛び抜けていると思います。1人用のシリンジ製剤であり、調製の手間がないからです。スパイクバックスも同様であり、巻き返しがあるのかも。以前のように、生理食塩液で希釈後に、1バイアルから6人分を充填していたのが懐かしく感じますよね。
ヌバキソビッドもニーズが高いと考えられます。mRNAワクチンに比べて、副反応が少ないからです。接種後に発熱や倦怠感に苦しんだ人は結構おられますからね。あと国産ワクチンのダイチロナとコスタイベはどうなるのか?発売後、使用状況に注目したいと思います!