術前管理

手術前には禁煙を!【加熱式タバコだから大丈夫?安全ではありません】

タバコは体によくない。

発がん性はもちろん、心筋梗塞や脳卒中、COPD……など、やさまざまな病気を引き起こすのは、みんなが知っている事実です。

・一方で、まだ十分に浸透していないのが、手術への影響。喫煙は安全な手術の妨げになります。

薬剤師も禁煙の啓発を進めたい!

そう思ったので今回は、「周術期の喫煙リスク」をテーマに、禁煙啓発のために薬剤師が押さえておきたいポイントを解説します。

喫煙は周術期の合併症を増加させる!

手術後の早期回復を妨げる

喫煙は、病気や疾患の危険性を増加させるだけではありません。

手術患者さんの周術期、特に手術後の合併症のリスクも指摘されています。

これは、日本麻酔科学会の啓発ポスターです。

禁煙は術前準備の第一歩」

手術後の合併症を防ぎ、早期回復を目指すというメッセージが込められています。

喫煙が手術に与える影響

薬剤師も積極的に禁煙を啓発したい!

と思っても、「なぜ禁煙が必要なのか?」わからないままでは患者さんへの説得力に欠けます。自信を持って行うためには、周術期の喫煙リスクはある程度、把握しておきたいです。

代表的なものは大きく2つあります。

  1. 手術後の傷が治りにくくなる
  2. 手術部位感染や肺炎などを起こしやすくなる

創傷の治癒が遅れると、入院期間が延長するし、胃がんや大腸がんなど消化管の手術では縫合不全を起こし再手術の可能性もあります。

また、手術後の感染症は何としても避けたいものです。肺炎や創部感染が起こると、抗菌薬治療が開始され離床が進みません。人工関節の手術では、再手術を余儀なくされる場合もあります。

医療費だって当然、増えるわけです。喫煙に伴う周術期の合併症は、何としても防がなければならないと思います。

喫煙によるリスクはどのくらい?

気になったので、調べて見ました。

2014年の系統的レビュー。手術前の喫煙と手術後の合併症についての関連を調査したところ、喫煙者では術後の合併症リスクが増加することがわかりました。

  • 術後合併症全体…1.52倍(1.33-1.74)
  • 創合併症…2.15倍(1.87-2.49)
  • 感染症…1.54倍(1.32-1.79)
  • 肺合併症…1.73倍(1.35-2.23)
  • 脳神経合併症…1.38倍(1.01-1.88)
  • ICUへの入室…1.60倍(1.14-2.25)

参考文献) Ann Surg 2014; 259: 52-71.

だいたい1.5倍から2倍くらいまで合併症のリスクが増大します。手術前に禁煙することが大事だということがわかりますね。

禁煙するタイミングは?

できるだけ早くです。

手術が決まった時点ですぐに禁煙することが推奨されています。手術までの禁煙期間はできるだけ長い方が良いです。

・周術期禁煙ガイドラインによると可能な限り長期の術前禁煙は、周術期合併症をより減少させるとあります。

短期であれば意味がないのか?というと、そうではありません。

術前の禁煙期間は長いほどよいが、短い禁煙期間でも合併症発生率は増加せず、 術前禁煙はいつから始めてもよい。(推奨度 A)
・術前の禁煙期間を長くするために手術を延期する必要はない。(推奨度A)

日本麻酔科学会 周術期禁煙ガイドライン

とにかく、手術が決まった時点で、早期に介入し禁煙指導を行うことが大切です。

加熱式タバコも紙巻きたばこと同様にリスクがある!

禁煙指導をしていると、しばしば誤解に遭遇します。

「加熱式タバコだし、大丈夫でしょ?」

「じゃあ、紙巻きたばこをやめて、加熱式タバコに変えようかな?」

こんな風に、加熱式タバコをイメージしている人が多いです。

加熱式タバコは安全なのか?全然、そんなことはありません。

そもそも、加熱式タバコをよく知らない人もいるかもしれないので、簡単に、ポイントを確認しておきます。

電子タバコと加熱式タバコの違い

タバコといえば紙巻きタバコを想像する人も多いでしょう。ですが、今では電子タバコや加熱式タバコといった新世代タバコを吸う人が増えてます。

電子タバコとは?

・リキッド(液体)を加熱して発生した蒸気を吸うタイプです。

ニコチンやプロピレングリコール、グリセリンなどが含まれる味や香りのする液体が充填されています。

日本ではニコチンは医薬品成分のあつかいなので、ニコチン含有リキッドは販売されていません。でも、海外からの個人輸入が認められているので、ニコチン入りの電子タバコを吸っている人もいます。

一方で、加熱式タバコとは?

・タバコの葉を加熱して発生する蒸気を吸うタイプ。

従来の紙巻きたばこと違って、タバコ葉を燃やさないので煙が発生せず、タールの発生量も少ないのが特徴です。

国内で販売されている加熱式タバコは、以下の3種類があります。

  • IQOS(アイコス)…フィリップモリス【PM】
  • glo(グロー)…ブリティッシュ・アメリカン・タバコ【BAT】
  • Ploom TECH(プルーム・テック)…日本たばこ産業【JT】

タバコを吸ったことがない人も、名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。

・同じ加熱式タバコでも機種によって吸った印象が異なる模様で、一番、タバコ感が強いのがアイコス、タバコ感は弱いものの無臭に近いプルームテック、その中間がグローといわれているようです。

加熱式タバコは販売シェアを拡大中

紙巻きたばこは減少、加熱式タバコは増加傾向です。

JTによれば、日本国内の紙巻たばこ販売数量は下記です。

  • 2016年が1738億本
  • 2017年度が1514億本

→約13%減少している

一方、加熱式タバコの国内市場シェアは、17年度が12%、18年度には20%を超え、32年度には30%を超えると推定されています。

・つまり、健康意識の高まりと受動喫煙の危険性から、紙巻きたばこの市場が縮小する中で、加熱式タバコが販売シェアを伸ばしているのです。

では、加熱式タバコは紙巻きたばこよりも安全性が高いといえるのか?

加熱式タバコの安全性は?

加熱式タバコが安全である科学的根拠はありません。

・結論を言うと、現時点では、加熱式タバコが紙巻きたばこよりも健康に与える影響が小さいという科学的根拠はないのです。

理由は大きく2つ。

  • 従来の紙巻きたばこよりもタールが削減されているが、依存性物質のニコチンやその他の有害物質の量は大きく変わらない
  • 加熱式タバコの使用と病気や死亡との関連性についてのエビデンスが得られるまでにかなりの時間を要する

以上から、現時点では新世代の加熱式タバコの方が紙巻きたばこよりも害が少ないとはいえません。

参考文献)非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解

関連学会の見解は?

呼吸器学会の見解は、以下のとおりです。

・非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は健康に悪影響がもたらされる可能性がある。
・同タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。従来の燃焼式タバコと同様に、すべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められない

非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解より引用

このように、加熱式タバコ、電子タバコを使用することは健康への悪影響、受動喫煙に伴う健康被害の可能性から推奨されていません。

にも関わらず、「煙が出ない、受動喫煙の危険が低い、健康被害が少ない」という誤ったイメージが先行しています。不適切な宣伝や広告などの影響もあって、あたかも加熱式タバコが安全であると誤解している人も多いです。

日本麻酔科学会の見解は下記の通りです。

・現状においては、非燃焼・加熱式タバコ(Heat-not-burn-tobacco)が従来のタバコよりも健康に与える影響が少ないという科学的証拠はなく、従来のタバコと同様に周術期の使用を控えるよう指導すべきである

日本麻酔科学会周術期禁煙ガイドラインの追記について

加熱式タバコと従来の紙巻きたばこ、どちらも手術前の禁煙を指導するべきとしています。

「加熱式タバコだし、大丈夫でしょ?」

「じゃあ、紙巻きたばこをやめて、加熱式タバコに変えようかな?」

上記の考えは間違っているわけです。

こうした誤解に対して、薬剤師は正しい知識をもって情報を発信し禁煙の啓発に努めなければならないと思います。

薬剤師も術前管理で禁煙を啓発しよう

手術前に禁煙指導してますか?

薬剤師がやっているイメージは薄いですね。

術中や術後の出血リスクを回避するために、抗凝固薬や抗血小板薬の服薬状況を確認している薬剤師は増えています。

しかしながら、禁煙指導まで行なっている薬剤師は意外と少ないかも

・手術後の合併症は、入院期間を延長するだけでなく、合併症の種類や重症度によっては命に関わる場合もあるので、周術期を安全に過ごしてもらうためにも、手術前の禁煙は不可欠です。

最近では職種間、他科連携による医療チームで、周術期の禁煙を勧める取り組みが盛んなので、薬剤師も周術期の喫煙リスクを理解し、安全管理に努めてみてはどうでしょうか。

まずは、周術期の喫煙リスクを意識することからですね。

まとめ

ポイントは以下のとおりです。

  • 喫煙は周術期の合併症のリスクを増加させる!
  • 手術後の傷の治りが悪くなったり、肺炎や手術部位感染などのリスクがある
  • 禁煙のタイミングは、手術が決定した時点、できる限り早く!
  • 見た目がオシャレな加熱式タバコが販売シェアを拡大中!
  • 加熱式タバコが安全であるいう科学的根拠は今のところない。にもかかわらず、誤解している人が多い
  • 禁煙は術前準備の第一歩。早期回復のために医師、看護師、栄養士など医療チームの中で薬剤師も積極的に関わろう

★ ★ ★ ★ ★

今回は、「周術期の喫煙リスク」をテーマに、禁煙の啓発を進めるために薬剤師が押さえておきたいポイントを解説しました。

薬剤師も禁煙の啓発を!ですね。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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