「病院薬剤師は給料が低い!!」
なぜか、一般の人にはあまり知られていないけど、薬剤師業界では周知の事実です。ドラッグストアや調剤薬局に比べてもかなり低い……(>_<)
転職すれば、きっと収入が増えるし、待遇も良くなるはず…。
それなのに、病院薬剤師を続ける理由は何なのか?
今回は、病院薬剤師歴10年以上の経験をもとに、給料が低いけど、“病院薬剤師”を続ける理由を熱く語ります!!
病院薬剤師の給料は?

薬剤師の主な就職先は、以下の3つです。
- 病院薬剤師
- 調剤薬局薬剤師
- ドラッグストア薬剤師
それぞれの給料を比較します。
病院薬剤師は泣けるほどに給料が少ない
ドラッグストアがダントツ!
求人内容を見た印象では一番です。初任給が30〜40万円くらいなので、手取りは24〜32万円くらいになります。(月給×80%で計算)
次に、調剤薬局薬剤師!
大手の募集を見てると、初任給で25〜30万円くらいでしょうか?20〜24万円くらいが手取りですね。
病院薬剤師は低すぎる!
初任給は20〜24万くらいです。以前に比べると、少しずつ増えているものの一番低い状況は変わりません。手取りにして、16〜19万円が相場です。20を切っているのはやばすぎますね(~_~;)
同じ資格であるのに、目を疑いたくなるほどに給料が低いです!
薬剤部のトップになればそれなりにもらえる!?
きっと、そうあって欲しいですが、そこまでの道のりが長いし、忍耐強く待てるのかどうかも疑わしいところ。それに、病院のトップは“お医者さま”なので他職種の待遇を良くするよりは、医師の待遇を厚くして良い人材を集めようとするのが普通の感覚です。
となると、病院では薬剤師の地位は低く、給料アップはそれほど期待できない気がします。
一方で、大手のドラッグストアや調剤薬局チェーンでは、エリアマネージャーなど出世の道が開かれています。(友達が言っていた…)
もちろん、やる気次第。でも、薬剤師の頑張りが会社の業績に直結するので、収入アップの可能性も十分にあります。年収1000万円突破も夢ではないでしょう。
対して、病院薬剤師で大台を超えるのは非常にきびしいのが現状だと思います……(夢のまた“ゆめ”)
6年制薬剤師の就職先に適してるのか?
臨床力を身につけた6年生薬剤師は病院へ進む割合が増えてるのか?
というと、そんなことはありません。
お給料問題が病院薬剤師への道を妨げている!?
ようです。とくに、奨学金の返済を抱えてる人にとってはまさに死活問題で、勉強熱心で、志が高い人であっても、給料面を考えて、やむなく病院薬剤師への道を断念する人もいるとか…。
実際、4年制薬剤師に比べて給料が高いというわけでもないみたいです。2年間余分に学費を払ってるのに……。
薬学生に聞くと病院薬剤師へ進む人は減っているそう…。やっぱり、進路を選ぶときに給料は大事なんですよね。
病院薬剤師を選ぶと、生活が窮屈になる!?
給料に不満、不安を抱えている人は多いです。
もし、病院薬剤師を選んでいなかったらどうなるのか?
月収が6万円アップすると仮定すれば
- 1年で72万円
- 5年で360万円
- 10年で720万円
昇給や賞与とかも考えると10年で1000万円近く、使えるお金が増えると試算されます。
病院薬剤師を選ばなければ、ここまで変わってくるとは!?悲しい気持ちになりますね。社会に出たら、旅行やスポーツ、趣味などにもお金がかかります。さらに、結婚式の費用、住宅や車の購入資金、子育てにかかる費用………など。
実際に、月収だけでは生活が苦しく、生活費を稼ぐためにバイトを掛け持ちしてる人もいます。
「やりがいはあるけど、給料が何とかならないのか!?」
不安、不満を抱えている病院薬剤師は多いです。
それなのに、なぜ病院薬剤師を続けるのか?ここから理由を語ります。
それでも、病院薬剤師を続ける5つの理由
細かいものを挙げだすとキリがないので、選りすぐりの5つに絞りました。
- 幅広い薬の知識を習得できる
- 処方目的や処方意図について理解が深まる
- 検査や手術のことを学べる
- 得意分野を磨くことができる
- 職能を発揮できる、活躍できる場がまだまだ残されている
順番に説明します!!
①幅広い薬の知識を習得できる

まず一つ目の理由です。
病院は広範囲にわたる薬の知識が学べます!
病院で取り扱う薬の種類は多いからです。病院の規模にもよりますが、採用薬は多岐にわたり、当院でもざっと1000種類を超えています。
中でも注射薬を学べるのはメリットです
- 注射薬(抗菌薬、抗がん剤、循環器用薬……など)
- 輸液(電解質輸液、栄養輸液など)
- 検査薬や造影剤、麻酔薬など
- 赤血球、新鮮凍結血漿、血小板などの血液製剤
- アルブミン、γグロブリン、ワクチン、分子標的治療薬などの生物学的製剤
- 院内製剤
もちろん、調剤薬局でも一部の注射薬や輸液をあつかうこともありますが、病院には到底及びません。
働きながら学べる環境!
ここが病院の魅力です。日常業務を通して、必要とされる薬の知識や考え方が身につきます。もちろん、やる気とモチベの維持が欠かせませんが…。
②処方意図や処方目的について理解が深まる

続いて2つ目の理由。
病院では処方意図や処方目的を合わせて理解できます!
病院薬剤師も、処方箋を見て調剤をしていますが、調剤薬局と違って、入院の経過や医師の記録をカルテから確認できるからです。病気の診断がどのようにされて、どういったときに薬物治療が必要になり、患者さんごとに、どう薬を使い分けるのかを読み取ることができます。
単にドラッグインフォメーション(DI)を得意とするだけじゃなくて、患者背景と病態、有効性、安全性などから、“薬をどのように使うのか”、医師の視点がわかるようになるのです。
なかなか、処方箋を見ているだけでは、わからなかった、想像にも限界があった処方目的や処方意図がクリアになって、薬の理解も深まります。
医師の視点は、薬剤師の臨床力を高めてくれるとても大切なもの。日常業務でその力が養われていきます。
③検査や手術に詳しくなる

続いて3つ目。
病院では薬の知識に加えて検査や手術についても学べます!
別に必要ないでしょ?
と、思い人もいるかもしれないですが、そんなことはありません。メチャクチャ大事。薬物療法を理解するためには、手術や検査についてある程度知っておく必要があるからです。
ケース1
例えば、PCIの治療後には抗血小板療法のDAPTが始まります。ステント血栓症を予防するためですね。
そもそも、PCIが何か?わからないとDAPTの必要性が理解できません。ステントの種類や狭窄部位によって、投与期間が変わることもわからないでしょう。
DAPTの必要性や投与期間を理解するためにはPCI治療についての知識が欠かせません。
ケース2
また、手術や内視鏡治療時に休薬が必要な薬があります。抗凝固薬や抗血小板薬などです。
どのくらい出血しやすいのか?手術や治療の種類、方法によって中止の要否が決まります。
つまり、患者さんがどのような治療を受けるのかによって休薬すべきかどうかが判断されるわけです。薬剤師も、知っておかないと対応に困るケースが出てきます。
検査や手術のことも働きながら学べる!
病院には医師や看護師、検査技師さんが近くにいて、なんでも教えてくれるし、定期的に開かれる勉強会にも参加できるからです。手術や処置を見学させてくれる場合もあります。実際に見ると、本で学ぶよりも断然わかりやすいですよね。
病院では検査や手術のことを日常的に学べるので薬物療法の理解をさらに深めてくれます。
④得意分野を磨くことができる

続いて4つ目。
病院では専門性を高め、働きながら資格を取得ができます
資格の種類によっては、調剤薬局勤務でも取得可能ですが、実務期間や症例報告などを考えると病院勤務の方が要件を満たしやすく、資格取得をバックアップしてくれる病院も増えているからです。
人気の資格は以下のとおり
- がん専門薬剤師
- 感染制御専門薬剤師
- 精神科専門薬剤師
- 妊婦・授乳婦専門薬剤師
- HIV感染症専門薬剤師
- NST専門療法士
- 糖尿病療養指導士
- スポーツファーマシスト
- 腎臓薬物療法認定薬剤師
- 抗菌化学療法認定薬剤師…など
最近では、病院を志望する薬学生も専門資格に興味持っているみたいで、「○○専門薬剤師や○○認定薬剤師の資格が取れますか?」って聞かれることも多い印象があります。
専門性は薬剤師の価値を高めてくれる!
医師からの難易度が高い質問に答えたり、処方提案を通して、診療をサポートしていくことができるからです。
病院は専門性を高めるための資格が取りやすい環境であり、仕事に活用できる場でもあります。幅広い知識を持ちながらも、ピカッと光る専門性を磨き仕事に活かせるのが病院薬剤師のいいところです。ここにやりがいを感じる人も多いと思います。
⑤職能を発揮できる、活躍できる場がまだまだ残されている

最後の理由です。
病院薬剤師の職能は発展途上にあります
病棟業務やチーム医療において、薬剤師の職能を生かせる場面がいくつも用意されているからです。
最近では、病棟で薬剤師を見かけるようになったけど以前は調剤室の中でひっそりと調剤するのが日常でした。
「顔が見える薬剤師」がキャッチコピーー!
となるくらい、病院薬剤師は地味で目立たない存在。今でさえも、入院患者さんに薬の説明をしてると、“調剤薬局の薬剤師”さんと呼ばれたりすることも……(^-^;病院薬剤師の認知度はまだまだ低いのかも知れません。
でも、最近では病棟業務が主流になりつつあって、調剤室から出て薬剤師も仕事をするようになりました。
「医薬協働」をキーワードに、持参薬の安全管理や処方提案、処方支援、副作用のモニタリングなどの業務を通して、患者さんはもちろん、医師や看護師からも頼りにされる存在になってきています。
薬剤師が病棟で活動するメリットは以下のとおりです。
- 患者さんが抱える薬物療法の問題点を解決する機会が増える
- ハイリスク薬を安全に管理できる
- 不要な手間を減らして、業務を効率化できる
- 医師や看護師の業務の負担を減らせる
- 他職種からの相談窓口になる頼りにされる
……など、薬剤師にできることは本当にいっぱいあります。
現状は、人員的な問題や薬剤師の臨床力不足もあって、手をつけるのがむずかしい業務もあるけど、もっともっと臨床力を磨いてスキルを高めれば、可能性は無限に広がっていくはずです。
新しい職能を開花させて、薬剤師の地位が上がり待遇が良くなるチャンスはまだまだ残されています。
まとめ

今回は、「給料が低いけど、病院薬剤師を続ける理由」について述べました。
病院薬剤師は給料が低いし、6年制になったのに、待遇はそれほど変わりません。
でも、病院薬剤師はこれから職能を開花させて、医療をもっとよくできる魅力のある仕事。
今は薄給であるものの、これからは地位が上がって待遇もよくなっていくはず。(そうなるように頑張ります^_^)
「病院薬剤師になりたい」と高い志を持った学生が、給料を理由に断念するのはもったいない……。優秀な人材が集まって欲しいという願いを込めて書きました。薬学生が進路を選択するときに参考になればうれしいです♪