「給料が低いけど“病院薬剤師”を続ける5つの理由」を熱く語る!

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「病院薬剤師は給料が低い!!」

なぜか、一般の人にはあまり知られていないけど、薬剤師業界では周知の事実です。ドラッグストアや調剤薬局に比べてもかなり低い……(>_<)

転職すれば、きっと収入が増えるし、待遇も良くなるはず…。

それなのに

病院薬剤師続ける理由は何なのか?

今回は、病院薬剤師歴10年以上の経験をもとに、給料が低いけど、“病院薬剤師”を続ける理由を熱く語ります!!

目次

病院薬剤師のお給料は?

薬剤師の主な就職先は、以下の3つです。

  1. 病院薬剤師
  2. 調剤薬局薬剤師
  3. ドラッグストア薬剤師

それぞれの給料を比較します。

病院薬剤師は泣けるほどに給料が少ない

ドラッグストアがダントツ!

求人内容を見た印象です。大手だと初任給が3040万円くらいなので、手取りは24〜32万円くらいだと推定されます(月給×80%で計算)。

次に、調剤薬局薬剤師!

大手の募集では初任給2530万円くらいでしょうか?そうなると。手取りは20〜24万円くらいですね(同じく月給×80%で計算)。

では、病院薬剤師のお給料は?

初任給は2024万くらいです。私もこの程度でした。以前に比べると、少しずつ増えているものの、薬剤師業界で1番低い状況は変わりません。手取りにして、16〜19万円が相場です。20を切っているのはやばすぎますよね(~_~;)

資格は同じなのに、病院薬剤師の給料は目を疑いたくなるほどに低いです!

「病院薬剤師の仕事は好きなのに!」
「やりがいもあるのに!」

どうしてこんなに給料が低いのか?
不安・不満を抱えている病院薬剤師は多いです

それなのに

なぜ、病院薬剤師を続けるのか?
ここから理由を語ります。

細かいものを挙げだすとキリがないので、選りすぐりの5つに絞りました。

  1. 広範囲にわたる薬の知識を習得できる
  2. 処方目的や処方意図について理解が深まる
  3. 検査や手術のことを学べる
  4. 得意分野を磨くことができる
  5. 職能を発揮できる、活躍の場がまだまだ残されている

順番に説明します!!

①広範囲にわたる薬の知識を習得できる

病院薬剤師を続ける1つ目の理由

病院は広範囲にわたる薬の知識学べるからです!

病院で扱う薬の種類は多く、多岐にわたります。病院の規模にもよりますが、当院の採用薬はざっと1000種類くらいです。中でも注射薬を学べるのが魅力だと思います。

病院で扱う注射薬
  • 緊急薬(カテコールアミン、抗不整脈薬など)
  • 注射薬(抗菌薬、抗がん剤、循環器用薬……など)
  • 輸液(電解質輸液、栄養輸液など)
  • 検査薬や造影剤、麻酔薬など
  • 赤血球、新鮮凍結血漿、血小板などの血液製剤
  • アルブミン、γグロブリン、ワクチン、分子標的治療薬などの生物学的製剤
  • 院内製剤

病院薬剤師は注射薬をあつかう業務が大半です。薬品管理(救急カートや手術室・ICU、一般病棟の配置薬)、化学療法薬(ケモ)のレジメン管理、抗菌薬のコンサルテーション、PPNやTPNメニューの設計、抗MRSA薬などのTDMなど、日常業務を通して注射薬の知識や使い方が身につきます。

また、注射薬の調製方法も病院薬剤師が得意とするところです。抗がん剤や高カロリー輸液に加えて、最近ではワクチンやコロナ治療薬の調製等を薬剤師が担う病院も増えています。

もちろん、調剤薬局でも注射薬や輸液をあつかうこともありますが、種類は限られているし、使用頻度は病院に到底及びません。友人の話では、普段使わないので、苦手意識を持っている薬剤師も多いそうです。

病院は採用薬が多く、注射薬も含めた広範囲な薬の知識を学べるのが魅力です。やる気とモチベさえあれば、働きながらスキルアップが図れます。

②処方意図や処方目的について理解が深まる

病院薬剤師を続ける2つ目の理由

病院では処方意図や処方目的合わせて理解できるからです!

カルテの閲覧により、病気の診断がどのようにされて、どういったときに薬物治療が必要になって、患者さんごとにどう薬を使い分けるのかを学べます。特に循環器系薬(心不全治療薬、抗不整脈薬等)の使い方は勉強になりますよ。同じ診療科でも先生ごとに微妙に違うのも面白いですね。

あと、わからなければ先生に質問しやすいのも病院薬剤師の魅力です。病棟や廊下で会った時にタイミングが合えば声をかけて教えてもらえます。また、定例の医師カンファレンスへの参加は学びが多いです。処方目的や処方意図がクリアになって薬物療法の考え方や病態の理解も深まります。

もちろん調剤薬局でも、処方の意図や目的はある程度わかりますよね。患者さんへの聞き取りや、併用薬等から推測できるからです。ただ、限界があります。あくまで推測なので間違っている可能性もあるし、わからないものは考えても分かりません。かといって頻回な疑義照会はハードルが上がりますよね。

又、調剤薬局の薬剤師が、地域の先生と密に連携したり、在宅医療に同行したりで、以前より医師との距離が縮まりました。ただそれでも、病院に比べると敷居は高いのではないでしょうか。

医師の視点は、薬剤師の臨床力を高めてくれるとても大切なものです。病院ではカルテの閲覧やカンファレンスの参加等、日常業務を通してその力が養われていきます。

③検査や手術に詳しくなる

病院薬剤師を続ける3つ目の理由

病院では薬の知識に加えて検査手術(治療法)についても学べるからです!

そんなの知らなくても大丈夫でしょ。
薬の知識だけで十分ですよ。

と、思う人もいるかもしれないですが、そんなことはありません。メチャクチャ大事。薬物療法を理解するためには、手術や検査についてある程度知っておく必要があります。

ケース①

例えば、PCI施行後にはDAPT(抗血小板2剤併用療法)が始まります。ステント血栓症を予防するためですね。でも、そもそもPCIが何か?わからないとDAPTの必要性は理解できません。ステントの種類や狭窄部位によって、投与期間が変わることもわからないでしょう。DAPTの必要性や投与期間について理解するためには「PCIとは何か」その知識が欠かせません。

参考記事

ケース②

また、手術や内視鏡治療時に中止すべき薬があります。抗凝固薬や抗血小板薬などです。どのくらい出血しやすいのか?手術や治療の種類、方法によって中止の要否が決まります。つまり、患者さんがどのような治療を受けるのかによって休薬すべきかどうかが判断されるわけです。薬剤師も、知っておかないと対応に困るケースが出てくるし、誤った判断を行う危険性だってあります。

病院では検査や手術のことも働きながら学べます。医師や看護師、検査技師さんが近くにいて、なんでも教えてくれるし、定期的に開かれる勉強会にも参加できるからです。手術や処置を見学させてくれる場合もあります。実際に見ると、本で学ぶよりも断然わかりやすいですよね。

手術や検査等の知識は薬物療法と無関係ではありません。病院で働くと、術式や検査の種類を理解した上での薬学的アプローチができるようになります。

④得意分野を磨くことができる

病院薬剤師を続ける4つ目の理由

病院では専門性を高め、働きながら資格を取得できるからです

資格の種類によっては、調剤薬局勤務でも取得可能ですが、実務期間や症例報告などを考えると病院勤務の方が要件を満たしやすく、資格取得をバックアップしてくれる病院も増えています。

病院で取得できる人気の資格
  • がん専門薬剤師
  • 感染制御専門薬剤師
  • 精神科専門薬剤師
  • 妊婦・授乳婦専門薬剤師
  • HIV感染症専門薬剤師
  • NST専門療法士
  • 糖尿病療養指導士
  • スポーツファーマシスト
  • 腎臓薬物療法認定薬剤師
  • 抗菌化学療法認定薬剤師…など

最近では、病院を志望する薬学生も専門資格に興味持っているみたいで、

「◯◯専門薬剤師や△△認定薬剤師の資格が取れますか?」

って聞かれることも多い印象です。

専門性は薬剤師の価値を高めてくれます。医師からの難易度が高い質問に答えたり、処方提案を通して、診療をサポートできるからです。

病院は専門性を高めるための資格が取りやすい環境であり、仕事に活用できる場でもあります。幅広い知識を持ちながらも、ピカッと光る専門性を磨き仕事に活かせるのが病院薬剤師のいいところです。ここにやりがいを感じる人も多いと思います。

⑤職能を発揮できる活躍の場がまだまだ残されている

病院薬剤師を続ける5つ目の理由

病院薬剤師の職能発展途上にあるからです

病棟業務やチーム医療において、薬剤師の職能を生かせる場面がいくつも用意されています。常々感じていることです。

最近では、病棟で薬剤師を見かけるようになったけど以前は調剤室の中でひっそりと調剤するのが日常でした。

「顔が見える薬剤師」がキャッチコピーー!と言われるくらい、病院薬剤師は地味で目立たない存在。今でさえも、入院患者さんに薬の説明をしてると、“調剤薬局の薬剤師”さんと呼ばれたりすることも……(^-^;

病院薬剤師の認知度はまだまだ低いのかも知れません。

でも、最近では病棟業務が主流になりつつあって、調剤室から出て薬剤師も仕事をするようになりました。

「医薬協働」をキーワードに、持参薬の安全管理や処方提案、処方支援、副作用のモニタリングなどの業務を通して、患者さんはもちろん、医師や看護師からも頼りにされる存在になってきています。

薬剤師が病棟で活動するメリット
  • 患者さんが抱える薬物療法の問題点を解決する機会が増える
  • ハイリスク薬を安全に管理できる
  • 不要な手間を減らして、業務を効率化できる
  • 医師や看護師の業務の負担を減らせる
  • 他職種からの相談窓口になる頼りにされる

……など、薬剤師にできることは本当にいっぱいあります。

現状は、人員的な問題や薬剤師の臨床力不足もあって、手をつけるのが難しい業務もあるけど、もっともっと臨床力を磨いてスキルを高めれば、可能性は無限に広がっていくはずです。

病院では新しい職能を開花させて、薬剤師の地位が上がり待遇が良くなるチャンスはまだまだ残されています。

まとめ

今回は、「給料が低いけど、病院薬剤師を続ける5つの理由」について述べました。

病院薬剤師は給料が低いし、6年制になったのに、待遇はそれほど変わりません。でも、病院薬剤師はこれから職能を開花させて、医療をもっとよくできる魅力のある仕事です。

今は薄給であるものの、これからは地位が上がって待遇もよくなっていくはず(そうなるように頑張ります^_^)

それに病院でも経験を積み、実績を重ねると昇進します。主任や課長を経て薬剤部長の役職に就くことも可能です。聞いた話では薬剤部長になればそれなりに貰えます。病院の場所や規模のよりますが、年収は8001000万くらいになるそうです。

もちろん、他の職種にもいえますが、薬剤部トップへの道のりは長いし、出世が約束されているわけでもありません。努力と忍耐の末にポストが用意されているのです。

病院薬剤師は、一生薄給ではありません。頑張りと辛抱、運を味方につければ、年収1000万円も夢ではないので、頑張る価値はあると思っています。

「病院薬剤師になりたい」と高い志を持った学生や若手薬剤師が給料を理由に断念するのはもったいないです。優秀な人材が集まって欲しいという願いを込めて書きました。病院薬剤師の道を進もうか悩んでいる人に参考になればうれしいです♪

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