スキルアップ

疑義照会が得意な薬剤師になるための3つのステップ【初級、中級、上級編】

疑義照会は薬剤師の大切な仕事!

でも、なかなか手強いのが現実ですよね。

「大丈夫。そのままでいいから」と冷たくあしらわれたり、「添付文書に書いてる?杓子定規で臨床を語るな!」と叱られることだってあります。

若手はもちろん、ベテランであっても「疑義照会がニガテ…」という人は多いでしょう。

一方で、豊富な知識と経験、巧みな話術も相まって疑義照会を上手くこなす薬剤師もいます。あなたの周りにもいるはずです。

一体何が違うのか?

今回は疑義照会がうまい薬剤師の特徴を分析、得意になるための3つのステップを解説します。

疑義照会がうまい人は何が違うのか?

疑義照会は安全な薬物療法に欠かせないもの。薬剤師法第24条は学生の頃にも習いました。

[処方せん中の疑義]
第24条 薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。

しかし、やり方まで詳しく教わった記憶はありませんよね。

  • そもそも、疑義とは?
  • 疑義照会を行うにあたって、意識すべき点は?
  • 失敗しないコツや上手くやるための秘訣は何か?

誰かが丁寧に教えてくれるわけでもないので、先輩がやってるのを見たり、実際やってみて失敗することも多いです。それにコミュニケーション能力が必要なのはいうまでもありません。なかなか上達できずに悩んでいる人もいるでしょう。

一方で、作者の周囲にはとてもスマートに疑義照会をこなす人がいます。どうして上手いのかを分析すると、以下3つの共通点が見えました。難易度別に並べると下記です。

  1. 問題点を明確にする(初級)
  2. 最適な代替案を用意する(中級)
  3. 医師と信頼関係を築く(上級)

ここでいう、疑義照会は処方箋の形式的な不備ではなく、薬物療法の中身に関する疑義です。

作者の考察を加えながら、順番にみていきますね。

疑義照会が得意になるための3つのステップ

問題点を明確にする…初級編

まずは初級編ですね。患者さんにおける問題点を明らかにすること。そもそも疑義とは何かを理解しておく必要があります。

“添付文書を逸脱している”だけでは不十分

なぜ疑義照会をするのか?

新人、若手の頃に陥りやすいのが「添付文書を逸脱しているから」という理由。

禁忌、慎重投与、投与量、日数、相互作用など添付文書の項目と処方内容を見比べて、逸脱している箇所を発見したら、そのまま疑義照会という流れです。

「先生、少しだけお時間よろしいでしょうか?◯◯さんの処方で確認です。△△という薬の投与量が添付文書の上限を超えているのですが…。」

よく見ると、患者さんの具体的な不利益、問題点が明らかになっていません。ここがマズイです。

いわゆる「添付文書だけで疑義照会」ですね。

もちろん間違ってるわけではありません。疑義に思うのは添付文書と処方のズレを認識した時だからです。でも、薬剤師ならもう少し想像力を働かせたい。

患者さんが抱える具体的リスクを挙げる!

疑義照会は何のために行うのか?

患者さんの薬物療法の問題点を解決するためです。添付文書どおりに処方を正すためではありません。であれば、医師と議論するのは具体的なリスクになります。

例えば、下記です。

▽投与量が多いことに起因する
  • 吐き気や胃痛、食欲不振などの消化器症状
  • けいれんなどの意識障害
  • 白血球や血小板減少などの骨髄抑制
▽相互作用に伴う
  • QT延長
  • 消化管出血の危険性
  • 横紋筋融解症
  • ◯◯という効果の減弱
  • 腎機能障害のリスク

どのような副作用が起こる可能性があるのか?患者さんにとっての問題点(デメリット)を回避または軽減するのが疑義照会の目的です。

「先生、△△という薬、◯◯さんにとって投与量の目安は□□です。この量だと、ふらつきのリスクが上昇し、転倒の危険があるんですが…」

こんな風になると思います。

何が問題なのかに注目し、具体的なリスク(副作用)があるから良くないことをきちんと医師に伝える。論点は添付文書の記載と処方のズレではなくて、患者さんに起こりうるリスクの方です。

患者さんを見ることが大事!

添付文書から具体的な問題点を挙げたら、今度は評価です。患者さんごとのリスクがどの程度なのかを考えます。ここは薬剤師の弱いところかも知れません。

プレ◯◯リンの過量投与によるふらつきを考えてみましょう。

たとえばAさんとBさんの2人がいます。

  • A…比較的若く、体格もしっかりとした50代のおじさん
  • B…高齢で足腰の弱った、杖で歩く80代のおばあちゃん

どちらも糸球体濾過量eGFRは25mL/minです。プレ◯◯リンの添付文書を見ると初回投与量は75mgです。しかし、処方は150mgでした。

AとBさん、ふらつきのリスクが同じでしょうか?

当然、Bさんの方がふらつきやすいし、転倒のリスクも高いですよね。どちらも倍量投与であっても、同じリスクではありません。

となると、問い合わせの内容は以下のようになります。

「先生、◯◯カは腎機能から考えて、投与量の目安は75mgです。Bさんは高齢で足腰も弱く、ふらつきに伴う転倒のリスクがかなり高いので初回は減量して投与し、様子をみながら投与量を調節してはどうでしょうか?」

かなり踏み込んだ内容になりました。「添付文書だけで疑義照会」と比べると全然違います。医師からの印象もかなり違うはずですよね。

「添付文書と処方のズレ」だけを前面に押し出すと、「患者さんの状況もわかっていないのに杓子定規に物を言うのはけしからん!」と、医師に思われやすいです。

一方で、処方の問題点を明確に、患者さんの具体的なリスクに言及すれば医師に対する説得力が増します。結果的に処方変更率も上がるでしょう。

代替案を用意しておく…中級編

2つ目のステップは、問題点を解決するための代替案を準備すること。中級編です。

医師が代替案を示してくれるとは限らない

薬剤師の問い合わせに対して、処方の変更が必要になったとします。その時にどうなるかというと医師の行動は大きく2パターンです。

  1. ◯◯という薬を△△に変更してください
  2. じゃあ、どの薬に変更したらいいですか?

前者は指示通りに変更すればOK。とくに難しくありません。一方で難易度が上がるのが後者です。薬剤師が代替案を提示する形ですね。

疑義照会がうまくいったと思いきや、詰めが甘い経験をした人もいるのではないでしょうか。

医師「(疑義を伝えたあと)わかりました。◯◯という薬はやめておきましょう。ところで、どの薬に変更すればいいのですか?」

と聞かれて

薬剤師「◯◯の代わりはえーっと?何でしたっけ?ちょっと調べてきますーー」

と、出直す羽目になったり。曖昧な答えをしてその場をやり過ごし、後から間違いに気づいて、「あーーどうしようーー!」となったり。

いわゆる「疑義照会あるある」ですよね。作者も恥ずかしながら何度も経験があります(^_^;)

そうならないためにどうすれば?

代替案は事前に用意しておく

疑義照会のシナリオを頭に描いておくことが大切です。新人の頃は問題点を伝えるだけで、いっぱいになって代替案を用意するのを忘れがちなので注意したいですね。

実例をあげて、見てみましょう。

例えば、バレーボールの練習中に膝を痛めて靭帯の手術を受ける患者さん。

手術前の初回面談で、幼少期にペニシリンショックの既往があることを聴取したとします。手術時の予防抗菌薬を確認するとセファゾリンでした。

ヤバイー!!慌てて、主治医に報告する前に、立ち止まって欲しい。なぜなら、以下の質問が高確率で返ってくるからです。

医師「念のため、セフェム系も避けておいた方がいいかも知れないですね。変更するとしたらどの抗菌薬に代えたらいいの?」

代替薬の準備が不十分だと、「えーっと……ど、どの抗菌薬に代えたらいいのか、しっ、調べてきます」と、カッコ悪い姿を晒すことになります。

スマートに話を進めるためにも、先読みして疑義照会に臨むべきです。

薬剤師「ターゲットとするのは黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などのグラム陽性球菌。であればクリンダマイシンやバンコマイシンなどが代替薬になります」

と、サクッと答えられたら気持ちいいですよね。

さらに、疑義照会に慣れた人ならこう続けます。

薬剤師「この人の体重、腎機能から考えると投与量の目安は◯gで、△時間ごとの投与でよかったでしょうか?」

問題解決がスムーズですね。うまくいけば、さすが薬剤師さん、頼りになる!と思ってもらえるかもしれません^_^

詰将棋でいう一手、二手先くらいまで医師が必要とする情報を予想する。疑義照会前の習慣にしたいですね。

「あと一歩のところで、詰めが甘かったー」と、後悔ないように代替案は必ず用意しておきましょう。

複数ある選択肢から最良のものを提案する

これは中級編というよりは上級編に近い内容です。代替案といってもなんでもいいわけではありません。患者さんごとに1番いいものを用意する必要があります。

代替案は、1つしかない(思いつかない)こともあるでしょう。でも、実際にはよく考えると2通り以上あることがほとんどです。

もちろん、どの選択肢でも良いこともあります。しかし、数ある選択肢からどれが一番優れているのか検討することが薬剤師に求められているし、腕の見せ所ですよね。

詳しくは下記にまとめているので、合わせてご覧くださいね。

処方提案力は2つの要素からなる、できる薬剤師はココが違う! 今回のテーマは処方提案力! 処方提案力が高い人の方が、より優れた処方を医師に提案できます。患者さんが抱える薬物療法の問題点を解決...

医師との信頼関係を築いておく…上級編

最後に上級編です。疑義照会の成功率をグンと上げる最終兵器といってもいいくらいです。

信頼関係が疑義照会に影響を与える?!

医師に頼りにされる薬剤師は疑義照会もうまくこなします。間違いないです。

「薬剤師の◯◯さんが言うのだったらきっとそうだろう」

みたいなものがあると思います。

医師も人間です。初対面よりも日頃からコミュニケーションがとれている薬剤師の方に耳を傾けやすくなるのは当然ですよね。

明らかに間違った処方(禁忌)は別として、微妙なケース(慎重投与や投与量の減量等)ではとくに信頼関係がものを言います。

逆もそうです。薬剤師も医師との関係を気にします。疑義照会の成功率に大きく影響するからです。「いつも優しく話を聞いてくれる先生」と「怖くて話しかけにくい先生」とでは、難易度がぜんぜん違います。

絶対上手くいくと確信した疑義照会が失敗に終わるのは、信頼関係の弱さが1つの原因でしょう。

疑義照会は、医師と薬剤師の信頼関係のもとに行われます。

問題点を明確にして、最適な代替案を用意しても、医師との相性が悪いと上手くいかないわけです。

医師に頼りにされる薬剤師になるためには

問題解決できる薬剤師が頼りにされます。薬物療法の問題点を解決して医師の診療をサポートできる人です。

じゃあ、どうすればなれるのか?

地道な努力こそが身を結びます。たとえば下記のような日常の積み重ねです。

  1. 医師からの質問に正確かつスピーディーに回答する
  2. そのために、医師が専門外とする薬の知識を蓄えておく(専門分野はまず聞かれない)
  3. 医師がする質問の意図を汲み取って治療をサポートする(単に質問に答えるだけではなくて)

日頃から、医師からの質問や相談に応えて、一緒に治療をサポートしていれば、薬剤師に対する信頼が少しずつ築かれていきます。

途中失敗することがあっても地道に続けていれば、必ず報われます。次第に疑義照会に耳を傾けてくれるようになるのが実感できるはずです。

問題解決能力を高めることは、医師に頼りにされる(疑義照会が上手くいく)ための近道だといえます。

まとめ

疑義照会が得意になる3つのステップは以下のとおりです。

  1. 初級編…問題点を明確にする
    患者さんにとっての問題点は何か?医師と議論するのは「添付文書と処方のズレ」ではなくて、「患者さんに起こりうるリスク」である点を理解しておこう
  2. 中級編…代替案を用意しておく
    処方の問題点を伝えるだけでは不十分。複数ある選択肢から目の前の患者さんに最良の提案ができるスキルを身につけておこう
  3. 上級編…医師との信頼関係を築いておく
    日頃からのコミュニケーションや医師からの質問を契機に治療をサポートする地道な積み重ねが疑義照会が得意になるための秘訣。できれば飲み会にも参加した方がよい(^_^)

上記3つのステップを順番にマスターすればきっと疑義照会が得意になるはずです。日頃から意識して取り組みたいですね。

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