ピヴラッツ点滴静注液150mgが発売されました。
一般名はクラゾセンタンナトリウム。静脈内投与できるエンドセリン受容体拮抗薬です。くも膜下出血術後の脳血管攣縮を抑制します。
今回のテーマ
ピヴラッツと従来薬エリルの違いは何か?
調べたので共有したいと思います。
ピヴラッツとエリルの基本情報
はじめに基本情報の比較から。
製品名 | ピヴラッツ | エリル |
---|---|---|
販売 | 2022年4月 | 1995年8月 |
一般名 | クラゾセンタンナトリウム | ファスジル塩酸塩水和物 |
薬効分類 | エンドセリン受容体拮抗薬 | 蛋白リン酸化酵素阻害剤 |
規格 | 150mg | 30mg |
適応 | 脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮、及びこれに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制 | くも膜下出血術後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善 |
禁忌 | 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 妊婦又は妊娠している可能性のある患者 重度の肝機能障害を有する患者(Child-Pugh分類クラスC) 頭蓋内出血が継続している患者 | 出血している患者:頭蓋内出血 頭蓋内出血の可能性のある患者:出血した動脈瘤に対する十分な止血処置を術中に施すことができなかった患者 低血圧の患者 |
投与方法 | 持続点滴(17mL/hで投与) | 1日2〜3回点滴(30分かけて) |
希釈方法 | 300mgを500mLの生食に希釈 | 30mgを50〜100mLの生食又は糖液に希釈 |
減量基準 | 中等度の肝機能障害を有する患者…150mgに減量(17mL/hで投与) リファンピシンと併用…75mgに減量(150mgを希釈、8.5mL/hで投与) | 腎機能障害…10mg考慮 高齢者…10mg考慮 |
投与期間 | くも膜下出血発症15日目まで投与 | くも膜下出血術後早期に開始し、2週間投与 |
薬価 | ¥80,596/150mg | ¥1,886/30mg |
ポイントはマーカーをつけた部分です。
順番に見ていきましょう。
ピヴラッツとエリルの適応
まずは適応から。
ここは共通点です!
・ピヴラッツ…脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮、及びこれに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制
・エリル…くも膜下出血術後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善
文言は若干異なりますが、適応はほぼ同じと考えて問題ないと思います。くも膜下出血の原因は殆どが脳動脈瘤による(ピヴラッツのみ記載)し、脳血管攣縮を抑制すると、脳虚血症状に加えて脳梗塞(ピヴラッツのみ記載)発症の抑制効果も期待できるからです。
脳血管攣縮抑制に用いる薬は他にもある!
オザグレルナトリウムです。トロンビン合成酵素阻害により、プロスタサイクリンの産生を促し、抗血小板作用と脳血管拡張作用を示します。脳梗塞(ラクナ梗塞、アテローム血栓塞栓症)の治療でも用いる薬ですね。
一般名 | オザグレルナトリウム |
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分類 | トロンボキサン合成酵素阻害剤 |
適応 | ①クモ膜下出血術後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善 ②脳血栓症(急性期)に伴う運動障害の改善 |
投与方法 | ①1日量80mgを電解質液または糖液に溶解、24時間かけて静脈内に持続投与 ②1回量80mgを電解質液または糖液に溶解、2時間かけて1日朝夕2回の持続静注 |
ピヴラッツとエリルの作用機序
続いて作用機序について。
ここは1番の相違点!
・ピヴラッツ…エンドセリン受容体拮抗薬
・エリル…蛋白リン酸化酵素阻害剤
ピヴラッツの作用機序
ピヴラッツは静脈内投与できる初のエンドセリン受容体拮抗薬です。血管の収縮を妨げて、くも膜下出血術後の脳血管攣縮を抑制します。
- エンドセリンとは?
-
エンドセリン(endothelin:ET)は内皮細胞で産生されるペプチドホルモン(アミノ酸残基21個)です。ET1、ET2、ET3、3つのアイソフォームがあります。
- エンドセリンの働きは?
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代表的な作用は血流の調節です。ET1は血管平滑筋にあるETA受容体に結合し、強力な血管収縮作用を発揮します。Gタンパクを介してジアシルグリセロール(DG)とイノシトール-3リン酸(IP3)が産生され、プロテインキナーゼCの活性化により細胞内カルシウム濃度を上昇させるのが機序です。一方で、血管内皮にあるETB受容体に結合し血管拡張作用を示します。こちらは一酸化窒素(NO)の産生を介した機序です。
もう少し詳しく解説します。
くも膜下出血術後はETAの経路が亢進しています
ETBの働き(NO産生→血管拡張)が血塊に含まれるオキシヘモグロビンにより妨げられ、ETAの経路(DG、IP3産生→血管収縮)が活性化されるからです。ETAの経路はくも膜下出血術後の脳血管攣縮と深く関係しています。
ピヴラッツはETA受容体の選択性が高い
ここがポイントです。血管平滑筋のETA受容体に対する親和性が高く、効率的に血管攣縮を抑制できると考えられています。各種細胞におけるKi値を比較するとETB受容体と比較してETA受容体に対して1000倍以上の選択性を示しました。
エリルの作用機序
一方で、エリルは蛋白リン酸化酵素阻害剤です。血管平滑筋に収縮過程で働くRhoキナーゼを阻害し、ミオシン軽鎖のリン酸化を妨げて血管収縮を抑制します。他には、好中球の遊走抑制や活性酸素の除去効果もあるようです。
ピヴラッツとエリルの禁忌
続いて禁忌について。
押さえておきたいポイントは2つです!
- 妊婦又は妊娠の可能性のある人への投与
- 肝機能障害患者への投与
妊婦又は妊娠の可能性のある人への投与
ピヴラッツは「妊婦又は妊娠の可能性のある方」に投与できません。動物実験で胚毒性及び催奇形性が認められているからです。ヒトでのデータはありません。
(妊婦)妊婦又は妊娠している可能性のある患者に対しては投与しないこと。動物実験(ラット及びウサギ)において、エンドセリン受容体拮抗作用に基づく胚毒性及び催奇形性が認められた
ピヴラッツ点滴静注 電子添文
投与前に妊娠の有無を確認、投与後は一定期間避妊を行うよう指導が必要です。
妊娠可能な患者では、妊娠していないことを確認した後、本剤の投与を開始するとともに、本剤の投与終了後一定期間は避妊するよう指導してください。
ピヴラッツ点滴静注 適正使用ガイド
一方で、エリルは禁忌ではありません。催奇形性は認められておらず、有益性が危険性を上回る場合は投与できます。
(生殖発生毒性試験)
エリル点滴静注 インタビューフォーム
ラット及びウサギを用いて静脈内投与により検討した。高用量では親動物において自発運動の抑制、腹臥位及び体重の増加抑制が認められ、病理学的検査の結果、腎障害が認められた。これらの親動物の一般症状の悪化に伴い、妊娠前及び妊娠初期投与試験において排卵数の軽度な減少が認められ、胎児器官形成期投与試験並びに周産期及び授乳期投与試験において次世代児の体重増加の抑制等が軽度に認められたが、催奇形性は認められず、また、その他の生殖能力及び次世代児の観察において影響は認められなかった
肝機能障害患者への投与
ピヴラッツは重度の「肝機能障害を有する患者(Child-Pugh分類クラスC)」には投与できません。主な排泄経路が肝(胆汁→糞中)であり、排泄遅延による血中濃度の上昇を招くからです。
(排泄)健康成人男性4例に14C-クラゾセンタンを0.2mg/kg/時で3時間静脈内投与した時、投与終了後192時間までにほとんどが未変化体として排泄され、投与放射能の80.9%が糞中、15.0%が尿中に排泄された
ピヴラッツ点滴静注 電子添文
ピヴラッツはChild-Pugh分類クラスCの方ではAUCが3.79倍に増加します。
Child-Pugh分類 | 健常人に対する Cssの幾何平均値の比 | 健常人に対する AUC0-∞の幾何平均値の比 |
---|---|---|
A | 1.35倍 | 1.41倍 |
B | 2.10倍 | 2.37倍 |
C | 3.20倍 | 3.79倍 |
ピヴラッツは、肝機能障害のある人では投与中、肝機能のモニタリングが欠かせません。中止の要否は基準値の2倍がカットオフ値です。
肝機能障害を有する患者(重度の肝機能障害を有する患者(Child-Pugh分類クラスC)を除く)
肝機能検査を行い、臨床的に顕著に肝酵素(AST、ALT)が上昇した場合、総ビリルビン値が基準値上限の2倍を超える場合、又は黄疸などの肝障害の徴候を伴う場合は、本剤の投与を中止すること。血漿中濃度が上昇するおそれがある。
ピヴラッツ点滴静注 電子添文
一方で、エリルは肝機能障害の方にも投与できます。主な排泄経路は腎臓だからです。
(薬物動態)健康成人に塩酸ファスジル0.4mg/kgを単回30分間静脈内持続投与したときの血漿中未変化体濃度は、投与終了時に最高値に達し、速やかに減衰した。消失半減期は、約16分であった。また、塩酸ファスジルの主代謝物は、イソキノリン骨格の1位の水酸化体及びその抱合体であった。未変化体及び代謝物を合わせた投与後24時間までの尿中累積排泄率は、投与量の67%であった
エリル点滴静注 電子添文
ただし、肝臓で一部代謝されるため、肝機能障害のある方は慎重投与になります。
(慎重投与)肝機能障害のある患者[代謝が遅延して、血中濃度が上昇し、作用が強くあらわれる可能性がある。
エリル点滴静注 電子添文
ピヴラッツとエリルの投与方法
続いて投与方法について。
ピヴラッツ | エリル | |
---|---|---|
手技 | 持続点滴 | 点滴静注(1日2〜3回) |
速度 | 17mL/hで投与 | 30分かけて |
希釈 | 300mg(2V)+生食500mL | 30mg(1A)+生食or糖液50〜100mL |
投与期間 | くも膜下出血発症15日目まで | 14日間 |
ピヴラッツは持続点滴です。輸液ポンプ用いて時間17mLで24時間投与します。
一方で、エリルは点滴静注です。1日2〜3回30分かけて投与します。ここは大きな違いですね。
あと、ピヴラッツは投与に際して注意すべき点があります。
大きく2つです!
①ピヴラッツは残液が発生します。時間17mLだと24時間で408mLしか投与できないからです。約100mLは廃棄しなければなりません。間違って投与しないように注意が必要ですね。
(薬剤投与時の注意)
24時間毎に薬剤を交換すること。残液は廃棄すること。
ピヴラッツ点滴静注 電子添文
ふと思ったんですが、これって勿体無いですよね。結局、時間17mL(=10mg)×24時間だと、1日240mgしか使用せず、残り60mg分は破棄です。薬価でいうと、1日約3万円(16万の5分の1)が無駄になる計算、貴重な医療費が…。
②ピヴラッツはフィルター付きの点滴ルートを用いなければなりません。溶解性が不安定であり、結晶化の可能性があるからです。また、配合変化による結晶化(沈殿)を防ぐために単独投与になります。
(薬剤投与時の注意)
・本剤を投与する場合は、0.2μmフィルターを通して投与すること。
ピヴラッツ点滴静注 電子添文
・本剤は、pHが7より低い場合や他の輸液剤と直接接触した場合に沈殿する可能性がある。本剤は、中心ラインの専用ルーメン、又は専用の注入ラインを用いて単独で投与すること。
あと、投与期間が異なります!
ピヴラッツはくも膜下出血発症日を起点に、15日目まで投与します。たとえば、当日に手術をして翌日から投与する場合、14日が投与期間です。15日分投与できるわけではありません。
一方で、エリルの場合、投与開始日を起点として2週間投与します。
ピヴラッツとエリルの減量基準
続いて減量基準について。
ピヴラッツ | エリル | |
---|---|---|
減量基準 | ①中等度肝機能障害 →半分に減量する ・150mg +生食500mL ・17mL/hで投与 ②リファンピシン併用 →やむを得ず併用する場合、1/4に減量する ・150mg +生食500mL ・8.5mL/hで投与 ③他のOATP1B1/1B3阻害剤 →やむを得ず併用する場合、減量を考慮する | ①腎機能障害 ・10mg(1/3A)考慮 ②高齢者 ・10mg(1/3A)考慮 |
ピヴラッツは肝機能と併用薬をチェック!
ポイントは3つです。
- 肝機能障害(中等度)
- リファンピシン(RFP)と併用
- OATP1B1/1B3阻害剤(RFP以外)と併用
①ピヴラッツは中等度肝機能障害がある方は半分に減量しなければなりません。先述のように、肝代謝でありAUCが2倍程度に増加するからです。この場合は、150mgを生食500mLに溶解して時間17mLで投与します。
②ピヴラッツはリファンピシンと併用する場合、減量が必要になります。OATP1B1、OATP1B3及びBCRPの基質であり、血中濃度が上昇する可能性があるからです。リファンピシン併用時には約4倍にAUCが増加します。
健康成人男性13例にリファンピシン(OATP1B1及びOATP1B3の阻害薬)600mgを30分かけて静脈内持続投与し、その直後にクラゾセンタンを15mg/時で3時間静脈内持続投与した時、クラゾセンタン単独投与時に対する併用投与時のクラゾセンタンのCmax及びAUC0-∞の幾何平均値の比は3.13及び3.88であった
ピヴラッツ点滴静注 電子添文
代替薬への変更が困難で、やむを得ず併用する場合には、投与量を1/4に減量します。150mgを生食500mLに希釈、時間8.5mLで投与を行うかたちです。
③その他のOATP1B1/1B3阻害剤も減量を考慮しなければなりません。
シクロスポリンA、ロピナビル、リトナビル等
リファンピシンと同様に、他剤への変更を検討し、やむを得ず併用する場合には減量が必要です。
(併用注意)OATP1B1/1B3の阻害作用のない薬剤への代替を考慮すること。やむを得ず併用する際には、減量を考慮し、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。
ピヴラッツ点滴静注 電子添文
ここでどこまで減量すべきかが問題となります
明確に半量や1/4量と記載がないからです。リファンピシンのように相互作用の試験がされておらず、推奨用量が設定されておりません。現時点では、どの程度減量するかは主治医と相談するかたちです。
エリルは腎機能と年齢をチェック!
一方で、①エリルは腎障害のある患者さんは慎重投与になります。主な排泄経路が腎臓だからです。低血圧が認められた場合には減量(10mgへ)を考慮します。投与前に腎機能をチェックして投与設計するわけではありません。
(慎重投与)腎機能障害のある患者[排泄が遅延して、血中濃度が持続する可能性があり、低血圧が認められることがあるので、低血圧が観察された場合には減量(例えば1回10mg)すること。]
エリル点滴静注 電子添文
また、②高齢者では同様に減量(10mgへ)を考慮します。副作用のリスクが上昇するからです。
(高齢者への投与)一般に高齢者では生理機能が低下しており、腎機能が低下している可能性があるので、減量する(例えば1回10mg)など注意すること。なお、臨床試験及び市販後調査では、65歳以上の高齢者での副作用発現率は11.96%(1,798例中215例)であった
エリル点滴静注 電子添文
ピヴラッツとエリルの有効性
続いて有効性について。
ピヴラッツとエリルはどちらが優れているのか?
現時点ではわかりません。両薬剤を直接比較した試験はないからです。
ここでは、それぞれの有効性を確認します。
主要評価項目と結果は以下のとおりです
・ピヴラッツ…脳血管攣縮に起因する①新規脳梗塞、②遅発性虚血性神経脱落症状及び③原因を問わない死亡の複合エンドポイントを抑制した
・エリル…①脳血管撮影上の脳血管攣縮の発生程度、②症候性脳血管攣縮の発生頻度、 ③CT上の low density(LD)の発生程度、④くも膜下出血発症1ヵ月後の機能予後をそれぞれ改善した
どちらもプラセボに比べて、有効性が認められています。
しかし、ピヴラッツの方がどんな効果が得られるのかわかりやすいと思いました。脳血管攣縮を抑制すると、新規脳梗塞と神経脱落症状、死亡のイベント数を減らせるのかを検証しているからです。まさに、処方の目的(患者さんが得られるメリット)を評価しているわけですよね。
一方で、エリルの方は薬理作用の評価が中心である印象を受けます。一つの項目として1ヶ月後の機能予後は見ているものの、血管攣縮の発生頻度や程度がメインだからです。投与により患者さんが享受できる利点がはっきりしているとはいえません。
脳血管攣縮に起因するイベントを抑制できる、ここはピヴラッツの強みだと思います。
参考までに:ピヴラッツの有効性
国内第III相試験(コイリング術後患者)
- 対象…脳動脈瘤破裂に伴うくも膜下出血のコイリング術後患者※221例
①術前にWFNS分類I~IV及びFisher分類3の患者
②術後に血管領域の1/3以上を侵す広範囲な脳梗塞を認めた患者は除外
- 方法…発症48時間以内にクラゾセンタン10mg/時で静脈内持続投与(最大15日間)
- 比較…プラセボ
結果は以下のとおり
- 主要評価項目※…13.6%(14/103例)vs 28.8%(32/111例)p=0.0055
※脳血管攣縮に関連した新規脳梗塞、脳血管攣縮に関連した遅発性虚血性神経脱落症状及び原因を問わない死亡を一つ以上発現した割合 - 二つ目の主要評価項目※…33.0%(34/103例)vs 41.4%(46/111例)p=0.1871
※あらゆる理由による新規脳梗塞、遅発性虚血性神経脱落症状及び死亡を一つ以上発現した割合 - 中等度以上の脳血管攣縮の発現割合…28.4%(31/109例)vs 49.5%(55/111例)p=0.0012
→くも膜下出血術後(コイル塞栓術)においてピヴラッツの投与はプラセボに比べて、脳血管攣縮に関連したMorbidity/Mortalityイベントを抑制した
- ピヴラッツは第二の主要評価項目があるのはなぜ?
-
ここは気になりますよね。審議結果報告書には以下の記載がありました。
aSAHの出血部位は多様であり、DSAではとらえられない微小血管の攣縮も関与している可能性があることから、主要評価項目(1)の評価の妥当性を支持する上で、脳血管攣縮との関連性に関わらないM/Mイベントの発現の抑制についても有効性が検証できることを期待して、主要評価項目(2)を階層的閉検定手順の第2段階に設定した。
ピヴラッツ点滴静注 審議結果報告書残念ながら、プラセボと有意差はつきませんでしたが、各イベントにおける発現割合の点推定値はプラセボに比べて低値であり、主要評価項目(1)を支持する結果と判断されています。
遅発性脳血管攣縮の治療
・クラゾセンタン(推奨度B エビデンスレベル中)、ファスジル、オザグレルナトリウム(推奨度B エビデンスレベル低)静脈内投与することは妥当である
脳卒中治療ガイドライン2021「改訂2023」
ピヴラッツとエリルのモニタリング項目
最後に、モニタリング項目について。
ピヴラッツとエリルは投与中にどのような点に注意すべきか?
電子添文から抜き出すと下記です。
共通点は2つ
- 血圧低下
- 頭蓋内出血
どちらも血管拡張作用に基づきます。さらに、くも膜下出血後は観血的処置を行った後なので、もともと頭蓋内出血を起こしやすい状態です。
(重要な基本的注意)
・本剤は血管拡張作用を有するため、血圧低下が起こることがある。本剤投与に際しては、血圧が適切にコントロールされている状況下で投与を開始し、投与中は血圧を十分にモニタリングすること。
・本剤の投与に際しては、臨床症状及びコンピューター断層撮影による観察を十分に行い、頭蓋内出血が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと
ピヴラッツ点滴静注 電子添文
相違点は3つ
- 体液貯留
- ヘモグロビン低下
- QT延長
(重要な基本的注意)
・本剤投与により肺水腫、胸水、脳浮腫等の体液貯留が発現することがあるため、本剤投与中は体液量の調節に留意し、体液貯留の初期症状を十分に観察すること。特に、Triple H療法又はHyperdynamic療法が併用される場合は、体液貯留リスクが増強するおそれがあるため、慎重に体液量を管理すること
・ヘモグロビン低下があらわれることがあるので、本剤の投与開始前、及び必要に応じて本剤の投与中にヘモグロビン値を測定すること
・QT間隔の延長があらわれるおそれがあるので、本剤の投与開始前及び投与中に心電図を測定することが望ましい。異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと
ピヴラッツ点滴静注 電子添文
ピヴラッツは体液貯留の副作用が起こりやすい!
エンドセリン受容体拮抗作用により全身の血管を拡張させるからです。肺水腫、胸水、脳浮腫等が発現する可能性があり、体液コントロールが重要になります。国内の第II相及び第III相臨床試験の結果によると、体液貯留関連の有害事象、発現割合は以下のとおりです。
・ピヴラッツ… 36.8%(106/288例)
・プラセボ…14.0%(36/257例)
→ピヴラッツの方が高い
ピヴラッツはHb減少と貧血に注意!
開始前と投与中にHb値のモニタリングが必要です。循環血漿量の増加が原因とされています。国内の第II相及び第III相臨床試験の結果によると、貧血関連の有害事象、発現割合は以下のとおりです。
・ピヴラッツ… 17.0%(49/288例)
・プラセボ…10.5%(27/257例)
→ピヴラッツの方が高い
ピヴラッツはQT延長に注意!
海外臨床試験(Thorough QT 試験)において、高用量(20mg/時及び 60mg/時を各3時間)を静脈内持続投与した結果、 QT間隔の延長が認められたからです。国内の第II相及び第III相臨床試験の結果によると、頻脈性不整脈関連の有害事象、発現割合は以下のとおりです。
・ピヴラッツ… 3.8%(11/288例)
・プラセボ…4.3%(11/257例)
→割合は同程度でした
QT延長のリスクから、下記薬剤が併用注意の扱いになっています。
アミオダロン、モキシフロキサシン、キニジン等
まとめ
今回はエンドセリン受容体拮抗薬ピヴラッツの特徴について、エリルと比較しながら解説しました。
ピヴラッツの登場により、従来薬エリルやオザグレルとの使い分けが気になります。
新薬に置き換わるのか?上手く棲み分け(併用やレスキュー)がされるのか?
使用動向に注目していきたいです!