\ 自分の意見や考え方を、相手にわかりやすく伝える /
伝える力は、ビジネスマンにとって不可欠なスキルの1つです
もちろん薬剤師だってそう。日常業務では「伝える力」が求められています。
たとえば、服薬指導の場面。専門用語をわかりやすい言葉で噛み砕くことはもちろん、患者さんの理解度に合わせて伝える方法を工夫しなければ、服薬アドヒアランスは良くなりません。
処方提案の場面でもそう。どれだけ優れた提案でも、ポイントを絞って簡潔に説明できないと、医師の理解は得られず、薬剤師の仕事を患者さんに届けることはできないでしょう。
伝える力は薬剤師にとっても仕事に欠かせないスキルです!
今回は、「伝える力」を伸ばす3つのテクニックを紹介します。特に新人・若手薬剤師の方にお役に立てたら幸いです(^ ^)
では、本題に入ります。
- 結論は先に、理由で補強する!
- 概要を示してから、具体的に説明する!
- あれもこれも言わない、ポイントを絞って伝える!
日常業務の活用場面を例示しながら、順に説明します。
結論は先に、理由で補強する!
\伝える力を伸ばす1つ目のテクニック!/
結論は始めに、理由は後から伝えましょう!
なぜなら
たとえば、好きな気持ちを相手に伝えるとき。
(例としてふさわしいかは別として、簡潔に伝えたほうがいいはず…^_^)
告白の方法で典型的なのは最初に「あなたのことが好きです」と伝えるパターンです。それから、優しい性格に惹かれてとか、一緒に過ごす時間が楽しいとか、落ち着くとか、好きになった理由を伝えます。たぶんあっていますよね 。
最初に結論(好きだという気持ち)を伝えて、後から根拠(なぜ好きになったのか)を示す方が、告白された方はわかりやすいと思います。伝えたいことが瞬時に心に届き、シンプルな結論に解釈の余地がないからです。理由から入ると、結局何が言いたいの?と話の筋が読みにくく、結論を聞いても、あれこれ並べた理由との論理性に解釈の余地が生まれる可能性もあります。
伝える力を伸ばす1つ目のテクニック活用例
告白と同様に、疑義照会も最初に結論を持ってくるほうがわかりやすいと思います。
たとえば、慢性腎臓病がベースにあるAさん。帯状疱疹で処方された抗ヘルペス薬バラシクロビルの投与量が多かった場合を考えてみましょう。
まずは結論です。あとから理由を持ってきます。
Aさんは投与量を減らした方が良いと思います。
・バラシクロビルの代謝物アシクロビルは腎排泄率が約85%と高く、腎機能に応じた投与量の調節が必要だからです。
・過量投与は意識障害を招くおそれがあります。
投与量の目安は1日2000mgです。減量は可能でしょうか?
会話の導入部分や前置きなどは省き、文章を並べてみるとこんな感じです。
医師に1番伝えたいのは「減量が必要なこと」、理由は「投与量が多い」からですね。
結論と理由の順番を逆にすると
・バラシクロビルの代謝物であるアシクロビルは主に腎臓から排雪されます。
・腎排泄率が約85%と高く、腎機能に応じて投与量の調節が必要です。
・過量投与は意識障害を招くおそれがあります。
・AさんはeGFR40くらいです。
そのため、減量したほうが良いと思います。
目安は1日2000mgです。減量は可能でしょうか?
いかがでしょうか?結論に至るまでが長く話の筋が見えにくいですよね。一方で、先に結論→理由versionに目を通しているので、大差はないように感じる人もいるかも知れません。
いずれにせよ、最後までじっくりと話を聞けばそれなりに分かります。
でも、疑義照会の時間は十分に確保されているとは限りません。忙しい診察の合間に行わなければならず、最後までゆっくりと聞いてもらえる状況は少ないからです。
根拠や理由から入ると
・手短に、話してくれる?
・結局、何が言いたいの?
・要点は何?
と軌道修正を迫られることもあります。焦りから、準備したシナリオ通りに話を進められず、グダグダになって終わりという経験、皆さんもありますよね。
疑義照会は時間との勝負です。告白と違って、2人だけの空間で相手の言うことに集中してくれる状況ではないわけですね。
結論を先に伝えると上手くいく!
結論)減量した方が良いと思います
とさえ言えたら、何とかなります。
用量が多いということ?じゃあ、減らしておいて
と、忙しい状況であっても、処方の問題点が伝わるからです。最後まで聞いてもらえなくても、結論が伝われば大丈夫。時間切れになる心配もありません。
それに、結論から入ると、論理の破綻を回避できます。理由や根拠から入ると、話を進めていくうちに、言いたい結論に辿りつかない可能性もあるからです。「本当に言いたいことは、これじゃないのに…」って後から後悔するケースも少なくありませんよね。理由や根拠が多いほど、軌道が変わりやすく、結論から入ればそのリスクを防ぐことができます。
概要を示してから、具体的に説明する!
\伝える力を伸ばす2つ目のテクニック!/
全体像を話して、その後具体的に伝えましょう!
理由
たとえば、病院薬剤師の仕事について説明する場合。思いつく業務内容を順番に詳細に話していくのは適切ではありません。初めのうちは理解できても、話が進むにつれて「あとどのくらいの業務があるのか?」疑問が湧いてくるからです。終わりが見えない話にだんだんと疲れてきます。
一方で、分かりやすいのは「仕事の概要」を初めに伝える方法です。
たとえば、
業務は大きく5つあります。①病棟業務と②調剤業務、③在庫管理、④チーム医療、⑤外来業務です。順番に説明しますね
というと、聞き手は話の全体像を掴んだ状態で具体的な話に臨めます。筋道が見通せるので、内容の整理が容易です。理解度も上がると思います。
伝える力を伸ばす2つ目のテクニック活用例
おもに服薬指導の場面で役立ちますが、中でも吸入指導で威力を発揮します。
このような感じです!
吸入薬の使い方は3つのステップからなります。
①準備、②吸入、③後片付けです。
それぞれ詳しく説明しますね。
①まずは準備の方法について。
・
・
②次は吸入の方法です
・
・
③最後に、後片付けですね。
・
・
もう一度ポイントをおさらいします。
吸入薬の使い方は3つのステップでしたね。
①準備、②吸入、③後片付けです。
いかがでしょうか。全体像(吸入手技は①準備②吸入③後片付け、3つのステップがあること)を明らかにして、その後に具体的(①②③の詳細)に説明すると分かりやすいですよね。上手くいけば患者さんの理解度も上がり、短時間で吸入指導を終えられると思います。
一方で避けたいのは
吸入薬の説明用紙を見せて、順番に①準備→②吸入手技→③後片付けについて話す方法です。新人の頃はやってしまいがちですが、これは患者さん理解が良くありません。途中までは「うんうん」と頷いて聞いてくれた人が、次第に「うーん」と首を傾げるようになるからです。
もちろん、皆ではないですが、最後までスムーズに話が進まない人は少なくないと感じています。やはり、全体像が見えない分、理解が進まず途中で飽きてきたり、疲れが出てくるのかも知れません。
吸入手技のような難しい手順の説明を行うときには、全体像から具体的に話し、患者さんの受け入れを良くする工夫が必要だと思います。
あと少し脱線しますが、吸入手技の説明は、難解なイメージを除く工夫も欠かせません。初めて見る吸入器を前に、不安から自信を失くすからです。その時点で思考がストップする人もいます。対策としては、全体像の説明時に、吸入指導のハードルを下げておくことが大切です。
たとえば、
吸入薬の使い方は
・簡単です!
・慣れたら誰でもできます!
だから安心してくださいね。
吸入薬の使い方は3つのステップからなります。
①準備、②吸入、③後片付けです。
それぞれ詳しく説明しますね。
というふうに、前置きをすると、安心感から説明に対する受け入れが良くなると思います。
あれもこれも言わない、ポイントを絞って伝える!
\伝える力を伸ばす3つ目のテクニック!/
情報量はできるだけ少なく、ポイントを絞って伝えましょう!
理由
たとえば、話が長い人。日常会話や会議、カンファレンスなどで、思ったことを次から次に発言する人がいます。ある話をしてると、急に脱線して、また話を戻して、今度も脱線する……の繰り返し。結局、何が言いたかったのか?後から思い出せない……。いろんなことを話していたのに、一体何を伝えたかったのか、わからないって経験ありますよね。
話した分だけ聞き手が理解してくれる、これは間違った認識です。
伝える力を伸ばす3つ目のテクニック活用例
2つ目と同様、服薬説明の時です。
\患者さんに伝えたいことは、いっぱいあります/
- 薬の効果
- 薬の飲み方
- 服薬の重要性
- 注意すべき副作用
- 副作用の予防方法
- 飲み忘れ時の対処法
- 薬の保管方法……など。
有効で安全な薬物療法のために、薬の種類ごとに全部理解して欲しいですよね。
でも、現実的ではありません。薬剤ごとに多くの説明・注意事項があり、限られた時間の中で理解を得るのは不可能に近いからです。患者さんの記憶力にも限界があります。
本当に伝えたいことは何か?
情報量は必要最小限にポイントを絞ることが大切です。要点を3つくらいが少なすぎず、多すぎず、ちょうど良いと思います。
たとえば、副作用はこんな感じで
ポイントは3つあります。
・1つ目は…出血症状について(皮下出血、鼻血、血便などに注意)
・2つ目は…低血糖症状と対処法(ふるえ、冷汗等、糖分の摂取など)
・3つ目は…脱水の予防(温度調節、水分補給等)
最初から要点を3つと決めておくと優先順位をつける習慣が身に付きます。「本当に伝えるべきことが何か」を一生懸命に考える過程で情報の取捨選択を行うからです。薬剤の種類、患者背景等を考えて、自然と必要な説明内容をピックアップできるようになります。
また、ポイントは3つと宣言すると患者さんの理解度も向上すると思います。記憶に残りやすいし、後から思い出しやすいからです。たしかに、ポイントは3つだったよね。あれとこれと、もう一つは……といった感じに。
可能であれば、薬の情報提供書やお薬手帳などにポイントを書くのも良いと思います。赤丸で囲むとか線を引くとか、注意する点を書き込むとかですね。
まとめ
今回は、「伝える力」を伸ばす3つのテクニックを紹介しました。
- 結論は先に、理由で補強する!
→短時間で、簡潔に伝えるテクニック! - 概要を示してから、具体的に説明する!
→難解な説明をわかりやすく伝えるテクニック! - あれもこれも言わない、ポイントを絞って伝える!
→沢山の内容をわかりやすく伝えるテクニック!
伝える力は薬剤師にとっても不可欠だと思います。
薬剤師の仕事を余すことなく患者さんに届けるためには、伝える力を伸ばす努力が必要です。特に新人薬剤師の方は、日常業務で意識してみてはどうでしょうか♪