マンジャロとトルリシティ【共通点と相違点のまとめ】

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今回のテーマはマンジャロ皮下注!

一般名はチルゼパチド。GIP/GLP-1受容体作動薬です。

マンジャロは従来のGLP-1製剤と何が違うのか?
気になりますよね。

今回は、マンジャロ皮下注アテオス(GIP/GLP-1受容体作動薬)とトルリシティ皮下注アテオス(GLP-1製剤)を比較しながら、共通点と相違点をまとめたので共有します。

さっそく見ていきましょう!

目次

マンジャロとトルリシティの比較表

まずは。マンジャロとトルリシティの基本情報をざっくりと表にまとめました。

トルリシティは令和6年6月24日に1.5mgが承認されました

商品名マンジャロトルリシティ
販売2023年4月2015年9月
一般名チルゼパチドデュラグルチド
分類持続性GIP/GLP-1受容体作動薬持続性GLP-1受容体作動薬
規格6規格
2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mg
12規格
0.75mg/1.5mg
適応症2型糖尿病2型糖尿病
用法週1回投与週1回投与
用量個別用量
初回…2.5mg
維持…5mg
最大…15mg
※4週ごとに2.5mgずつ増量
固定個別用量
0.75mg
1.5mg
液量0.5mL0.5mL
針のサイズ29G29G
禁忌本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者
重症感染症、手術等の緊急の場合
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者
重症感染症、手術等の緊急の場合
半減期約5~6日108h
デバイスアテオスアテオス
保管2〜8℃…24ヶ月
室温遮光…21日
2〜8℃…24ヶ月
室温遮光…14日
薬価2.5mg…¥1,924
5mg…¥3,848
7.5mg…¥5,772
10mg…¥7,696
12.5mg…¥9,620
15mg…¥11,544
0.75mg…¥2,749
1.5mg…未収載
電子添文より作成、薬価は2024年4月時点です

重要だと思われる箇所にマーカーを引いています。

ここからは、マンジャロとトルリシティの共通点と相違点を見ていきましょう!

共通点
相違点
  1. 適応
  2. 用法
  3. 液量
  4. 針のサイズ
  5. デバイス
  6. 投与忘れ時の対応
  1. 作用機序
  2. 用量
  3. 保管期限(室温の場合)
  4. 有効性

マンジャロとトルリシティの共通点

適応

・マンジャロ…2型糖尿病
・トルリシティ…2型糖尿病

どちらも適応は2型糖尿病です。

当たり前ですが、マンジャロとトルリシティは1型糖尿病には使えません。治療にはインスリンの補充が必要不可欠だからです。GIP/GLP-1を介したインスリン分泌能の改善作用では期待した効果が得られません。

糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[インスリン製剤による速やかな治療が必須となるので、本剤を投与すべきでない。]

マンジャロ皮下注、トルリシティ皮下注 電子添文
1型糖尿病と2型糖尿病の違い
1型糖尿病2型糖尿病
症状急に症状が出て糖尿病を発症する徐々に症状が出て、糖尿病が進行する
原因膵臓のβ細胞の傷害により、インスリンが全く又はほとんど出なくなる(免疫反応の異常が主な原因と考えられている)遺伝的要因に加えて、生活習慣の乱れでインスリンの分泌が低下したり、インスリンの効きが悪くなる
治療インスリン注射食事療法、運動療法、薬物治療(ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、SU薬、GLP-1受容体作動薬、インスリン注射等)

国立国際医療研究センターHP 糖尿病とは?
糖尿病診療ガイドライン2019

GLP-1作動薬の位置付けは?

糖尿病標準診療マニュアル2024によると

  • GIP/GLP-1受容体作動薬GLP-1受容体作動薬(注射)はステップ5で登場。経口薬で血糖コントロールが難しい時に選択します。
  • GLP-1受容体作動薬(経口)はステップ3として推奨されています。リベルサス錠(セマグルチド)ですね。
  • DPP-4阻害薬との併用は避けるのが基本です。

本剤とDPP-4阻害剤はいずれもGLP-1受容体(及びGIP受容体)を介した血糖降下作用を有している。両剤を併用した際の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性は確認されていない。

マンジャロ皮下注、トルリシティ皮下注 電子添文
糖尿病標準診療マニュアル2024

用法

・マンジャロ…週1回投与
・トルリシティ…週1回投与

どちらも週1回製剤です。構造式に脂肪酸やIgG抗体の一部をくっつけることで、生体におけるクリアランスを低下させ、血中半減期を伸ばす工夫が施されています。

マンジャロトルリシティ
構造アミノ酸39個からなる合成ペプチド遺伝子組換え融合糖タンパク質
分子量4813.45約63,000
半減期延長の仕組みC20脂肪酸側鎖を付加し内因性アルブミンへの結合性アップ改変型ヒトIgG4のFcドメインを付加
各電子添文、インタビューフォームより

同効薬でありながらも、構造(分子量・サイズ)に大きさな差がありますね。

GLP-1製剤:DailyとWeekly製剤
毎日投与週1回投与
リラグルチド(ビクトーザ)
エキセナチド(バイエッタ)
リキセナチド(リスキミア)
デュラグルチド(トルリシティ)
セマグルチド(オゼンピック)
エキセナチド(ビデュリオン)

ビデュリオン皮下注は販売中止になりました(経過措置期間満了日2023年3月末)
バイエッタ注は2024年9月に販売中止となりました(経過措置期間満了日2025年3月末)

液量

・マンジャロ…0.5mL
・トルリシティ…0.5mL

どちらも0.5mL、液量は同じですね。

マンジャロは複数の規格がありますが、容量は変わりません。

マンジャロ皮下注 患者向医薬品ガイド

針のサイズ

・マンジャロ…29G
・トルリシティ…29G

どちらも29G、針のサイズは同じです。

マンジャロトルリシティ
注入器(オートインジェクター)には、注射針(29ゲージ針)付きのシリンジがあらかじめ装填されており、針の取り付けや取り外し、用量調整、空打ちをすることなく、ボタンを押すだけで自動的にチルゼパチドが投与でき、手技が簡便である。シングルドーズペンには、注射針(29 ゲージ針)付のシリンジがあらかじめ装填されており、針の取り付けや取り外し、用量調整、空打ちをすることなく、ボタンを押すだけで自動的にデュラグルチドが投与でき、手技が簡便である。
マンジャロ皮下注、トルリシティ皮下注、インタビューフォーム

針の太さによる痛みの強さに差はないですね。

デバイス

・マンジャロ…アテオス
・トルリシティ…アテオス

どちらもキャップを外して、皮膚に押し当てて、ボタンを押すだけのシンプルな操作手順(3ステップ)が魅力です。

デバイス:アテオスの使い方
  1. キャップを取り外す
  2. 底面を皮膚にあてて、ロックを解除する
  3. 注入ボタンを押す(長くても10秒待つ)
マンジャロ(チルゼパチド)取扱説明書

マンジャロ(チルゼパチド)取扱説明書
トルリシティ(デュラグルチド)取扱説明書

投与忘れ時の対応

・次回投与時点までに72時間(3日)以上→その時点で投与
次回投与時点までに72時間(3日)未満→スキップ

マンジャロとトルリシティ、どちらも投与忘れ時の対応は同じです。

投与を忘れた場合は、次回投与までの期間が3日間(72時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与すること。次回投与までの期間が3日間(72時間)未満であれば投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与すること。なお、週1回投与の曜日を変更する必要がある場合は、前回投与から少なくとも3日間(72時間)以上間隔を空けること。

マンジャロ皮下注、トルリシティ皮下注 電子添文より
たとえば、日曜日投与の場合、対応は以下の通りです
  • 水曜日までに気づく→その時点で投与)、次回は予定通り(日曜日)
  • 木曜日以降に気づく→投与せずに)、次回は予定通り(日曜日)
曜日
投与予定日
投与忘れ
投与の可否
◯投与可能、×投与不可(スキップ)

厳密にいうと、木曜日に気づいても投与できる場合があります。次回投与が日曜16時なら、木曜日の16時前に気づいたら、次回投与時点まで72時間以上の間隔があるからです。

なぜ、次回投与までの期間が3日間未満だとスキップの対応なのか?

薬物動態シミュレーション解析において、次回投与までの期間が3日以上の場合(投与予定日からの遅れが4日以内)、次回投与時におけるCmaxの増加が15%程度であるのに対して、次回投与までの期間が3日未満の場合(投与予定日から5日以上の遅れ)は、Cmaxの増加が20%以上となる可能性があるからです。3日間未満だと副作用のリスクがより高まるという理解ですね。

マンジャロ皮下注 インタビューフォーム

マンジャロとトルリシティの相違点

ここからは相違点について見ていきます!

作用機序

・マンジャロ…GIP/GLP-1受容体作動薬
・トルリシティ…GLP-1受容体作動薬

ここは1番の違いですね。

マンジャロの作用点は2箇所です!

  • グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体
    (glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP
  • グルカゴン様ペプチド-1受容体
    (glucagon-like peptide-1:GLP-1

ダブルエフェクトです。GIPとGLP-1の刺激は膵臓β細胞内のアデニル酸シクラーゼを介して、インスリンの分泌を促します。

マンジャロ皮下注 インタビューフォーム

一方で、トルリシティの作用点は1箇所!

GLP-1受容体です。アデニル酸シクラーゼを介したcAMP濃度の上昇により、インスリンの分泌を促します。

マンジャロはダブルエフェクトのおかげか、臨床試験では高い有効性を示しています(後述します)

投与量

ここも大きな相違点!1.5mgの用量追加により、違いはなくなりましたね!

・マンジャロ…個別用量(4週ごとに増量)
・トルリシティ…固定個別用量

トルリシティの投与量は誰でも同じ0.75mgです。(薬剤師にとって)固定用量はわかりやすいですね。一方でデメリットもあります。効果不十分でも増量できず、他剤への変更を余儀なくされるケースもあるからです。初回投与で副作用が出た時も減量できません胃腸障害等の忍容性、有効性等を見ながら1.5mgの選択が可能になります

それに対して、マンジャロは個別用量です。メリットは大きく2つあります。

マンジャロは効果不十分の際に増量が可能です。維持量は5mg、効果を見ながら4週ごとに2.5mgずつドーズアップ(15mgまで)できます。トルリシティではなかった選択肢ですね。また②マンジャロは減量により副作用を軽減できます。初回用量2.5mgから開始することに加えて、増量のタイミングを4週を超えて行ったりと微調整ができるからです。胃腸障害や過度な体重減少のリスクを回避又は軽減できます。

(用法及び用量に関連する注意)

・胃腸障害等の発現により忍容性が得られない患者では減量又は漸増の延期を考慮すること。

・本剤投与による用量依存的な体重減少が認められているため、血糖コントロールだけでなく、体重減少にも注意し、本剤の増量の必要性を慎重に判断すること

マンジャロ皮下注 電子添文

マンジャロは用量調節の幅があり、個々で最適な投与量(有効性と安全性を兼ね備えた)を選択できるのがメリットです!トルリシティも2段階ですが、個別対応が可能です。

有効性

マンジャロは

・プラセボに比べて優越性HbA1cの平均変化量
トルリシティに比べても優越性HbA1cの平均変化量

マンジャロ vs トルリシティ

国内第3相臨床試験

  • 対象…食事・運動療法で血糖コントロールが不十分な日本人2型糖尿病患者 636例
  • 方法…マンジャロ5mg、10mg、15mgを週1回投与(初回は2.5mg、4週ごとに2.5mgずつ増量し、維持量までドーズアップ)、トータル52週間投与。
  • 比較…トルリシティ0.75mgを週1回投与、トータル52週間投与

結果は以下のとおり

HbA1cのベースラインからの平均変化量(主要評価項目)

マンジャロ皮下注 インタビューフォーム

体重のベースラインからの平均変化量(副次評価項目)

マンジャロ皮下注 インタビューフォーム

マンジャロの5mg群、10mg群、15mg群はいずれもトルリシティ075mg群に比べて、52週時点のHbA1cのベースラインからの平均変化量を有意に低下させました。また、体重のベースラインからの平均変化量においても同様に有意差が認められました。

HbA1c低下作用、体重減少作用はマンジャロの方が優れており、血糖コントロールに難渋しているケース(特に肥満例)には有用だと考えられます。

マンジャロは体重減少に注意!

一方で、高齢者や低体重の方では、痩せやサルコペニアに対する懸念があり注意が必要です。RMPには重要な潜在的リスクとして【体重に関連する安全性】について記載があります。投与中は体重のモニターを行い、過剰な体重減少に対しては減量や中止を考慮しなければなりません。

(重要な基本的注意)

過度の体重減少がみられた場合は、本剤の減量又は投与中止を考慮すること。投与開始時のBody Mass Index(BMI)が23kg/m2未満の患者での本剤の有効性及び安全性は検討されていない。

マンジャロ皮下注 電子添文

保管期間(室温の場合)

ここにも違いがありました!

・マンジャロ…21日間
・トルリシティ…14日間

どちらも使用期限は冷蔵庫(2〜8℃)だと製造日から24ヶ月ですが、室温(1〜30℃)では違いがあります。冷蔵庫で保管するのを忘れても、マンジャロの方が長く使えます(廃棄のリスク低い)。もし3週間以内に使うなら、マンジャロは冷蔵庫に保管しなくても大丈夫ですね(夏場は注意ですが…)。

まとめ

今回は、マンジャロ皮下注アテオス(GIP/GLP-1受容体作動薬)とトルリシティ皮下注アテオス(GLP-1受容体作動薬)を比較しながら、共通点と相違点をまとめました。

本記事のポイント

商品名マンジャロトルリシティ
一般名チルゼパチドデュラグルチド
分類
相違点①
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬持続性GLP-1受容体作動薬
適応症
共通点①
2型糖尿病2型糖尿病
用法
共通点②
週1回投与週1回投与
用量
相違点②
初回…2.5mg
維持…5mg
最大…15mg
※4週ごとに2.5mgずつ増量
0.75mg
1.5mg(増量可)
液量
共通点③
0.5mL0.5mL
針のサイズ
共通点④
29G29G
デバイス
共通点⑤
アテオスアテオス
打ち忘れ時の対応
共通点⑥
次回投与まで72時間以上
→その時点で投与可
次回投与まで72時間以上
→その時点で投与可
保管
相違点③
2〜8℃…24ヶ月
室温遮光…21日
2〜8℃…24ヶ月
室温遮光…14日
有効性
相違点④
HbA1cの平均変化量:トルリシティに比べて、有意差あり(5mg,10mg,15mg)
体重の平均変化量:トルリシティに比べて有意差あり
電子添文より作成

マンジャロの特性は?

優れたHbA1c低下作用投与量の調節性だと記事を書きながら思いました。有効性と安全性のバランスを見極めながら上手く使いこなすべき薬剤だといえます。一方で、体重減少作用の強さは気になりました。諸刃の剣であり、高齢者や痩せた方では不利に働く場面も想定されるからです。発売後、従来のGLP-1製剤とどのように使い分けるのか、使用動向に注目していきたいと思います。

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