今回のテーマはリフヌア錠!
一般名はゲーファピキサントクエン酸塩、慢性咳嗽治療薬です。
どのような特徴があるのか?
押さえておきたい4つのポイントについて、まとめたので共有します。
リフヌア錠の基本情報
まずは基本情報の確認から。
製品名 | リフヌア錠 |
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発売 | 2022年4月 |
一般名 | ゲーファピキサントクエン酸塩 |
規格 | 45mg |
作用機序 | 選択的P2X3受容体拮抗薬 |
適応 | 難治性の慢性咳嗽 |
用法用量 | 1回45mgを1日2回経口投与 |
禁忌 | 過敏症の既往歴のある患者 |
重大な副作用 | なし |
薬価 | ¥187.4/錠 |
ここからは4つのポイントを見ていきます。
- 作用機序
- 適応
- 投与方法
- 注意点
リフヌア錠の作用機序
選択的P2X3受容体拮抗薬
①リフヌアはP2X3受容体拮抗薬です。P2X3受容体って何?という感じですよね。簡単にいうと、感覚神経に存在する受容体で、咳を引き起こすための刺激(ATP)を受け取り、咳中枢へ伝える役割があります。
②リフヌアは末梢性の鎮咳薬に分類されます。咳中枢を抑える従来の中枢性鎮咳薬(リン酸コデイン、デキストロメトルファン等)と作用点が異なるニュークラスの薬剤です。
咳嗽が起こる機序を見ながら、リフヌアの作用機序を確認します。
・気道にある求心性の知覚神経終末(Aσ繊維:有髄神経、C繊維:無髄神経)が機械的、化学的に刺激される。
Aσ繊維:有髄神経(機械的、pH低下等の刺激を伝達)
C繊維:無髄神経(化学的、炎症等の刺激を伝達)
・C繊維にあるP2X3受容体にATPが結合し、陽イオンの流入により興奮が起こる(シグナル伝達)
ここでリフヌアが作用する!
P2X3受容体拮抗作用により、ATPの結合を妨げ、咳嗽シグナル伝達を抑制する
ここで中枢性鎮咳薬が効く
製品名(一般名) | 作用機序 |
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メジコン (デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物) | 延髄にある咳中枢に直接作用し、咳反射を抑制することにより鎮咳作用を示す |
アスベリン (チペピジンヒベンズ酸塩) | 延髄の咳中枢を抑制し咳の感受性を低下させることにより鎮咳作用を示すとともに、気管支腺分泌を亢進し気道粘膜線毛上皮運動を亢進することにより去痰作用を示す |
アストミン (ジメモルファンリン酸塩) | 延髄の咳中枢に作用して感受性閾値を高めて、その働きを抑制する |
リン酸コデイン (コデインリン酸塩水和物) | 本剤はモルヒネと極めて類似の化学構造を有し、オピエート受容体に結合するが、その薬理作用はモルヒネよりも弱い。鎮痛作用はモルヒネの約1/6、精神機能抑制作用、催眠作用及び呼吸抑制作用は約1/4といわれる。これらの作用は量を増加しても、それに対応して増強するとはかぎらない。悪心・嘔吐、便秘などをおこす作用もモルヒネの1/4以下といわれる。これらの作用に比較して鎮咳作用が強く、延髄の咳嗽中枢に直接作用して咳反射を抑制することにより咳を鎮める。また腸管ぜん動運動を抑制して、止瀉作用を現す。 |
リフヌアはP2X3受容体拮抗薬(末梢性の鎮咳薬)です。従来の中枢性鎮咳薬のように、眠気や便秘の副作用が問題にならず、またコデインのように呼吸抑制や依存のリスクもないのがメリットです!
リフヌアの適応
難治性の慢性咳嗽
リフヌアは「難治性の慢性咳嗽」に用います。
ポイントは、
- 慢性咳嗽
- 難治性
という部分。
①リフヌアは慢性咳嗽の治療薬であり、風邪や気管支炎等における急性期の咳嗽に対しては使えません。ここはデキストロメトルファンやチペピジン等、中枢性鎮咳薬との相違点です。咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019によると、8週間以上続く咳が慢性咳嗽と定義されています。参考までに、リフヌアの臨床試験では、咳嗽が1年以上続いている患者が対象です(国際共同第Ⅲ相試験、海外第Ⅲ相試験)。
期間 | 名称 |
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3週間未満 | 急性咳嗽 |
3週間以上8週間未満 | 遷延性咳嗽 |
8週間以上 | 慢性咳嗽 |
②リフヌアは慢性咳嗽の第一選択薬ではありません。原因の精査により、薬物療法を含む治療を行ってもなお咳嗽が続く場合に、投与の要否を検討して使う薬剤だからです。
効能又は効果に関連する注意
最新のガイドライン等を参考に、慢性咳嗽の原因となる病歴、職業、環境要因、臨床検査結果等を含めた包括的な診断に基づく十分な治療を行っても咳嗽が継続する場合に使用を考慮すること。
リフヌア錠45mg 電子添文
遷延性・慢性咳嗽は原因がさまざまで、臨床所見により想定される疾患に対して薬物療法を開始し、効果が認められた場合に、鑑別診断を行います。たとえば、慢性咳嗽の原因が、病歴や症状から咳喘息を疑う場合には、ICS+LABAを投与し効果が見られたら、診断が確定されるかたちです。
期間 | 治療薬 | 期間 |
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副鼻腔気管支症候群(SBS) | マクロライド系抗菌薬 | 8週間 |
咳喘息 | ICS+LABA ※吸入ステロイド+長時間作用性β2刺激薬 | 2週間 |
アトピー咳嗽/咽頭アレルギー(慢性) | ヒスタミンH1受容体拮抗薬 | 2週間 |
胃食道逆流症(GERD) | プロトンポンプ阻害薬(PPI) | 4-8週間 |
感染後咳 | 対症療法 | 2週間 |
では、リフヌアの出番は?
臨床試験におけるリフヌアの投与対象は、
(胸部X線又は胸部CTスキャンで異常が認められない)
- 治療抵抗性の慢性咳嗽 と
- 原因不明の慢性咳嗽
です。たとえば、咳喘息や胃食道逆流症に対して、吸入薬やPPI等の投与を行っても咳嗽が続く場合に、投与の要否・可否を検討します。または、慢性咳嗽の原因が不明で症状コントロールが困難な場合も選択肢になります。
治療抵抗性の慢性咳嗽は、咳嗽に関連すると考えられる原因疾患(喘息、胃食道逆流性疾患、又は上気道咳症候群等)の適切な治療を受けているにもかかわらず継続する咳嗽と定義した。原因不明の慢性咳嗽は、十分な臨床評価を行った結果にもかかわらず、関連すると考えられる原因疾患が示唆されない咳嗽と定義した。また、胸部X線又は胸部CTスキャン上に慢性咳嗽に対して大きな影響を与えていると考えられる異常又は他の重大な肺疾患が認められない患者を対象とした。
リフヌア錠45mg 電子添文 臨床成績より
なお、リフヌアは投与を始めるにあたって、難治性の慢性咳嗽であると判断した理由を、診療報酬明細書の摘要欄に記載する必要があります。
リフヌアの適応はかなり限定的です。治療抵抗性または原因不明の慢性咳嗽に対して、投与の要否・可否等を検討して用います。
リフヌアの投与方法
ポイントは2つです。
- 1日2回型
- 腎機能に応じて用量調節
①リフヌアは1日2回型の薬です。半減期は6〜10時間とされています。中枢性鎮咳薬(3-4回/日)に比べて、服薬負担が少ない薬剤ですね。
- リフヌアは食事の影響を受けるのか?
-
影響が小さく、食後や空腹時投与等の縛りはありません。患者さんのライフスタイルに合わせて、服用のタイミングを調節できます。
健康成人男性にゲーファピキサント50mgを空腹時及び高脂肪食摂取後に単回経口投与した際、ゲーファピキサントのAUC0-∞及びCmaxに対する臨床的に意味のある食事の影響は認められなかった。本剤は、食事とは関係なく投与可能である。
リフヌア錠45mg 電子添文 - リフヌアを飲むタイミングは?
-
アドヒアランスを考えると、朝夕食後が一般的だと思います。ちなみに、臨床試験では朝と晩に12時間おきに服用しており、朝食後眠前も選択肢ですね。
また、難治性の慢性咳嗽患者に、ゲーファピキサント錠45mgを1日2回52週間経口投与した国際共同第III相試験(027試験)及び海外第III相試験(030試験)においては、朝晩1回ずつ(約12時間間隔)の服用とされていた。
キョーリン製薬 よくある質問(FAQ)、リフヌア服用のタイミングは?
②リフヌアは腎機能に応じて投与量を調節します。
eGFR(mL/min/1.73m2) | 投与方法 |
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30以上 | 1回45mgを1日2回 |
30未満 | 1回45mgを1日1回 |
尿中の未変化体排泄率が約64%と高い(代謝物を含めると76%:代謝物の活性は不明)からです。母集団集積解析により、重度腎機能障害患者(eGFR30未満)では正常者に比べて、AUCが2倍程度になると予想されたことから、半量の設定となっています。
ゲーファピキサントの主要な消失経路は腎排泄であり、全身クリアランスにおける尿細管分泌クリアランスの寄与は約46%と推定されている。[14C]ゲーファピキサント50mgを単回経口投与した際、投与放射能に対し、尿中には未変化体が約64%及び代謝物が約12%、糞中には未変化体が約20%及び代謝物が約2%排泄された
リフヌア錠45mg 電子添文
- リフヌアの透析患者さんへの投与量は?
-
リフヌアは重度腎機能障害に対して減量の規定がありますが、透析を必要とする末期腎不全患者に対する投与量の記載はありません。用法及び用量の調節を設定するための十分なデータは得られていないからです。
9. 特定の背景を有する患者に関する注意
9.2.1 重度腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)で透析を必要としない患者
ゲーファピキサントの曝露量の上昇が認められた。9.2.2 透析を必要とする末期腎不全患者
リフヌア錠45mg 電子添文
推奨される用法及び用量の調節を設定するための十分なデータは得られていない。白鷺病院の透析患者に対する投薬ガイドラインによると、リフヌアを透析患者さんに投与する場合の投与量は45mg/日と記載があります。重度の腎機能障害患者に準ずるかたちです。投与中は副作用のモニタリング等、フォローの強化が必要だと思います。
リフヌアの注意点
注意すべき事項は大きく2つです。
- 味覚障害
- 腎障害(尿中の結晶性異物に起因する)
①リフヌアは服用中に味覚異常を起こす可能性があります。味の変化(苦味、金属味、塩味)や、味覚の減退・消失など、頻度は約63.1%と高めです。P2X2/3受容体の欠損、機能的阻害と味覚変化との関連を示す報告があり、同様の機序で起こることが示唆されています。
症状は軽度から中等度で、投与開始9日以内に発現することが多く、中止によりほとんどのケースで改善が見られます。一方で、用量依存性が認められており、腎機能障害がある人、高齢者では特に注意が必要です。
11.2その他の副作用
注)味覚不全は、主に苦味、金属味及び/又は塩味としても報告された。味覚関連の副作用(味覚不全、味覚消失、味覚減退、味覚障害)の発現割合は63.1%であった。大多数は、ゲーファピキサントの投与開始後9日以内に発現し、軽度又は中等度であり、ゲーファピキサントの投与中又は投与中止により改善した。なお、味覚関連の副作用は曝露量依存的に増加する傾向が認められている。
9.8 高齢者
リフヌア錠45mg 電子添文
腎機能に注意し、必要に応じて用法及び用量を調節すること。本剤は腎排泄型の薬剤である。一般に腎機能が低下していることが多いので、本剤による副作用のリスクが増加するおそれがある。
味覚異常は頻度が高く、自己判断による中止等を防ぐためにも、事前の説明に加えて、服薬後のフォローが大切だと思います。
②リフヌアは投与中に尿路結石等の腎障害を起こす可能性が示唆されています。非臨床試験において尿中の結晶性異物に起因する腎臓組織の障害性変化が認められているからです。臨床試験においては、結晶尿、尿中結晶陽性、尿中結晶の発現割合は低く、安全性の懸念となる所見は認められていませんが、RMPで重要な潜在的リスクとされています。
15.1 臨床使用に基づく情報
リフヌア錠45mg 電子添文
15.1.1 プラセボを対照とした国際共同第Ⅲ相試験(027試験)及び海外第Ⅲ相試験(030試験)の併合データにおいて、ゲーファピキサント45mgを1日2回投与した患者683例のうち4例で、膀胱結石1例、尿路結石2例、腎結石症1例が報告された(0.8/100人・年)。一方、プラセボを投与した患者675例のうち3例で、腎結石症2例、尿管結石症1例が報告された(0.5/100人・年)
リフヌアは尿中の結晶性物質による腎障害リスクも念頭に、服薬後のフォローに努めることが大切ですね。
まとめ
今回は慢性咳嗽治療薬リフヌア錠の特徴についてまとめました。
本記事のポイント
リフヌア錠の特徴 | |
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作用機序 | P2X3受容体拮抗薬 末梢性の鎮咳薬 ・中枢性鎮咳薬の副作用(便秘や眠気等)が問題にならない ・コデインは依存、乱用、呼吸抑制等のリスクあり |
適応 | 難治性の慢性咳嗽 第一選択ではない ・治療抵抗性の慢性咳嗽(Refractory chronic cough:RCC) ・原因が説明できない慢性咳嗽 (Unexplained chronic cough :UCC) |
投与方法 | 1回1錠を1日2回 食事の影響なし 腎排泄型、eGFR30未満は減量(1回1錠を1日1回) |
注意点 | 味覚異常 約60%と高頻度、軽度〜中等度、9日以内に起こることが多い 腎障害(尿中の結晶性異物に起因する) 重要な潜在的リスク、服薬後のフォローが必要 |
日常業務にお役立ていただけたら幸いです!