リンゼス錠とグーフィス錠の違いは?

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今回のテーマはリンゼス錠とグーフィス錠の違い!

一般名と発売日は下記のとおりです。

製品名一般名発売日
リンゼスリナクロチド2017年3月
グーフィスエロビキシバット2018年4月

ご存知のとおり、両薬剤はよく似た特徴があります。慢性便秘症の薬であり、投与のタイミングは1日1回食前です。加えてほとんど吸収されません。従来の下剤が効きにくいときが出番であるのも一緒ですよね。

じゃあ、リンゼスグーフィスの違いは何か?

調べてみると、結構ありました。勉強がてらまとめましたので共有したいと思います。ポイントは大きく7つです。

  1. 適応
  2. 作用機序
  3. 用量調節
  4. 食前投与の理由
  5. 相互作用
  6. コスト
  7. 一包化・粉砕の可否

順番に見ていきましょう!

目次

適応

どちらも慢性便秘症の薬ですが、一部適応が異なります。

リンゼス
グーフィス
  • 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
  • 便秘型過敏性腸症候群
  • 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)

リンゼスは慢性便秘症+IBS

もともとリンゼスは便秘型の過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome::IBS)の治療薬(2016年12月に承認)でした。その後2018年8月に、慢性便秘症の効能効果が追加承認されました。

グーフィスは慢性便秘症のみ

両剤は適応が異なります。リンゼスからグーフィスに切り替えるときには注意が必要ですね

ここで、有効性を確認しておきます

知っている方は2つ目のポイントまで飛ばして頂いてOKですよ(^_^)

共通の適応である慢性便秘症、臨床試験の概要は下記のとおりです

無作為化、非盲検比較試験(第1期)です!
リンゼス・国内第3相臨床試験
  • 患者:慢性便秘症患者182例
  • 介入:リナクロチド0.5mgを1日1回朝食前投与
  • 比較:プラセボ
  • 結果:主要評価項目…投与1週における自然排便回数の変化量は以下のとおり
自然排便回数の変化量
リナクロチド群
4.02回
プラセボ群
1.48回

→リナクロチドとプラセボとの差は2.53回(1.64−3.42)と優越性(P<0.001)を示しました。

続いてグーフィスの方は?

無作為化、非盲検比較試験です!
グーフィス・国内第3相臨床試験
  • 患者:慢性便秘症患者132例
  • 介入:エロビキシバット10mgを1日1回朝食前投与
  • 比較:プラセボ
  • 結果:主要評価項目…投与第1週における自発排便回数の変化量は以下のとおり
自然排便回数の変化量
エロビキシバット群
6.40回
プラセボ群
1.73回

→エロビキシバットとプラセボとの差は4.69回(3.45−5.93)と優越性(P<0.0001)を示しました。

どちらもプラセボに比べて有意な差が認められています。

では、投与24時間までに排便を認めた人の割合はどうか?

投与24時間までに排便認めた人の割合
リナクロチド群
72.8%
プラセボ群
48.3%
エロビキシバット群
85.5%
プラセボ群
41.3%

リナクロチドvsプラセボ:P<0.001、エロビキシバットvsプラセボ:p<0.0001

このように、投与1週における自然排便回数と24時間以内に自発排便が発現した患者の割合、どちらもプラセボに比べて、優越性を示しています。数値的にはグーフィスの方が良いですね。患者背景が異なり直接比較はできませんが…。

作用機序

2つ目のポイント!下剤は作用機序から大きく浸透圧性下剤と刺激性下剤に分かれます。前者は酸化マグネシウム、後者はセンノシドが有名ですね。両薬剤は新しい分類の薬剤になります。

リンゼス
グーフィス
  • 上皮機能変容薬(グアニル酸シクラーゼ C受容体アゴニスト)
  • 胆汁酸トランスポーター阻害薬

リンゼスは上皮機能変容薬

と呼ばれ、ルビプロストン(アミティーザ、クロライドチャネルアクチベータ)と同様の分類になります。作用部位は結腸上皮細胞です。グアニル酸シクラーゼC刺激作用により細胞内のサイクリックGMPが増加し、下記3つの作用が現れます。

  1. 腸管分泌促進
  2. 小腸輸送能促進
  3. 大腸痛覚過敏改善

①腸管分泌促進と②小腸輸送能促進により便の水分含量が増え、小腸を移動する時間が短縮されます。③大腸痛覚過敏改善が特徴的ですね。リンゼスは腹部不快感や腹痛を和らげる効果が期待できます。IBSに適応がある所以です。

グーフィスは胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害薬

作用部位は回腸末端部の上皮細胞です。胆汁酸の再吸収抑制により、大腸管腔内に流入する胆汁酸の量を増加させます。得られる効果は大きく2つです。

  1. 大腸管腔内の水分量、電解質を増やす
  2. 消化管運動を亢進させる

①大腸管腔内の水分量、電解質を増やす作用と②消化管運動を亢進させる作用を合わせてダブルアクションと呼ばれています。メーカーのセールスポイントですね。浸透圧性下剤と刺激性下剤の特徴を併せ持つわけです。

このように、両者は作用機序が異なります。便を柔らかくするリンゼスと便を柔らかくしつつ、大腸も動かすグーフィスという理解ですね

グーフィスは重度肝機能障害の人に使いにくい!

慎重投与になります。生体の胆汁酸をうまく利用できないからです。肝機能が悪い人では、胆汁分泌の低下、胆道閉塞の影響で、十分な効果が期待できない可能性がある点は押さえておきましょう。

ちなみにリンゼスは肝機能障害の影響を受けません。使い分けるポイントの一つですね。

用量調節

続いて3つ目のポイント。どちらも1日1回投与ですが、用量調節に違いがあります。

リンゼス0.25mg
グーフィス5mg
  • 通常…0.5mg(2錠)
  • 減量…0.25mg(1錠)
  • 通常…10mg(2錠)
  • 減量…5mg (1錠) 
  • 増量…15mg (3錠)

リンゼスは増量ができません(減量可)

通常量で下痢を認めた時には減量可ですが、効果不十分の際は他剤への切り替えを検討する形です。

一方で、グーフィスは増量できます。もちろん減量もOKです

両者は用量調節の幅に違いがあります。2段階のリンゼスと3段階のグーフィスです。排便状況に合わせて投与量の調節を行いますが、増量ができるのは後者の強みですかね

食前投与の理由

続いて4つ目のポイント!冒頭で述べたようにどちらも食前投与です。ではその理由は何か?以下のように異なります。

リンゼス
グーフィス
  • 下痢の頻度が増える
  • 効果減弱の恐れあり

リンゼスは食後投与の方が下痢の有害事象が増えます

国内第1相反復投与試験の結果(下痢の有害事象)は以下のとおりです。

  • 食前投与…61.1 %(11/18例)
  • 食後投与…85.0 %(17/20例)

過剰な効果を避けるために食前投与になっているわけですね。また、IBSでは食後に腹部不快感が増すので、食前投与が望ましいとされています。

一方で、グーフィスは食後投与では期待した効果が得られません

食事の刺激で胆汁酸が分泌される前に胆汁酸トランスポーターを阻害できないからです。食前投与でないと間に合わないわけですね。

このように、両薬剤は食前投与の理由が異なります。服薬アドヒアランスを考えて食後投与にできないか相談されることも多いので、覚えておきましょう

相互作用

続いて5つ目。ここは意外と盲点かも知れません。両薬剤で相互作用に違いがあります。

リンゼス
グーフィス
  • 併用注意薬…なし
  • 併用注意薬…あり

リンゼスは併用注意薬なし

添付文書上、薬物相互作用の記載がなく、薬物トランスポーター、CYPの基質にもなりません(※成分と活性代謝物に一部阻害作用が認められるものの、弱く臨床では問題にならないとされています)

一方で、グーフィスは併用注意の記載あり

大きく下記の4パターンです。

  • 胆汁酸製剤との相互作用
  • 胆汁酸を吸着する薬剤との相互作用
  • P-糖蛋白質を介した相互作用
  • 不明

グーフィスは①ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸の効果を弱めます。IBAT阻害作用により、同剤の吸収を妨げるからです。②アルミニウム含有制酸剤、コレスチラミン、コレスチミドは胆汁酸吸着作用があり、グーフィスの効果が弱まります。

また、③P-糖蛋白質を介した相互作用に注意です。ジゴキシン、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の血中濃度が増加します。さらに、④機序は不明ですが、ミダゾラムの血中濃度が低下するようです。

両者は相互作用に違いがあります。併用注意がないリンゼスの方が使いやすいですね。グーフィスは投与前に相互作用のチェックが欠かせません。意外と忘れやすいので気をつけたいですね。

コスト

続いて6つ目のポイント。薬価の違いです。

リンゼス
グーフィス
  • 0.25mg…¥83.6/錠
  • 5mg…¥100.2/錠

※2021年11月時点です

通常用量の場合

1日あたりリンゼスで167.2円グーフィスで200.4円かかります

33.2円の差ですね。1ヶ月あたりで計算すると1000円程度です。

グーフィスを増量した場合は1日300.6円かかります。高すぎですね(^_^)

慢性便秘症における治療薬の選択肢は増えましたが、どちらも従来の薬剤との比べると高薬価なので、処方提案の際にはコストの観点も忘れないようにしたいですね

同効薬の薬価は?

  • マグミット…¥5.7/錠(規格によらず)
  • センノシド…¥5.1/錠(規格によらず)
  • アミティーザ24μg…¥116.0/cap
  • モビコール配合内用剤LD…¥80.0/包

※2021年11月時点

従来薬と最近の下剤でかなりの差があります。アミティーザはかなり高いですね。モビコールは1日最大6包まで使えます。1日500円近くかかる計算、患者負担と医療費が……。

一包化・粉砕の可否

最後に7つ目のポイントです。調剤のときに使える知識ですね。下記のように異なります。

リンゼス
グーフィス
  • 一包化…不可
  • 粉砕…不可
  • 一包化…可
  • 粉砕…条件付きで可

リンゼスは一包化と粉砕ができません

吸湿性が高いからです。

25°C/75%RH (暗所)
1日後に類縁物質及び水分で規格を逸脱する顕著な増加を認め、7日後では溶出性及び定量において規格内での変化を認めた 

リンゼス錠 インタビューフォーム

添付文書でも服用直前に錠剤を取り出すよう注意喚起がされています。2020年9月に錠剤の小型化によりSPシートがPTPシートへ変更がされましたが、対応は変わりません。

本品はアルミ包装で品質保持をはかっているので、服用直前に錠剤を取り出すこととし、無包装状態、あるいは別容器に移しての保存はしないこと。

リンゼス錠 添付文書

一方で、グーフィスは一包化できます

以下のように3ヶ月までなら問題なさそうです。

・50℃/なりゆき湿度、褐色ガラス瓶、気密、3ヶ月→類縁物質増加(規格内)
・25°C/90%RH、褐色ガラス瓶、気密、3ヶ月→類縁物質増加(規格内)乾燥減量値上昇 錠剤硬度低下
・25°C(D65ランプ)、シャーレ開放、120万lx・時間→ 類縁物質増加(規格内)

グーフィス錠、インタビューフォーム

粉砕も条件付きで可能です

遮光袋に入れて3ヶ月程度可能と考えられます。

・粉砕、25℃/RH60%、3ヶ月→含量の残存率99%
・粉砕、25℃/RH60%、120万lx・時間 →含量の残存率93%

メーカー回答

両者は一包化・粉砕の可否が異なります。服薬アドヒアランス、嚥下機能に合わせて柔軟に対応できるのはグーフィスですね

まとめ

今回はリンゼスとグーフィスの違いについて解説しました。7つのポイントをまとめると下記です。

  1. 適応:リンゼス…IBS適応あり、グーフィス…なし
  2. 作用機序:リンゼス…GC-C、グーフィス…IBAT
  3. 用量調節:リンゼス…増量不可、グーフィス…可
  4. 食前投与の理由:リンゼス…効果増強、グーフィス…減弱
  5. 相互作用:リンゼス…併用注意なし、グーフィス…あり
  6. コスト:リンゼス<グ
  7. 一包化・粉砕の可否:リンゼス…不可、グーフィス…可・条件付き可

記事を書きながら、結構違いがあって面白いと感じました。

日常業務で便秘薬の相談はよくあります。もし、リンゼスとグーフィスどちらにしようか?悩んだときには、上記違いに注目すると目の前の患者さんにふさわしい薬剤が見つかるはずです♪

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