レクビオ皮下注とレパーサー皮下注の違い

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今回のテーマはレクビオとレパーサーの違い!

どちらも、

LDL-コレステロールを低下させる注射薬です
PCSK9を阻害するという点も変わりません
適応も臨床の位置付けもほぼ同じです

では、両薬剤の違いは何か?

レクビオレパーサ

勉強がてらまとめたので、共有します。

目次

レクビオとレパーサーの比較表

製品名レクビオ皮下注レパーサ皮下注
一般名インクリシランエボロクマブ
規格300mgシリンジ(1.5mL)140mgペン(1mL)420mgオートミニドーザー(3.5mL)
分類持続型LDLコレステロール低下siRNA製剤ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体製剤
適応家族性高コレステロール血症
高コレステロール血症

ただし、以下のいずれも満たす場合に限る
・心血管イベントの発現リスクが高い

・HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又はHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない

家族性高コレステロール血症のうちホモ接合体について は、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性について十分に理解した上で、本剤による治療の適否を慎重に判断すること
家族性高コレステロール血症
高コレステロール血症

ただし、以下のいずれも満たす場合に限る
・心血管イベントの発現リスクが高い
・HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又はHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない
用法用量1回300mgを初回、3ヶ月後、以降6ヶ月に1回の間隔で皮下投与家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体及び高コレステロール血症
140mgを2週間に1回又は420mgを4週間に1回皮下投与420mgを4週間に1回皮下投与
家族性高コレステロール血症ホモ接合体
420mgを4週間に1回皮下投与

効果不十分な場合には420mgを2週間に1回皮下投与。LDLアフェレーシスの補助として使用する場合は、開始用量420mgを2週間に1回皮下投与可
自己注射
薬価¥443,548¥24,302¥47,188
レクビオ、レパーサー電子添文より作成、薬価は2024.4時点

レパーサ皮下注420mgオートミニドーザーは販売中止(2025年10月ごろ在庫消尽の見込み)となりました。140mgペンは継続して販売されます。
レパーサ皮下注420mgオートミニドーザー 販売中止のご案内(2024年10月)

はじめに、レクビオとレパーサの共通点を押さえておきます。大きく5つです。

レクビオとレパーサの共通点
  1. 薬効…LDLコレステロールを低下させる
  2. 適応…家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症
  3. 位置付け…心血管イベントリスクが高く、スタチンで効果不十分、副作用で忍容性がない
  4. 剤型…皮下注射製剤
  5. コスト…高額(スタチンなどの経口薬に比べて)

ざっくりいうと、①どちらもPCSK9に作用して、LDLコレステロールを低下させる④皮下注射製剤です。②高コレステロール血症、家族性コレステロール血症に用います。

PCSK9とは?

proprotein convertase subtilisin/kexin type 9 の略
日本語では、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型

正直、これだけでは何のことかわからないですね^ ^

PCSK9の働きは

  • 主に肝臓で合成されて、
  • 血中でLDL受容体に結合し、
  • 共に肝細胞内へ取り込まれ、分解される

つまり、PCSK9はLDL受容体の分解促進タンパク質です。LDL受容体の再利用(リサイクリング)を妨げ、血中のLDLコレステロール値を上昇させます。

レクビオとレパーサーは第一選択薬ではありません(ここが大事!)。心血管イベントのリスクが高く、スタチンで効果が不十分または不耐例という制限があるからです。経口薬に比べて、⑤コストも費用もかかります。

ここからが本題!レクビオとレパーサーの違いについて見ていきましょう!

レクビオとレパーサの相違点

大きく5つです。

  1. 作用機序
  2. 適応
  3. 投与間隔
  4. 用法用量
  5. 自己注射の可否

作用機序

1つ目の相違点

レクビオ…siRNA製剤
レパーサー…抗PCSK9モノクローナル抗体製剤

ここが最大の違いです。どちらもPCSK9がターゲットですが作用機序が異なります。ざっくりというと、レクビオはPCSK9の生成を阻害(PCSK9をコードするmRNAを分解)、レパーサーはできあがったPCSK9の働きを阻害(PCSK9に特異的に結合)します。レクビオの方が上流で作用するわけですね。

siRNA製剤とは

small interfering RNA の略
日本語では、短鎖干渉RNA

  • 構造…20数塩基対の短い2本鎖のRNAのこと
    パッセンジャー鎖とガイド鎖からなる
  • 作用…標的となるmRNAの分解を誘導する
    ウイルス感染に対する生物防御機構RNA干渉(RNA interference:RNAi)に関与
  • 機序…RNA誘導サイレンシング複合体(RNA Induced Silencing Complex:RISC)のアルゴノート2蛋白質(Argonaute2:Ago2)に取り込まれ、1本鎖となり(ガイド鎖)、RISCによって標的のmRNAを切断

日経バイオテク siRNA/siRNA医薬とは

レクビオの作用機序
レクビオ皮下注 インタビューフォーム
レパーサの作用機序
レパーサ皮下注 インタビューフォーム

どちらもPCSK9がターゲットですが、その機序が異なります。レクビオはPCSK9をコードした遺伝子のmRNAを分解(PCSK9の生成)、一方で、レパーサーはPCSK9が働きを阻害する(機能)かたちです。

適応

2つ目の相違点

適応レクビオレパーサー
高コレステロール血症
家族性高コレステロール血症
ヘテロ接合体
家族性高コレステロール血症
ホモ接合体
各製剤、電子添分より作成

どちらも「家族性高コレステロール血症(FH)」と「高コレステロール血症」に適応を有します。違いは、レクビオはホモ接合体患者に対して「投与の適否を慎重に判断する」との但し書きがある点です。

5.3 家族性高コレステロール血症のうちホモ接合体について は、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性について十分に理解した上で、本剤による治療の適否を慎重に判断すること。

レクビオ皮下注 効能又は効果に関連する注意 〈効能共通〉

なぜかというと、レクビオはホモ接合体患者を対象とした試験(海外第Ⅲ相試験:ORION-5)でプラセボに比べて、主要評価項目(投与150日目におけるLDL-Cのベースラインからの変化率)について優越性が認められなかったためです。部分解析の結果、LDL受容体の発現がない患者が含まれていること、LDLアフェレシスを併用していること等が原因として挙げられています。

海外第Ⅲ相試験(ORION-5)、LDL-Cの変化率
レクビオ皮下注、電子添文
海外第Ⅲ相試験(ORION-5)、LDL-Cの変化率(部分集団解析)
レクビオ皮下注、電子添文

一方で、レパーサーは、家族性高コレステロール血症ホモ接合体患者を対象とした試験においても有効性が確認されています。

国際共同長期投与試験
(非盲検)
海外第II/Ⅲ相試験
(TESLA試験)
対象100例(うち日本人7例)外国人49例
方法420mgを2週に1回
または4週に1回
420mgを4週に1回
ベースラインからのLDL-C変化率-23.4%
(24週時点)
エボロクマブ-26.1%、プラセボ6.1%
(12週時点)
レパーサー皮下注 電子添文

電子添文によるとFHのホモ接合体患者に対してレクビオの使用は限定的です。ただ、作用機序からするとどちらもLDL受容体が欠損したホモ接合体患者には効果が期待できないはず…。レパーサとどのように使い分けるのか、気になりますね。

投与間隔

3つ目の相違点

レクビオ…2週に1回又は4週に1回
レパーサー…初回、3ヶ月後、6ヶ月ごとに

ここは、レクビオが優れています。投与間隔が長く、投与に伴う患者負担が少なくなるからです。例えば、1年間投与する場合、以下のように大きく異なります。

123456789101112合計
レパーサー14022222222222224
レパーサー42011111111111112
レクビオ3001113
家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体、高コレステロール血症に使用する場合

投与回数を減らせるのはレクビオの強みですね

用法用量

4つ目の相違点

レクビオレパーサー
高コレステロール血症1回300mgを初回、3ヶ月後、以降6ヶ月に1回の間隔で皮下投与①140mg/2週
②420mg/4週
家族性高コレステロール血症
ヘテロ接合体
同上①140mg/2週
②420mg/4週
家族性高コレステロール血症
ホモ接合体
同上②420mg/4週
効果不十分な場合
③420mg/2週
LDLアフェレーシスの補助
開始420mg/2週

レクビオは適応によって投与方法は変わりません。誰でも一律300mgを初回、3ヶ月後、その後6ヶ月後です。一方で、レパーサは適応症によって1回量と投与間隔が変わります。高コレステロール血症とFHヘテロ接合体患者では、①140mg/2週または②420mg/4週のどちらかを選択します。FHホモ接合体患者では①140mg/2週は選択できません。さらに同患者では、③420mg/2週の増量設定があり、効果不十分又はLDLアフェレシス併用時(開始から)に選択できます。

レクビオは投与方法が固定ですが、レパーサは適応症によって変わります。FHホモ接合体患者では状況に合わせて増量できる点も押さえておきましょう。

自己注射

5つ目の相違点

レクビオレパーサー
自己注射

レクビオは自己注射できません。通院時に医療機関で投与するかたちです。一方で、レパーサーは自己注射の選択肢があり、手技の理解やご家族の協力が得られれば、在宅で投与できます。レクビオに比べて投与回数が多いですが、通院回数を減らすことが可能です。

レパーサーの自己注射はペンとオートミニドーザーが選択できます。投与回数を減らせるオートミニドーザーの方が断然優位と思われがちですが、精密機械であり取り扱いに慎重さが求められるため、ペンの方が使い勝手が良いケースは少なくない印象です。手技の理解不足や機械の不具合?も含めて、導入初期は患者さんからの問い合わせが多い気がします…。

レパーサ皮下注140mgペン 自己投与のための使い方ハンドブック(2021年11月)
レパーサ皮下注420mgオートミニドーザー自己投与のための使い方ハンドブック(2022年3月)

まとめ

今回はレクビオ皮下注とレパーサー皮下注の違いをまとめました。

本記事のポイント

相違点は大きく4つです。

レクビオレパーサー
①作用機序PCSK9の生成PCSK9の働き
②適応ホモ接合体患者は
投与の適否を慎重に判断
③投与間隔長い:投与回数短い:投与回数
④用法用量固定用量個別用量
⑤自己注射

レクビオの登場により、処方の動向はどうなるのか注目ですね。

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