今回のテーマは新型コロナ感染症の治療薬!国内で使用できる薬剤はラゲブリオ、パキロビッド、ゾコーバ、ベクルリーの4種類です。どのような特徴があるのか?どう使い分けるのか?注意すべき点は何か?ポイントをまとめたので共有します。
新型コロナ感染症の治療薬一覧
| 商品名 | ラゲブリオ | パキロビッド | ゾコーバ | ベクルリー |
|---|---|---|---|---|
| 一般名 | モルヌピラビル | ニルマトレルビル/リトナビル | エンシトレルビル | レムデシビル |
| 規格 | カプセル200mg 錠400mg | パック600 パック300 | 錠125mg | 点滴静注用100mg |
| 作用機序 | RNA核酸アナログ | プロテアーゼ阻害 | プロテアーゼ阻害 | RNA核酸アナログ |
| 適応 | SARS-CoV-2による感染症 | SARS-CoV-2による感染症 | SARS-CoV-2による感染症の治療およびその予防 | SARS-CoV-2による感染症 |
| 対象 | 18歳以上 | 成人及び6歳以上かつ体重20kg以上の小児 | 成人および12歳以上の小児 | ①成人及び体重40kg以上の小児 ②体重3.5kg以上40kg未満の小児 |
| 投与方法 | 1回800mg 1日2回 | 1回300mg/100mg 1日2回 6歳以上かつ体重20kg以上40kg未満の小児 1回150mg/100mg 1日2回 | 初日 1回375mg 1日1回 2日目以降 1回125mg 1日1回 | ①初日200mg 投与2日目以降 100mgを1日1回 点滴静注 ②初日5mg/kg 投与2日目以降 2.5mg/kgを1日1回 点滴静注 |
| 投与期間 | 5日間 | 5日間 | 5日間 | 軽症:3日間 中等症I以上:5〜10日間 |
| 投与開始 タイミング | 5日以内 | 5日以内 | 3日以内 | 7日以内が望ましい |
| 腎障害時の投与 | 減量不要 | 減量必要 | 減量不要 | 減量不要 |
| 相互作用 | 禁忌なし | 禁忌多数 | 禁忌多数 | 禁忌なし |
| 妊婦 | 禁忌 | 有益性投与 | 禁忌 | 有益性投与 |
| 授乳婦 | 有益性投与 | 有益性投与 | 投与しないことが望ましい | 有益性投与 |
| 薬価 1コース | 86,596円 | パック600 99,027.5円 パック300 62,693円 | 49,630円 | 185,992円 (3日間) |
新型コロナ感染症の治療薬、臨床の位置付け

レムデシビルとモルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビルの処方目的は入院・重症化予防です。入院を要しない重症化リスク因子を有するCOVID19患者を対象とした臨床試験において有効性を認め、承認されました。
一方で、エンシトレルビルの処方目的は症状の早期改善です。主要症状①倦怠感または疲労感、②熱っぽさ又は発熱、③鼻水又は鼻づまり、④喉の痛み、⑤咳の改善効果が示されています。この結果をもって承認されました。その後、オミクロン株の流行下でリスク因子を有する患者を対象とした保険データベース研究において、エンシトレルビル群は抗ウイルス薬治療なしの群に比べて、あらゆる原因による入院のリスク低下が示されています。

外来診療における新型コロナ感染症の薬剤選択は、処方目的(重症化予防、症状改善)と後述する薬剤の特性(投与経路、腎機能、相互作用、妊娠の有無等)を鑑みて、個別に最適な薬剤を選ぶかたちです。
新型コロナ感染症の治療薬、作用機序
| 商品名 | ラゲブリオ | パキロビッド | ゾコーバ | ベクルリー |
|---|---|---|---|---|
| 一般名 | モルヌピラビル | ニルマトレルビル/リトナビル | エンシトレルビル | レムデシビル |
| 作用機序 | RNA核酸アナログ | プロテアーゼ阻害 | プロテアーゼ阻害 | RNA核酸アナログ |
| 備考 | ①プロドラッグ ②NHC-TP(活性代謝物) ③複製エラーによりウイルス増殖抑制 | ①タンパク質の生成阻害によりウイルス増殖抑制 | ①タンパク質の生成阻害によりウイルス増殖抑制 | ①プロドラッグ ②RDV-TP(活性代謝物) ③複製エラーによりウイルス増殖抑制 |
パキロビッドとゾコーバはプロテアーゼの阻害剤です。ポリタンパク質の切断を妨げることにより、ウイルスの増殖に必要なタンパク質の産生を阻害します(抗ウイルス作用)
ラゲブリオはRNA核酸アナログです。吸収過程でエラスターゼによりN-ヒドロキシシチジン(NHC)となり、その後細胞内でリン酸化されNHC-TP(活性代謝物)となります。RNA複製時にNHC-TPがグアノシン、アデノシンと対合することにより複製エラーを生じ、ウイルスの増殖を妨げるのが作用メカニズムです。この機序はエラーカタストロフ呼ばれています。同様にベクルリーもRNA核酸アナログです。カルボキシエステラーゼにより活性体のレムデシビル3リン酸(RDV-TP)に変換されます。RNA複製時にRDV-TPがATPと置き換わり、少し遅れてRNAの伸長反応を停止させるのが機序です。遅延型チェーンターミネーションと呼ばれています。



新型コロナ感染症治療薬の作用機序は大きく2つ(RNA核酸アナログと②プロテアーゼ阻害)に大別されます。エラーカタストロフ、遅延型チェーンターミネーションという言葉は初めて知りました。
新型コロナ感染症の治療薬、適応症
| 商品名 | ラゲブリオ | パキロビッド | ゾコーバ | ベクルリー |
|---|---|---|---|---|
| 一般名 | モルヌピラビル | ニルマトレルビル/リトナビル | エンシトレルビル | レムデシビル |
| SARS-CoV-2による感染症の治療 | ||||
| SARS-CoV-2による感染症の予防 |
ゾコーバは予防投与の適応があります。家庭内で最初のSARS-CoV-2感染者(初発患者)の12歳以上の家庭内同居者を対象に、ゾコーバ群はプラセボ群に比べて、主要評価項目である「10日目までにSARS- CoV-2に感染し、かつCOVID-19症状を発症した割合」を低下させたからです。予防投与は保険給付がされず、自費(薬代49,630円)になります。



現時点でゾコーバのみ予防投与が可能です。ただしコストを考えると、使用されるケースは限られてくると思います。
新型コロナ感染症の治療薬、対象者
| 商品名 | ラゲブリオ | パキロビッド | ゾコーバ | ベクルリー |
|---|---|---|---|---|
| 一般名 | モルヌピラビル | ニルマトレルビル/リトナビル | エンシトレルビル | レムデシビル |
| 成人 | 18歳以上 | |||
| 小児 | 6歳以上 かつ体重20kg以上 | 12歳以上 | 体重3.5kg以上 |



成人においてラゲブリオは18歳以上と制限があります。小児への適応は拡大傾向です。6歳以上かつ20kg以上の小児に対して、パキロビッドは2026年3月23日に適応追加されました。ゾコーバも申請中であり、今後追加される見込みです。
新型コロナ感染症の治療薬、投与方法
| 商品名 | ラゲブリオ | パキロビッド | ゾコーバ | ベクルリー |
|---|---|---|---|---|
| 一般名 | モルヌピラビル | ニルマトレルビル/リトナビル | エンシトレルビル | レムデシビル |
| 投与経路 | 経口 | 経口 | 経口 | 点滴静注 |
| 投与タイミング | 5日以内 | 5日以内 | 3日以内 | 7日以内が望ましい |
| 初回負荷 | なし | なし | あり | あり |
| 投与期間 | 5日間 | 5日間 | 5日間 | 軽症は3日 5日〜10日 |
| 減量基準 | なし | あり | なし | なし |
- 投与経路
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新型コロナ感染症の治療薬は経口薬と注射薬があります。ベクルリーはCOVID-19に対する唯一の点滴静注製剤です。軽症(重症化リスあり)から中等症、重症まで幅広く使用されます。経口投与が困難なケースにも有用です。


5学会による新型コロナウイルス感染症、診療の指針 - 投与タイミング
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新型コロナ感染症の治療薬は症状発現から早期に投与することが基本です。パキロビッドとラゲブリオは症状出現から5日以内、ゾコーバは3日以内、ベクルリーは添付文書に記載がありませんが、臨床試験の成績より7日以内が望ましいとされています。


5学会による新型コロナウイルス感染症、診療の指針 - ローディング
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ベクルリーとゾコーバは初回負荷投与を行います。以下のとおりです。
ベクルリー ゾコーバ 初日200mg(2瓶)
2日目以降100mg(1瓶)
体重3.5kg以上40kg未満の小児
初日5mg/kg
2日目以降2.5mg/kg初日375mg(3錠)
2日目以降125mg(1錠) - 投与期間
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新型コロナ感染症の治療薬は投与期間が決まっています。内服薬(ラゲブリオ、パキロビッド、ゾコーバ)は5日です。注射薬ベクルリーは軽症で3日、肺炎を合併している場合には5日、症状の改善が得られない場合には10日まで投与できます。


ベクルリーを投与される患者さん・そのご家族の方へ - 減量基準
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パキロビッドは腎機能別の投与量が設定されています。ニルマトレルビルは腎臓から排泄される割合(約50%)が大きいからです。Ccr30mL以上60mL未満の方では、半量に減量します。パキロビッドパック300という製剤を選ぶかたちです。Ccr30mL未満の方では投与が推奨されていません。
Ccr60以上 Ccr30mL以上60mL未満 Ccr30未満 



パキロビッドパック 製剤写真
新型コロナ感染症の治療薬、薬物相互作用
| 商品名 | ラゲブリオ | パキロビッド | ゾコーバ | ベクルリー |
|---|---|---|---|---|
| 併用禁忌 | なし | あり | あり | なし |
| 併用注意 | なし | 多数あり | 多数あり | ヒドロキシクロロキン硫酸塩、シクロスポリン |
| 薬物 相互作用 | ニルマトレルビル:CYP3A4・P-gpの阻害作用あり、リトナビル:CYP3Aの阻害作用・CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19の誘導作用あり | CYP3Aの阻害作用、CYP2B6とCYP3Aの誘導作用あり、P- gp、BCRP、有機アニオントランスポーターペプチド、有機アニオン・カチオントランスポーターの阻害作用あり | CYP3A、UGT1A1、OATP1B1、OATP1B3及びMATE1の阻害作用あり |



パキロビッドとゾコーバは相互作用のチェックが欠かせません。「最新の添付文書」や「薬物相互作用検索ツール」等をもとに漏れなく確認することが大切ですね。もちろん、現時点における服薬状況を正確に把握することも重要だと思います。
・パキロビッドパック600/300、薬物相互作用検索ツール
・ゾコーバ錠、薬物相互作用検索ツール
新型コロナ感染症の治療薬、妊婦・授乳婦に対する投与
| 商品名 | ラゲブリオ | パキロビッド | ゾコーバ | ベクルリー |
|---|---|---|---|---|
| 妊婦又は妊娠している可能性のある女性 | 禁忌 | 有益性投与 | 禁忌 | 有益性投与 |
| 避妊の期間 | 投与中と 最終投与後4日間 | 投与中と 最終投与後2週間 | ||
| 授乳婦 | 有益性投与 | 有益性投与 | 有益性投与 | 授乳しないことが望ましい |



ラゲブリオとゾコーバは妊婦又は妊娠の可能性がある女性には投与できません。投与前の確認を徹底し、妊娠する可能性のある女性へは、避妊期間等の注意事項を説明する必要があります。
・ラゲブリオ、妊娠する可能性のある女性とご家族のみなさまへ
・ゾコーバ錠を処方された女性とご家族のみなさまへ
まとめ
今回は新型コロナの治療薬について特徴まとめました。ポイントは以下のとおりです。
| 商品名 | ラゲブリオ | パキロビッド | ゾコーバ | ベクルリー |
|---|---|---|---|---|
| 投与経路 | 経口 | 経口 | 経口 | 点滴 |
| 適応 | 治療 | 治療 | 治療、予防 | 治療 |
| 対象 | 成人 18歳以上 | 成人、小児 | 成人、小児 | 成人、小児 |
| 作用機序 | RNAアナログ | プロテアーゼ阻害 | プロテアーゼ阻害 | RNAアナログ |
| 投与方法 | 1日2回 5日間 | 1日2回 5日間 減量基準あり | 1日1回 5日間 初回負荷 | 1日1回 軽症3日間 初回負荷 |
| 投与 タイミング | 5日以内 | 5日以内 | 3日以内 | 7日以内が望ましい |
| 相互作用 | なし | 禁忌あり 注意多数 | 禁忌あり 注意多数 | ヒドロキシクロロキン硫酸塩、シクロスポリン |
| 妊婦又は妊娠している可能性のある女性 | 禁忌 | 禁忌 | ||
| 薬価 1コース | 86,596円 | 通常 99,027.5円 減量 62,693円 (安価) | 49,630円 (安価) | 3日間 185,992円 (ハイコスト) |

