ジョイクル関節注の特徴、押さえておきたい3つのメリット!

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ジョイクル関節注が発売されました!

変形性関節症の薬です。

一般名は、ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム。この名称はもしかして?と思い、構造を見た瞬間、予想が的中!

ヒアルロン酸に痛み止めのジクロフェナク(下図ピンクの囲み部分)がくっついてる!

ジョイクル関節注 インタビューフォーム

「そんなこともできるんだな」と感心しながら、調べてみると、従来薬と違うアプローチが面白いと感じました。

そんなジョイクル関節注の特徴とメリットについてまとめたので、共有したいと思います。

安全性速報が発出!

2021年6月1日に重篤なショック、アナフィラキシーの症例報告を受け、ブルーレターが発出されました。

ジョイクル関節注30mgによるショック、アナフィラキシーについて

目次

ジョイクルの基本情報(アルツ、スベニール、サイビスクと比較)

まずは基本情報の確認から。ポイントは下記8項目です。

  1. 一般名称
  2. 規格
  3. 製造方法
  4. 平均分子量
  5. 適応
  6. 用法用量
  7. 保管
  8. 薬価

従来のヒアルロン酸製剤と比較しながら特徴を押さえましょう。

スクロールできます
製品名ジョイクルアルツスベニールサイビスク
一般名ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム日局精製ヒアルロン酸ナトリウム日局精製ヒアルロン酸ナトリウムヒアルロン酸ナトリウム架橋処理ポリマー・同ビニルスルホン架橋体
規格30mgシリンジ3mL25mgディスポ・アンプル2.5mL25mgディスポ2.5mLディスポ2mL
製造方法発酵法抽出・精製(鶏冠)発酵法(乳酸菌)抽出・精製(鶏冠)
平均分子量約130万50~120万150~390万600万以上
適応変形性関節症(膝関節、股関節)変形性膝関節症、肩関節周囲炎、関節リウマチにおける膝関節痛形性膝関節症、肩関節周囲炎、関節リウマチにおける膝関節痛保存的非薬物治療及び経口薬物治療が十分奏効しない疼痛を有する変形性膝関節症の患者の疼痛緩和
用法用量1回1シリンジを4週間ごとに投与成人1回1シリンジを1週間ごとに連続5回投与1回2.5mLを1週間毎に連続5回投与1回2mLを1週間ごとに連続3回投与する
保管凍結を避け、2~8℃で保存室温保存室温保存室温保存
薬価¥4394円/筒¥968/筒、¥665/管¥901/筒¥9500/筒

簡単にポイントを確認します。

ヒアルロン酸の起源

何からヒアルロン酸(HA)を作っているのかです。

ジョイクルの起源ははっきりと分かりません

記載が見当たらなかったです。ただし、インタビューフォームに発酵法とあったので、なんらかの微生物を使っていると推測されます。

アルツとサイビスクの起源は同じ

鶏冠(とさか)から抽出・精製されます。

一方でスベニールの起源は乳酸菌です

ジョイクルと同様、発酵法により生成されます。

なぜ、起源を取り上げたのかというと、禁忌(アレルギー)の有無と関係しているからです。以下のように、サイビスクは鳥類のたんぱく質、羽毛、卵に対して過敏症の既往がある人には投与できません。投与前のチェックが必須です。

禁忌(アレルギー)
  • ジョイクル…本剤の成分、ジクロフェナクナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムに対し過敏症のある患者
  • アルツ…本剤の成分に対し過敏症のある患者
  • スベニール…本剤の成分に対し過敏症のある患者
  • サイビスク…本剤の成分又は鳥類のたんぱく質、羽毛、卵に過敏症の既往がある人

なぜ、サイビスクは禁忌(アレルギー)の設定があるのか?

アルツと同じ鶏冠が起源なのに、不思議ですよね。調べてみると、海外での副作用報告や抗体産生、製品中のタンパク質含量が多いなどが理由とされています。

・海外におけるアナフィラキシーの発現頻度は低いものの、反復投与試験で抗体産生が認められたことから、添付文書に「本品の成分又はヒアルロン酸ナトリウム、 鳥類のタンパク質、羽毛及び卵に過敏反応を示す患者」を禁忌とし、重大な副作用に 「アナフィラキシー反応があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認 められた場合には注入を中止し、適切な処置を行うこと」旨を記載する 

・本品中のタンパク質含量は、文献報告において、7.5±1.8μg/mL であるのに対し、他のヒアルロン製剤(販売名:アルツ)は0.5±0.1μg/mLと、本品の方が高値であると報告されている(Japanese Pharmacology and Therapeutics 32:655-662)

サイビスク審議結果報告書より

ジョイクルは起源に対するアレルギーの記載はありません。鳥や卵アレルギーの方にも投与できます。アルツとスベニール同様ですね。

開発コンセプト

続いて開発経緯に注目です。ここは興味深く、面白いと感じました。

従来薬はヒアルロン酸(HA)の分子量を高める工夫がされています。分子量が高いほど粘弾性が高く、以下の作用が強くなると考えられるからです。

HAの作用
  • 粘性…潤滑作用(関節の動きを良くする)
  • 弾性…衝撃吸収作用(関節を保護する)

それに伴い、関節の痛みや炎症を緩和する効果も期待できます。

粘弾性を高めるのが開発コンセプト!

比較表にあるように、下記の順に分子量が大きくなり粘弾性が増します。スベニールは発酵法の確立により、サイビスクは鶏冠から抽出したHAに架橋処理を施して高分子化に成功したわけです。

アルツ<スベニール<サイビスク

サイビスクはほぼゴールに近づいたといえます。ヒトにおける関節液のHA分子量が600万くらいだから。生理的ですね。

一方でジョイクルは開発コンセプトが異なる

アルツ<(ジョイクル)<スベニール<サイビスク

分子量は上記の順で、サイビスクには遠く及びません。粘弾性をより高める戦略をとらなかったわけです。

代わりに、ジョイクルは粘弾性はそれほど高めずに、ジクロフェナクを結合消炎鎮痛効果をプラスしました。従来薬とアプローチを変えたわけです

もしかすると、副作用に配慮したのかも知れません。サイビスクは多いので…。

開発コンセプト
  • アルツ…標準薬
  • スベニール…粘弾性アップ(乳酸菌による発酵法の確立)
  • サイビスク…さらに粘弾性アップ(鶏冠から抽出・精製、架橋処理)
  • ジョイクル…粘弾性そのまま+消炎鎮痛(ジクロフェナク結合処理)

適応の違い

ジョイクルは現時点で適応が狭いです。

  • 関節リウマチ(RA)に使えず
  • 肩関節周囲炎に適応がありません

一方で従来薬に勝る部分もあります

変形性関節症(股関節)に使える点です。

以下のように、適応の部位(関節)が異なります。

  • ジョイクル…膝、
  • アルツ…膝、肩
  • スベニール…膝、肩
  • サイビスク…膝

ジョイクルは現時点で唯一、股関節に使えるヒアルロン酸製剤です。ここが従来薬と比べての強みですね

用法用量の違い

ジョイクルは4週に1回投与です。投与間隔が長いのが特徴ですね。また、投与期間の制限もありません。

従来薬を含め【投与方法】と【長期投与の可否】についてまとめると下記です。

OAの場合

製品名投与方法長期投与の可否
ジョイクル4週ごとに1回投与
アルツ1週ごとに連続5回投与可(投与回数を適宜増減)
スベニール1週ごとに連続5回投与可(2~4週間隔で投与)
サイビスク1週ごとに連続3回投与不可(1クールのみ)

アルツとスベニールは長期投与可ですが、方法が異なります。一方で、サイビスクは長期投与ができません。1クールのみ。2クール目以降では有害事象が増加するとの報告があるからです。

ジョイクルは投与方法がシンプルです。注射回数が少なくて済むのも魅力ですね

ジョイクル関節注、3つのメリット

ここからは、ジョイクル関節注のメリットを見ていきましょう。大きく3点です。

  1. 通院回数を減らせる
  2. 変形性股関節症の適応あり
  3. NSAIDsの副作用を減らせる

順番に見ていきましょう

通院回数を減らせる

まずは1つ目。ジョイクルは通院回数を減らせます。4週間に1回の投与で効果が持続するからです。

そもそも、なぜ4週間に1回なのか?

従来薬が週一投与なのに不思議ですよね。調べてみると、4週間隔の設定は、ウサギを用いた非臨床試験をもとに決められたとのことです。

投与期間について、非臨床試験の抗原誘発ウサギ関節炎モデルにジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウムを単回投与した結果、滑膜組織に28日間DFが存在すること、投与後28日間膝関節腫脹を抑制していることが確認された。

ジョイクル関節注 インタビューフォーム

臨床試験でも4週に1回投与で有効性が認められている

国内第3相臨床試験で変形性関節症(OA)の患者さんにも有効性は認められています。

無作為化、非盲検比較試験です
国内第3相臨床試験
  • 患者:膝OAの患者440例
  • 介入:ジョイクル30mgを膝関節に4週間ごとに計6回投与
  • 比較:プラセボ
  • 結果:主要評価項目WOMAC painスコア(100mmVAS)における初回投与後12 週間の平均的なベースラインからの変化量

結果は以下のとおり

ジョイクル関節注 インタビューフォーム

→プラセボに対して優越性を示しました。

鎮痛効果も投与期間中、持続します

以下のように、副次評価項目であるWOMAC pain(痛み)スコアの各評価時点のベースラインからの変化量において、初回投与後1週から20週まで本剤群のプラセボ群に対する有意な改善が認められました。

ジョイクル関節注 インタビューフォーム

ところで、痛み以外の症状は改善されたのか?

週あたりのヒアルロン酸投与量は従来薬に比べて少ないはずなので、気になりますよね。結果は下記でした。

ジョイクル関節注 インタビューフォーム

→WOMAC stiffness(こわばり)スコア、WOMAC physical function(日常行動の困難度)スコアも痛み同様に、プラセボに比べて有意に改善しています。

このように、ジョイクル関節注は4週に1回の投与により、OA患者の痛みや自覚症状の改善効果が期待できます。通院回数の減少は患者さんの利便性が良く、コロナ禍においても有益ですね

変形性股関節症の適応あり

続いて2つ目。ジョイクルは変形性股関節症に適応がある唯一のヒアルロン酸製剤になります。先述のとおりですね。

国内臨床試験の詳細は下記です

無作為化、非盲検比較試験です
国内第3相臨床試験
  • OA患者290例(肩関節90例、肘関節50例、股関節90例、足関節60例)
  • 介入:ジョイクル30mgを各関節に4週間ごとに計3回投与
  • 比較:プラセボ
  • 結果:主要評価項目、被験者日誌による対象部位の痛みスコア、初回投与後12週間の平均のベースラインからの変化量

結果は以下のとおり

ジョイクル関節注 インタビューフォーム

→股関節のみ主要評価項目を達成できました。

ジョイクルは股OAに使用できる唯一のヒアルロン酸製剤になります。OA治療薬の適応が広がり、今まで自由診療や適応外使用例において有用です

NSAIDsの副作用を減らせる

最後に3つ目。特に、私はここに魅力を感じました!

ジョイクルはNSAIDs経口薬の副作用を軽減できると考えられます。なぜなら、関節内に滞留し、血中移行がほとんどないからです。以下のように、CmaxとAUCはかなり低い…。

ジョイクル関節注30mg単回投与
  • Cmax…0.808(ng/mL)
  • AUC0→∞…74.87 (ng/mL・hr)

経口薬や外用薬と比べてみましょう(下図)

ジョイクル関節注 インタビューフォーム

全身暴露はほぼないと考えても良いレベルですね。

では、局所作用型のジョイクルがふさわしいケースは?大きく2つあります。

  1. 消化性潰瘍のリスクが高い
  2. 腎障害のある人

①消化性潰瘍のリスクが高い人に向いている

OAの場合どうしても NSAIDsの長期服用が必要になり、投与中に胃痛や吐き気を訴える人が多く、消化性潰瘍を起こす方も一定数おられるからです。

ジョイクルに切り替えると、リスク低減に加えて、予防のために併用しているPPIや胃粘膜防御薬等を減らせます。アドヒアランスの向上が期待できるのもメリットですね。

また②CKDの方に有用

経口NSAIDsの代替薬であるカロナールでは効果が不十分な人をよく見かけるからです。トラマドールなど弱オピオイド薬の場合には、吐き気やふらつき、便秘等の副作用で断念するケースも少なくありません。

ジョイクルの選択は、腎障害のリスク低減に加えて、NSAIDsでないと疼痛コントロールが困難なケースにも有用であると考えられます。

ほかにも、選択場面はあります

以下のように、経口NSAIDsが禁忌で使用できない場合です。

ジョイクル
ナボールSR
  1. 本剤の成分、ジクロフェナクナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムに対し過敏症の既往歴のある患者
  2. アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等により誘発される喘息発作)又はその既往歴のある患者
  1. 消化性潰瘍のある患者
  2. 重篤な血液の異常のある患者
  3. 重篤な肝障害のある患者
  4. 重篤な腎障害のある患者
  5. 重篤な高血圧症のある患者
  6. 重篤な心機能不全のある患者
  7. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  8. アスピリン喘息又はその既往歴のある患者
  9. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
  10. トリアムテレンを投与中の患者

ジョイクルは局所作用型NSAIDsという扱いです。全身作用型NSAIDsの副作用を軽減・回避できるのが強みですね。もちろん、リスクはゼロではないにせよ、安全性は高いと考えられます

まとめ

今回は、ジョイクル関節注の特徴と3つのメリットについて解説しました。

ジョイクルの特性を一言で表すなら

ダブルアクションです!

粘弾性(ヒアルロン酸)消炎鎮痛(ジクロフェナク)ですね。従来の製剤と異なる開発コンセプトでした。

3つのメリットは下記のとおりです。

ジョイクルのメリット
  • 通院回数を減らせる
  • 変形性股関節症の適応あり
  • NSAIDsの副作用を減らせる

ジョイクルの登場により、OA治療の選択肢が増えました。適応が限定されており、従来薬にとって変わることはないにせよ、新規処方はもちろん切り替えが相応しいケースはそれなりにあると思います。今後の使用動向に注目ですね♪

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