エパデールEMカプセルの特徴【従来薬エパデールとの違いは?】

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今回のテーマはエパデールEMカプセル!

エパデールカプセルやエパデールSの改良版です。

従来薬との違いは何か?

5つのポイントをまとめたので共有したいと思います。

目次

エパデールの基本情報

まずは「エパデールEMカプセル」と「エパデールカプセル・S」の比較から。重要だと思われる箇所にマーカーを引きました。

スクロールできます
エパデールEMカプセルエパデールSエパデールカプセル
発売2022年9月2004年7月1990年6月
規格2g300mg・600mg・900mg300mg
カプセル径約6mm約4mm18mm×7mm
有効成分イコサペント酸エチルイコサペント酸エチルイコサペント酸エチル
添加物内容物
トコフェロール、大豆レシチン、ポリソルベート80

カプセル本体
ゼラチン、濃グリセリン、トレハロース水和物、D-ソルビトール液、中鎖脂肪酸トリグリセリド、大豆レシチン
内容物
トコフェロール

カプセル本体
ゼラチン、D-ソルビトール、濃グリセリン、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル
内容物
トコフェロール

カプセル本体
ゼラチン、コハク化ゼラチン、濃グリセリン、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル
適応①高脂血症①高脂血症
②閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善
①高脂血症
②閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善
用法用量①1回2gを1日1回、食直後に経口投与(トリグリセリド高値の場合、1回4gを1日1回まで増量可)①1回900mgを1日2回又は1回600mgを1日3回、食直後に経口投与(トリグリセリドの異常を呈する場合には、1回900mgを1日3回まで増量可)

②1回600mgを1日3回、毎食直後に経口投与(年齢、症状により適宜増減)
①1回900mgを1日2回又は1回600mgを1日3回、食直後に経口投与(トリグリセリドの異常を呈する場合には、1回900mgを1日3回まで増量可)

②1回600mgを1日3回、毎食直後に経口投与(年齢、症状により適宜増減)
各電子添文より作成

簡単に共通点を押さえておきます。

大きく2つです

  1. 有効成分
  2. 作用機序

知っている方は、飛ばして読み進めて頂いて構いません^_^

エパデールの有効成分

「エパデールEM」と「エパデールカプセル・S」

どちらも有効成分は

(エ)イコサペント酸エチル(EPA-E)です
 【eicosapentaenoic acid:EPA

エパデールは魚油に含まれるEPAのエチルエステル化により、高純度に精製、医薬品として開発されました。EPAはアジやイワシ、サバなど青魚に含まれる長鎖脂肪酸で、サプリメントとしても有名ですよね。

参考①:脂肪酸の分類

EPAは多価不飽和脂肪酸のω-3系に分類されています。

  • 飽和脂肪酸…炭素間に二重結合なし
    例)パルミチン酸、ステアリン酸など
  • 不飽和脂肪酸……炭素間に二重結合あり
    • 一価不飽和脂肪酸(ω-9系)…1つの二重結合
      例)オレイン酸
    • 多価不飽和脂肪酸(ω-3系、ω-6系)…2つ以上の二重結合
オメガ-3系不飽和脂肪酸
オメガ-6系不飽和脂肪酸

末端の炭素から数えて3番目と4番目の間に二重結合がある

  • α-リノレン酸
  • イコサペント酸(EPA)
  • ドコサヘキサエン酸(DHA)

末端の炭素から数えて6番目と7番目の間に二重結合がある

  • リノール酸
  • γ-リノレン酸
  • アラキドン酸

パルミチン酸やステアリン酸など飽和脂肪酸は主にエネルギー源として使用されます。1gあたり9kcalです。一方で、過剰摂取はコレステロールの上昇や心血管イベント発症のリスクを上げる可能性が指摘されています。

対して、EPAやDHA、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸は細胞膜や生理活性物質の構成成分です。血管や血小板などの働きを調節しています(後述)。

農林水産省 脂質による健康影響

エパデールの作用機序

押さえておきたい作用は大きく2つです

脂質代謝改善と②血小板凝集抑制作用

①エパデールは血清トリグリセリド(TG)濃度を低下させる作用があります。血清コレステロール値も下げますが、スタチンほどの効果は望めず、メインはTGの方です。

機序

EPAはリポ蛋白に取り込まれて、脂質代謝を亢進(VLDL→LDL)したり、肝臓に取り込まれTGの生合成を抑制します。VLDL(TGの割合が多い)がLDL(TGの割合が少ない)に異化され、血清のTG濃度が低下するわけです。

(作用機序)EPA-Eは小腸で脱エチル化を受けてEPAに代謝された後、以下の作用を示す
・リポ蛋白に取り込まれ、リポ蛋白の代謝を促進する。
・肝ミクロソームに取り込まれ、脂質の生合成・分泌を抑制する。

エパデールEMカプセル 電子添文

また、②エパデールは血小板凝集を抑制する効果も認められています。これも有名ですね。手術前に休薬すべき薬剤としてチェックリストに挙げている施設も多いと思います。

機序

EPA-Eの投与により、細胞膜リン脂質の脂肪酸がオメガ6系のアラキドン酸(AA)からオメガ3系のEPAに置換されます。ここがポイント。結果、血管壁でプロスタグランジンI3(PGI3)、血小板でトロンボキサンA3(TXA3)の生成が促進されます。下図のように、血小板のTXA3は血小板凝集作用を示さず、血小板凝集を惹起するAAに比べて血小板凝集を抑制できるわけです。

エパデールカプセル インタビューフォームより作成

ここからが本題!

「エパデールEMカプセル」と「エパデールカプセル・S」の違いについて見ていきます。

大きく5つです。

  1. 適応
  2. 用法用量
  3. 消化管吸収率
  4. 食事の影響
  5. カプセルの大きさ

エパデールの適応

まずは1つ目の相違点、適応について。

エパデールEM
エパデールカプセル
エパデールS

①高脂血症

①高脂血症

②閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善

エパデールEMカプセルは高脂血症のみです。従来薬エパデールのようにASOに適応がありません。今後、適応が拡大されるかもしれませんが、現時点では異なります。

従来薬から切り替える際には適応の確認が必要ですね

エパデールの用法用量

続いて2つ目の相違点、用法用量について。

エパデールEMカプセル
エパデールカプセル
エパデールS

高脂血症

・1回2gを1日1回
・食直後に経口投与
・最大1回4gを1日1回

高脂血症

・1回900mgを1日2回又は1回600mgを1日3回
・食直後に経口投与
・最大1回900mgを1日3回

ASO

・1回600mgを1日3回
・食直後に経口投与
・年齢、症状により適宜増減

エパデールEMカプセルは1日1回型の製剤です。ここが従来薬(2〜3回/日)に対する強み!服薬アドヒアランスの向上が期待できます。特に高脂血症の場合、1日1回投与のスタチンと併用することが多く、投与時点を揃えることが可能です。

参考②:力価換算

力価換算はエパデールEMカプセル2g=エパデールカプセル1800mg/dayです。国内第3相臨床試験において有効性が同等であることが示されました。

国内第Ⅲ相試験(エパデールカプセル対照)

  • 対象…トリグリセリドが高値の患者580例
    空腹時の血清 TG 値が 150 mg/dL 以上 500 mg/dL 未満で、生活習慣の改善指導を受けている
    前観察期 4 週前から投与期まで脂質異常症治療薬の投与は禁止(プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチンの投与は可)
  • 方法…エパデールEMカプセル2g又は4gを1日1回朝食直後に投与(12週間)
  • 比較…エパデールカプセル900mgを1日2回(朝夕食直後)、又は3回(毎食直後)に投与(12週間)

結果は以下のとおり

投与期終了時の血清 TG のベースラインからの変化率

エパデールEMカプセル2g/日はエパデールカプセル1800mg/日と比べて非劣性という結果でした。

エパデールEMカプセル4g/日は同EMカプセル2g/日に比べて優越性を示しました。

エパデールEMカプセル 審議結果報告書

参考③:増量用量の設定

エパデールEMカプセルは、増量用量の設定があります。ここは従来薬と一緒です。

(用法及び用量)イコサペント酸エチルとして、通常、成人には1回2gを1日1回、食直後に経口投与する。ただし、トリグリセリド高値の程度により、1回4g、1日1回まで増量できる。

エパデールEMカプセル2g 電子添文

下記のケースでは、1回4gを1日1回投与できます。

  • 血清TGが高値を示す場合(初回)
  • 2g/日で効果不十分の際(投与中)

ちなみに、エパデールカプセル・Sも2700mg/日に増量可能ですが、EMカプセルの方が高用量を投与できる分、より高い効果が期待できそうですね。

エパデールの消化管吸収率

続いて3つ目の相違点、消化管吸収率について。

AUC0-24hr(µg・hr/mL)
エパデールEM2g×1/日
3409.86
エパデールS900mg×2/日
2536.38

健康成人男性を対象とした反復投与試験、投与11日目

上記のように、エパデールEMカプセルは従来薬エパデールカプセル・Sに比べて吸収が良いのが特徴です。投与量は10%ほど多いものの、定常状態におけるAUCは1.3倍ほど高値を示しています。

理由

吸収性の改善を目的に開発された自己乳化製剤だからです。ここがメーカーのセールスポイント。内容物に大豆レシチン、ポリソルベートなどの乳化剤が添加されており、カプセル崩壊後に、EPAがエマルジョン化され消化管から吸収されます。胆汁酸に頼らずとも、自己で乳化できる製剤工夫がエパデールEMカプセル最大の特徴です!

エパデールEMカプセル
エパデールカプセル
エパデールS

内容物の添加物

  • トコフェロール
  • 大豆レシチン
  • ポリソルベート80

内容物の添加物

  • トコフェロール

エパデール:食事の影響

続いて4つ目の相違点、食事に影響について。

EPAのCmax:空腹時/朝食直後
エパデールEM2g/日
0.70
エパデールS1800mg/日
0.15
EPAのAUC0-72 h:空腹時/朝食直後
エパデールEM2g/日
0.72
エパデールS1800mg/日
0.15

エパデールEM審議結果報告書 食事の影響について

エパデールEMカプセルはエパデールカプセル・Sに比べて食事の影響を受けにくいのが特徴です。従来薬は空腹時投与で約85%も吸収が低下するのに対して、EMカプセルの低下率は約30%ほどに抑えられています。

理由

先述のようにエパデールEMカプセルは自己乳化製剤であり、食後の胆汁酸の影響によらずに吸収されるためと考えられます。

じゃあ、食後投与もOKかと思いきや、それは認められておりません。臨床試験は食直後で有効性と安全性を確認しており、電子添文にも食直後と記載があるからです。それに3割ほど吸収も低下しますからね。

(用法及び用量)イコサペント酸エチルとして、通常、成人には1回2gを1日1回、食直後に経口投与する。ただし、トリグリセリド高値の程度により、1回4g、1日1回まで増量できる。

エパデールEMカプセル2g 電子添文

エパデールEMカプセルは胆汁酸に依存しないことから、食事の種類や服薬時点のズレ等の影響が少なく、安定した効果が期待できると考えられます。

エパデール:カプセルの大きさ

最後に5つ目の相違点、カプセルの大きさについて。

エパデールEMカプセル
エパデールS

直径約6mm

直径約4mm

上記のように、エパデールEMカプセルの方がサイズが大きめです。従来品の1.5倍に相当します。

同じにできなかったのはなぜか?調べたのですが分かりませんでした。おそらく、添加物等の影響があると推測されます。

飲みやすさへの影響は、そこまで大差はないと思います。ただし、嚥下機能や服用感等により従来品の方が適している(希望される)ケースも出てくるかもしれません。その際には、服薬アドヒアランスとの兼ね合いはありますが、従来品のまま継続という選択もありだと思います。

まとめ

今回は、エパデールEMカプセルの特徴について、従来薬エパデールカプセル・Sと比較しながら解説しました。

記事を書きながら思ったのは、

エパデールEMは従来薬の上位互換である点!

自己乳化の製剤工夫は吸収率の向上と安定により、1日1回投与を可能にしたからです。エパデールカプセル・Sに比べて、服薬負担が減り、服薬アドヒアランスの向上が期待できます。また、食事の影響を受けにくく、安定した効果が期待できるのもメリットですね。

一方で、従来薬との混同に注意が欠かせません。誤って複数回飲んだり、調剤時の取り違えのリスクもあるからです。

医薬品リスク管理計画書RMPに「本剤と既承認のイコサペント酸エチル製剤との製品選択過誤」と記載があります。注意喚起の資材を活用し、インシデントを防ぎましょう。

エパデール製品選択過誤注意喚起指導用リーフ
エパデールEMカプセル2gからエパデールカプセル300・エパデールS300・エパデールS600・エパデールS900へ変わる患者さんへ
エパデールカプセル300・エパデールS300・エパデールS600・エパデールS900からエパデールEMカプセル2gへ変わる患者さんへ

最後に、エパデールEMカプセルの登場により、従来薬からの切り替えが進むのか使用動向に注目していきたいです!

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