エフルエルダ筋注の特徴【インフルエンザHAワクチンとの違いに注目】

当ページのリンクには広告が含まれています

今回のテーマはエフルエルダ筋注!高用量のインフルエンザHAワクチンです。「高用量」がキーワードですね。「どのような特徴があるのか」「標準用量のインフルエンザHAワクチンとの違いは何か」ポイントをまとめたので共有します。

目次

エフルエルダとインフルエンザHAワクチンの比較

もともと、国内承認のインフルエンザワクチンは3種類(フルミスト・インフルエンザHAワクチン・フルービックHA)、6製品(各社)でした。ここに、エフルエルダ筋注が加わります。

スクロールできます
エフルエルダ筋注フルミスト点鼻液インフルエンザHAワクチンフルービックHA
製剤写真エフルエルダの剤型写真
製造販売サノフィ第一三共微研、KMB、デンカ微研微研
剤型注射(シリンジ)点鼻液注射(バイアル)注射(シリンジ)
種類不活化ワクチン弱毒生ワクチン不活化ワクチン
投与経路筋注鼻腔内皮下
製造株A型株:ノルウェー/31694/2022(H1N1)、タイ/8/2022(H3N2)

B型株:オーストリア/1359417/2021(ビクトリア系統)
A型株:ビクトリア/4897/2022(H1N1)、カリフォルニア/122/2022(H3N2)
B型株:プーケット/3073/2013(山形系統)、オーストリア/1359417/2021(ビクトリア系統)
有効成分インフルエンザウイルス(A型・B型)
HA画分
弱毒生インフルエンザウイルス(A型・B型) インフルエンザウイルス(A型・B型)のHA画分
添加物塩化ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル精製ゼラチン、L-アルギニン塩酸塩、L-グルタミン酸ナトリウム、精製白糖、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、pH調節剤リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素ナトリウム水和物、塩化ナトリウム  、チメロサール、ホルマリン
微研はホルマリン非含有
リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素ナトリウム水和物、塩化ナトリウム
適応インフルエンザの予防インフルエンザの予防
対象者60歳以上2歳以上19歳未満6ヶ月以上6ヶ月以上
※シリンジは3歳未満に使用不可
用法用量1回0.7mLを筋肉内に接種0.2mLを1回(各鼻腔内に0.1mLを1噴霧)6ヶ月以上3歳未満
0.25mL
3歳以上13歳未満
0.5mL
2~4週間の間隔をおいて2回注射

13歳以上
0.5mL
1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射
3歳以上13歳未満
0.5mL
2~4週間の間隔をおいて2回注射

13歳以上
0.5mL
1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射
各製剤、電子添文より作成、製剤写真はメーカーHPより

まずは、エフルエルダとインフルエンザHAワクチンの共通点を押さえておきます。大きく3つです。

共通点①ワクチンの種類

エフルエルダとインフルエンザHAワクチンはどちらも不活化ワクチンです。鶏卵で培養したインフルエンザウイルスから、膜表面にあるヘムアグルチニン(HA)を分離し、A型とB型株ウイルスのHA画分を規定量含む溶液を調製しています。

弱毒生ワクチン「フルミスト点鼻液」の特徴は別記事にまとめています!

共通点②ワクチンの適応

エフルエルダとインフルエンザHAワクチンはどちらもインフルエンザの予防に用います。インフルエンザの治療薬は別記事にまとめているので合わせてご覧頂けたら幸いです!

共通点③ワクチンの保管

エフルエルダとインフルエンザHAワクチンは冷所保存です。温度の範囲は少し異なります(エフルエルダ:2〜8℃、インフエンザHAワクチン:凍結を避けて10℃以下)が、薬品保冷庫での管理が必要な点は変わりません。

ここからはエフルエルダとインフルエンザHAワクチンの違いを見ていきましょう!大きく6つです。

  1. 有効成分の用量
  2. 接種対象者
  3. 接種方法
  4. 手技
  5. 剤型
  6. 添加物

有効成分の用量:エフルエルダとインフルエンザHAワクチン

エフルエルダ
(高用量4価インフルエンザワクチン)
インフルエンザHAワクチン
(標準用量4価インフルエンザワクチン)
略称QIV-HD
High-dose quadrivalent influenza vaccine
QIV-SD
Standard-dose influenza vaccine
A型①HA含量60μg15μg
A型②HA含量60μg15μg
B型①HA含量60μg15μg
B型②HA含量60μg15μg
240μg60μg

エフルエルダは高用量のインフルエンザHAワクチン(QIV-HD)です。従来の標準用量インフルエンザHAワクチン(QIV-SD)に比べて4倍のヘムアグルチニン(HA)を含みます。ここが1番の違いですね。その分、抗体の上昇価が大きく、高い予防効果が期待できます。国内臨床試験においてQIV-SDに比べて、抗体産生能は約2〜3倍高く、優れた抗体陽転率が認められています。

エフルエルダ筋注:国内第3相臨床試験
  • 対象…60歳以上の健康成人2100例
  • 方法…エフルエルダ1回0.7mLを筋注
    A型株2種とB型株2種のHAをそれぞれ60μg(計240 μg)
  • 比較…インフルエンザHAワクチン1回0.5mLを皮下注
    A型株2種とB型株2種のHAをそれぞれ15μg(計60μg)

結果は以下のとおり

接種28日後のGMT(幾何平均抗体価)(主要評価項目)

エフルエルダは標準用量インフルエンザHAワクチンに比べて有意に抗体価を上昇させました。

抗体陽転率(主要評価項目)

エフルエルダは標準用量インフルエンザHAワクチンに比べて有意な抗体陽転率を認めました。

インフルエンザの発症予防効果は?

海外臨床試験(65歳以上の成人対象)において、TIV-HD(A型2種、B型1種、1株あたり60μg、合計180μg)はTIV-SD (A型2種、B型1種、1株あたり15μg、合計45μg)に比べて、ワクチン接種後14日以降のインフルエンザ発症率において優越性が認められています。

接種対象者:エフルエルダとインフルエンザHAワクチン

エフルエルダ
(高用量4価インフルエンザワクチン)
インフルエンザHAワクチン
(標準用量4価インフルエンザワクチン)
対象者60歳以上6ヶ月以上

エフルエルダの接種対象者は60歳以上に限定されています。高齢者に対するインフルエンザの予防効果を高めるべく、開発された製剤だからです。日本におけるインフルエンザ関連で入院した患者の多くが60歳以上であり、免疫老化やフレイル、合併症の増加等により、免疫応答が不十分であるとされています。一方で、インフルエンザHAワクチンの対象者は6ヶ月以上です。幅広い年齢の方に接種できます。

エフルエルダ筋注 インタビューフォーム

60歳以上における使い分けとして、インフルエンザHAワクチンを基本としながら、ハイリスクの方はエフルエルダを選択するかたちになりそうですね。

接種方法:エフルエルダとインフルエンザHAワクチン

エフルエルダ
(高用量4価インフルエンザワクチン)
インフルエンザHAワクチン
(標準用量4価インフルエンザワクチン)
投与方法投与量
0.7mL

投与回数
単回注射
投与量
6ヶ月以上3歳未満
0.25mL
3歳以上13歳未満
0.5mL

投与回数
2回注射
(2~4週間の間隔)
投与方法投与量
13歳以上
0.5mL

投与回数
単回または2回注射
(1~4週間の間隔)

エフルエルダは単回使用、1回0.7mLを接種します。一方で、インフルエンザHAワクチンは年齢により投与量と接種回数が異なります。13歳未満の方では1回0.25〜0.5mL(年齢により選択)を2回接種するのが基本です。13歳以上の方では1回0.5mL、単回または2回の接種回数を選択できます。

手技:エフルエルダとインフルエンザHAワクチン

エフルエルダ
(高用量4価インフルエンザワクチン)
インフルエンザHAワクチン
(標準用量4価インフルエンザワクチン)
投与方法筋注(IM)
intramuscular injection
皮下注(SC)
subcutaneous injection

エフルエルダの接種方法は筋注です。mRNAコロナワクチンと同じく筋肉内に接種します。一方で、インフルエンザHAワクチンは皮下接種です。周知のとおりですね。一般的に、皮下接種に比べて筋肉内接種の方が、免疫原性が高く(同等以上)、局所反応が少ないとされています。

皮下接種と筋肉内接種の違い

ここは医療安全の観点から注意が必要だと思います。インフルエンザワクチンは皮下接種という固定概念が強く、筋注ではなく皮下注を行う懸念があるからです。シリンジには「筋注」であることが注意喚起されていますが、見落とす可能性もあります。

エフルエルダの写真

本剤は筋肉内注射のみに使用し、皮下注射又は静脈内注射はしないこと。

エフルエルダ筋注 電子添文

剤型:エフルエルダとインフルエンザHAワクチン

エフルエルダ
(高用量4価インフルエンザワクチン)
インフルエンザHAワクチン
(標準用量4価インフルエンザワクチン)
剤型プレフィルドシリンジ
1人用
バイアル
複数人使用

エフルエルダは単回接種用のプレフィルドシリンジに薬液が充填されています。針は付属されておらず、接種前に取り付けるかたちです。薬液を吸引する労力がかからない点が魅力ですね。一方で、インフルエンザHAワクチンは、バイアルに薬液が充填されており、必要量を抜き取る必要があります。複数回分が入っており、集団接種に適した剤型ですね。

添加物:エフルエルダとインフルエンザHAワクチン

エフルエルダ
(高用量4価インフルエンザワクチン)
インフルエンザHAワクチン
(標準用量4価インフルエンザワクチン)
投与方法塩化ナトリウム
・無水リン酸一水素ナトリウム 
・リン酸二水素ナトリウム一水和物
・ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル
リン酸水素ナトリウム水和物
リン酸二水素ナトリウム水和物
塩化ナトリウム 
チメロサール
ホルマリン
微研はホルマリン非含有

エフルエルダはチメロサールフリーの製剤です。チメロサールはエチル水銀由来の防腐剤であり、複数回接種用のバイアルにおける開封後の細菌汚染を防止する目的で使用されています。インフルエンザHAワクチンはチメロサールを含み、アレルギーのある方には接種できません。参考までに、フルービックHAはチメロサール非含有の製剤です。

(エフルエルダの添加物)
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルとは?

トリトンX-100と呼ばれる非イオン性の界面活性剤です。製造工程においてインフルエンザウイルス粒子を分解するために用いられています。

エフルエルダ筋注 インタビューフォーム

まとめ

今回はエフルエルダ筋注の特徴についてまとめました。従来のインフルエンザHAワクチンに比べて高用量であり、免疫応答が強く、高い発症予防効果が期待できます。ハイリスクの高齢者に限定して使用する位置付けになりそうですね。一方で、接種方法が、従来のワクチンと異なる点(投与回数、筋注等)には注意が必要ですね。エフルエルダの発売により、インフルエンザワクチンの選択肢が増えます。本記事が知識の整理にお役立て頂けたら幸いです!

目次